星見プロの不審者   作:ねむれすねむれす

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燃え行く炎を我が力に

 

『緊急生放送!YU☆KI★NO動きます。本日20時~ 下記リンクより』

 

 有希と季乃二人のSNSから発表されたその言葉は、BIG4チャレンジの人気と、どりきゅんから指名された当日ということもあって大反響を呼び、SNSにもYU☆KI★NOの名がトレンド入りするほどだった。

 

 こんなやり方でトレンド入りしたくなかったな、なんて苦笑いを零しながらも俺は即興で仕上げた台本を再度読み返す。

 

 季乃が提案した内容は、確かに多少は過激なものではあったがYUKINOというアイドルにとっては有効な手段ではあった。エンタメとして成り立つ範疇でもあり、第三者の視点から見れば確かに面白い。YUKINOのファンには冷や冷やさせてしまうのが申し訳なくなるけども。

 

 あれから更に内容を詰めていった俺たちは、その足でバンプロの社員を説得しに行った。

 

 エンタメはリアルタイム性が求められる。なるべく早いうちに行動したほうが、より盛り上がれると判断しての行動だった。

 

 しかし、やはりというべきか事務所としては中々許可を得るのは難しかった。それもそうだろう。最悪バンプロダクションのイメージ自体が悪くなる可能性はある。他のアイドルに影響を及ぼすのは誰でも避けたい。

 

 だけど、最終的に俺たちの背を押してくれたのは朝倉社長だった。

 

『やってみたまえ。しかし御堂。やるからには最後まで責任は取ってもらうぞ』

 

 そんな脅し文句…もとい励ましの言葉をいただきながらなんとか許可をもぎ取り、そして今に至る。

 

 会場はYUKINOがレギュラーでやらせていただているラジオのスタッフさんたちに相談し、なんとか空いたスタジオを確保してもらえた。こういったときコネって大事なんだなって再認識した。

 

 ともかくだ。準備はすでに完了。YUKINOが新設した動画サイトの視聴者数も始まる前からとんでもないことになっている。ライブ会場ではいつもかなりの人数に見られているが、こうわかりやすく数字で表わされると違った緊張が生まれてくる。

 

「有希、季乃。大丈夫か?足りない事とか、なかったか?」

 

「……なんでお兄ちゃんの方が緊張してんの?」

 

「可愛いですね。手がプルプルしてます」

 

 そりゃだって視聴者が万越えだぞ?それだけの人が見ているなかであれをやるんだろ?考えただけで緊張してくる。

 

「……二人が落ち着いているようだったらよかったよ。何かあったらすぐに言ってくれよ。すぐに対処するから」

 

「はいはい、そんなこと起きないから」

 

「そうですよ。なんにも起きないですから」

 

「そうか……じゃあ有希、季乃。後は任せた」

 

「うん」

 

「お任せあれ!」

 

 ……これによって生じる問題は想定が付く。俺自身が世論を誘導してもいいが、それは二人が許してくれないだろう。

 

 だから、後は二人の活躍次第だ。

 

「頼んだぞ」

 

 台本に目を通している二人を見ながら、俺は切にそう思った。

 

 

 

 

 

 

「どりーむきゅんきゅん、どりきゅんきゅん♪どりどりきゅんきゅん、どりきゅんきゅん♪」

 

「お待たせしました。今日は私事にも関わらずこんな人数に集まっていただきありがとうございます」

 

「どーりきゅんきゅん、きゅんどりどり♪」

 

「知らない人もいるだろうし、まずは挨拶を。私たちは――」

 

「どりきゅんです★」

 

「……季乃、ちゃんとして。恥ずかしいから」

 

「どりきゅんが恥ずかしいって言うんですか!?いろんな人に迷惑を掛けながらも自分たちのやりたいことを貫く。立派じゃないですか!」

 

「季乃が一番失礼だから」

 

「あみゅみゅ」

 

「何その声」

 

「季乃ちゃんの被ダメボイスです」

 

「蛙が踏まれたような声だね。弱そう」

 

「でんこうせっか!」

 

「右ストレート」

 

「痛いです。やめてください」

 

「……あーカンペ出てる。自己紹介しろだってさ」

 

「やれやれ、仕方ありませんねぇ。有希ちゃんやりますよ」

 

「何を?」

 

「右手を上げて、左手も上げて、両手を外側に開いて、一気に体の正面で手のひらをを合わせる。そして二カメさんにクール寄りの決めポーズ。YU☆KI★NOの季乃です」

 

「なにそのクソダサ挨拶」

 

「またどりきゅんを馬鹿にしましたね!」

 

「どりきゅんこんなことしてないから。……あぁごめんなさいね。私らはこんな感じの人なので。YU☆KI★NOの有希です。よろしく」

 

「よろしくお願いいたしまーす。突然ですけどね、実は私、やりたいことがあるんですよ」

 

「ちょっと待って。季乃はこの放送で漫才やりに来たの?」

 

「有希ちゃん、これはコントです」

 

「いやそれはどうでもいいんだけど、コントをするために放送始めたんじゃないんだけど」

 

「実は私、喫茶店の店員とやってみたいんですよねぇ」

 

「季乃、前喫茶店でバイトしてたじゃん。ってか前見て、カンペカンペ。マネージャー怒っているから」

 

「オコって感じですね。カルシウム不足ですよあの人。ちゃんと牛乳飲みましょう」

 

「毎日飲んでる……いやカンペで返答返すな。お前はまじめにやれ」

 

「ストレスで頭もおかしくなっているんでしょうね……あぁおいたわしや社畜生活」

 

「はい、じゃあもう強引にでも話し戻すね。まずはいくつかご報告があります」

 

「その一つ目が、YUKINOの公式配信チャンネルを開設しましたーいえーい!」

 

「今見ているこの放送のチャンネルのことね。色々とやっていくのでぜひ登録していってください」

 

「皆様、ご安心あれ!このチャンネルはちゃんと事務所に許可をもらった公認です!どこぞのどりーむをきゅんきゅんしすぎてきゅんになってしまった子とは違うのです!」

 

「はいはい、煽らないで。燃えちゃうから」

 

「ご安心ください!私たちはもう燃えています!」

 

「自慢げに言うことじゃないよね」

 

「炎はやがてあの星まで届きうる力となる。うちの社長が言っていました!」

 

「……季乃、後で呼ばれても私はついていかないからね」

 

「って社長が言っていたってマネージャーが言っているのを聞きました!あいつが元凶です!」

 

「あぁまたカンペ出てるよ。話を戻せだってさ」

 

「ストレスで頭もおかしくなっているんでしょうね!」

 

「そこに戻るんだ……」

 

「それで宣伝二つ目です!この度、私たちYUKINOのニューアルバムのリリース日が決定しましたー!この日です!わーい!」

 

「サンプル持ってきているんだけど、これがジャケットね。私が乗っている奴」

 

「荒廃した雰囲気の噛み合ってとってもカッコいいですね!って私がいないじゃないですか!私はどこに!?」

 

「わかりやすい振りありがとね。裏面の曲紹介のとこに薄っすらと季乃がいます。表面と違って美しい幻風景があって綺麗ですね」

 

「えへへ。有希ちゃんも綺麗ですよ」

 

「あ、ごめん。季乃に言ってない」

 

「オコです。私は多大なるオコを得ました」

 

「ごめんね。変なもの拾っちゃだめだよ」

 

「私はオコを捨てました」

 

「ちょっと脱線しちゃったけど、私たちがまたアルバム出せたのは応援し続けてきたファンのおかげ。本当にありがとね」

 

「本当にありがとうございます!こればっかりは感謝感激雨あられってやつですよ!」

 

「古くないその言葉?」

 

「私自身が流行の最前線です」

 

「そ。それじゃ最後の三つ目の報告」

 

「ななななんと!私たちが、あの人気番組、逃亡中に出ることになりましたー!ぱちぱちー!」

 

「わー」

 

「ついに地上波のゴールデンタイムですよ!やっとここまで来ました!思えば五十年前アイドルを志して三千里……随分と遠くまで来ました」

 

「はいはい、結構いい感じに活躍できたと思うから楽しみにしててね」

 

「季乃ちゃんの超絶テクニックをご覧あれ!」

 

「テクニック……?まぁいいや。ともかく、報告は以上になりまーす」

 

「ここからは質問タイムですよ!皆さんコメントの用意は…すでに準備万端ですね。あーあー燃えてます燃えてます」

 

「流れが早くて見えないから、マネージャーなんか組み取って」

 

「アルバムはいつから買えますか。無難なの拾いましたねぇ」

 

「確か店に並ぶのは二週間後とかじゃなかったっけ?店舗によって前後すると思うんで、その辺はホームページとか見て探してみてください」

 

「じゃあ次です!このチャンネルでは何をするんですか。いい質問ですね!実はですね、面白い企画を考えているんですよねぇ。言っちゃおうかなー言わないでおこうかなぁ?」

 

「じゃあ次ね。えっと」

 

「無視しないでください!仕方ない人たちですねぇ。詳細は伏せますけど、色んなアイドルたちを巻き込んで色々と遊びたいと思ってます!主に星見プロとか星見プロとか星見プロとかです!」

 

「仲いいもんね」

 

「マブです!あそこにはダチがいっぱいいます!ダチの一人は今リアル逃亡中なので今度捕まえに行きます。私から逃げられると思わないことですね!」

 

「はいはい、また燃えるようなこと言わないで。次は、スリクスとはもう戦わないんですか。あぁこれね。……戦うよ。スリクスには勝つまで挑み続けるつもり。スケジュールとかいろんな兼ね合いもあってすぐには無理だけど、いずれ報告するときが来ると思うよ」

 

「今度は私がkanaちゃんを泣かします。そのときまで首洗って待っているがいいです!」

 

「次。……あぁそれそろそろ言っちゃう?」

 

「BIG4チャレンジ受けないんですか?火の玉ストレートですね!球速百五十くらい出てますよ!」

 

「これに関してはどうするべきか悩んでます。どうしたらいいと思う?」

 

「決まったから放送してんじゃないの?ち、ち、ち、甘いですね。私たちは一度もBIG4チャレンジについて語るなんて言ってません!これは!ただの!私たちの!宣伝!です!ばん!」

 

「あーあーふぁいあー」

 

「燃え行け炎!我が力と化すのだ!どん!どん!どがーん!」

 

「ということなので、BIG4チャレンジについてはまた事務所から何か発言が出るかと思います。よろしくね」

 

「あ、それとは別口に、どりきゅんには中々面白いことをしてもらったので、こっちからもお返ししようと思います!彼女たち流に言うなら逃げんなよってことです!」

 

「それ聞いてないんだけど」

 

「今言いました!」

 

「後で社長呼んで説教ね」

 

「社長は止めてください。クビは嫌です」

 

「ってことで放送終わり、ですが、ここまで見てくれた皆様にお礼をご用意しました。ちょっと準備するんで、よければ待っててください」

 

「プリーズウェイト!ウェイトアミニットです!」

 

 

 

 場面は変わり、大きめの会場で有希と季乃がポーズを取る。そして、一つの楽曲が流れ始めた。

 

「~~♪~~~~♪」

 

「……っ」

 

 YU☆KI★NOの新アルバムにも含まれたその新しい楽曲に合わせ、季乃の歌い、有希が舞う。

 

 録画再生だが、季乃と有希のライブは素人目に見ても、巧くつい視線が寄せられる魅力がある。

 

 騒ぎは想定通り。まぁ成功だな。

 

 俺は盛り上がりを見せているコメント欄を覗き、そう確信した。

 

 

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