星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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バンプロダクションの噂

 あれからまた時は経つ。数ヵ月の研修を終え、兼ねての要望だったYU☆KI★NOのマネージャーとなってからしばらく。

 

 多少は板についてきたマネージャー業務も頑張ってこなしながら、俺は社内で情報を集めていた。

 

 集めるのは、主にバンプロでの黒い噂について。

 

 以前からバンプロは他所の新人アイドルを引き抜いたり、他の事務所のアイドルを蹴落とすためにスキャンダルを引き起こしているんじゃないか、という根もふたもない噂が流れていたのは知っている。

 

 だが、所詮はネットの噂に過ぎない。誰かの主観を除いた真っ当な事実のみを知りたくて、俺は業務の傍ら、会社のことをもっと知る振りをして色々と調べていた。

 

 そしてわかったことがある。

 

 例えば噂であった、新人アイドルの引き抜き。これは事実だ。

 

 先輩マネージャー曰く、以前LizNoirが活動休止したときに、新しいLizNoirのために他所から引き抜いたことがあったらしい。結局、その話はなかったことになったらしいが。

 

 スキャンダル、これに関しては事務所の記録に残っているわけもなく、俺が調べることはできなかった。でも、ある一部の人間がこれらをやろうとしていた、という噂は内部で広がっていた。

 

 同時に社長について調べてみたが、あの人LizNoirをアメリカに行かせたり、突然新メンバーを加えたりと突拍子もないことをしているように思えるが、実際のところそれらはアイドルたちのことを思っての行動だった。調べれば調べるほど、冷酷で不器用ではあるが、真っ当な手段で会社を運営しているように思える。

 

 となると、問題はそこではない。スキャンダルを企てようとしていた人間を探すべきだと思い、そこを軸として探していると、ある一人の人物にたどり着いた。

 

 姫野霧子。

 

 LizNoirの元マネージャーで、各地から色んな仕事を取ってくるやり手のマネージャーだったそうだ。

 

 しかし彼女はアイドルたちのために仕事しているというより、会社からの自分への評価のために仕事しているというのは、現場のアイドルたちの評判からよくわかった。

 

 そこまでならば別に許容範囲なのだが、新人アイドルを引き抜いた件や数々の他事務所への妨害行為等、それらの責任者をたどっていくと、全て彼女の名前に当たった。

 

 ……黒、と断ずるにはまだ俺はその人物を知らない。どんな人物なのか話を聞きにいこうとしてみたんだが、どうやら彼女は出張でしばらく会社にいないらしい。

 

 こうなったら俺も追う伝手はないし、止むを為しに事務所内で彼女の噂を嗅ぎまわってみたんだが。

 

「やめといたほうがいい。YUKINOの前のマネージャーが辞めさせられたのも姫野さん関係だから」

 

 先輩マネージャー曰く、彼女は目的のためなら何でもする人、らしい。そしてそれを邪魔する人は容赦なく排除することができる人だとも。

 

 ……厄介極まりないが、それでも彼女は今はいないということならば、そこまで影響ないんじゃないかって思ったんだが、話はそう簡単じゃないらしい。

 

 事務所内の邪魔者の排除を筆頭に、内部の配属の組み換え、表向き正当でいて確かに有用な判断だったが、それでも見る人が見れば彼女が組織の中で優位に立てる位置に着くことができ、それでいて邪魔な相手を隅に追いやることができる配置。

 

 おかげで毎日ハードワークだよ、と目にクマを残したまま苦笑いしていた先輩の表情が印象的だった。

 

 ……つまるところ、だ。季乃が感じ取っていた事務所への違和感は姫野が由来のもの。そして彼女の悪意はまだどこかに残っている可能性がある。

 

 姫野の目的は不明。だけど、わざわざこういった工作をしてきている以上、バンプロを我がものにしようとしている可能性が十分にある。

 

 ……まとめるとこんな感じだろうか。そこで俺がどう行動すべきか、なのだが、俺の目的がYUKINOがアイドルとして真っ当に輝かせることだから、まず前提として彼女たちを巻き込ませない。

 

 しかし、事務所自体がごたごたに巻き込まれるなら確実に彼女たちに影響が出る。ならば、事務所自体の立て直しと、その悪意とやらへの対処が必要。

 

 ……うん、こんな感じだろうか。追加で、もしものときのために、バンプロのスタッフが動けなくてもアイドル活動に支障が出ないような準備もしておいた方がいいな。

 

 やることはまとまった。時間を見ると、昼休憩も終わりの時間が迫っていたため、急いで食器を片付け、席へと戻る。

 

 これからが勝負だ。頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、TRINITYAiLEが退所した。時はすでに遅かったのだとようやく気付いた。

 

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