TRINITYAiLEは結成から時が浅いにも関わらず、知名度はすでに新人アイドルの中では抜きん出ている。その理由は、デビューからのライブバトルの成績によるものが大きい。
デビューから負けなしだった彼女らは、あの長瀬麻奈の無敗記録にも迫るもので、次世代のエースとしてNextVenusグランプリにも優勝候補として取り上げられていたほど。
個々の人柄もよく、全員が節度を守って、真っ当な手段でプロのアイドルをやっている。グループとしても、アイドルとしても一流の彼女らが、本日付でバンプロダクションを辞めることになったと聞いて、俺は思わず社長室に飛び込んでいた。
……結局、社長は不在で会えることはなかったが。
ともかく、これは一大事だ。本日分の仕事を急いで終わらせると、俺は退所の理由を聞き出そうと事務所の至る人に聞いてみた。
が、結果は惨敗。そもそも俺と同じように初めて知った人が多かったし、人事はある程度の理由は知っているらしいが、口を開いてくれない。
……こうなったら仕方ないと、現場のアイドルたちに彼女たちの退所について知っていることはないか聞いてみることにした。
「うーん、私が話しかけると優ちゃんからガードが入るんで実はしっかりと話せたことがないんですよねー。ということで知りません!」
「ってか、他の子たちも知らなかったんでしょ?それを私たちが知っているわけないじゃん」
「だよなぁ……」
話を聞きに回ったが、結局知っている人はいなかった。直接聞くのがベストなんだが、彼女たちの居場所わからないからそれも厳しいか。……いや、連絡先くらいは誰かが知っているんじゃないか?
「というかさ、別にトリエルが退所しようが問題なくない?彼女たちが決めたことなんじゃないの?」
「そうですよ!ストーカーはダメですよ!もう一度言いますよ、ストーカーはダメですよ!」
「ストーカーじゃねぇよ」
……確かに有希の言う通り、トリエルが決めたことならば俺が口を出すことも調べる意味もない。丁度、黒い噂を調べている途中での出来事だったから、思考が良くない方向に持っていかれていたかもな。
「……わかった。この件はとりあえずこれ以上調べるのはやめにしておく。彼女たちほど有名ならば、自分たちの口から説明するだろうしな」
「うんうん、それがいいです!巻き込まれるのはごめんですしねー」
「お前な……」
季乃は相変わらずだが、いつも通りということはこれといった出来事に巻き込まれていない証拠ともいえる。彼女たちには少なくとも今は何も起きていないようでよかった。
「……ちなみに何か見つかったの?」
「何が?」
「事務所のこと。こそこそ調べてたんでしょ?」
「不審者は健在ですね!いずれ捕まりますよ?」
「なんで知っているのかは疑問なんだが……まぁそれなりにはな。言わないからな」
「別に聞きたくないし」
「姫野さんですよねー。あの人は真っ黒ですよ。早めに対処しましょう!」
「だからなんで知ってんだよ」
「あ、正解なんですねー。あの人の悪評はバンプロのアイドル間で有名な話なので!」
……カマかけられたか。話す気はなかったんだけど。
「……まぁこっちの事情だから気にするな。お前らはアイドルとして頑張れ」
「頑張りたいんだけど、マネージャーが仕事ほっぽりだして、他のアイドルに目を掛ける人じゃ、ね」
「うっ……」
「おかげさまで私の仕事はどんどんなくなって、いずれは途方に暮れる毎日に……とほほ」
「仕事は減ってはないだろ。……まぁ増えてもないから、俺も頑張る。まじで」
「そうしたら?」
「私たちのことお願いしますね!」
……確かに今はトリエルだけを目にかける時期ではないな。YUKINOのことも本腰を入れて管理する必要もある。とはいえ、トリエルの事情がもし姫野関係だとすると、YUKINOへの影響も考えられる。こっちもこっちで空いた時間に調べる必要がありそうだ。
……睡眠時間削るか。
「……」
「……有希?どうかしたか?」
「ううん、なんでも」
「さぁレッスンの時間です!今日はDayDreamの子たちと遊んできます!」
「遊ぶな。レッスンしろ」