君が居て幸福 作:裏桜
アグネス・ギーベンラート
原作では劇場版から登場。
簡潔に纏めるとキラに自尊心を傷つけられた腹いせに途中で味方であるキラたちを裏切り、最終的にはアスランのお陰で生存した少女。
この世界でも彼女は"運悪く"コンパスに出向することになった。
経緯はヴァンが女性パイロットで優秀な人材を探していたことから始まる。
ミレニアムに乗艦するメンバーとして自分、シン、ルナマリアは確定。ハーケン隊の3名はラクスの指示により決定。残り一枠をどうするか?
本当はハイネを入れたかったが、それだと男性と女性の比率が悪くなるため、妥協と方々からの推薦からアグネスに頼むことになった。
面接をしてみて愛想がよく、周囲からの特に男性からの評価は高い。自身の目標を達するために努力を怠らない真面目な印象だった。
まあ、ええやろと軽いノリで採用。
だが、後から心を読んでしまえば肩書きや地位でしか人を見ておらず、何よりも同性から『男』を奪うことに固執していたヤバい奴だった。
ヴァンのこともゴリラのような体格で顔が不細工で好みじゃないけど、それを差し引いても准将という高い地位と二回の大戦を生き抜いた屈強な戦士。彼女もあんまりぱっとしない印象だから私の魅力なら余裕だろうと舐められていた。
当然、そんなことを考えるのなら塩対応になるヴァン。何よりキラを侮辱したことは赦せないが被害が出ていないから我慢した。その反面、全く堕ちないことに苛立ち始めるアグネス。業を煮やしたアグネスの行動は次第に苛烈になって行った。
「なにアグネスが?」
「はい。偶々見つけたんで止めたんですけど危ないところでしたよ」
「……そうなのか。すまなかったな、シン」
「いえ。同期から死人を出したくないですから」
とある報告をシンから貰ったことにより状況は一変する。いつかは諦めると思っていたアグネスが何とキラにまでちょっかいをし始めたのだ。
「アグネスって本当はバカなのか?」
「単にキラさんのことを知らないだけだと思います」
「マジか」
情報収集は戦いの定石だろうに。ヴァンは頭を抱える。キラの戦闘能力はミレニアムのメンバーの中でもかなりの上位の位置にいる。
あのアスランの訓練に耐える程の逸材なのだ。アグネス程度なら秒で組敷くことは造作もない。しかもキラはオーブからの出向という体で来ており技術特佐という特殊な階級だが、権限は大佐くらいのものを有している。そのためアグネスに適当な難癖を付けて殺しても問題ない。アグネスは本当に危なかった。シンが止めなければ確実に死んでいただろう。キラから見れば彼氏に手を出す泥棒猫など、絞めることに何ら躊躇する必要なんてないのだから。
「今回の件は流石に看過できない」
「では、どうしますか?」
解雇するのは簡単だが、それは最後の手段だ。
アグネスは人格がゴミカスなこと以外は全て高水準な優秀な人間。アレ以上の逸材は恐らく居ないだろうし、今更他の人間を育成するのは手間が掛かった。
「……荒療治だが、俺に考えがある。協力してくれるか、シン?」
「勿論ですよ!ヴァンさん!」
***
それは一週間後に決行された。
「……という訳でハート隊の副隊長にシン・アスカを任命する。その証としてSTTS-808を与える。俺の期待に応えてくれ、シン」
「はい!隊長のために精一杯頑張ります!」
「……隊長!この決定に異議があります」
「ちょっ、アグネス!?」
『来たな』
予想通り、プライドの高いアグネスは文句を言ってきた。非常識なことを言うことに思わず笑みを浮かべそうになるが気を引き締めて表情を維持する。
「今回、訓練の結果次第で決める話だと聞いていました。私が一番の成績を修めていたと聞いています。違いますか?」
「そうだな。その通りだ」
「だったら、だったら、何故!シンにするのですか!?」
「総合的に見て判断したんだが、不服か?」
「……それでは、納得できません」
「そうか」
確かにアグネスの言い分は理解出来る。
成績だけで見るならシンやルナマリアよりも優れていた。それは否定ができない事実。だが、シンたちと比べるとどうしても彼女は見劣りしている。
「言い分は理解した。なら、キミにチャンスをあげよう」
「チャンス?」
「力を示せ、アグネス・ギーベンラート。俺にシミュレータで勝てたならキミを認めよう。やるか?」
「……やります」
アグネスが望んでいそうな言葉を選び、合意させる。
こうしてアグネス理解らせ作戦が始動された。
***
ヴァン、キラ、ハインラインによって開発された最新のシミュレータで対戦は行われようとしていた。使える機体はヴァンたちが既知のもの全て。機体性能は可能な限りの再現を。そして、最大の特徴はコックピットに来る衝撃も忠実に再現されている。それが意味するのは。
「場所は宇宙空間。勝敗については俺はキミを撃破。アグネスは俺に一撃でも与えれば勝ちだ。俺はX10Aしか使わない。アグネスは何でもいいぞ」
「わかりました。なら、私はインパルスを使います」
ハンデのつもりなのか型落ち機体を選んでくるとは舐められたものだ。だが、シミュレータとはいえあのヴァン・フライハートに勝つことは自身に箔が付く。
それにインパルスで苦もなく勝てば『フリーダムキラー』と呼ばれているシンを超えた証明にもなる。アグネスにとって圧倒的有利で負ける要素は何処にもない。
「じゃあ、始めるぞ」
「了解」
『ヴァン・フライハート、フリーダム行きます!(アグネス・ギーベンラート、コアスプレンダー出ます)』
出撃とともにチェストフライヤー、レッグフライヤーがそれに追随、コアスプレンダーと合体しインパルスへ。
「フォースシルエット射出」
『フォースシルエットを射出します』
機械音声とともにフォースシルエットが現れ、そして、換装しフォースインパルスとなる。
「隊長は何処に……」
フォースの機動力を活かし索敵を開始する。乗ってみた感じザクよりも断然違う。しかもOSもアグネスに最適化されていおり、これで負けることはあり得ない。
コックピット内に設置されたレーダーからは大体の場所は把握できている。フリーダムは動いた形跡がなく、どうやら待ち構えているようだ。
「上等じゃない」
恐らくは自分が視認出来る距離に近付いてきたら、フルバーストで沈めようとしているのだろう。なら、縦横無尽に動きながら近付けばいい。幾ら弾幕を張ろうとこのくらい動けば当たるまい。
そして、フリーダムが視認出来そうな場所まで来たところで。
「……何、今の?」
不意に何か、光る何かが横切ったような気がした。
アグネスは気になり一瞬だけ後ろを振り返る。それは一瞬のことだ。だけど、アグネスに隙が生まれてしまった。
視線を再び正面へ向き直すと突然、緑の閃光がモニターを包み込んだ。眩しい、目を細めてしまう。閃光は数秒続き、光が収まるとそこには。
『YOU LOSE』
モニターに自身が敗北したことが表示されていた。訳がわからない。
「なんなのよこれ!?」
アグネスは何が起きたのか理解できず、慌てて録画された映像を再生する。
そこに映し出されたのはロングライフルで狙撃するフリーダムの姿。一発目を撃った後に間髪入れずに二発目を放ち映像はインパルスの周囲に移る。一発目をインパルスの付近を横切った後に二発目がインパルスの胸部を直撃しインパルスは爆発四散した。
「流石です!隊長!」
「おう、上手く行ってよかったよ」
先に出ていたヴァンはシンとハイタッチを交わしていた。
「隊長!どういうことですか!?」
「どうって、言われても狙撃しただけなんだけど……」
「あそこから出来る訳ありません!」
「けど、結果が全て違う?アグネス、キミは負けたんだ。まだ、納得できない?」
「当たり前です!納得できません!」
接敵する前に終わるなんてそんなの間抜け以外の何者でもない。こんな終わり方アグネスのプライドが許さない。
「じゃあ、今度はデスティニーに来なよ。ま、勝てないだろうけど」
「ぐぬぬ……!」
ー数分後ー
「どうして、当たらないの!?」
ヴァンは引き続きフリーダムを使用し、アグネスはデスティニーを使う。
デスティニーの性能に振り回されながらも攻撃を仕掛けるが全く当たらない。まるで次に来る攻撃が何なのかが分かってるかのような動きで、しかも紙一重で避けられている。
当たれば勝てるのに避けられることに苛つくアグネス。性能はデスティニーの方が大きく上回っている筈なのにどうして勝てない。
「飽きてきたし、はい。おつかれさん」
終わりは突然だった。回避行動をしかしていなかったフリーダムがいきなり接近しムラマサブラスターで腕部を切り裂き破壊、続け様に唐竹割りでデスティニーを真っ二つにした。
アグネスはまた負けた。
「何でどうして……」
アグネスのプライドはもうボロボロだった。
有利な条件な筈だったのに、結果は惨敗。自分は優秀ではなかった?早くここから逃げ出したい気持ちになる。
だが、ヴァンはそれを許すつもりはない。
「よし、それじゃあ次はシンとやろっか?」
「え?」
「負けないからな、アグネス!」
『アグネス、どんまい』
シンの隣にいたルナマリアはアグネスに向けて静かに合掌する。全容を知らされているルナマリアはまだ終わりではないことを知っている。
「まだ出来るよね……アグネス?」
アグネスに微笑み掛けたヴァンの顔はとてもキラキラしていた。
武器はインパルスの時はライフル二丁、デスティニーはムラマサブラスターにしています。狙撃に関してはライフルの出力を上げて撃ったような感じです。逆シャアのアムロがした艦砲射撃を思わせたもの。
アグネスはGに耐えられないので光の翼を使用していません。