星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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IMF

 

「みなさーん、お待たせしました!本日の主役であるYUKINO登場です!あ、私、季乃って言いまーす。キラッ★」

 

「うわ、ノリきっつ」

 

「なんでそんなこと言うんですか!花の十代ですよ!」

 

「はいはいごめんね。私は有希って言います。よろしくお願いします」

 

「有希と季乃なのでYU☆KI★NOなんですよ!さすがのネーミングセンスですね!」

 

「さすがのネーミングセンス(笑)だね」

 

「なんで笑うんですか有希ちゃん!」

 

 打ち合わせも無事終わり、YUKINOのステージが始まった。会場に上がるや否や話し始めた季乃は、有希を巻き込んで会場の雰囲気を掴んでいく。

 

 今日の二人の話し方はいつものライブとは違い、初対面の相手に性格とグループの雰囲気が伝わるように話しているのが伝わる。……とはいえ、漫才でもやってんのか、という突っ込みを入れたくはなるが。

 

「まぁ掴みはこんなところでいいでしょう!私たちのこともわかってもらえたと思うので、早速ライブに移りましょう!」

 

 季乃はさりげなく、裏方のスタッフに合図を送りながら配置につく。そして有希と視線を合わせた後、二人で観客を目にしながら口を開く。

 

「「wake up!」」

 

 始まったのはポップな明るい雰囲気の曲。そのタイトル通り、朝の目覚めの雰囲気を季乃と有希が演じていく。季乃は新しい朝の楽しみを、有希は朝の気だるさを持ち出しながらも、それでもなんでもない平然とした日常を映し出した曲だ。

 

 後半には夢や願いという要素が入り込み、なんでもなかった朝が、徐々に希望溢れるものになるように変化していく。

 

「皆さーん!一緒に!」

 

「「「「「wake up!!!」」」」」

 

 曲の盛り上がりや、コールアンドレスポンスもわかりやすく、初めて来てくれた人にも比較的楽しんでもらいやすい曲でもある。俺も好きな曲の一つだ。

 

 ……明るいこの曲を一番に持ち出したのは、YUKINOのイメージの擦り付けだ。この曲だけでなく、今日のYUKINOのライブ全体を考慮したときに、どう物語を作っていくか考え、そして考え付いたのがこの方法だった。

 

 要は初めからYUKINOの本性を全開にして見せつけるライブと、徐々に本性を見せつけるライブはどちらがいいかって話だ。

 

 ただこれの一つの問題は、途中でお客さんが帰ってしまう可能性。ただそれは、季乃の圧倒的な歌声によって阻止できるものと考えている。だって、ほら。

 

「この道をどこまでも進んでいこう」

 

 季乃の甘く透き通る歌声は、聞いているだけで心地が良く、いつまでもこの声を聞いていたくなるような魅力がある。

 

 すでに何度も彼女の歌を聞いてきた俺だってこうなのだ。これを初めて見た人が聞きほれないわけがない。

 

「wake up!~♪~~♪」

 

 ちらりと季乃の表情を覗く。彼女は心の底からの笑顔で、このステージを楽しんでいるようだった。

 

 

 

 

 季乃の歌声に魅了され、気が付くと一曲目どころか、二曲目まで終了していた。何をしているんだ俺は。

 

 後々のために映像は撮っているものの、やはり実際で見るものとは違う。この目で彼女たちのライブ、そして観客の様子を見ておかねばならない。

 

 特にここからは、季乃の甘い声を主体ではなく、有希が主体となる。しっかり視界に捉えておかなくては。

 

「じゃあいきます。Idley」

 

 スピーカーから流れるのは先ほどとは打って変わって暗めの気だるげの音楽。

 

 季乃の歌声を背景に舞う有希の繊細でいて圧倒的なダンスは美しく、その色っぽさを含む仕草に見る者をたちまち虜にする。有希の吐息交じりの歌声もあって、これまでそこまで目立っていたなかった有希に会場中の視線が集まる。

 

「かっけぇ……」

 

 俺も思わず声が漏れる。それほどの踊りがそこにあった。

 

 

 

 

 そこからは徐々にYUKINOの本来の曲に移り始める。甘い幻想と冷たい現実を表した世界観。彼女らのコンセプトを全面的に出した曲で会場を盛り上げていく。

 

 時々変化球のように季乃から繰り出される甘く透き通る声を会場に広めたかと思えば、悪戯気にそれを解き放ち嫌が応にも現実を直視させるワードを口ずさむ。有希の踊りも単なるアクセントではなく、それ単体でライブになるようなそんな力強さがある。

 

 つまるところ、だ。

 

 YUKINO最高!かっこいい!

 

「ということで――でしたー!」

 

「有希よかったぞーーー!!季乃も最高だ―!!!」

 

「……どうも」

 

「声援ありがとうございまーす!」

 

 二人はレスポンスを返した後、ちらりと視線をこっちに向ける。黙れと言いたげな視線と、嬉しそうにしながらも迷惑そうな視線。……俺も舞台裏から声をかけるのはさすがにまずかったと思う。反省だ。

 

「盛り上がりもいいところですし、そろそろいっちゃいます?」

 

「うん、やろうか」

 

「それじゃあ行きましょう!皆さんお待ちかねの…いやお待ちかねじゃないかもしれませんね!StarImitation!」

 

 

 

 

 

「ライブうまくいってよかったですね!」

 

「うん」

 

 あの後のStarImitationは物凄い熱狂だった。ただでさえ完成度が高いライブだ。それがI-UNITYで有名になってそれを目当てに来ていたファンもいたのだろう。

 

 念のために警備の人を増やしてもらったりファンの中に紛れさせておいたのだが、それらが無駄に終わったことに感謝したい。俺自身も聞いているときは全く他のことを考える余裕もなかったし、何もなくて本当によかった。

 

「SNSでも盛り上がってますよ!」

 

「みたいだな」

 

 ファンの感想もひと際大きかったし、何より元アイドルでわりと有名な評論家が、セカンドステージの主役はYU☆KI★NOだったと言ってくれたことが嬉しかった。

 

「これはご褒美が必要ですね!私回らない寿司に行きたいです!」

 

「じゃあ行くか」

 

「仕方ないですね、回っている寿司でも…って、えぇ!いいんですか!?」

 

「元からそのつもりだったしな。予約も取ってるぞ」

 

「やけに用意周到ですね…何か企んでます?」

 

「二人ともIMFに向けて頑張っていたからな。今日くらいは祝わせてくれ」

 

 実際に二人ともこの日に向けていつも以上にレッスンを頑張っていたことを知っている。俺にはこれくらいしかできないけど、それで少しでも労わることができればと思っている。

 

「そういえばボーナス入ったんだっけ?」

 

「あぁなるほど。それで」

 

「おい有希余計なこと言うな。違うからな?本当に労わりたくてやったんだって」

 

 いや確かにそれはあるにはあるんだけども。普段の給料だけじゃそんな贅沢はできないし。

 

「はいはい、わかってるよ。ありがとね」

 

「ありがとうございます!」

 

「……腑に落ちないがまぁいいよ」

 

 俺たちはすっかり暗くなった夜道を帰っていった。

 

 IMFは大盛況だったし、YUKINOも大成功だ。少なくとも俺たちにとっては、十分なステージだった。

 

 

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