「~~♪~~~~~♪」
「~~♪」
「そこまで!……二人ともしっかり踊れていましたよ。今のは言う事なしです」
「でしょう?私も今のは会心の出来だと思ったんですよねー!」
「はい、最初のころから比べると、季乃さんもかなり上手になりましたね」
「最初のころはすぐ転けてたもんね」
「転けてないです!バランス崩しただけです!」
「有希さんもよかったですよ!今までのダンスとは違った形で、とても魅力的でした!」
「ありがと、おかげさまでね」
STROBOLIGHTSとの合同練習は今日で最後、今日はその集大成として二人で課題曲を最後まで踊りきったのだが、ここに来てようやく及第点をもらえた。
ダンスだけならすでに及第点はもらえていたのだが、ライブはダンスだけでなく歌も十分なレベルに達する必要がある。
それを見越しての実践形式での練習だったのだが、ここに来てようやく身になったみたいだ。
「カコさん、マコさん、今回は本当にありがとうございました。二人とも力になったと思います」
「いえ、私たちはただできることをやっただけですので」
「それに、二人の練習を見ていると私たちも刺激受けちゃってね…立ち止まってなんていられないね!」
STROBOLIGHTSは元BIG4の一員。スリクスに負けてからBIG4の座を明け渡すことになり、それから思うように調子が出せず低迷し続けることになっていた。
彼女らのマネージャーに話を通したときも、彼女らの調子を取り戻すきっかけになれば、といったことだったから、少しでも力になれたなら嬉しく思う。
だけど……さすがにちょっともらいすぎか。
「お二方とも、このあと少しだけお時間いいですか?二人に見てもらいたいものがあって」
「うん、いいよ」
「何かな?」
二人の了承が取れたところで、俺はYUKINOの元へと向かう。
「……新曲、彼女たちに見せてあげてくれないか?」
「……あれを?I-UNITYで初めてお披露目するんじゃなかったの?」
「お披露目はI-UNITYだ。だけど――」
「――ストロボの二人はI-UNITYに参加していないから見せても問題ないってことですよね?私はいいと思いますよ!ついでなので感想もらいましょう!」
「有希はどうだ?」
「……はぁ、どうせ私が断ってもやるつもりなんでしょ。ま、影響出ないならいいんじゃない」
「じゃあ、決まりだな」
俺は二人に準備するように伝えると、ストロボの二人へ声をかけた。
「今までのお礼に一曲披露させていただきます。お二方だけのライブ、楽しんでいってください」
「えー!いいの?ありがとー!」
「ありがとうございます。ぜひとも楽しませていただきますね」
「わー!すごい!すごいよ!」
「ほんとにすごい……。驚いた……」
「はは、先に言っておきます。申し訳ございませんでした」
「あはは、いいのいいの。こんな業界だからそういうことにはなれているから。だけど、他と比べてもかなりレベルが高かった……あの時の私たちでも勝てるか怪しいくらいだね」
「……これはうかうかしてられないね。カコ」
「うん、私たちも負けないように頑張ろうね!マコ!」
二人はそんな言葉を口にすると、俺たちに向かって頭を下げ、レッスン室を後にした。
文句ひとつ言わず受け入れてくれる。本当にいい子たちだよな。ぜひとも再び舞い上がってYU☆KI★NOたちとBIG4の座を争ってほしい。
「それで実際お兄ちゃんの目から見てどうだった?」
「……荒削りなところはある。だけど、それを含めても素晴らしいパフォーマンスだし、何よりあの二人の反応が全てだ。初めて見たときの衝撃はとんでもない」
「つまり勝てそう?」
「勝負は時の運。勝てるかどうかは俺にはわからないが、確率としてぐんと上がった」
「へぇ、つまりまだまだなんだ」
「そこまで言ってないけど……」
有希の瞳はしっかりと俺を映しており、俺が言外にぼかした、現状では勝てるかもしれないが、負ける可能性の方が大きいという言葉を見透かしているようだ。まぁ今までずっと一緒に生きてきたんだからさすがにわかるか。
「……そうだな。素人意見にはなるが一つだけアドバイスをさせてもらうと、曲調などを考慮して有希はもっとサビでの自己表現を強くしたほうがいい。今だと正直負けてる」
「……なるほどね。でも自己表現ってどうするの?ダンスはいいんでしょ?」
「そうだな……こういうのは季乃が得意なんじゃないか?って季乃?さっきからやけに静かだと思ったらスマホ見て何してんだ?」
「うん?あぁすみません、ちょっと麻奈ちゃんの動画見てました。それで何ですか?婚約の日程決めですか?」
「なんでだよ。サビで有希がもっと自己表現するにはどうすればいいかって話だ」
「んー、難しい話ですね。自己表現とはいっても、自己ってのは無意識的に出ちゃっているもんなんですよ。でも有希ちゃんって基本的に感情無いじゃないですか」
「馬鹿にされてる?」
「いえいえ、そういうわけじゃなく、これが単に自分を出すのが苦手で自己表現ができていないのであれば話は早いんですが、有希ちゃんのライブ中の感情ってあえて無心にしてパフォーマンスに集中してますよね?」
「そうなのか?」
「……否定はしないけど」
「有希ちゃんらしくて私は好きですよ!でもそうなると感情が出なくなっちゃって結果的に自己表現が足りていないって評価になるんですよね。困ったものですね」
「……つまり、なんだ、ライブ中に感情を出させることをすればいいってことか?」
「いいアイデアですね!慎二さんが最前列でずっと変顔しておきましょう!きっと感情が漏れ出してきますよ!」
「たぶんそれ殺意じゃねぇかな……」
だけど季乃の言っていることは理解できた。なぜ意図的に無心にしているのかはわからないが、要は何らかの形で有希がライブ中に感情を剥き出しにできればいいのか。
「有希、どうしたらいいと思う」
「それ私に聞く?」
「だって理由もわかんねぇんじゃ考えようもないしな」
有希はそれを聞いて長いため息を漏らした後、気怠げに口を開いた。
「まぁ、心が揺さぶられる出来事でもあれば、否が応でも感情が出るんじゃない」