星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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火種は振りまかれた

 

 どりきゅんによるBIG4チャレンジ。月のテンペストを含め数々の被害者を出して来たその企画は熱が冷めることはなく、次々に新たな熱狂を生み出していた。

 

 熱狂とは興奮であり、慟哭であり、苦悶だ。アイドルたちにとっては申し訳ないことだが、見ている視聴者からすると、それらこそが物語を見出すことができ、面白く感じる。

 

 その熱狂を生み出している原因はどりきゅんというアイドルに違いない。彼女らはエンタメ性に特化しており、視聴者がどうすれば興味を持ってくれるか、そしてそれを継続して見続けてくれるかを熟知している節がある。過度な挑発紛いの言動も、それがエンタメとして昇華されるものと知ってのものだ。

 

 だからこそ、この企画は成功している。異質で、各方面に怒られながらも、ここまでその火を燃やし続けてこれているのだ。

 

 そしてその火は、ついにと言うべきか、俺たちへと向かってきた。

 

 

 

『次の対戦相手はYU☆KI★NOだ。逃げんじゃねぇぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どりーむきゅんきゅん、どりきゅんきゅん♪どりどりきゅんきゅん、どりきゅんきゅん♪」

 

「緊急で集まってもらってすまない。理由は…まぁわかっているか」

 

「どりきゅんに指名された。だからどうするか決めたい、でしょ?」

 

「まぁそんなところだ」

 

 今日の夕方に放送された生放送で、ついにというべきかYU☆KI★NOが次の対戦相手として指名された。

 

 今のYUKINOの知名度等を考えると、こうなることは想定できていたし、それに準じた対処方法も色々と考えてはいるが、できることならこうなってほしくなかったというのが本音だ。

 

「どーりきゅんきゅん、きゅんどりどり♪」

 

「でもさ、私と季乃はわかるんだけど、なんで鏡花もいるの?」

 

 緊急で借りた会議室には有希と季乃の他、鏡花もやってきていた。丁度鏡花のレッスンを見ていた、というのもあるんだが、彼女を呼んだのにはちゃんと理由がある。

 

「三人いれば文殊の知恵って言うだろ?知恵という観点だとこの中だと一番上だし、力を借りたい」

 

 嘘だ。いや、百パーセント嘘というわけではないが、一番の目的は鏡花に色んな経験を持たせて感情を引き出すトレーニングにしたいからだ。いきなりアイドルの暗い面を見せる事にはなるが、鏡花ならそんなことを気にする人ではあるまい。

 

「……鏡花はそれでいいの?」

 

「えぇ。私は構いません」

 

「そっか。ならいいけど」

 

 有希からの視線が強くなる。なんかバレているくさいけど、まぁ何も言われないのなら良しとしよう。……でも怖いから次からは止めておこうと思う。

 

「どりーむ、どりーむ、どりきゅんきゅん♪」

 

「……じゃあ早速聞くが、実際どうだ?BIG4チャレンジ受けたいか?」

 

「受けないとごちゃごちゃ言われちゃうんでしょ?」

 

「それに関しては気にしなくていい。今は二人のBIG4チャレンジに臨みたいかを聞きたい」

 

「BIG4チャレンジ自体に興味はないよ。でも、色々言われるのが面倒だからそれを避けるためにはやっても良い派かな。騒がれるの嫌だし」

 

「……なるほどな。季乃はどうだ?」

 

「反対派です!」

 

「なぜだ?」

 

「BIG4になりたくないからです!」

 

「あー確かにそれは同意かも」

 

「おいおい……」

 

 BIG4になれば確かに色んな制約に付きまとわられることになる。その制約の一つには大会等以外でのライブバトルも禁じる、というのもあるため、ライブバトル自体を楽しんでいる彼女たちにとってはマイナスの部分が大きいのかもしれない。とはいえ、アイドルの夢の一つであるBIG4になりたくない、というのは思わず苦笑が零れる。まぁこんなアイドルが居ても悪くはないか。

 

「つまりお二方は勝てる自信がある、ということでしょうか?」

 

「それはもちろんです!ちゃんと根拠もありますよ?でも、ことことちゃんはまだ親愛度が足りないので教えてあげませーん」

 

「……」

 

「こと、怒っていいぞ」

 

「わかりました。……季乃さん、こら」

 

「私に残された良心が痛みます……」

 

 完全に怒りなれていないやり方だ。季乃はずっと痛み続けて、良心を思い出してくれ。

 

「……ともかくですね。私はBIG4チャレンジは嫌です。こんなやり方でBIG4になるのも面白くないですし。でもやってみたいことはあるんですよねぇ」

 

「……碌なことじゃないことはなんとなくわかるが、一応聞かせてくれ」

 

「聞きたいですかぁ?」

 

「今日のこいつ一段と腹立つな」

 

 思い返せば仕事から帰ってきてからずっとご機嫌に変な歌歌っていたし、仕事でいいことでもあったのだろうか。

 

「む、そんなことを言う人には教えてあげませんよ?私たちで勝手にやります」

 

 ……あ、いや違うな。これはそのやってみたいことを思いついたからご機嫌なだけだ。ろくなことじゃないことは確定だけど、勝手にやられても困るし聞くしかないか。

 

「悪かった。季乃、教えてくれ。今度ご飯奢るから」

 

「デートですね!やったね★」

 

 ……あんまり鏡花の前でそんなことを言わないでほしい。誤解されると困るから。

 

「私が考えたのは――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいんじゃない?ただごちゃごちゃ言われるよりよっぽどまし」

 

「……有用な手ではありますね」

 

「たださすがにちょっとなぁ……事務所の人間としては言いたいことは山ほどある」

 

「あっちが振りまいてきた種ですよ?ならそれを利用しない手はないです!」

 

「それは一理あるが……。それを実行するにあたって考える内容が多いな……」

 

「それをなんとかするのが仕事でしょ。任せたよ」

 

「まぁその通りだわな。でも事務所に話を通してそこで承認を貰ってからだ。それじゃないと俺は許可を出せない」

 

「じゃあ説得文句を一緒に考えましょう!提案です!御堂家と風見家の力を使いましょう!」

 

「却下だ」

 

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