星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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 しばらく原作沿いなのでスローペース。

 あ、展開に違いはあれど原作改変はする気ないのでご了承を。


不審者のお仕事

 星見プロダクションの所属アイドルは元より数が少ない。長瀬麻奈の死後はその影響もあってか遙子さん一人だったが、そこにサニーピースと月のテンペストを加えて十名になった。

 

 随分と人数も増え、運営管理も大変になったななんて思っていると、彼女らはなんと全員で同じ寮に暮らしているらしい。

 

 寮暮らしでアイドル活動を行う…というのは珍しいことではないが、まだ新人の彼女らが全員寮暮らしというのはそれだけ事務所としても売り出したいという気持ちの表れだろうか。

 

 ……まぁそれもそうか。だってあの長瀬麻奈の妹が所属しているんだから。

 

 世間的にはまだ広まってはいないが、名前、容姿、言動、そして彼女らの話を聞く限りではそうとしか思えない。SNSでもぽつぽつと話題は出ているようだ。

 

 後々マスコミも来るだろうな。……なるべく早く対策を立てておかねば。

 

 そんなことを考えながら俺は今日も双眼鏡を覗いていると、寮から誰かが出てくるのが目に入る。

 

 あの金髪のロングヘアは……一ノ瀬怜ちゃんだな。トレーニングウェアだし、早朝のランニングか。すごいな。

 

 明るくなってきたとはいえ、まだ太陽も登り切ってはない。早朝からご苦労様。頑張れ。

 

 怜ちゃんの走る先が見えるように俺も場所を移動して双眼鏡を覗きこむ。あの子、走っても全然息が切れてないよな。さすが高校生大会一位。体力お化けか。

 

 ……うん、障害になりそうなものや、危険物、問題になりそうな車は見えないな。今日も無事に走り切れそうだ。

 

 後は怪我しないことを祈りながら、走るのを見届ける。今日も大丈夫そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 太陽が上がってくると彼女たちは星見寮を出て、東京のレッスンスタジオへと向かう。駅までは徒歩かマネージャーの車で、向こうの駅からは徒歩で行くことになる。

 

 同じ電車に揺られ、東京へ。彼女たちがスタジオに入るのを確認してから俺は星見へと戻る。この時間から夕方までは彼女たちはレッスン中のため、俺もやれることはない。

 

 SNSでアイドルに関して情報収集しながら、俺は昼飯を作り始めた。

 

 ……今日はあいついないしなんでもいいか。

 

 うどんをゆで、めんつゆと水を加え、卵とねぎをのせる。月見うどん完成!なんて。

 

 ずずーとうどんを啜っていると、メッセージアプリに通知が入ってきた。いつも使っているSNSではなく、家族連絡用のアプリのほうだ。

 

『ごめん。仕事がまた忙しくなっちゃって今月も帰れそうにない。本当にごめんね』

 

 家族写真のアイコンからそう言葉が伸びている。母さん、いっつも忙しそうだよな。今はどこの国いるんだろ。

 

 ……俺の家族は母、俺、そしてあいつこと妹の三人暮らしだ。父は幼いころ他界し、それから母が女手一つで育ててきた。その頑張りのおかげで、俺もあいつもこのように健やかに暮らすことができている。

 

 そして俺たちが十分一人でも暮らせるようになったころ、母は仕事で他国に渡った。どうやら母はバリバリのキャリアウーマンらしく、同時にかなりのやり手らしい。育児が終わった母は引く手あまたで海外でずっと仕事続きだ。

 

 それでも隙を見て帰国し、俺たちと旅行に行ったりしてくれるから本当に家族思いなんだろうなって思う。本当にありがたい話だ。

 

『了解、こっちは元気で暮らしているよ。母さんも仕事続きで体調崩さないようにね』

 

 メッセージを返すとすぐに返信がくる。そんな心配せずとももう大人だよ。

 

 あいつからもメッセージが飛んでいるのが見え、アプリを閉じ、昼飯を再開する。

 

 ……まぁそんなにうまくはないな。卵入れない方がよかったかも。

 

 

 

 

 

 翌日、今日は星見プロダクション…星見プロのアイドルであるサニーピースの面々がスーパーでパフォーマンスをした後、客引きをするらしい。

 

 なぜか物見小屋に住んでいるマネージャーが彼女たちを案内している様を見ながら、俺は一人戦っていた。

 

 客引きという仕事ならば客との距離は必然と近くなる。ファンの俺としてはそれは見過ごせないイベントだが、客との距離が近いというのはそれだけ問題が起こる可能性も高くなる、ということだ。しかも、彼女たちのことを知らない人が近くによってくるといったことも発生し得、よからぬトラブルを巻き起こす可能性だってある。ならば俺は彼女たちには近寄らず、緊急のために備えておくべきじゃないか。

 

 いやでも客引きだぞ?彼女たちが有名になったら間違いなくこんなチャンスはないぞ?……せめてパフォーマンスだけでも正面で見て……でも告知もないし、そこで目を付けられるのも困るよな。

 

 あーもうどうしよう。

 

 路上で一人俺は戦い続け、そして指定の時間になった。

 

 ……今行ってもパフォーマンスには間に合わない。今日は諦めよう。ごめんね、サニピの皆。

 

 せめて遠くからでも、と双眼鏡を使いパフォーマンスを覗き続ける。あー直接見たかったーーー!!

 

 そんなことを悩んでいると、ライブは何事もなく終え、そして客引きは始まった。

 

 ……なんか怜ちゃんの様子がおかしいな?

 

 いつものきりっとした表情もどことなく不安げで、何かを心配している様子だ。何かあったのだろうか。

 

 話している相手は……スーパーのおばちゃんか。怜ちゃんと話して……え、ちょっと待ってどこ行くの?

 

 怜ちゃんは店員と話をしているかと思いきやどこかへ走り出した。え、もしかして何か起きた?

 

 ひやりとした考えが脳裏に浮かぶ、が、考えるのは後回しだ。今は彼女がどこへ向かうのか見なくては。てか、こっちに来てね?

 

 慌てて物陰に潜むと、彼女は近くまで来た後、唐突に立ち止まる。

 

「……何しているんだろ。私」

 

 どうやらどこかへ行くために走っていたわけではないようだ。彼女は少し思い悩むような音色で、声を浮かべた。

 

「……あ、服」

 

 呼び込みをしていたときの衣装のまま走り去ってきたから、怜ちゃんはまだステージ衣装のままだ。これでは目立つばかりだろう。

 

「とりあえず寮に戻ろうかな」

 

 俺はばれないように息をひそめ彼女の動向を見続ける。寮に帰ってくれるのであれば俺も安心だが…。

 

「……?」

 

 彼女の視線が俺の隠れている傍へと向く。もしかしてばれた?……まずい、なんて言い訳するか。

 

 しかし彼女は一瞬目を向けただけで、すぐさま去っていった。どうやら俺の存在に気が付いたわけではなかったようだ。

 

 その後無事に彼女は寮へと戻っていった。どうして抜けだしてきたのかは気になるが、彼女たちの悩みが理解できるほど俺も人の心はわからない。心は痛むが、頑張って乗り越えてほしい。

 

「……ん?」

 

 わずかに視線を感じた気がした。しかし周りを見ても誰かがいるような気配はない。……気のせいか。

 

 他のサニーピースの面々も無事に客引きを終え、撤収作業に映っている。すごいな、さくらちゃん。ずっと笑顔だぞあの子、プロだ…雫ちゃんと千紗ちゃんはちょっと疲れが見えるかな。まぁ慣れない仕事だしなしょうがないさ。あ、遙子さんだ。綺麗だよー!

 

 影ながら撤収作業を見届け、彼女たちが戻ったのを見届けて、俺も帰路につく。ライブもだけど、こういったイベントで見える仕草も素敵だよな。

 

 ブログに書けないことを悔やみながらも、俺は彼女らのことを思いながら家へと帰った。

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