星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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YU☆KI★NOと歩み続ける

 I-UNITYの表彰式。無事退院できた俺は、季乃に車椅子を押してもらいながら会場までやってきた。

 

 I-UNITYの会場。ここでどれだけの想いがぶつかり合ったのか俺にはわからない。だけど、この場にいる誰もがその時のことを思い出すような瞳をしているを見るに、記憶に残るようなそんな戦いを繰り広げてきたのだろう。

 

 そのなかの一人にYU☆KI★NOが含まれていると思うと、なんだか誇らしい。

 

 会場の空いた席へと向かっていると、その途中、偶然にも見覚えのある姿と目が合った。

 

「え、御堂さん?」

 

 綺麗な銀髪の姿はTRINITYAiLEの天動さんだ。彼女の後ろからは、他のトリエルのメンバーも目に入る。

 

「天動さん久しぶり。元気してた?」

 

「え、えぇ。こちらは元気ですけど、どうしたんですかその怪我?」

 

「ちょっと事故っただけだ。あまり気にしないでくれ」

 

「ちょっとって、車椅子生活になるほど大怪我やないですか!大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫、むしろ入院中季乃が騒がしくて頭の方がどうにかなりそうだったから」

 

「あぁ!つい腕が!」

 

「お前…!怪我人の腕を締めるな!」

 

 季乃のアームロックを解除しながら、俺は改めて三人に向き合う。

 

「まぁこんな感じだから、こっちは大丈夫だ。……三人はどうだ?色々とあってごたついているころだろうけど」

 

「あはは、確かにちょっと大変ですね。やっぱり色々と言われちゃいますし……」

 

「でもあの時の私たちの選択は間違いだとは思っていません。だからこれも受け入れるべきことだと思っています」

 

 三人の覚悟は強い。うん、これでこそトリエルだ。

 

「そっか。頑張ってな。何かあったら俺も助けになるから」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「今はそっちの方が助けが必要そうな感じやけどなぁ」

 

「私たちができることがあったら何でも相談してくださいね!」

 

 ……逆に心配させてしまったか。

 

「ありがとう。それじゃあ、また!」

 

「はい、またお会いしましょう」

 

 トリエルと別れを告げ、今度こそ席へと着く。ふと、横を向くと有希が不思議そうな表情で俺を眺めていた。

 

「どうした?」

 

「……お兄ちゃんってさ。どうしてそこまでトリエルを守ろうとしたの?」

 

 どうしてってそりゃ。

 

「自分の好きなものを守るのに理由なんてあるか?」

 

「ぶっふっ」

 

「おいなんで笑うんだよ」

 

 なぜか笑い出した季乃を小突いていると、有希はどこか呆れたような視線を俺に向けてきた。

 

「やっぱお兄ちゃんって単純だね」

 

「なんでそうなるんだよ」

 

「別にいいんじゃない?馬鹿っぽくて」

 

「おい有希、ちょっとこっち来い。デコピンが当たる範囲まで近寄れ」

 

「嫌だ」

 

「行け季乃!たいあたりだ!」

 

「季乃 は 訳も分からず 慎二 を 攻撃した!」

 

「なんで混乱してんだよお前」

 

 いつものように三人で騒いでいると、いつの間にかI-UNITYの表彰式が開幕していた。

 

 スリクスはなぜか欠席したから、表彰されるのは三位の月のテンペストと一位のサニーピースだ。

 

 この二組が表彰台に立つと、二組が同時優勝したNextVenusグランプリのことを思い出す。そして同時に、その渦中で騒がれていた一人の少女のことも。

 

 ……思えば麻奈ちゃんが亡くなったあの日から、もう随分と年月が経った。

 

 麻奈ちゃんの死も、NextVenusグランプリでの麻奈ちゃんの話題も徐々に薄れ始め、世界は新しい人たちの話題で塗り替えられようとしている。

 

 ……でもきっとそれでいいんだ。いつまでも引きずっていたら麻奈ちゃんに怒られそうだから。

 

 でも忘れたら忘れたで彼女は怒るだろうなぁ……麻奈ちゃん意外とプライド高いから。

 

 俺は一人笑みを浮かべながら、表彰を受けているサニピと月ストを見つめる。

 

 これから先、彼女たちには更なる困難が立ち向かうだろう。今まで考えもしなかったことが突如として降りかかったり、感じたことのない重圧に負けそうになることなんてこともあるだろう。

 

 でもきっと彼女たちなら大丈夫。どんなことがあろうとも、最後には前を向いて立ち上がってくれる。根拠はないが、なぜかそう思える。

 

「頑張れよ」

 

 今の俺には応援する事しかできない。でも、きっとそれでいい。俺が彼女たちを支える必要はもうないのだから。

 

 だからこそ……。

 

 俺は、気怠げに頬杖をつきながら表彰を見つめている有希と、飲み物片手に手を振りながら表彰を眺めている季乃の姿を目に映す。

 

 俺が今後支えるべきは……いや、一緒に立つのはこの二人だ。サニピでも月ストでもリズノワでもトリエルでもない。YU☆KI★NOというアイドルと一緒に俺は歩み続ける。

 

「次会う時は敵同士だ」

 

 覚悟を胸に俺はこの表彰式を眺める。いつの日か、あの場にいるのがYU☆KI★NOになることを夢見ながら、俺は空へと誓う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――YU☆KI★NOと共にトップを掴んで見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 東京編完結です。続きは未定ですが、おそらくBIG4編の裏でのオリジナルになりそうです。
 読了、ありがとうございました。
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