星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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知っている

 ようやく待ちに待ったクイズ番組が始まった。

 

 ネット回線も念入りに確認し、もしトラブルが起きた時のためのテザリングも準備できている。あいつがいないことも確認済みだし、これでよっぽどの外部的障害がない限りさえぎられることはないだろう。

 

 配信がアーカイブ化されるかもわからなかったので、録画アプリも機動済み。完璧な布陣だ。

 

 番組は司会者の挨拶から始まり、それぞれのアイドルの自己紹介後、クイズへ移る。サニーピースを代表して出ているのは…雫ちゃんだな。……大丈夫かな?いや、俺が信じなくてどうする。頑張れ。

 

「……兵藤…雫…好きなものはアイドル…です。……よろしく…お願いします」

 

 ……うん、悪くないんじゃないか?これはこれで目立つ。初見の人に知ってもらうためのアピールにはなるな。

 

 その後アイドルの自己紹介も終わり、クイズへと入った。クイズはアイドルに関する知識を競うためのクイズで、聞いてるだけでもわりと勉強になる内容だ。

 

 それにしても……。

 

「雫ちゃん……正解です!またも問題を待たずに正解しました!これは強敵だぞ!」

 

 すげぇ独走だ。俺だって何問かわからない問題があったぞ。もしやこの子は生粋のアイドルオタクじゃないか?

 

 ブイサインをしている雫ちゃんは可愛らしいが、その知識量は並大抵のものではない。俺もまだまだだな。

 

 その後も首位を独走し続け、クイズは終了。圧倒的な大差で勝利した雫ちゃんは、勝者インタビューを受けていた。

 

「サニーピースの兵藤雫ちゃん!他を寄せ付けない圧倒的な勝利でした!ずばり感想は?」

 

「……アイドルの、知識なら…だれにも負けない」

 

 あ……笑顔だ。雑誌の時から練習したのかな。すごいなぁこんな短期間で成長したのか……。

 

 子を見る親のような気持ちで雫ちゃんの成長を喜んでいると、司会者からの質問も進み、そして番組の終了時間に近づいてきた。

 

「いやーそれにしてもサニーピースの兵藤雫ちゃんすごかったですね!私も長い間この番組でMC務めさせていただいてますけども、初めての経験でした。……では本日はここまで!また次の機会お会いしましょう。さようならー」

 

「「「「さようなら!」」」」

 

 司会者の言葉と共にアイドルたちが声を合わせる。そこでネット放送も終わった。

 

 アイドルの成長が見れるのはうれしいよな。見ててよかったわ。

 

 録画も停止させると、熱が冷めないうちに感想をまとめる。エンタメ雑誌の件も取り上げてその成長を伝えられるように慎重に言葉を選ぶ。

 

「……こんなもんかな」

 

 ブログを更新させると、パソコンを落とし、リビングへと向かう。夕飯までは時間はあるが、何作るかだけ考えておこう。

 

「ん?」

 

 リビングへと向かうと見覚えのある影がソファーで寝ていた。あれ、こいつ番組始まる前はいなかったよな?見ているときに帰ってきてたのか。

 

「……すぅ……すぅ……」

 

 いつもの口うるささはなりを潜め、穏やかな表情で気持ちよさそうに眠っている。顔立ちは整っているし、黙っていればこいつも可愛いんだよな。性格が終わっているけど。

 

 風邪を惹かれても困るので毛布をかけ、俺は冷蔵庫を漁る。そういやいつぞや買った豚肉があるな。肉じゃが作るか。後は適当に野菜炒めたやつと、味噌汁かな。

 

 下処理まで済ませておこうと、野菜やらなんやらを切っていると、後ろからもぞもぞと毛布がこすれる音が聞こえてきた。

 

「寝るときは部屋で寝ろよー」

 

「……ぅるさい」

 

 なんやこいつ。とはいえ、俺は今気分がいいから許してやろう。感謝するんだな。

 

「夜ごはん何?」

 

「肉じゃが」

 

「そう」

 

 妹は気だるそうに毛布にくるまると、瞳を閉じ、また寝ようとしていた。……ここで起こしてもまた文句言われるだけだろう。ちょっと早いがもう飯作って、無理やり起こすか。

 

 

 

 

 

「……味が濃い」

 

「うるさいな」

 

 お互い軽口を言い合いながら俺たちはご飯を食べ進める。

 

 ……母が仕事で海外に行ってから、俺とこいつで二人暮らしするわけになって、どっちが言い出したかいくつか決まり事を設けることになった。

 

 当時から喧嘩ばかりしていたからその抑制のため、っていうのもあるんだが、やっぱり一番身近にいる家族なのだ。お互いに支え合って生きていく必要があった。

 

 そのうちの一つが、夕食はなるべく一緒の席で食べる。母がいるときにやっていたことを俺たち二人でも継続させようってことだ。

 

 じゃないとおそらくお互いに話す機会もなくなるだろうし、悪くはないんじゃないかなって思う。

 

「そういやさ」

 

「ん?」

 

 とはいえ、一緒の席でご飯を食べたとして会話が生まれるわけでもない。いつものように無言で食べ進めていると、突然妹から声が掛かった。

 

「最近、朝早くから出かけているよね?どこ行っているの?」

 

 ……星見寮のアイドルたちを見守っている、とは口が裂けても言えないな。俺がアイドルを推しているというのはこいつも知っているし、その活動の一環ということにしておくか。

 

「アイドルの推し事ってやつだよ」

 

「へぇー気持ち悪いね」

 

 なんやこいつ。という怒りは抑えながらも、ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

 

「そういやなんで急にそんなことを聞くんだ?今まで興味なかっただろ」

 

「別に、なんとなく。なんか最近変なことやってんなーって思ってたから」

 

 ……変なことやっていたか俺?バレているってわけではなさそうだが、不自然な挙動を見せたつもりはない。何が気になったんだ?

 

「そんな気にしなくても詮索する気ないから。興味ないし」

 

 そうやってさらっと人の心読んでくるのが怖いんだよ。なんでわかるんだよ。

 

 

 

 

 

 その後は特に話題もなく、無言でご飯を食べ終えた。今日の洗い物当番は俺のため洗い場へと向かっていると、背後から声がかかった。

 

「あ、そうだ。東京行っているんだったらお土産買ってきてよ。甘い洋菓子がいいかな」

 

 ……まじでなんで知っているんだよ。

 

 

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