あれだけ盛況で、しかし裏では陰謀が渦巻いていたI-UNITYが閉幕した。
YU☆KI★NOを破ったⅢXの勢いはすさまじく、続く準決勝の月のテンペスト戦でも、お互いに高得点を取りながらも勝利。そして迎えた決勝、最後に立ちはだかったサニーピース相手に……敗北した。
決勝では音響設備の不具合で曲が流れないというトラブルがあった。だけどサニーピースは、そのトラブルをもライブのパフォーマンスにして、自分たちの力にできたが故の勝利だったと思う。
……裏を知っている身からすると姫野が何かやったんだろうなって感じなのだが、その何かのおかげでサニピの真骨頂が発揮され、勝利できたと思えると感謝の言葉さえ浮かんでくる。ありがとう姫野、ざまぁみろ。
その後、三枝さんが動き回っていたことが功を奏し、姫野の不正と朝倉社長の無実が明らかになり、姫野は逮捕。朝倉社長は無事バンプロの社長に舞い戻ってこれた。
まさにハッピーエンド。すべての悪事は暴かれたって感じなのだが、まぁ現実としてはそうもいかない。
朝倉社長の無実は証明されたとはいえ、姫野が元バンプロ社員だったこともあり、バンプロの信用も落ちたままだし、彼女がバンプロ内外でやっていた影響は未だ残ったままだ。
姫野が移籍した先であるプレタポルテにも影響は及んだ。今回のケースを重く受け取ったプレタポルテはまさかのアイドル業界撤退。プレタポルテ所属アイドルであるⅢXが路頭に迷うことになった。
同じく路頭に迷ったTRINITYAiLEだったが、こちらは星見プロに再度所属することを決めたらしい。だが、トリエルもトリエルで事務所を転々としていることもあり世間からの目は厳しいものになっている。
星見プロといえば、サニーピースがなんとBIG4の一員となった。I-UNITYでの敗北とプレタポルテのアイドル業界撤退が重なりBIG4を下ろされたⅢXの代わりとしてサニピが上り詰めたそうだ。
ついにここまできたのかと思うと思わず涙がこぼれる。随分と大きくなったな……。
だけど対照的に月のテンペストに関しては、I-UNITYでの敗北があってか明らかに調子を崩し始めた。映像で見ていてもわかるほどのものだからかなりのものだと思う。一時的なスランプだと思うが、実力は確かなのだからなんとか調子を取り戻してほしい。
LizNoirに関してはトリエルの敗北が応えたのか、更なる技術力向上のため全国ツアーの公演を決めたようだ。相変わらずストイックな人たちだなと思う。そういえばリズノワの莉央さんは牧野と共に見舞いに来てくれた。俺の怪我は伏せるように伝えていたから驚いたが、どうやら俺が眠っている間、有希の世話をしてくれていたらしい。本当にありがとう。今度パンケーキ持っていこうと思う。
そしてYU☆KI★NOは……。
「これ美味しいですね。外はサクサクなのに中はとろーり。甘みも最高です!」
「季乃。最近食べ過ぎじゃない?太るよ」
「安心してください。私は太りにくい体質です!」
病室で仲良くシュークリームを食べている二人を見ながら、俺は口を開いた。
「いくら活動休止中とはいえ、トレーニングはしないと体がなまるぞ」
「うるさいですね。慎二さんこそ毎日ゴロゴロしているばかりでなまっているんじゃないんですか?」
「俺は骨折中だから仕方ないだろ」
「じゃあ私も精神療養中なので仕方ないですね!」
「療養すべきは頭じゃないか?」
「何をーー!!!」
季乃はシュークリームが入っていた箱を掴み、ばしばしと叩いてくる。角をぶつけてくるな痛いから。
有希はそんな俺たちを冷たい目で見ながら口を開いた。
「一応、来週には退院できるんだっけ?」
「みたいだな。まぁでもしばらくは車椅子生活だけど」
「……仕事どうするの?」
「それだよなぁ……」
俺の怪我もあり、会社には現状休暇を貰っている状況だ。YUKINOも活動休止中ということもあり、そこで仕事が入ることはない。
だけど俺が復帰したとして、今まで通り仕事ができるかと言われるとノーだ。腕はかなり治りが早いみたいだからデスクワークはできるが、足が折れている以上移動ができない。
移動ができないと当然営業にも行けないし、なんならYUKINOのレッスンも見ることができない。これは困った。
「しばらくは二人のレッスンアシスト。腕が回復してから事務方の仕事貰うことになると思う。だけど…」
「YUKINOのマネージャーとしての仕事は難しい。だよね?」
「そうなるな……」
思った以上に影響が大きいというか、体を使う仕事だったんだなぁって思い知らされる。怪我なんてするものじゃないな。
「じゃあそれまで私たちも休みましょう!レッスンはしっかりとしますけどね!」
「そうだね。それがいい」
「……いいのか?」
YUKINOの活動休止の理由は俺の怪我が原因だ。申し訳なくなるが、あまり自分を卑下することを言うと二人に怒られるので言わないようにする。
「そう決めたからね」
「えぇ。私たちは慎二さんいてこそのYU☆KI★NOですよ!」
「そうか」
なんだかこそばゆい。二人がそんなことを思ってくれていると思うと、胸をこみ上げてくるものがある。
「……ありがとう」
「どういたしまして!」
「感謝する暇があるなら、さっさと怪我、治してね」
「有希は相変わらず冷たいな」
「当たり前でしょ。だって私お兄ちゃんのこと嫌いだから」
「俺もそういうところ嫌いだよ」
俺たちは二人で笑いあう。これからも嫌い同士仲良くやれそうだ。
「なんですかそれ!なんかずるいです!私とも特別な関係作ってくださいよ!」
「じゃあ季乃も嫌いだ」
「なんでですか!怒りますよ!叩きますよ!」
「お前が言ったんだろ……」
季乃に軽く叩かれていると、ピコンとスマホの通知が鳴った。見ると、I-UNITYの表彰式が来週開かれるとのことだ。
I-UNITYの中枢だった姫野の不正の影響でI-UNITYの審査まで疑われていたのだ。その結果表彰式が随分と遅れることになっていた。
……来週か。その日なら俺も退院していくことができるな。
「有希、季乃。来週は空いているか?I-UNITYの表彰式一緒に行かないか?」
「なんでですか?」
「嫌だけど?」
……やっぱり仲良くできないかもしれないな。