Venusグランプリが閉幕を迎えた。アイドルたちがしのぎを削り合って生み出してきたグランプリがここに幕を閉じた。
今年のVenusグランプリの売り上げは決勝戦を含めずで例年の二倍以上、決勝戦を含めると三倍まで膨れ上がるだろうとのことだ。これはVenusグランプリが始まって以来の大盛況で、主催者からはとびっきりの感謝の言葉を貰った。でも、それも当然と思える。あそこまで楽しかったステージは、これまでに一度もなかったから。
ちなみに社長からもお褒めの言葉を受け、どうやら特別手当が出るらしい。やったぜ。
何に使おうかなぁ、そういや最近プライベートでライブ行けてないし、ライブ行って物販でぱーと使いたいなぁなんて考えていると、隣から声が掛かる。
「そういえば、お兄ちゃん。また泣いてたよね?」
「あ!私も見てましたよ!恥ずかしげもなくわんわん泣いてましたね!可愛かったです!」
「うるさいな、別にいいだろ。それだけよかったんだから」
くすくすと左右から笑い声が響く。相変わらず人を揶揄うのが好きな奴らだよ。全く。
Venusグランプリは先ほど終わったばかりだ。俺たちは、夜空の中で帰り道を歩いていた。
「あ、そういえば知っているか?YU☆KI★NOの二人が今なんて呼ばれているか」
「何?変な呼ばれ方してんの?」
「ヴィランですか?」
「なんでそうネガティブなんだよ」
まぁYUKINOは敵が多かったし、やってきたことを考えるとそういう印象になっていても仕方はないとは思う。でも、今はもう違うみたいだった。
「有希が舞姫、季乃が歌姫だってさ」
「えー?ほんとですかそれ?」
「評論家にそういう表現されて、トレンドにも乗ったらしい」
「うわ、ほんとだ。なんか柄じゃないね、こういうの」
「……ちょっと照れちゃいますね」
有希はあまりお気に召さなかったようでげんなりした表情を浮かべ、対照的に季乃は嬉しさを隠しきれず照れた様子で視線を外す。
その様子に思わず俺も笑みが浮かぶ。
「俺はいいと思うな。舞姫と歌姫。二人とも我儘だし姫という表現がそっくりだ」
「じゃあお兄ちゃんは……なんだろ、下僕?」
「下僕!焼きそばパン買ってこーい!」
「パシリじゃねぇか」
二人のお姫様の相手も大変だ。でも、それも悪くはないって思えるようになったのは、俺も二人と居続けてきたからだろうか。
妹である有希と、その友達の季乃。二人がアイドルを始めてからここにたどり着くまで、本当にあっという間だった。辛いことも悲しいこともたくさんあったけど、全て駆け抜けて、ぶっ壊してきた気がする。
でもそれは、それだけ二人が、型破りでせっかちで図々しくて、誰よりもアイドルであった証明だろう。
思えば俺が好きになったアイドルは、みんな我が強いアイドルだったように思える。俺がYU☆KI★NOを好きになったのも当然のことだったのかもしれない。
「有希、季乃」
「うん」
「はい!」
気だるげな赤い瞳に長い黒髪に癖毛を遊ばせた有希と、丸っこく黄色い瞳を携えたベージュ髪の季乃。それぞれの手首と首元にはそれぞれ星のアクセサリーが煌めく。
満足気な表情を浮かべた二人を視界に入れ、改めて声を掛ける。
「Venusグランプリ優勝おめでとう。これからもよろしくな」
「ありがと。こちらこそよろしく」
「末永くずっと一緒に居ましょうね!」
季乃が俺を右手を取り手を絡め、有希が俺の左手をそっと握りしめる。
道はまだまだ続く。これからも、今まで以上に辛いことや悲しい事はたくさんあるのだろう。でも、俺たちならどこまでだって行けるとそう思えた。
だって俺たちは三人揃ってこそ、YU☆KI★NOなのだから。
胸元の星のブローチが色を変える。
夜空に、三つの星がきらりと光り輝いた。
ここまで読んでくれたあなたへ
彼女たちの物語を見届けてくれて、ありがとうございました。
あとがきを活動報告に書いてます。