グランプリ二回戦は、一日に二つのライブバトルが続けて開幕する。
会場もさらに豪華なものに変わり、一つの会場で二組が同時に演奏できる特別ステージ。当然二組が同時にステージに立つことはないが、それでも見栄えが変わるとそれだけで特別感のあるステージに変わることは違いない。
最初の一回目のライブバトルはサニーピースの子たち。二回目が月のテンペスト対YU☆KI★NOだ。
……俺の活躍が功を奏したのか、マスコミが星見寮を日夜塞いでいたことはネットニュースにも、地上波にも流れ、さすがに分が悪くなったことを察したのかマスコミが訪ねてくることはなくなった。
事務所としてもさすがに問題だと判断したのか、星見寮からレッスンスタジオまでの直通バスを出してくれるようになり、彼女たちが練習できなくなるということは一切なくなった。
けれども、一度広まった噂というのは中々消えないもので、川咲さくらの心臓が長瀬麻奈のものだという話は瞬く間に広まり、二回戦が始まる頃にはまるで周知の事実かのように扱われていた。
そんな中始まったサニーピースの二回戦。そこでさくらちゃんから発せられた言葉は驚くべきものだった。
「今日は…歌う前に少しだけお話させてください」
そんな言葉から始まったのは、彼女が三年前まで生死の境をさまよっていたこと。
そしてそれを救ってくれたのは移植された心臓だということ。
――そしてその心臓が長瀬麻奈のものだということ。
俺も驚きが隠せなかったが、なぜだか不思議と安堵したかのような想いが胸に溢れた。
高校の同級生で、ずっと好きだった麻奈ちゃんの想いがちゃんと生き続けているような気がして、それが何よりうれしかった。
そこからの歌はきっと忘れることができないだろう。
song for you
長瀬麻奈が決勝で歌おうとしていたその歌は、忘れたふりをしていた麻奈ちゃんの姿を明確に映し出して、俺の目の前に現れた。
……彼女がこの歌を誰に送ろうとしていたのかはわからない。だけど、ライブが、アイドルというものが大好きだった彼女は、この曲を通して皆に感謝を伝えたかったんだと俺は感じた。
だけど同時に俺は……この曲が俺自身を語っているようで、歌の「あなた」が麻奈ちゃん自身を語っているようで。
涙が止まらなくなった。
歌が終わっても、会場は静かなままだった。
だけど、少し遅れて会場中から大きな拍手が巻き起こった。皆、長瀬麻奈というアイドルはどんな形であれ一度は目にしたことがあるはず、だとすると、この歌は皆に刺さる。
……本当に、全く、亡くなってもなお、皆を惹きつけるのはさすがだよ。麻奈ちゃんありがとうね。これからも麻奈ちゃんの遺志を継いだ皆を見守ってあげてくれ。
……相手のアイドルには悪いが二回戦の結果は見るまでもなかった。ライブバトルが終わった後、さくらちゃんは今後、麻奈ちゃんの歌声はやめて、自分の歌を歌っていくと宣言した。
……それがいい。きっと麻奈ちゃんもそう言うだろうよ。
むしろプライドの高い彼女ならば、自分の歌を勝手に歌われて怒っているまであるだろうな、なんて笑っていると、今度こそ彼女たちの出番は終わりみたいで、舞台袖に下がっていった。