星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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季乃とアンケート

 

 気配り上手で社交性が高い。他者とのコミュニケーション力も高く、人の好かれる性格。

 

 また、やると決めたことへの行動力は高く、計画的。

 

 完璧主義なところもあり、自分が納得するまでやり遂げる頑固な一面と、努力家な一面もあり。ただそれを人前に見せるのは憚れる模様。

 

 裏面としては、かなりの面倒くさがり屋でドライな性格。気配り上手な面はほぼ見せず、感情的に思ったことを口にだす毒舌家。

 

 大雑把な点もあり、衣服の乱れ等も気にしないほどズボラ(身内だからの可能性が高い)。

 

 表姿とはかなり印象が変わるが、一種の甘え表現だと思うと納得はできる。

 

 ……うん、まぁこんなところだろうか。

 

 先方に提出した内容とは別に、有希のことについて軽く纏め、改めてそれを眺める。

 

「ポテンシャルたけぇな」

 

 アイドルに限らず仕事をやっていくうえでコミュニケーション力と社交性の高さは大切だ。気配り上手なところもあるから、どこに行っても活躍できそうだ。さすがは有希だな。兄として鼻が高い。

 

 ここまで理解できれば、俺がいないときに有希が仕事でどんなスタイルでやっているかも想像がつく。きっと、うまく現場をこなしながら、裏でストレス貯めているんだろうなって。

 

 先月くらいに俺が怒られたのも当然だなって改めて思う。定期的に発散してやらないとだな。

 

「となると次は季乃か」

 

「あなたのアイドル、斎木季乃です★」

 

「うわっ」

 

 突然背後から声がして思わず変な声が出る。

 

 振り向くと案の定、悪戯気に笑みを浮かべた季乃の姿があった。

 

 というか、待った。これ片付けないと。

 

「なんですかこれ?」

 

 そう言って季乃は先程俺がまとめた用紙を持ち上げる。相変わらず目敏いやつだ。

 

「今後のために性格について纏めてたんだ。まだ少ししか書けてないけどな」

 

 見つかったからには仕方がない。素直に答えると、季乃は興味深そうに含んだ声で相槌を返す。

 

「あ、なるほど。だから次が私なんですね!」

 

「そういうこと」

 

「ふふふ、慎二さんに私の事を理解できますか?」

 

「ってことでアンケートがある」

 

「デートしましょうよ!」

 

「こらこら」

 

 二人っきりならともかくここは事務所だ。他の人の目もあるから止めてくれ。というかなぜ季乃はオフィスに来てるんだ。

 

「忘れものを届けに参りました!」

 

 季乃の手元には見覚えのある黒のメモ帳がある。あれ、俺のメモ帳バッグに入れてなかったか。

 

「ことのデビュー曲アイデア。家柄と本人の容姿的に洋より和、気高く高嶺の花のイメージ、鏡花という人物を表すものにする、→そのためにももっと人物像を理解する必要がある」

 

「読むな読むな」

 

「どうすれば理解できるか。できるだけ交流を重ねるのが一番、色んな体験への反応で理解を進める。……読みづら!内容うっす!」

 

「メモ書きだから仕方ないだろ」

 

 季乃の手からメモ帳を奪い取ると、バッグへと仕舞う。今度から落とさないようにしないと。

 

「まぁ持ってきてありがとう。ちなみにどこに落ちてたんだ?」

 

「有希ちゃんずハウスです!」

 

「俺の家じゃねぇか。感謝を返せ」

 

「お礼を要求します!」

 

「やだよ。帰れ帰れ」

 

「えーいいんですかそんなこと言って」

 

 顔を見ずともにやにやしているのがわかる。今日は一段と面倒くさいモードだ。

 

「季乃ちゃんの事もっと理解したいんですよね?」

 

「と思ってたけどな。季乃の事はなんとなくわかるからいいや」

 

「このやろー!」

 

「おい首絞めてくるな!」

 

 なんなんだこいつは。そんなに構ってほしい状態なのか。……仕方あるまい。どうせこのあと会いに行こうと思ってたんだ。都合が良かったと思おう。

 

「わかったから、とりあえず場所移そう。ここじゃ周りの迷惑だ」

 

「えへへ、密室で二人っきりですか?えっちですね」

 

「はいはい、そうだね」

 

「皆さん!えっちしてきます!」

 

「おい馬鹿!!違いますので誤解なきよう!失礼しました!」

 

 オフィスを出るときに浴びた視線が痛い。冷えた眼差しがたくさん背中に突き刺さった。居心地悪くなるのは俺なんだから勘弁してほしい。まじで。

 

 

 

 

 

 

 

「ということで前述の通り、アンケートです」

 

「つまんないです」

 

「つまんなくてもやってください」

 

 不満顔の季乃にアンケートを渡すと無言で返却された。返すな。

 

「どうせなら慎二さんの口から聞いてくださいよ。ほら面談ってやつです!」

 

 確かにわざわざこうして顔合わせているんだ。紙という手段より、口頭で聞いたほうがより深く理解できるか。

 

「では面談を始めます。じゃあまず自己紹介から」

 

「あなたのアイドル、斎木季乃、十八歳です★あなたに特別な時間を届けてあげます!」

 

「愛嬌のある明るい性格と。面談は以上になります」

 

「早い!もっと色々と聞いてくださいよ。普段の事とか仕事の事とか」

 

 普段と仕事の事か。……あぁそういやアンケートにそれっぽいの書いてたな。

 

「じゃあ趣味を教えてください」

 

「人をからかう事です!」

 

「クズと」

 

「慎二さんも一緒でしょうが!」

 

 ふむ、確かにそうだ。とはいえこれは季乃のアンケートだ。お調子者、人間関係に難ありと書いておこう。

 

「他に何か無いですか?アイドルとしてでもいいので」

 

「その前にその話し方止めてくれませんか?嫌です」

 

 季乃にしては珍しく素直な言葉だ。俺もふざけすぎたな。反省だ。

 

「ごめん、じゃあ話し方は普通にする……じゃあ改めて、趣味はあるか?」 

 

 そう言うと季乃は、んーと悩むように首を傾げる。

 

「強いて言うなら天体観測ですかね?天体望遠鏡とか一度も使った事ないですけど」

 

「季乃って星が好きだったよな?それで天体観測か」

 

「ですです。星って綺麗ですよね。何だか心が落ち着くんです」

 

「へぇ」

 

 そう語った季乃の表情はいつも以上に穏やかだ。本当に星が好きなのだろう。

 

「昔から好きだったのか?」

 

「んー昔はそうでもなかったと思います。別に夜空を見上げることもなかったし、見ても、星だー落ちろー、願い叶えさせろー程度にしか思ってなかったです」

 

「うん……」

 

「でもですね。いつの間にか見上げるようになってたんですよね。なんででしょう?」

 

「さぁな」

 

 ……季乃の過去は俺も聞いたことがある。一緒に生まれてくるはずだった双子の姉が死に、両親も死に、育ててくれた祖父も亡くなった。そして自分の好きなものを見つけてくれた長瀬麻奈も亡くなった。

 

 人が呆気なく死んでしまうものだって気づいたからこそ、今を刹那的に楽しんで生きていこうと決めたんだって。

 

 でも、人はそう簡単に割り切れるものじゃない。心のどこかに両親と祖父と生きた自分が残っているのだろう。

 

 そういった想いが星に想いを馳せている理由じゃないかなってなんとなく思った。

 

 口には出さないけども。

 

「今度、星を見に行こうな」

 

「デートですね!」

 

「はいはい、それでいいよ」

 

 その時は有希も誘っておこう。俺がいると鬱陶しがられるだろうが、たまにはこういうのも悪くないだろう。

 

 

「じゃあ次の質問。休日によくしていることは?」

 

「はい!休日がありませんでした!」

 

「大変申し訳ございませんでした!」

 

 丁度先々週くらいの話だ。季乃の好きな分野である歌を活かすため、それ関係の営業を頑張ってなんとか大きな仕事を獲得できたのだが、改めてスケジュールを見直して気づいた。

 

 あれ、休みなくね?

 

 とはいえ、自分がお願いした事をやっぱり辞めますというのはさすがに言いづらい。季乃に誠心誠意、事のあらましを説明してなんとか納得してもらった記憶がある。

 

 もちろん季乃の体調を見て、少しでも問題がありそうだったら取り消す予定だったが、あれは本当によくなかった。ぶん殴られてもおかしくない類のものだ。申し訳ないことをしたと思っている。

 

「ちゃんとしないと駄目ですよ?仕事クビになっちゃいますよ」

 

「ごめん、こればっかりは気をつける」

 

 ……なんだか有希と季乃には怒られてばかりな気がする。情けねぇよ。もっとちゃんとしないとな。

 

「それで休日していることでしたっけ?大体誰かと遊びに行ってます!」

 

「ふむふむ、ちなみに最近誰とどこに行ったとかあるか?」

 

「最近だとですね。偶然街で渚ちゃんを見つけたので、一緒にカフェに行きました!」

 

「へぇー」

 

 渚ちゃんというのは月ストの渚ちゃんの事だろう。どりきゅんとの再戦で忙しいだろうし、迷惑かけていないだろうか。

 

「安心してください。私もそのあたりの分別はついています」

 

「そうか。ならよかった」

 

「叩くならグーで良いとアドバイスしてきました!」

 

「駄目だよ」

 

 何、人を殴らせようとしているんだ。渚ちゃんそんな子じゃないでしょ。

 

「ちなみにもちもちでした」

 

「何がだよ」

 

「胸部です」

 

「最低だよお前」

 

 殴るべきはこいつ…あぁなるほどそのためのグーか。季乃になら許可しよう。

 

「はいじゃあ次、休日にしている事二つ目を教えてください」

 

「二つ目ですか?そうですねぇ、遊びに行く以外ですと、こっそりアイドルの握手会に参加したりとかしてますよ」

 

「そうなのか?意外だ。てっきり他のアイドルに興味ないかと」

 

「あ、実際興味ないですよ。ただ握手会に行って正体を明かしたときの反応を見て楽しむんです」

 

「もう出禁だろこいつ」

 

「この間もわざわざ県外に行って莉央さんの握手会に行ってきました。反応が良い人は面白いですね!」

 

 絶対莉央さんブチ切れてるよそれ。ほんとごめんなさい。季乃ちゃんは残念な子なんです。許してください。

 

「ちなみにこころちゃんとはちゃんと仲直りしてきました。もういじめないので安心してくださいって」

 

「勘弁してあげてくれ」

 

 さすがに可哀想になってきた。季乃の事だから塩梅は考えているんだろうが、それでも気に病む人はいるんだ。

 

「大丈夫ですよ。連絡先も交換してもらって、ちゃんと相談にも乗るようにしています」

 

 ほら、と。こころちゃんとのやり取りの一部を見せられる。

 

季『もし学校や仕事で困っている事があったら相談してくださいね!一人残らず破壊してやります!』

 

こ『結構です』

 

「止めてやれ」

 

 さすがにそろそろ止めるべきか。仕事に差し障りかねないし、何よりこころちゃんのメンタルが心配だ。

 

「大丈夫ですよ。本当に仲直りしましたので」

 

 いつもより真剣な表情だ。……まぁ季乃の事だ。無意味に敵を作らないようにしているだろうし、それは信用しても良いかもしれない。

 

 

「じゃあ次の質問。休日にしていることその三」

 

「どんだけ休日にしていること聞くんですか!季乃の休日特集でもしているんですか!?」

 

「出尽くすまで考えてこそ、性格が出ると思っている。具体的には季乃が一人で居るときの話が聞きたいと思ってる」

 

「一人でいるときですか……」

 

 季乃は言い淀むと、やがて堪忍したかのように口を開く。

 

「特に何もしてないです。誰かに連絡したり電話したり、疲れたり連絡が返ってこなくなったら寝るだけです」

 

 ……確かに休みの日や夜などは季乃からの連絡が多い。暇しているんだろうなとは思っていたが、結構重症かこれ。

 

「料理とか、それこそ歌が好きなら音楽聴いたりとはしないのか?」

 

「料理はしないです。音楽もあまり聞かないです」

 

 ふむ。あまり聞いてほしくないという思いがひしひしと伝わってくる。一人の時間が好きではないのだろう。

 

「料理をしないというのはなぜだ?」

 

「一人で料理しちゃうと、一人で食べないといけないからです」

 

「あぁなるほど」

 

 夕食の時に季乃が家に上がり込んでくるのもこういった理由か。一人というのが嫌いなんだろうな。

 

「ちなみに料理自体はできるのか?」

 

「人並みにはできますよ。おじいちゃんに教わりました」

 

 さすがはおじいちゃん。季乃が一人で生きていけるように諸々教えているのだろう。

 

「なるほどな。……ちなみになんだけど、季乃の手料理って今度食べれたりする?」

 

「え?あ、はい、いいですけど……」

 

「暇なときでいいから今度振る舞ってくれないか?俺より上手いかが気になるから」

 

 俺自体下手な部類だから、間違いなく俺よりかは上手いんだろうが、こう言っておいたほうが乗りやすいだろう。

 

「……ふふふ、もう、なんですかそれ。わかりました。今度振る舞ってあげましょう!ぎゃふんと言わせて上げますよ!」

 

 元気が出てきたみたいだ。これでこそ季乃だ。

 

 

「じゃあ次は仕事の話だな。率直に聞くがアイドルは楽しいか?」

 

「楽しいですよ!人を騙してお金を貰う最高の仕事です!」

 

「詐欺師だよそれ」

 

 アイドルをなんだと思ってんだ。他のアイドルに謝ってこい。

 

「それはともかく楽しいと思っているのは事実ですよ。ライブで自分のパフォーマンスを見て一喜一憂してくれるのを見るのは面白いですし、テレビやラジオでわいわいするのも楽しいです」

 

 季乃の明るく無邪気な性格はアイドルに向いていると俺も思う。愛嬌のある子が笑顔を振りまいているのを見て、必要以上に嫌う人は少ないだろう。

 

 それを季乃自身が楽しいと思ってくれているのなら何よりだ。

 

「ただ一つ不満があります」

 

「お、なんだ?」

 

 マネージャーである以上、担当アイドルには毎日気持ちよく過ごしてもらいたい。不満があるのなら、こうして言ってくれた方が嬉しい。

 

「最近バラエティーの仕事が多い気がします!」

 

 実際のところバラエティーの比率が高くなっているのは事実だ。俺がそういう仕事ばかり集めているというわけでなく、そういった仕事が多く入ってくるようになったのだ。ニーズの話だろう。

 

「嫌か?」

 

「嫌じゃないんですけど、なんか最近私の扱いが芸人みたくなってます!」

 

 うん……まぁ反応いいし、無駄にイキるし、盛大に失敗するし、フリがわかっているし、場を見て動けるし、ツッコミも悪くないし……芸人だな。

 

「見てくださいこれ!」

 

 季乃から某動画サイトの画面を見せられる。

 

『斎木季乃絶叫まとめ』

『イキリ季乃ちゃん&敗北シーン』

『イキリ季乃ちゃん&敗北シーンパート2』

『季乃季乃ラップ』

 

 等々、様々な動画が上がっている。しかも結構な再生数だ。

 

「よかったじゃん、大盛況だ」

 

「何がいいですか!担当アイドルが笑い者にされて嬉しいですか!」

 

「俺好きだぞ、季乃季乃ラップ」

 

「音mad!著作権違反ですよ!かー!」

 

 内容があんまりであれば俺も対処するが、普通に面白いし、何より季乃へのリスペクトが感じられるから放っておいているまである。宣伝にもなるしな。

 

「腹立つのはコメント欄ですよ!アニメアイコン共め、私の事を玩具にしやがって!」

 

「変な事は書いてないしいいじゃないか。ファンが増えたってことで」

 

「『やっていることがク◯ちゃん』これのどこがファンなんですか!!」

 

「ぶふっ!!ごめん、普通に面白い」

 

「裏切りものめ!」

 

「ごめんって。落ち着け落ち着け」

 

 机を乗り越えて抗議してきた季乃の落ち着かせ、席へと戻す。それにしても中々の面白い反応をする人もいたもんだ。

 

『女版◯ロちゃんで草』

 

 その下にあったコメントに笑いを堪えながら、俺は口を開く。

 

「でもな、季乃。実はク◯ちゃんって凄いんだぜ?あれだけテレビの事を理解していて、自分を貫ける人って滅多にいないぞ」

 

「何のフォローですか!フォローになってないです!」

 

「季乃もそれだけ凄いって事だ」

 

「嬉しくない!」

 

 まぁ反応的に文句は言いたいけど、口で言っているほど嫌じゃないってのは何となくわかった。比率はこれ以上増やさないようにはするが、今後ともバラエティーの仕事も入れていこうとは思う。

 

「女版◯ロちゃんだけはほんと嫌です」

 

 ……らしい。バラエティーとはいえ、馬鹿にするような内容は今後とも入れないようにしよう。

 

 

「じゃあ次だ。面談とはちょっとずれるんだが、麻奈ちゃん…長瀬麻奈とは知り合いなんだよな?」

 

「ですです!歌を教わりました!」

 

「仲は良かったのか?」

 

「んーどうでしょうね?」

 

「えぇ……」

 

 てっきり仲が良いものだと思っていたがそうでもないのか?もしかして麻奈ちゃんすごく迷惑してたんじゃ……。

 

「あ、仲は悪いわけじゃないですよ!お互いに親密に話せてたと思います!ただ、仲がよかったかと聞かれると反応に困りますね。麻奈ちゃんとはちょっと性格が違いましたので」

 

 まぁ確かに。季乃と麻奈ちゃんとでは考え方が大いに違うのは理解できる。

 

「でも楽しくお話してましたよ!ここでは話せないあんな話やこんな話も聞きました」

 

 すげぇ気になる。アイドルとしての裏話だろうか。

 

「あ、ちなみに学校での話も聞きましたよ!学校に不審者が居て怖いんだよーって言ってました」

 

「嘘だよな?」

 

 季乃は黙って笑みを浮かべた。これは嘘だ。嘘に違いない。嘘じゃないと俺の心が持たない。

 

「安心してください!名前は伏せられてましたよ!」

 

「言っている時点でダメなんだよ」

 

 そっかー怖がられたのかー。まぁ麻奈ちゃんとの出会いは最悪だったしな。あのときに季乃と出会っていると考えれば納得はできる。うん。そうであってほしい。

 

その後にいい人だったって笑いながら話してましたけどね

 

「悪い、なんて?」

 

「なんでもないですよ!それよりもなんで麻奈ちゃんの事を聞いたんですか?」

 

「あぁそれは、季乃ってラジオや番組でも麻奈ちゃんから歌を教わったってことを明言しているよな?だから季乃自身が麻奈ちゃんのことをどう思っているかを聞いておきたかったんだ」

 

「なるほど、私が麻奈ちゃんを嫌いに思ってたら大変ですもんね!でも安心してください。私は麻奈ちゃんのことは大好きですよ。ラブです!愛です!」

 

「そっか。それを聞いて安心したよ」

 

 嘘を言っている風にも見えない。季乃が麻奈ちゃんのことを好きだと思っているのは本当の事みたいだ。だとすれば、マネージャーとしても季乃が収録で麻奈ちゃんの話をするのを止める必要はないな。

 

 

 

「……まぁ、こんな感じか」

 

 それからもがやがやしながら質問は続き、アンケートはとっくに埋まり、それ以外の内容も結構知ることができた。アンケートもとい面談の結果としては十分な出来だろう。

 

「やっと終わりですか……なんだか疲れちゃいました」

 

「話って意外と疲れるよな。俺も改めて思った」

 

 時間を見ると、丁度七時。暗くなる時間だから、季乃もそろそろ帰らせたほうがいいだろう。

 

「季乃、帰りはどうする?疲れたんならタクシー呼ぼうか?」

 

「うーん、慎二さんはまだ帰らないんですか?」

 

「俺はもう少し仕事して……というか、このアンケート結果を纏めてから帰る」

 

 書ききれてないこともあるし、話が頭に残っているうちに纏めたい。

 

「わかりました。それまで近くの喫茶店で待ってますので一緒に帰りましょう!」

 

「それは」

 

 季乃はアイドルだ。マネージャーとはいえ、男と一緒にいるのを見られるのは体裁がよろしくない。

 

 ……でも、まぁ今日くらいはいいかな。

 

「ちゃんと変装しておけよ」

 

「はーい」

 

 軽い返事を返した後、季乃は部屋を出ていこうとして、その直前でわずかに振り向いた。

 

 黄色の瞳を輝かせながら目尻を下げ、小悪魔気に微笑み、その柔らかな唇を開く。

 

「秘密の待ち合わせ……ですね」

 

「……そうだな」

 

「ふふ、待ってますよ。ずっと」

 

 意味深気に言葉を発すると、今度こそ季乃は部屋を出ていった。

 

 完全にいなくなったのを確認して、俺は息を吐く。

 

 ……不覚にも最後のはドキッとした。

 

 さすがはアイドルだなと季乃への評価を改めながら、俺も仕事場へと戻ろうとしていると。

 

 でも、もしずっと、季乃と一緒にいるのなら。

 

 ふと、脳裏にそんな言葉が浮かぶ。

 

「……それも悪くはないのかもな」

 

 少なくとも退屈することはなさそうだと、一人小さく笑みを浮かべる。

 

 僅かに残った甘い香りが、とても心地よいものに感じた。

 

 

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