二人に散々怒られた後、俺はすぐに精密検査に移された。
結果はすぐには出ないらしいが、医師たちの反応から、大きな異常は見当たらなかったもとと思われる。
その後すぐさまやってきた母からはひとしきり心配された後、こっぴどく怒られた。
「慎二が倒れてどうするの!?また有希を一人残す気?」
……俺が家出した時も有希を一人残すという言葉は言われた。その言葉に俺はあのときの言葉を忘れていたことに気が付いた。
俺の命は俺だけのものじゃない。有希を支えていかないといけないのだ。
「ごめん」
「……次同じことをしたら私も家に帰ってきます。約束だからね」
「うん」
母の仕事での活躍は俺も尊敬している。だからこそ、仕事を辞めるとも取れるその言葉は何よりも胸に刺さった。
「……有希にもちゃんと謝っておきなさい」
「うん、今度立派なケーキ持って謝る」
「ふふ、それでよろしい」
母はそれで俺の気持ちが伝わったようで、笑みを浮かべ俺の頭を撫でた。
「もう無理しちゃだめよ。私じゃなくても、有希にでも、季乃ちゃんにでも相談してあげなさい」
「わかった。……ってあれ?季乃のこと知ってんの?」
「そりゃね。将来の息子のお嫁さん候補ですから」
「そんなんじゃないって」
頭をなでられていた手が中指の骨を立てたドリルに変わる。痛いから止めてくれ。
「……鈍さはお父さん似なのね。これは骨が折れるわ」
「もう骨は折れているけど」
「やかましい」
母は俺にチョップした後、俺から離れた。
「ちょっとこっちで仕事が入ってね。私ももうしばらく日本にいる予定よ。何かあればすぐ飛んでこれるから、すぐ連絡ちょうだいね」
「わかった。ありがとう」
「……傍にいられなくてごめんね」
「大丈夫。俺ももう子供じゃないんだから」
「じゃあもうちょっとしっかりしなさい」
それはそうだ。
精密検査の結果、特にこれといった異常はなかったものの、依然として骨が折れているためしばらく入院することになった。
結果が出た後、仕事に行った母とは別れ、俺は関係者各所に電話を入れた。
骨は折れたが無事だということ、でもしばらく入院が必要だということ。牧野にはかなり心配されたのが申し訳なく思った。そっちはそっちで大変だろうにな。
入院中、有希と季乃にはI-UNITYであったことについて話をしてもらった。
スリクスに喧嘩を売ったこと、表向きの態度じゃなく本当のYUKINOの姿でステージに立ったこと、あの曲StarImitationを歌ったこと。そしてスリクスに負けたこと。
負けたのは残念だ。だけど、二人の言動に精神的な重圧は感じない。彼女たちなりに糧にしてくれたのならば、それで十分だと思う。
その後二人と一緒にその時のライブを見て、ステージでのはっちゃけように思わず笑みが零れた。
これはいい意味でも悪い意味で荒れるなぁ。
それでも、今までにないくらいの輝きを見せてくれた二人をひとしきり褒めながら、俺は今後のことを楽しみに思った。
「これはまた忙しくなるな」
「今度は倒れないでよ」
「約束する」
「本当にですよ。約束、破っちゃダメですからね」
「あぁ大丈夫だ。俺は約束破ることはないからな」
「……嘘。夜帰ってくる約束何回も破ったじゃん」
「……それはご愛敬ということで」
「はぁ」
有希のため息が病室に響き渡る。
久しぶりの日常が帰ってきたように思えた。