ゴールデンウィークの間に書き溜められればいいなと思っていますので、もし投稿頻度が上がったらそういうことなんだなと思ってください。
「アルたちが追い込まれてるな……」
「狙いは一体何なのでしょうか……?」
いきなり現れた風紀委員が便利屋を追い詰めている間、俺たちは動けなかった。こちらと敵対しているようではなさそうだし、ここで下手に動くわけにはいかなそうだ。
「風紀委員がこちらに近づいてきてる。みんな、気を付けて」
便利屋を制圧したのだろうか、風紀委員の集団がこちらに近づいてきている。軽く見渡しても数十人はいそうだけど、戦うしかないのか? 警戒しつつ様子をうかがっていると、俺たちの前に一人の生徒が歩いてきた。
「こんにちは、シャーレのアルド先生。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します」
「……ゲヘナ学園の風紀委員会がどうしてここに?」
「もちろん、学園の校則違反をした方々を逮捕するためですよ。少し強引な方法をとってしまいましたが、どうか協力していただけませんか?」
アルたちは確かに校則違反をしていたのかもしれないけど、わざわざこの人数をアビドスの近くに連れてくる必要があったのか? 何が狙いなのかはわからないけど、裏があると思った方がよさそうだな。みんなの顔を見ても、だれも納得していないみたいだ。
「お断りします! 便利屋はアビドス自治区で問題を起こしています。ですから、便利屋の処遇を決める権利は私たちにあるはずです!」
アヤネがアコのほうを見ながら言い切った。他の三人も同じ意見の様で、警戒しながらアコのほうを見ている。断られることを想定していたのか、アコのほうは落ち着いていて表情を崩さない。
「この兵力を見てもそんなことが言えるなんて、よほどの自信があるみたいですね。やはりあなたがいるからでしょうか……先生?」
「……俺がいなくてもみんなは強いよ。それに、やっぱりアルたちの処遇は俺たちが決めたい」
「あくまでアビドスの味方というわけですね……。残念です」
アコが片手をあげると俺たちの周りを包囲していた風紀委員たちが一斉に銃を構え始めた。さすがにこの人数を相手にするのは厳しいな……。あたりを見渡してもどこも突破するのは厳しそうだ。
突然風紀委員が立っていた場所が爆発した。急いであたりを見渡すとハルカが風紀委員のほうに走っていくのが見えた。いつの間に包囲を抜けていたんだろうか。
「包囲が緩みました! この隙に立て直しましょう!」
ハルカが急襲して隙のできたほうに走っていくと、アルたちも風紀委員と応戦しながら一か所に固まっていた。さっきの砲撃でかなりダメージを受けたのか、さっきのような動きの切れがない。
「アルたちも無事だったんだな!」
「もちろん! このくらいでやられるタマじゃないわ!」
「砲撃受けた時はみんなでダウンしてたけどねー」
「ム、ムツキ!」
……思ったよりは大丈夫そうだな。アルたちと合流できたのはいいけど、風紀委員もすぐに態勢を立て直したみたいだ。どこかに突破口が無いかと周りをうかがっていると、カヨコが声をかけてきた。
「先生。あいつらの目的は私たちじゃないと思う」
「カヨコ、それってどういう……?」
「私たちを捕まえるために偶然アビドスに来たって言ってるけど。他の学園の自治区に大勢の戦力を連れて来るなんて、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからこれはアコの独断」
同じゲヘナ学園の便利屋を追ってきたんじゃないなら、目的は何なんだ? アビドスとの関係は無いように思うけど……。
「目的は最初からシャーレの先生。これだけの戦力を連れてきたのも、先生が強いって情報を持っているなら納得も行く」
「えっ!? 俺!?」
「やっぱり、カヨコさんにはばれてしまいますか。まあ構いません」
アコが合図をすると風紀委員が一斉に動いて俺たちを包囲してしまった。さっきよりも人数が多い。増援を呼んでいたみたいで、さっきの人数の数倍はこの場所に集まっている。
「シャーレと衝突することは想定していましたが、この状況にしたかったわけではありません。そこは信じてほしいですね」
「なんで俺を狙うんだ? ゲヘナに対して何かをしたわけじゃないはずだけど」
「……何をしたかは問題じゃないんです。これからトリニティと条約を結ぶ際にどんな影響があるかわからない、そんな組織を放ってはおけません。ですから、せめて条約を結び終わるまではこちらで先生の身柄を預かっておきたいのです」
存在そのものを危険視されているのか……。確かに、今までもかなり自由に活動できていたのは実感している。だからといって、今直面している問題を残したままアビドスを去るわけにはいかない。
「アコ。悪いけど、おとなしくついていくわけにはいかないな」
「そうよ! 先生は私たちと一緒に居るんだから!」
「……やっぱり、こうなりますか。先生は簡単に意見を変える人ではないと、チナツから聞いていましたが……。その通りみたいですね」
アコは少しあきれながら片手をあげる。それを合図に周囲の風紀委員が銃を構えてこちらを狙い始めた。この人数は俺たちだけじゃ厳しいな……。せめてアルたちも一緒に戦ってくれれば何とかなるかもしれないけど……。
「便利屋! 協力して先生を守るわよ!」
「そのつもりだったけど、なんだかすんなり話がまとまったね……」
「信頼には信頼で報いる! それが私たち便利屋のモットーよ! 任せてちょうだい!」
なんだかアルがすごくいい笑顔で快諾してくれている。その後に柴関の爆発についてなにやら言っているから、なんだか締まらないけど……。とにかく、心強い子たちが仲間になってくれたな。
「先生は下がって指揮をお願いします!」
「狙いは先生だから、一緒に戦っちゃうと思うツボだよ」
「……わかった。みんな、頼むよ!」
それからいくら時間が経っただろうか。向こうの部隊もいくつか倒したはずなのに、後ろにはまだまだ多くの部隊が控えている。
「状況がこっちが有利だけど、これじゃ終わりが見えないじゃん!」
業を煮やしたのか、セリカが苛立ったように声を荒げた。今もなお、また新しい部隊がこちらに近づいている。確かにこれじゃあ、いくら相手を倒せてもいつか押し切られてしまう。
「カヨコ! 風紀委員はいつもこれくらいの戦力を動かしてるのか!?」
「いや……。さすがにアコの権限で動かせる兵力はとっくに超えてる。だとすると、これは風紀委員長が……?」
「えっ! ヒナが来るの!?」
風紀委員長、という言葉に反応して、さっきまでは余裕そうだったアルがいきなり焦りだした。そのヒナって子が来たらかなりまずいのか。
「ヒナって子が来ると何かまずいのか?」
「ヒナは風紀委員のトップで最高戦力。だから今ここに来られると戦況が向こうに傾く可能性が高い」
「そんなに強いのか……」
銃弾の飛び交う戦場の中、もしかしたらどこかにそのヒナって子がいるのかもしれない。そう思って周囲を見渡してみると、アコが誰かと連絡している様子が目に入った。なんだかすごく焦っているみたいだけど、だれと連絡しているんだろうか。そのまま様子をうかがっていると、白い髪の小さな女の子が悠然と歩いてきた。身長と同じくらいはある銃を軽々と持っている。周囲もその雰囲気にのまれたのか、さっきまでの騒々しさは少しも感じない。
「先生。あれが風紀委員長のヒナ」
「あの子が……」
カヨコがこちらに近づいてきてそっと教えてくれた。どうやらカヨコもかなり警戒しているみたいで、ヒナの目につかないように動いているみたいだ。ヒナのほうを見ると、アコと何やら話しているみたいだ。なんだか少し様子がおかしいみたいだけど……。
「どうやらヒナは今回の襲撃のことを知らなかったみたいだね。……私たちは今の内に逃げるけど、そっちはどうするの?」
「アビドスで起こったことだし、最後まで残って対応するよ。みんなもそのつもりだろうし」
「……わかった。気を付けてね」
「ああ。そっちこそな」
そういうとカヨコはアルたちを連れてこっそりと逃げて行った。なんだか手馴れているあたり、ヒナに何度も痛い目にあわされてたのかもしれないな。風紀委員のほうを見ると、アコとヒナはまだ何かを話しているみたいだ。こっちも便利屋のみんながいなくなったわけだし、これからどうするかを考えないと……。
「どうしたの先生。そんな難しそうな顔してー」
「ホシノ!? 来てくれたのか!?」
「そりゃ、こんなドンパチ騒ぎが起きてたら見に来るよー。それより先生、なんだかえらくボロボロだけどどうしたの?」
「ん? ああ……、戦っているときに少しケガしただけだよ」
いつもよりはっきりとしたまなざしで聞いてきた。そんなに大きなケガじゃないけど、心配かけちゃったかな。
「小鳥遊ホシノ……1年生の時とはずいぶん違うのね」
いつの間にかヒナがこっちに近づいてきていた。ホシノのことを知っているみたいだな。
「ん? 私のこと知ってるんだ」
「情報部にいたころに各校の要注意人物はチェックしてたから。あなたはあの事件の後、アビドスを去ったと思ってたけど……」
昔に何があったのかは気になるけど……、ホシノはホシノだ。今は考えないでおこう。
「私も戦うためにここに来たわけじゃないから。……イオリ、チナツ。帰るよ」
風紀委員の子たちも、少し戸惑いながらも素早く撤収を始めている。一言で全員を動かしているし、やっぱり組織のトップとして信頼されているんだろうな。その姿をみてセリカたちも少し安心したみたいだ。戦闘が終わって少し気が抜けていると、ヒナがこちらに近づいてきた。銃は降ろしているし、表情を見ても敵意はなさそうだ。
「事前通達なしでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことに関してはゲヘナの風紀委員長として、公式に謝罪する」
そういうと、ヒナは頭を下げてきた。
「まさかゲヘナの風紀委員長が頭を下げるなんて……」
「これから先、アビドス自治区に風紀委員が無断で入ることはないと約束する」
みんな驚いて言葉が出ないようだ。驚いて動かない俺たちを見てからもう一度軽く礼をすると、風紀委員に指示を飛ばしながらこの場を去ろうとしている。しかしその途中で足を止めて俺のほうをみると、小さな手でこちらに手招きをした。
「いったいどうしたんだ? 確か、ヒナだったよな」
「シャーレの先生には伝えておいた方がいいと思って。これはまだ私たちしか知らない情報だけど……。カイザーコーポレーションがアビドスの捨てられた砂漠で、何かをしようとしてるらしい」
「教えてもらってよかったのか? もちろん、俺たちにとってはありがたいけど……」
「本来なら教える義理は無いんだけど、一応ね」
「ヒナは優しいんだな。こっちでも調べてみるよ。ありがとう」
「……とにかく、私はこれで。またね、先生」
ヒナはそのまま背中を向けて帰っていった。最後少し素っ気なかった気がしたけど、何か変なことを言ってしまったのか? 後ろを向いているからどんな表情をしているのかわからないけど……。
風紀委員会が返った後、残っていたのはアビドスのみんなと柴関の跡だけだった。一気にいろんなことが起こったせいか、妙に疲れてしまった。少し休憩しをしながら今まで起こったことをホシノに教えた後、情報を整理するためにも学校に戻ることにした。みんな戦闘で疲れているのか少し足取りが重そうだ。みんなの無事を確認した後、移動しようとするとホシノに止められた。
「ちょっと待ってよ、先生。怪我してるんだからまず応急手当しないと」
「このくらいなら後でも大丈夫だけど……」
「いいからいいから。ここはおじさんに任せてよ。すぐ終わらせるからさ」
そういうと少し強引に俺を座らせてから手当てを始めた。俺のことを気遣ってくれているのか、すごく丁寧に手当てしてくれている。
「先生は外の人なんだから、銃弾が当たると致命傷になることもあるでしょ? 今回みたいな大きな戦いに飛び込むなんて無茶だよー」
「心配かけちゃったな。それでも、何かできることがあるなら俺はなんでもするつもりだよ」
「無茶苦茶な大人だよね、先生は。……手当終わったよ」
ホシノは俺の背中を軽くたたきながら立ち上がり、そのまま帰り支度をしていたシロコ達のほうに歩きだす。なんだかすこし足取りが軽く見えるけど、何かいいことでもあったんだろうか。不思議に思いながらホシノの後をついていくと、笑顔のホシノが振り返った。
「ありがとう、先生。これからもよろしくね?」
ストーリーのどのあたりまでなぞるのかはずっと迷っています。なので進みが遅かったりだいぶ端折ったりするかもしれませんがよろしくお願いします。