ネット番組にサニーピースの面々が出ることになった。
調べてみると、各事務所ごとに一グループアイドルを選出させ競い合わせるクイズ番組らしい。
人気番組というわけではなかったが、細々とながらも長年続いている番組で、業界ではそこそこ知名度がある。特にアイドル活動歴が少ない人や新人が出ることが多いため、新人発掘としても期待されている側面があるみたいだ。
彼女たちが無事にアイドルとしての道を踏み出していることに安心した俺は、パンをかじりながら出かける準備をする。
今日はデビューライブの時も使ったあの野外ステージでトークイベントがある。サニーピースの初のトークイベントだ。楽しみ。
……あぁ忘れるとこだった。
「昼過ぎまで出かけるから昼は適当に余り物食べとけよー。外食するならレシート持って帰ってこい」
「……ぁい」
一応寝ぼけたような返事が聞こえたから大丈夫だろう。休みの日だからってのんびりしすぎだ。
朝日を浴びながら俺は外に出る。目指すは一番席だ。
「それじゃ次は……雫ちゃんに質問、いいかな?」
トークイベントは無事開幕し、進行も何事もなく進んでいた。
俺は一番席で彼女たちの言動を余すとこなく堪能しながら、同時に彼女たちの受け答えをメモにまとめる。こういったプロフィール欄にも記載されていない情報は貴重だ。
「雫ちゃん、頑張ってっ」
「いつも通りでいいんだからねっ」
おー仲良しだ。グループ同士で仲がいいっていいよな。見ていて安心する。
「それじゃあ…ずばり、アイドルを目指した理由は?」
「……好き、だから」
「ふむふむ、好きだから……えっと、他にはありますか?」
「……憧れ?」
「どういうところに憧れていました?」
「…………キラキラしているとこ?」
あー、すごい無口だ。端的な回答でわかりやすいし、これも雫ちゃんの個性で魅力的だが、トークイベントとして考えると…って感じだな。まぁでも俺もこういった一問一答みたいな会話は苦手だし、正直気持ちはわかる。頑張れ。
「なるほどー、ありがとうございます!それじゃあ次は、千紗ちゃんに聞きたいんですが」
「――ひゃい!?」
可愛い。思わず口角のゆるみが止まらなくなり、必死に隠し、顔を整える。こういうときはあいつの顔を思い出すと冷静になれる。思い出しすぎると腹が立ってくるけど。
「アイドルを目指した理由から教えてもらえますか?」
「あの、その……お、お姉……ん…が……」
可愛い。すごく応援したくなる。頑張れ、頑張れ。
「マ、マイクが遠いかなぁ…もう一度お願いできます?」
「す、すす、すみません!その、お、お姉ちゃんが――」
キーン!
千紗ちゃんの声量とマイクの音量を同時に上げたのがよくなかったのだろう。スピーカーから甲高い音が流れる。
ほほえましい失敗だ。ただ、トークはまだまだって感じだろうな。今後テレビ出演とかあるだろうし、少しずつ練習かな。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だよ、千紗ちゃん。気にしない、気にしない!」
「そうよ。きっとMCさんならトラブルもいい感じに回してくれるから……ね?」
いいフォローだ。遙子さんはさすがだな。よ、NEW WIND!
数日後、どうやらエンタメ雑誌にサニーピースの特集が組まれたらしい。いくつかの書店を周りようやく手にした俺は、開くのを楽しみにしながら家へと帰る。
……あぁ待った。このまま家に帰るとまたあいつに何か言われるな。部屋に戻るまでは普通にしておこう。
「ただいま」
「うわ」
家のドアを開けると目の前にあいつの姿があった。うわ、はこっちの台詞だ。
「……夜までには帰って来いよ」
「言われなくてもわかってるし」
あいつが出ていくのを見届けてから部屋へと戻り、買ってきた雑誌を開く。
サニーピースの特集ページは……あった。
見開きのページがサニーピースのイメージカラーであるオレンジに染まっている。そこには各自の写真とコメントが記載されていた。
皆、いい笑顔で……笑顔…か?
さくらちゃん、怜ちゃん、遙子さんと見て、雫ちゃんの真顔が目に入る。いや、わずかに表情筋動いているし、ポーズ取っているから真顔ではないんだろうけど。
千紗ちゃんは…ちょっと緊張が見えるな。カメラの後ろでサニーピースの面々が応援しているのが目に浮かぶようだ。
コメントも皆しっかりしていてキラキラしている。いいなぁこれスクラップにしておこうかな。