内閣総理大臣の岸辺文明は多忙な執務を終え、秘書である長男と私邸へと帰宅したところであった。「ただいま。」
「親父、おかえり」夕食と晩酌の準備を終え、父と兄の帰りを待っていた次男がスマホをテーブルに置き二人を出迎える。
「何かゲームでもやっていたのか?」「今、流行っているウマ娘をしてた」「なるほど、ゲームをするのは良いが、課金は程々にするように」
夕食を食べ終え入浴を済ませ、テレビを見ながら毎晩の楽しみである晩酌を楽しんでいた。鬼滅の刃も全て見終え、何か新しいアニメは無いかとウイスキーを片手にスマートテレビの画面をザッピング。「ウマ娘。そういえば、息子がやっていたゲームだっけな。これを見てみるか。」
最初は面白くなかったら一話で終わらそうとしていた文明は、その日からみるみるうちに夢中になり、毎晩色々な酒をとっかえひっかえしつつ最新話まで全て視聴してしまっていた。
毎週地上波で放映されていたアニメを見終えると、自室のベッドに就寝しいつもと変わらない一日を終えるはずだった。
翌朝、文明は気がかりな夢から覚めると、
いつも聴き馴染んだ自分の声とは異なる少女のような高く黄色い声、そして胸に水枕が載っかったような重みに気付き
、起き上がり眼鏡をかけ胸元を見ると、自分には存在しないであろう二つの膨らみ、股間の違和感に気付きズボンと下着を下げ恐る恐る見ると、
六十年以上苦楽を共にしてきたムスコ♂が綺麗さっぱり無くなっていたのである!
「俺はどうしたのだろう?」と、彼は思った。夢なら覚めろと頬を張って見たが鋭い痛みが走り、夢ではなかった。机の上にあった手鏡を手に取り自分の姿を映すと、そこには腰まで長く伸びた艷やかな栗毛の淫乱なウマ娘が居た。
耳慣れない黄色い叫び声に気付いた息子たちが自室へ 駆けていく足音が近づいてくる、この姿を見られたら俺はどうなるのであろうか、様々な感情が心の中を逡巡する。
「親父、どうしたんだ!!」扉越しに切迫した息子の声が聞こえてくる。
そして、扉が開け放たれた。
布団をかぶる間もなく変わり果てた己の姿を息子たちに見られてしまった…
もう俺はおしまいだ…。
「親父?そこに居るのは親父だよな?」
「いかにも、俺がお前達の父親である岸辺文明だが。」
「ファッ!?」「やべぇよ…やべぇよ…」
わずかに残った面影と口調から眼の前にいるウマ娘が、自分の父だと確信した息子は絶句し硬直する…
絶句し立ち尽くす息子たちに向かって文明はこう言った。
「父さんな、これからウマ娘で食っていこうと思うんだ…」
(続く)