星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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只のYU☆KI★NOとして

 

 YU☆KI★NO VS 夢野光 優勝候補であったⅢX、そしてBIG4であるサニーピースとLizNoirを破った私たちと、絶対的なトップアイドルである夢野光との激突はVenusグランプリ一番の激闘とされ、テレビやSNSとかでも大盛り上がりだった。

 

 その盛り上がりは会場に来ても同様で、舞台袖ですら観客のいまかいまかという期待の声が聞こえてくるようだった。

 

「YUKINOさん出番です。よろしくお願いします」

 

「はい」

 

 ライブステージは私も楽しみで、今日のために作り上げてきたあの曲でどれだけの反応を見ることができるのかを考えると、私も待ち遠しい。

 

 でも、その前にまずは、MCバトルの時間だ。

 

 季乃と目を合わせ、私たちはステージへと上がった。

 

 

 

「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」

 

 会場に上がるや否や、耳が痛くなるくらいの歓声が上がる。叫んでいるのか、悲鳴なのかわからないほどの声は、今までのVenusグランプリでも一番の歓声のように思える。

 

 私は彼らに手を振りステージに立つ。しばらくすると、またも大きな歓声が上がり、対面に彼女の姿が現れた。

 

 長く美しい金髪に太陽のような瞳。純白のドレスには無数の星座が煌めくように金色の意匠が輝く。

 

 私たちはお互いに目を合わせると、会場の進行に合わせて互いに口を開いた。

 

「準々決勝、リズノワ戦見てたよ。見事だったね」

 

「あ、その話しますか……」

 

「え?あ、だ、ダメだった?」

 

 リズノワ戦は別に問題ないのだが、問題があったのはその後だ。あの事件はすでに全国的に広まって、問題にまで発展した。記憶が新しいのもあり、ここにいる観客も未だ覚えている人が多いだろう。

 

 それを示すように観客からも苦笑いが聞こえてくる。まぁこの人のノンデリさは今に始まったことじゃない。気にしないでおこう。

 

「ありがとう。あの曲は私たちにとって、特に季乃にとって思い入れのある曲だからね。絶対に負けれなかった」

 

「うん、その想い伝わってたよ。季乃ちゃんのずっと傍に居たいって想いが溢れたライブだった」

 

「あの!恥ずかしいのでステージ上でそういうこと言わないでくださいよ!そういうところですよ!」

 

「え?こ、これもダメなの!?」

 

 この人デリカシーが無さすぎる。でもそういったところが、色んな人に愛されるところなのだろう。

 

「光さんは、随分と余裕そうだね。もしかして私たちとの戦いも余裕と思われてる?」

 

「そんなことないよ。YUKINOは侮れないと思っている。全力で精一杯を尽くさないと勝てないと相手だと思ってる」

 

 夢野さんはそう言って、真っすぐに私たちを見据えた。その瞳からは確かに警戒の色が見える。お兄ちゃんが何かしたんだなってことはすぐに検討がついたが、真っ向から戦えるのであれば言うことはない。

 

「だから、一つだけ聞かせて。YUKINOは何のためにトップアイドルを目指すの?」

 

 ……ステージ上だから、どう答えるべきか悩む。そんな私の逡巡を感じ取ったように、季乃が口を開いた。

 

「そんなの一つですよ!私たちがアイドルだからです!アイドルだからトップアイドルを目指すんです!」

 

「アイドルだから……えっとどういうこと?」

 

 夢野さんは季乃の言葉を反芻し、やがてよくわからなかったのか首をかしげた。会場中から再び苦笑いが零れる。

 

「なんでですか!?せっかく決まったと思ったのに!」

 

「まぁ季乃の言うことは時々おかしくなるから、わからなくても無理はないよ」

 

「誰がおかしくなるですか!」

 

「でも私はわかったよ。季乃の親友だから」

 

「えへへ」

 

「ちょろい」

 

「聞こえてますからね!」

 

 まぁフォローはこれくらいに真面目に話そう。

 

「私もアイドルだから、アイドルとしての輝きは理解しているつもりだよ。だから、その輝きは誰にも負けたくない。アイドルとして一番に輝いていたい。トップになりたい。こう言ったら伝わる?」

 

「うん、よくわかった」

 

 彼女はお礼の言葉とともに頭を下げると、人にだけ聞くのはフェアじゃないよね、と彼女自身も語り始めた。

 

「私は初めからトップアイドルを目指していたつもりはないんだ。ただライブが好きで誰にも負けないくらい好きで、気づいたらトップアイドルになってた」

 

「お話、終わちゃった」

 

「ここからだよ!」

 

 夢野さんは頬を膨らませ怒ってくる。さすがに冗談だ、軽く謝罪しておく。

 

「だから、どうしてトップアイドルを目指したいか、なんて考えたこともなかった。でも、トップアイドルになるとね。たくさんの子が私を見てああなりたいって夢を見てくれてたの。それを見ているとトップアイドルというものがどれだけ皆にとって大切か、今の立場がどれだけ特別なものかが見えてきた」

 

 彼女は想いを確かめるように瞳を閉じ、胸にそっと手を当てる。

 

「トップの立場を守り続ける事。きっと、これがトップアイドルの性なんだろうね。ずっとそこにあり続けないといけないという定めだよ。でもね、私はそれは苦じゃない。だってそれが何もなかった私に形を与えてくれたから。私にトップアイドルとしてのプライドを与えてくれたから」

 

 そう言って、夢野光は私たちに向けて手を差し出し、笑みを浮かべた。女神のような慈悲に溢れた笑みを。

 

「私は全てを包み込む夢の光。トップアイドルとして、あなたの挑戦受けて立ちましょう」

 

「あはっ」

 

 思わず笑みが溢れた。トップアイドルとしてのその余裕に、まるで神になったような在り方が面白くて、歓喜の笑みが浮かび上がる。

 

「じゃあ、私たちは――」

 

 季乃と目を合わせて頷く。答えは一つだ。

 

「御堂有希と」

 

「斎木季乃」

 

「「只のYU☆KI★NOとして、あなたに勝つ」」

 

 開場中に期待と興奮の歓声が上がる。

 

 面白い!最高に楽しい!

 

 これが、これでこそライブバトルだ!

 

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