俺がバンプロに入社して少し経つ。
俺は想定通りというべきか、先輩マネージャーの下につき、そのマネージャーの補佐として、しばらくアイドルたちの仕事のバックアップをしていた。
一意にマネージャーといっても、その仕事は会社によって様々だし、業務も幅広く行う必要がある。
例えばわかりやすいところでは、アイドルたちの仕事を取ってくることだろうか。各地に名前を売りに行ったり、コネを作ってイベントに呼んでもらえるようにしたり、まぁ営業関係だな。
そこで貰った仕事を、先方と話し合いながら準備をまとめ、アイドルたちがそこまでたどり着けるまでの移動手段や、レッスン等の手配を行う。そこまでして俺の仕事は終了…と思いきや、仕事が終わった後の跡片付けや、今後への営業。ようやく事務所に戻れば、報告書をまとめたりととにかく仕事量が多い。
今はまだ先輩のサポートという形でしか参加していないから、俺が主体となって何かをしたことはなかったが、それでもめちゃくちゃ大変だというのを身に染みて感じた。
ただ、それでも俺がやり遂げた仕事で、アイドルたちがキラキラと輝いているのを見ると、俺も嬉しい気持ちになる。マネージャーのやりがいというのはこういうことなんだろう。
そんなこんなで、今日も先輩の仕事の支援をしようと資料を読み込んでいると、突然先輩から声がかかった。
「YUKINOの子たちの仕事取ってこないか?」
俺としてはこれ以上ない気合の入る仕事だ。俺は二つ返事でその仕事を了承した。
YU☆KI★NOのマネージャーは現状いない。正確には俺が補佐をしていた先輩マネージャーが彼女らのマネージャーなんだが、彼は臨時で入っているだけで正式なマネージャーではない。
じゃあ仕事はどうしているのかというと、彼女らに関して言えば、NextVenusグランプリでの活躍もあってこっちで何かをしなくても仕事は勝手に入ってくる。とはいえ、それまでの業務は大変だが、営業までが省かれるのはかなり大きい。
だがここに来て問題となっているのは、彼女たちがNextVenusグランプリから活動を始めたという特殊なアイドルの経歴。NextVenusグランプリの影響で名前は売れたが、あくまで売れたのは彼女たちのパフォーマンスのみ。他に関しての営業が全くできていないこともあり、仕事の偏り方がすごかった。
季乃曰く、ずっと撮影ばっかです!とのこと。有希としてもフラストレーションが溜まってきているみたいで、家での毒舌もいつもよりひどくなっている。
さすがに会社としてもそれは問題。ということで、手が空いている俺に仕事が回ってきたとのことだ。
……バンプロの人手不足が気になったが、それは今考える事じゃない。今はどうすればよりYU☆KI★NOの二人が輝けるか考えることが優先だ。
まずわかりやすいのが季乃だ。彼女はどこに出しても恥ずかしくない腹黒…というのは冗談で、人心掌握と会話の流れを理解していることから人と接するイベントごとには滅法強い。が、彼女自身性格の問題があり、場を破壊する可能性もあるから注意が必要になる。
有希はあぁ見えて意外と真面目だから、どんな仕事を任せても最低限はしっかりしてくるだろう。コミュ力と場の認識力は高く、変に棘をもって接することはないし、必要となったら自分が場を回すこともできる。逆に向いていないのは……バラエティーくらいか?感情をあまり表に出さないからレポート系も難しいか。
……こう見てみると見事に真逆だな。ここまで違う性格だと、この二人に何かをやらせるというより、ラジオみたいに主体となって動く方が向いているのかもしれない。
とはいえ、いきなりの営業でラジオMCの仕事取ってくるのはさすがに無理がある。
……営業って難しいな。
「で、結局イベントでライブやることになったの?」
「……悪い。俺の無能さを笑ってくれ」
結局色々と考えた結果、一番無難なところに落ち着いた。やり切れた達成感はあれど、最低限のことしかできなかった自分が我ながら悲しくなってくる。
「……まぁでも、こうやって地道にファン増やしていくことも大事じゃない?」
「雑誌とかで知名度は上がりましたけど、まだまだ私たちのことを知ってくれる人は少ないですからね!まずはライブで、というのもありだと思いますよ!」
二人のフォローが身に染みる。ダメなマネージャーで悪い。本当は俺が二人を励まさないといけない立場なんだけど。
……落ち込んでいる場合じゃないな。
「有希、季乃……楽しんで来いよ」
「うん」
「やったりましょー!」
二人はいつも通り、舞台袖からステージへと向かう。その背中を頼もしく思いながら、俺は舞台袖から彼女たちのステージを見続けた。
甘く透き通るような季乃の歌声と、有希の圧倒的なダンスパフォーマンス。会場も二人のライブに一層盛り上がっている。
さすが、だな。
二人のパフォーマンスを見ていると、俺は改めてマネージャーとしての仕事を頑張ろうと、そう思えた。