ソードアート・オンライン〜運命と自由に選ばれた戦士 作:エム3
エギル好きの人、ごめん。
トールバーナの西側。円形広場の前に俺達は到着した。既に、集まっているプレイヤーもいたのだが、人数を見て、キリトは不安そうな表情をしている。
「予想はしてたけど・・・やっぱり少ないな。45人くらいか。」
「ん?45人で少ないのか?フロアボスってそこまでやばいやつなのか?」
「ああ。本来なら最大人数の6人で8パーティ。48人のレイドを組んで行うんだ。欲を言うなら、そのレイドを2つ作れればベスト。リスクも減らせるからな。」
「けど、今ここにいるのは45人。一つのレイドの人数にも満たしてないって事だね。」
「そうだな。けど、これだけの人数が集まったのも奇跡に近いけど・・・」
確かにそうだな。ホタルの言う通り1レイドにも満たないメンバー。だが、デスゲームとなったこの状況で、これだけのプレイヤーが集まり、フロアボス攻略に向かう。これだけでも奇跡だな。
「取り敢えず、始まるまで座って待ってようぜ。ここで立ちっぱなしってのも変に目立つしな。」
キリトの言葉に、俺達は他プレイヤーが座っているように座る。キリト、俺、コハル、ホタル。この順番に座った。座った直後、俺は軽く周りのプレイヤーを見てみる。毬栗の様なトゲトゲしてる頭のプレイヤーや、フードで顔を隠してるフェンサー。黒肌の大斧持ちのプレイヤーのパーティーなどなどだ。
少しの時間が経った後、円形広場のステージの上に、青髪の盾と片手用直剣を持つプレイヤーが立つ。
「じゃあ!そろそろ始めようと思いまーす!まずは俺の呼び掛けに応じてくれてありがとう!知っている人もいるかもしれないけど、俺の名は『ディアベル』。職業は気持ち的にナイトやってます!」
わぉ、ユーモア溢れる自己紹介だ事。周りの奴らも拍手と歓声に溢れてるし。あんなやつが、リーダーをやるのに適してんだろうな。
「今日、俺達のパーティーが、あの塔の最上階の部屋、フロアボスの部屋を発見した!
ここまで約1ヶ月かかった・・・だけど、俺達はフロアボスを撃破し、第2層上がり、始まりの街にいるプレイヤー全員に、このゲームをクリアする事ができると示さなきゃならない!それが、ここにいるトッププレイヤーの義務だ!そうだろう!?みんな!!」
今一度、歓声が上がる。いや、拍手喝采が上がった。まじで騎士みたいだな。あのディアベルってやつ。
「それじゃあ、早速、攻略会議に入ろうと思う。まずはこの場にいるメンバーでパーティーを作ってくれ!わかっている人が殆どだと思うけど、単なるパーティーじゃボスには対抗できないからね。」
彼の声掛けにより、周囲のプレイヤーがそれぞれパーティーを組み始める。
「って言ってるけども、どうするキリト?取り敢えず、パーティーの数増やしのために、二つでパーティー組むか?」
「まあ、それが得策だな。それなら・・・ホタルとコハルの方に、ヴァルが入ればいいと思う。」
「は?俺がコハル達の方に?」
「ああ。ヴァルは、レベルも充分だし心配はあんまりしてないけど、女性陣だけのパーティーは流石に目立つし、変な奴らが絡んでこないとも限らないだろ?それなら、俺よりヴァルが入る方がそんな奴らに圧をかけれるし?俺は・・・まあ、最悪一人でもなんとかなるとは思う。」
「けどよ、ディアベルはパーティーを組めって言ってんだぜ?ソロは流石にまずいだろ?どうすんだよキリト?」
キリト一人ってのはよろしくねえだろ。テスターの人間とは言え、これはデスゲームだ。万が一ってことがある。
「それなら、誰か空いてるプレイヤーとパーティー組むよ。ちょうど、空いてるプレイヤーを見つけた事だしな。」
そんな事を言いながら、キリトはある人物の元へと歩み寄る。それは、先ほど見かけたフェンサーだ。どうやら、あのフェンサーもパーティーを組むのに手こずってたらしい。お互いパーティーを組んでないもの同士なら、すんなりパーティーを組めるのかもな。
「つーわけで、話がとんとん拍子で進んだわけだけども、コハル、ホタル。俺をパーティーに入れてください、お願いします。」
「そ、そんなに必死に言わなくてもちゃんと入れてあげるよ?ね?コハル?」
「そ、そうですよ!ヴァルさん!パーティーを組みましょう!」
と、コハルからの申請があり、俺はコハル達のパーティーへと参加させてもらった。よかった。これで断られたら俺の心が折れるところだった。
すると、フェンサーと一緒にキリトも戻ってくる。どうやら、パーティー申請を許可してもらえたらしい。
無事に、パーティーを組めた俺達は、それぞれのパーティーメンバーと共に元の位置に座る。他のメンバーもパーティーを組み終えたようだ。
「よし、そろそろみんな組み終えたかな?それなら・・・」
全員がパーティーを組み終えた事を確認したディアベルは次の話題へと進もうとした時だった。
「ちょお、待ってんか!ナイトはん!」
トゲトゲ頭のプレイヤーが彼の言葉を遮った。彼はディアベルの立つ場所へと向かって行く。突然の事に周囲のプレイヤーは困惑している。当然、俺やキリト達も例外ではない。
「ワイはキバオウってもんや!ボス攻略前に言っておきたいことがある!」
件のプレイヤー、キバオウの言葉に、この広場にいる全員が耳を傾ける。
「こん中に、今まで死んでったプレイヤー2000人に詫び入れなアカン奴らがいるはずや!自分らがなんもかんも独占したせいで無残に、死んで行った2千人にな!!」
その言葉を聞いた俺は、あの男が何を言っているのか最初はわからなかった。だが、周りを見た時、キリト、コハル、ホタルの表情が暗くなったのを理解した時、奴が誰の事を責めているのか、理解した。
「キバオウさん、君の言う人たちは・・・『元βテスター』の事かい?」
「決まってるやないか!ベータ上がりはこのくそゲームが始まったその日にダッシュで消えよったやないか!9千何人のプレイヤーを見捨ててな!うまい狩場やクエスト独り占めして!ぽんぽん強くなりよったやないか!
他のプレイヤーの事なんて知らんぷりや!」
・・・なんだろうな。あいつの言っている事は理解しているし、事実なのかも知らない。だけどな?
「こん中にもいるはずや!ベータ出身を隠してボス攻略に混ぜてもらおう小狡い連中が!そいつらに、土下座さして、溜め込んでる金やアイテム吐き出さしてやらんと、パーティーメンバーとして命を預けられへん!
預れん!」
こいつの言葉で、俺の親友のキリト、そしてコハルやホタルが傷ついてる姿。そんなの見てんのは嫌だし。
クソ腹立つんだわ?
キリトSIDE
攻略会議の真っ最中に突然始まった元ベータテスターへの言葉。キバオウという男の言葉は全て的を得ていた。確かに、一般プレイヤーの視点で見れば、俺達のやっていた事はそうなのかもしれない。そんな罪悪感を感じていた。そんな時だった。
「そのクソみたいな話はもう終わったのか?おっさん?」
突如として、キバオウに対しての罵声が飛んだ。しかも俺のすぐ近くで。聞きなれた声が聞こえたんだ。俺はすぐに声のした方へ顔を向けると、案の定、その言葉を発したのは。
(!?ゔぁ、ヴァル!?)
立ち上がり発言した親友のヴァルだった。よく見ると、コハルやホタルも驚愕の表情をしてる・・・そう言えば、ここに来る道中に聞いたが、彼女達も、元ベータテスターだと聞いたけど・・・てゆーか、なんて事いってんだよ!?ヴァル!?
「・・・今なんてった?自分?」
「だから、クソみたいな話は終わったのか?って聞いてんだよ。おっさん。黙って聞いてたらピーチクパーチクよ?元ベータテスターに土下座しろ?アイテムと金を吐き出せ?あんたバカか?」
「な、なんや!!喧嘩売ってんのか!!」
「だったらあんた、ここまでにくる村全部で無料配布してるガイドブック貰ったか?」
「・・・もろたで、それがなんや?」
「ここには、この層で出てくるモンスター、マップのデータ。その他諸々の情報が詳しくなってる。まだ始まって1ヶ月だ。なんでこんなに早く情報が回ってる?」
「だから、それが何やっちゃうんや!?」
「わかんねえか?このガイドブックに載ってるモンスターの詳細や、マップデータを情報屋に提供したやつは、元ベータテスターの奴らだってことだよ。」
「・・・・・・っ!」
「それなのに2000のプレイヤーが死んだ。クエやアイテムは兎も角、これだけの情報があったのにも関わらずにだ。それを全部てめえは元ベータテスターのせいにすんのか?死んだ奴らが引き際を考えなかったって事はねぇのか?
つーかよ?態々そんな話の為に攻略会議を遮ってんのか?いつまで元ベータテスターに難癖つけてんだよ?俺達がするのは、さっきそこのナイトが言ったとおり、フロアボス攻略に向けての話し合いだろ?死んだ奴らには申し訳ねえとは思うけど、そいつらの失敗や死を無駄にしない為に、それを踏まえた上で、ボス攻略をどうするのか。それが重要だろ?その話に、元ベータテスターが謝罪って関係あんのか?」
・・・こんなにイライラしてるヴァルを見たのは初めてだな。普段、口は悪いとは思ったことはあるけど、ここまでじゃないし相手を威圧する様な話方は見たことがなかった。あいつは、本気で怒ってるんだ。
俺達、元ベータテスターの為に。
「キバオウさん。君の気持ちはわかるけど、今は争ってる場合じゃない。強力なフロアボスを倒す為に元ベータテスターの力は必要なんだ。彼らを追い出して、ボス攻略は失敗、なんて事になったら意味がないだろう?」
ヴァルの言葉、そしてディアベルの言葉にキバオウは反論することはなく、舌打ちをした後元いた場所へと戻る。ヴァルも座った後にイラついた様に腕を組んでいる・・・。
「それじゃあ会議を再開します。まず、俺達が戦うボスの情報だが、それはこの攻略本の情報更新がつい最近された。その情報によると・・・」
キバオウの話を終え、ディアベル進行による攻略会議が再開された・・・。今のうちにヴァルにお礼を言っておこう。俺は小声でヴァルに声を掛けた。
「ヴァル・・・ありがとな。」
「あ?気にすんなよ。あのおっさんの話で、お前やコハル達が落ち込んだ表情になんのがムカついただけだ。」
・・・こいつは、サラッとこう言うことを言うから、同性にも異性にも人気があったんだよな。誰かの為にって理由だけで。
それからは、ボス情報のおさらいだった。名前はイルファング・ザ・コボルトロード。武器は斧とバックラー持ち。4本ある体力ゲージの最後の一本になると、もう一つの武器に持ち替える事。一本体力ゲージが削られる事に、取り巻きがPOPすること。攻略本に書いてある情報と全く同じだった。
「この会議が終わった後、各自でボス情報をもう一度確認しておいてくれ。最後にアイテム分配だけど、金は全員で均等割り。アイテムはドロップした人の物とする。依存がないなら、これで会議を終わりにします!解散!!」
攻略会議を終えて、ゾロゾロとプレイヤー達が広場を後にする。俺達も、広場を後にした。会議を終えた時には、日は既に落ちており、俺達は取り敢えず、路地に腰を下ろし、黒パンを皆んなで食べていた。すると。
「・・・悪かったな。みんな。」
突然、ヴァルが謝罪をした。その言葉に俺達はヴァルへと視線を向ける。
「あの行動で多分、あのキバオウってプレイヤーには難癖つけられるとは思う。俺が自嘲してりゃ良かった。」
「・・・それは、違うんじゃないかしら?」
自身の行動に対しての謝罪をヴァルがしていたのだが、俺がパーティー登録したプレイヤー・・・『アスナ』はそれを否定した。
「貴方が怒ってるのは、その・・・元ベータテスターって言われて、貴方の友達の彼や彼女達が悲しい顔をしてたからでしょ。なら、貴方が謝ることじゃないわ。」
「・・・この子の言う通りだよ、ヴァル。寧ろ、俺達はヴァルに感謝してるんだ。庇ってくれたんだからさ。」
俺の言葉に、ホタルもコハルもうんうんと頷く。
「・・・そっか。ならいいんだけどもよ・・・・・・というか、えっと・・・悪い。フードの子の名前わかんねぇ。教えてくれねえか?仲良くしたいし、キリトとパーティなら、お互いにカバーとかもするかもだからさ。」
「・・・アスナよ。」
「アスナか。OK。ありがとな。励ましてくれてよ。あ、お礼といっちゃなんだけどよ・・・」
すると、ヴァルはメニューウィンドウを操作して、アイテムを取り出す。それは、小さな小瓶だった。そのアイテムは俺もよく知っている。
「それ、俺が教えたクエのアイテムじゃないか。ヴァルもやったのか?」
「おう。せっかく教えてくれたからよ。けど、俺甘いの好きじゃねえし、どうせなら甘いの好きな奴に買ってもらうのがいいだろ?あ、もちろん嫌ならいいからな?」
「・・・これ、どう使うの?」
「え?ああ、えっと、小瓶に触れて、指が光ったら黒パンに使用してみるといいよ。そのパン、何倍も美味しくなると思う。」
俺の説明を受け、アスナは黒パンにヴァルが渡したアイテムを使用した。すると、黒パンの上に、カスタードクリームの様な物が塗られていく。
「・・・クリーム?」
「この層のクエの報酬だよ。少しめんどくさいからやる奴は比較的少ないけど、それ、美味いからやる奴もいるんだ。」
「あ、それ、私達もやったよ?ね?」
「うん。」
どうやら、コハルとホタルもやってたみたいだ。すると、アスナは意を決したように、クリームの塗られた場所を食べる。一瞬の沈黙、そして彼女はすぐに二口、三口と頬張り黒パンは彼女の口の中に消えた。
「・・・あ、ありがとう。えっと・・・ヴァル・・・くん。」
「いや、お礼のつもりだったし、気に入ってくれたんならよかったよ。」
少し照れくさそうに、お礼を言うアスナ。それをみて苦笑しながら返事をしたヴァルだった。
ヴァルSide
腹ごしらえも済ませた俺達は、これからのことについて話すことにした。
「んじゃ、明日の準備もしなきゃだし、ここで解散か?」
「そうだな・・・。あ、そうだ。ヴァル、なんなら俺の所くるか?色々、フロアボスのことで、話したいこともあるし。」
「おう。そうだな。三人は・・・えっと、宿だったよな?」
「うん。私達はね。アスナは?」
「私もこの層の宿を借りてるの。お金はかかるけど・・・」
「え?アスナは兎も角、ホタルとコハルも宿・・・なのか?」
「え?うん・・・だって、寝泊まりする所なんて、宿くらいじゃない?」
「あ、ああ。そうか。二人とも、知らないのか・・・」
「知らないって・・・?」
「実はさ、宿以外にも、NPCの家に空き部屋があれば借りられるんだよ。場所によっては、借りられるだけじゃなくて、例えば、その家で作られてる食べ物とか、アイテムをもらえたりもするんだ。」
そう。キリトのいう通り、こいつは宿泊まりはしておらず、NPCの家の一室を借りてるのだ。少し値は張るが、その分、広さなどは充分過ぎるほどあるのだ。
「そ、そうなの!?」
「確か、キリトの借りてる場所って、牛乳飲み放題の『風呂付き』だったよな?」
「ああ。その割には値段は安いし、結構「「「ねえ?」」」ん?ひっ!?」
「うおっ!?」
三人に声を掛けられ、そちらを見ると、何故かこちらに向けて尋常じゃないほどの圧を向けながら、詰め寄る三人の姿があった。なにごと!?
「ねえ?さっきなんて言ったの?」
「は?え、えっと、ぎゅ、牛乳飲み放題?」
「その後の言葉、だよ?」
「え、えっと、風呂付き・・・?」
「キリトさん、お風呂に入れるんですか?」
「は、はい・・・・・・」
萎縮して敬語じゃねえか!?そんなに圧が怖いのか!?キリト!?
「「「ねえ、私達も行っていいわよね?(いいよね?)(いいですよね?)」」」
「「あ、はい・・・・・・」」
三人のお風呂についての圧に対して、俺達は敬語で返すしかなかったのでした・・・・・・