ソードアート・オンライン〜運命と自由に選ばれた戦士   作:エム3

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攻略開始前

 

「あ、えっと・・・俺の家ではないけど・・・どうぞ・・・」

 

「「「お邪魔します」」」

 

お風呂という言葉に食いついた、三人を引き連れ、俺達はキリトの借りている家へと到着した。トールバーナの牧草地に建てられているこの家は、他のプレイヤーに借りられる事はなく、空いていたらしい。

 

「へえ。いい部屋だね。これで、宿とほとんど変わらない値段なんだよね?」

 

「そ、そうだ・・・な。」

 

「これで、牛乳とお風呂付き・・・これ、女性プレイヤーが大喜びですよ?キリトさん?」

 

「お風呂だけでも充分よ。それで、お風呂はどこなの?」

 

「あ、えっと・・・この部屋・・・です。」

 

いつまで敬語なんだよ?キリト?そして、キリトの案内で、アスナ達は、お風呂へと入っていく。戻ってきたキリトは、少し疲れたように椅子に座った。

 

「はぁ・・・女子は、本当に風呂に目がないんだな・・・」

 

「まあ、しょうがねえだろ?ログアウトできねえわけだし、この世界じゃ風呂なんて入れないって思ってたろうからな。にしても、幾ら引き篭もりとは言え、緊張しすぎじゃね?キリト?」

 

「引き篭もり言うな!ていうか、普通緊張するだろ!?身内ならまだしも、知り合ったばかりの女の子、借りた部屋に上げて、お風呂に入れてあげるとか、そんな事普通ないだろ!?」

 

改めて言葉にしたら、凄いことしてるよな、キリトのやつ。引き篭もりの割りに頑張ったな。

 

「恨むなら、デスゲームを作った茅場を恨めよ・・・。それより、本題に入ろうぜ?フロアボスについての話ってなんだよ?」

 

「恨むぞ茅場・・・・・・って、そうだったな。話なんだけどさ・・・ヴァル、お前に聞くのもあれなんだけど・・・さ。ボス攻略、楽に行けると思うか?」

 

「は?そんなの、キリトの方が分かってんじゃねえのか?一回戦ってんだろ?」

 

「それはあくまでもテスト版だよ・・・。製品版。ましてや、デスゲームだぞ?何があるかなんて、わからないだろ?」

 

「・・・まあ、確かにな。んー・・・そうだな。『楽には行かない』・・・とは思うけどな。まあ、攻略会議の時にも思ったけどよ。」

 

「・・・ヴァルもそう思うか?」

 

今回の第一層ボス攻略、一筋縄では行かないだろう。そう思ったのはいくつかの理由があるからだが。

 

「ああ。そう思った理由は主に2つ。まず一つ。人数が少ないって事。これは、多分キリトがよくわかってるから説明はいらない。正直、もう一つの方が当たってたらやばいな」

 

「もう一つ?」

 

「・・・『βテスト時点での、ボスの情報がまるっきり役に立たない事』」

 

「・・・・・・は?」

 

俺のもう一つの考えに、キリトは目が点になっている。

 

「べ、ベータの情報が役に立たない?どういう意味だ?」

 

「あ、勘違いすんなよ?別に攻略本に書いてある情報が嘘だとは思ってねえよ。正しくいうなら、『ベータの情報とデスゲーム版のボスの行動、少しでも違う所があったらやばい』って事だからな?」

 

「例えば、ボスの呼び出す手下の数、もしくは『体力ゲージの減少によって持ち替える武器がβ時代と違う』変わってる部分があるとすればこの2つのどっちか、もしくはその両方。どう思う?」

 

「・・・あり得ないとは言えない。難易度を上げる為に変更する場所がその二つなのはよくある事だ。一番、簡単に難易度を上げれるからな。」

 

「だろ?となると、モブの数が増えるだけなら対処するメンバーを選べばいいだけ。けど、武器が変わってるとしたら話変わってくるだろ?」

 

「・・・ああ。犠牲が出る・・・最悪、全滅ってところだ」

 

キリトの表情が険しい表情になる。当たり前だ。もしかしたら、ボスの変更点がある。そのせいで最悪全滅するって、俺の考えで思わせてんだしな。

 

「まあ、俺の意見はこんなとこだな。確証がない以上『かもしれない』ってところだけども。」

 

「・・・いや、それだけでも充分ありがたいよ。俺も考え付かなかったしな。」

 

と、そんな事を話している時だった。

 

「ふぁぁぁぁぁ・・・・・・」

 

と、アスナ達が入っている風呂の方向から、声が聞こえてきた。恐らくだが、誰かが湯船に入って漏れた声なのだろうが。

 

「・・・防音性低くねえか?それとも、今の声、漏れるぐらいの声だったのか?」

 

「あ、あはは・・・しゃ、シャウト判定になったみたいだな・・・」

 

苦笑いしているキリト。いや、多分キリトも声が漏れるほど?という疑問を抱えてるんだろうよ。無理やり納得させてるだけだな。

すると、玄関の扉がノックさせる。コン、コココンという独特なリズムで。

 

「ん?キリト、誰か来たぞ?」

 

「・・・そう言えば、来るって忘れてた・・・まあ、ヴァルに紹介するつもりだったし、ちょうどいいか。ちょっと待っててくれ。」

 

キリトが立ち上がり、玄関の扉を開ける。そこに立っていたのは、フードを被っている一人のプレイヤー。正直、怪しさ満点だ。

 

「よっ、キー坊。ん?珍しいな?キー坊にお客さんなんて。」

 

「客じゃないよ。前に話したろ?親友とログインしたってさ。っと、ヴァル。こいつはアルゴ。ベータ時代にいた情報屋の一人で、俺が一番信頼してるやつだ。まあ、それなりの金は掛かるけどな。」

 

「おー、キー坊がよく言ってた親友くんか。俺っちはアルゴ。コルを積んでくれるなら、色んな情報を教えてやる情報屋さ。」

 

「お、おう・・・ヴァルだ。つーか、キリトが俺以外に、友達みたいなもんがいるとは思わなんだな・・・」

 

「余計なお世話だ!!俺だって、知り合いの一人くらい、いるに決まってるだろ!!」

 

「にゃははは!キー坊、そんな風にルー坊に思われてるのか?」

 

「・・・ルー坊?」

 

あだ名か?ヴァー坊じゃなく?いや、読みにくいけども。

 

「んで?アルゴはなんでキリトの家に来たんだ?」

 

「ん?おお、忘れるところだった。キー坊、前に話した件のコルがさらに上乗せされた。一応聞くけど、売るか?」

 

「ん?またか?売るわけないだろ?」

 

「・・・どういう事だ?話が見えん。」

 

「ルー坊、実はキー坊の情報・・・というより、キー坊の持ってる『アニールブレード』を買い取りたいっていうプレイヤーがいるんだよ。そいつがコルをどんどん増やしてるんだ。現状、39800のコルが出すってさ」

 

「はっ?39800コル?」

 

「・・・それって、どうなんだ?この剣ってそんな値段掛かるのか?第一層の剣だろ?」

 

「いや、それはない。それなら、アニールブレードを取って・・・俺の剣は今+6。そのぐらいのコルを払えるならそこまで強化できる筈だ。そのプレイヤー何考えてるんだ?」

 

「俺っちも散々そう言ってるんだよ。それでも引かないんだ。こっちも迷惑なんだけどな。とりあえず、今回も無しってことでいいな?キー坊?」

 

「・・・アルゴ、俺が40000だす。それで、俺の剣を買おうとしてるプレイヤーを教えてくれ。」

 

「・・・まいど!キー坊はお姉さんの事よくわかってるな!じゃあ、教えてやるよ。キー坊の剣を買おうとしてるのは『キバオウ』ってプレイヤーだ。」

 

「・・・あ?」

 

キバオウ?あの毬栗頭がキリトの剣を?

 

「キバオウ?あいつが何で俺の剣を?」

 

「さあな。俺っちもわからないさ。キー坊が、何か恨みでも買う事したんじゃないか?」

 

「それはねえだろ。第一、キバオウと会ったのは攻略会議で初。しかも、キリトはその時発言してねえんだぞ?あいつに喧嘩売った俺ならまだしも、キリトはねえだろ?」

 

「ん?ルー坊、あいつになんかしたのカ?」

 

「ああ、実はな・・・・・・」

 

と、キリトがアルゴに今日の攻略会議で起きた出来事、ついでに、俺達のフロアボスについての考えを話す。キリトが全て話した後、アルゴは少し微笑み、優しい目で俺を見た。

 

「・・・ルー坊は優しいんだな、普通ベータテスターの肩なんか持たないぞ?

殆どのプレイヤーを見捨てたようなもんだからナ。」

 

「んなの関係ねえだろ。俺は、ベータとかそんなのよくわかんねえし、全員が全員悪ってわけじゃねえだろ。キリトしかり、多分お前もだろ?」

 

「ん?」

 

「あのガイドブック、作ったのお前だろ?アルゴ。それに、キリトが信頼してるってことは、悪い奴じゃねえのは確実だ。そんな奴が変な事するとも思えねえし。」

 

「・・・・・ルー坊は、変わり者だな。キー坊と同じだナ」

 

少し呆れたような表情をしてるアルゴ。そんな事言われてもなぁ。俺は俺の考えを話してるだけなのに。

 

「それじゃあ、キー坊はそれを売らないって言っておくよ。あ、それと、服を着替えたいんだ。どこかの部屋、借りてもいいカ?」

 

「ん?ああ。好きに使ってくれ。」

 

「サンキュー、キー坊」

 

と、アルゴは・・・ある一室に向かっていく。いや待てよ?あの部屋、アスナ達が入ってる風呂場じゃね?

 

「あ、アルゴ。そのドアは・・・!」

 

 

が、時既に遅し。風呂場の扉は開かれ、向こうの光景が見えるというその瞬間に、俺は咄嗟にキリトの目を隠して、風呂場を見ないように、体の向きを変える。

 

「ぐえっ!?」

 

「あ、わ、悪い!キリト!」

 

「「「きゃあああああ!?」」」

 

「お、おおう!?」

 

アスナ達三人の悲鳴と、アルゴの困惑の声が部屋に響く。アルゴには悪いことしたとは思う。正直なところ、好きな部屋を使えって言ったキリトが悪いとは思うが、俺が伝えるのが早ければよかっただけだしな。

 

 

その後は、着替えを終えたアスナ達に、俺とキリトで、必死に弁明し、謝罪をした。綺麗な土下座でな。そのおかげか許してもらえたし、アルゴの紹介をできたのは御の字だけどな。

 

 

 

 

 

そして翌日、攻略組は迷宮区にあるボス部屋に向けての歩みを進めていた。俺達は一番後ろを歩き、連携の最終確認をしているところだ。

 

「一応確認だけど、俺達の担当は、ボスの取り巻き、『ルイン・コバルトセンチネル』って名前のモンスターの対処。あいつらの武器を一人がソードスキルで、打ち上げて、すかさずスイッチで一撃を入れる。それで、倒せる筈だ。」

 

「おう。」「ええ。」「うん。」「はい。」

 

要するに、雑魚処理ということらしい。俺達は、ボスと戦えんのかねえ。

と、考えていた時だった。

 

「ちょっといいか?」「んお?」

 

前を歩いていた、攻略組の中から、一人のプレイヤーが俺達の所まで、下がってきた。見た目は、スキンヘッドの黒人、両手斧を背中に背負ってる中年プレイヤーってところだな。

 

「俺は『エギル』だ。兄ちゃんは、昨日、攻略会議の時に発言したプレイヤーだよな?」

 

「おう。ヴァルだ。んで?俺に何のようなんだ?」

 

「いや、大した用事ってわけじゃない。昨日の会議の時の行動に、感謝を伝えようと思ってな。」

 

「は?感謝?」

 

「ああ。実は俺も思う所があったんだ。βテスターと一般プレイヤーとの壁みたいなものにな。今、ここに集まったプレイヤーは全員このデスゲームのクリアを目指して集まってくれた。だが、その溝を残したままでいいのか・・・ってな。」

 

・・・へぇ。このおっさん、そういうふうに考えてんだな。

 

「おっさん見たいな、考えの奴が多いといいんだけどな。」

 

「どうだろうな・・・。まあ、そういうことだ。あの時の言葉、最高にcoolだったぜ?ヴァル。今回の攻略、頑張ろうぜ。」

 

「おうよ。お互い無事に攻略終えて、祝勝会と行こうぜ。エギル」

 

と、お互いの無事を祈り、エギルは自身のパーティーのもとへと戻っていく。

 

「・・・よかったな。キリト。ああいう風に思ってくれてる人もいてよ。」

 

「・・・ああ。」

 

俺とエギルの会話を邪魔しないように黙っていたキリト達。そちらに目を向けると、目が潤ってるのが見えた・・・。アスナも、少し口元が微笑んでいる。俺も嬉しいよ。

 

 

それから、フィールドを歩き、俺達はついに、迷宮区ボス部屋前へと到着した。ボス攻略は少しの休憩を挟んだ後、行われる。その間、俺達もアイテムの確認や、装備を確認してる時だった。

 

「ヴァル、今いいか?」

 

「キリト、どした?」

 

真剣な表情のキリトが声を掛けてきた。んだぁ?キリトも緊張してんのか?と思っていたが、次のキリトの言葉をそうではないことを知る。

 

「・・・あのスキル、絶対に使うなよ?」

 

「んだよ。心配性か?使わねえよ。いざって時以外はな。」

 

「・・・ならいいんだ。俺も、なるべくカバーには回る。いざって時がこないようにな。」

 

「そうか。けど、まずはこの一層、無事攻略しようぜ?お互い、死なないようにな」

 

「わかってる」

 

 

 

・・・キリトのやつ。気にしすぎなような気がするけどなぁ。無理しなきゃいいけどな。と、考えている時、全員に集合が掛かる。

 

 

攻略組の全プレイヤーが集合し、その先頭にはリーダーであるディアベルが俺達を全員見た後。

 

「みんな!俺から言えることはたった一つだ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

勝とうぜ!!!!」

 

 

という言葉の後、ボス部屋の扉が開かれる。

 

 

 

 

 

今、第一層フロアボス戦が幕を開けた

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