ソードアート・オンライン〜運命と自由に選ばれた戦士   作:エム3

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運命の刻

 

ゆっくりとボス部屋の扉が開かれ、俺達は中へとはいる。初めて入ったフロアボスの部屋は奥行きがあり、広く、長方形の形の部屋だった。そして、その部屋の奥には、椅子のような物が見える。そして。

 

「・・・っ!来る!!」

 

誰の声かはわからなかった。だが、その言葉が始まりのように、部屋の明かりがつき始める。そして、最後の灯りが着いた時、この部屋の主が、部屋にある椅子『玉座』に座っていた。

 

 

 

 

第1層、フロアボス。

 

獣人の王『イルファング・ザ・コボルトロード』

 

「グルオオオアアアア!!!」

 

奴の咆哮の後、奴を守る様に、取り巻きのセンチネル3体が現れる。

 

「攻撃開始!!」

 

ディアベルの号令の後、先頭に立つパーティーのプレイヤー達は各々の獲物を手に持つ。そして、一人のプレイヤーの片手剣、センチネルの長柄斧がぶつかり合う。その音が、攻略戦開始の合図となった。

 

 

 

「そぉら!っと!ホタル!!スイッチ』頼む!」

 

「うん!はぁっ!」

 

俺の片手剣ソードスキル『スラント』によって、バランスを崩したところをすかさずスイッチによって、懐に飛び込んだホタルの片手剣ソードスキル『バーチカル』を叩き込み、センチネルはポリゴンとなって消えていく。

 

「うっし!ナイスホタル!キリト!こっちは問題ねえ!そっちは!?」

 

「こっちも大丈夫だ。取り巻き達は、俺達以外のパーティーも対応できてる。これなら、ボス攻略のパーティーに取り巻きが行く事はない・・・筈だ。」

 

キリトはちらっと前線にいる、ボス攻略のパーティーを見る。メイン部隊を率いているディアベルの的確な指示のもと、今のところは順調に攻略は進んでいた。

 

「にしても、流石は騎士を名乗るだけはあるよな。的確な指示に、状況の判断能力、リーダーには最適性の男だろ。」

 

「うん。この調子なら・・・。とは、行かないよね。ヴァル?」

 

「だろうな。今のままなら、ガイドブックの情報のままだ。そのままなら、それではいいけども・・・っと!もう次のが現れんのか!!とっとと片付けんぞ!」

 

次のセンチネルが現れ、俺達はすぐ様、撃破へと向かう。今度は、コハルが、ソードスキルの一つ『スラント』によって、相手のバランスを崩す。

 

「コハル!ヴァル!スイッチ!」

 

「うん!」「おう!」

 

そして、俺とコハルが、ホタルとスイッチ。俺のソードスキル『バーチカル』とコハルのソードスキル『リニアー』によって、センチネルはポリゴン片となる。コハルは細剣を装備しており、AGIはなかなかのものだった。

 

キリトとアスナも、別のセンチネルを撃破しているようだ。

 

「キリトさん、大丈夫そうだね。ホタル」

 

「うん。アスナも大丈夫だろうし、無駄な心配みたいだね。」

 

「初めてにしては連携も取れてるし、あいつら意外といいコンビになるかもな。」

 

と、軽口を言い合いながらも、俺の視線は、ボスの方へと向く。と言うのも、俺は昨日、自分自身で言った言葉がどうにも気になっているのだ。

 

『ベータテストの情報と違う点があるとやばい』というものが。

 

 

(ボスの体力は約1本半・・・ボスの取り巻きは3。ボスの最初の武器に変更は無し。今の所の変化はない・・・・・けど、なんだこの違和感・・・?なんで、こんなに嫌な予感がしやがる?それこそ、ボス部屋に来る前の広場で・・・一応注意はしたけどな・・・)

 

時は、ここに来る前・・・攻略開始前に遡る。

 

俺やキリト達が攻略組に合流して、第一層攻略開始の寸前。

 

「あー、ちょっと待ってくれ。」

 

俺は、攻略組の前に出て声を上げる。すると全員の視線が俺の方へ向く。その中には俺を忌々しく見る物もいるが、俺は無視を決め込んだ。すると、リーダーであるディアベルが声を掛けてくれる。

 

「えっと・・・君は確か・・・」

 

「ああ、俺はヴァル。取り巻き担当のパーティーの一人だ。ディアベルさん、少し俺に話をさせてくれるか?」

 

「何か・・・あるのかい?ヴァルくん」

 

「まあな。」

 

「わかった。だけど、手短に頼むよ?」

 

「ああ・・・。えっと、まずは、攻略前に突然こんな事して悪いとは思ってる。だけど、必要な事だと俺は思ってる。少しでもいい。俺の話に耳を傾けてくれ。」

 

まずは謝罪だ。これから攻略だってのに出鼻を挫くもんだからな。少し不満そうなやつもいる事だし。

 

「俺が話したい事は当然ボスの事。それと、ボスの攻略本の事だ」

 

「ボスの攻略本の事?はっ!この情報が間違うとるゆうんか!?どんな証拠があってそんな事言うとるんじゃ!!」

 

 

・・・あれだけ、テスターを非難しておきながら、庇ってんのか?あの毬栗頭が。まあ、話したい事は確かにそれなんだが。

 

「いや、正直な話、この本に書いてる事は間違ってるとは思ってない。けど、この攻略本に書いてある情報は全部間違ってない。これに書いてある行動パターン、武器の種類、取り巻きのポップ数・・・。全部上手く事が進む。そんな事があり得るのか?」

 

「・・・はぁ?」

 

ざわざわと攻略組が騒がしくなる。まあそうだよな。攻略本の情報ご間違ってるかもしれないって言ってんだからな。

 

すると、一人の少女が手を挙げている。その子に視線を向ける。その少女は金髪ロングであり、防具は黒統一、可愛らしい少女であった。・・・いや見覚えある顔してんな。『Toloveる』のヤミじゃねえか!?

 

 

 

「攻略本は、βテスターの情報を集め、それを纏めた攻略本だと聞きました。私自身も話を聞いて、攻略本との相違点を探してみましたが、情報は全て正しかったです。あなたは何を根拠にそんな事を?」

 

「根拠なんてねえよ。けどな、これはβテストじゃなくて製品版。しかも、デスゲームだ。何があってもおかしくない。そう思わねえか?他のゲームでもそうだろ?βテストの時と、製品版の時、ぜーんぶがまるっきりおんなじでした。上手く事が運びました。それが、毎回あったか?お前らがやってきたゲームが全てそうでした。なんて事あったのか?」

 

俺の言葉に、言葉を失う攻略組。反応的に、少なからずここにいる奴らはそんな体験をしているという事だ。そして、このゲームもそうかもしれないという、その可能性を考えているはずだ

 

「もし仮に、ボス戦の情報と異なってる部分があったら?ボスの武器が違ったら?取り巻きのポップ数が違ったら?特殊なスキルを使ってきたら?

 

 

たらればの話をしてんのはわかってるつもりだ。確かに、俺の話は根拠も何もねえ話だ。だけどよ?これはデスゲーム。全部が上手くいく保証も根拠もどこにもねえ。もちろん、俺の仮説があってんのかどうかもな。

 

だから、少しでも頭の片隅にでも置いておいてくれって話だ。それをしないで、いざ誰かが死んだら、情報が間違ってたから死んだんだ。βテスターの情報は間違っていた。そう言う奴らだって現れる可能性がある。

 

犠牲が出ない事。それがこの攻略において一番重要な事だ。一度死んだら終わりのデスゲーム、それが現状。何度もやり直しが効くゲームとは訳が違うんだからな。」

 

「・・・その通りですね。犠牲は出ないに越した事はありません。貴方の仮説を疑った事、謝罪します。ごめんなさい」

 

「あ、いや、別に気にすんなよ。」

 

・・・こんなキャラだったか?この子?まあいいか?すると、ディアベルさんがパンッ!と手を叩く。

 

「そろそろいいかな?ヴァルくん?」

 

「お、おう。時間掛けて悪い。リーダーさん」

 

「よし!これから攻略を開始する。さっきのヴァルくんの言った事は、全員気にかけておく事!犠牲をゼロにする為にもな!」

 

ディアベルの声により、納得したのか全員が頷き、迷宮区へと歩みを進める攻略組。俺もキリト達と、合流し後を追うように進む。

 

「・・・やっぱ、あいつみたいなのがこう言うの言うべきだわ。向いてねえよ俺。」

 

「あはは・・・そうかもな。けど、俺達の中だとヴァルが一番いいんだよ。俺とコハルとホタルはβテスターだし、アスナはほぼ初心者だしな。それに、ヴァルは攻略会議で、話もしてるんだしちょうどよかったんだよ」

 

「いや、俺もなんだが?俺も初心者としてカウントして?」

 

「あれだけ戦えて、MMOの基礎をすぐ覚えたヴァルは、もう立派なプレイヤーだよ」

 

「なんでやねん。」

 

俺もこういう事は苦手なんだが、まあ、アスナ以外の3人は事情が事情だし。アスナも少し心配になるキリトの考えはわかるけどもなぁ。

 

 

 

 

 

とまあ、全員に一応共有・・・ではないな。意見を言ってはみたのだが、全員が気にしてるとは限らないし、俺達だけでも気にかけてはいる。

 

 

「・・・今の所はβの時と同じ・・・。取り巻きのポップ数・・・使ってる武器・・・変わってる所はないよ。」

 

「そうか。ボスの行動パターンも変わってないってキリトは言ってたし、後あり得るのは、体力減少による行動パターンの変化、もしくは2本目の武器の変更、体力減少時の取り巻きのポップ数変化ぐらいなんだが・・・そんなもん確認するには、ボスの体力を減らすしかねえわけで・・・」

 

というか、俺はベータテスターじゃねえし、行動パターンうんぬんは、結局キリト達頼りになっちまうけどな・・・。と、俺はもう一度、ボスの方へ視線を向けた。ディアベルとキバオウの奴の班がボスを担当している。指揮役のディアベルの活躍もあり、ボスの体力も順調に削れている。

 

ボスの体力も直ぐに武器を変えるラインに到達しようとしていた時、偶然にもボスの腰に携えられている武器を視認した時。

 

「・・・・・・あ?」

 

俺はある事に気づき、怪訝な声を上げた。その声が聞こえたのか、ホタルとコハルは俺に視線を向けた。

 

「ヴァル、どうしたの?」

 

「何か・・・気づいたんですか?」

 

「・・・二人とも悪い。少しここ頼む。キリトに聞きたいことできた!」ダッ!

 

・・・もし、俺の気づいたボスの違和感・・・。もしこの予感が当たってんなら・・・。ディアベル達がやべえ!!直ぐに確認しねえと・・・!一度、ボスの体力ゲージへと視線を向けた。気付けば、あとボスの体力はラストゲージの半分とちょっとぐらい・・・。まずい!時間がねえ!!キリトに聞いてる場合じゃねえ!!俺はその場で立ち止まり、息を大きく吸い込み。

 

「全員!!!俺の言葉をきいてくれぇ!!!!!」

 

俺は自身が発せられる全開の声を上げた。それは、この部屋で戦っている全員の意識を向けるには十分だった。そして。俺が感じた違和感を、叫んでいた。

 

 

「『ボスの2本目の武器が変わってるぞぉ!!!ナイト様達は一度離れろぉ!!!情報と違うぞォ!!!」

 

 

確証はなかった。俺の勘違いかもしれない。だが、なりふり構ってられなかった。もし、俺がここで叫ばなければ、死者が出るかもしれない。そう思った時には、もう俺は叫んでいた。

 

「っ!!全員!!一度、ボスから距離を取ってくれ!!彼の言葉を信じるんだ!!!」

 

すると、ディアベルの指示のもと、直ぐ様ボス担当の班は、フロアボスから距離を取り、俺達が戦っていた場所ぐらいまで下がった。

 

すると、ボスは斧とバックラーを投げ捨て、腰に携えている武器を手に取り、ニヤリと笑う。それは、タルワールなどではなかった。

 

片手剣よりも長く、黒く輝く刀身。その武器を見て、アスナを連れて、近くに来ていたキリトは呟いた。

 

「・・・っ!?あれは・・・野太刀!?βテストと違う!!」

 

「キリト!!言い出した俺が言うのもあれだけだよ!!野太刀ってなんだ!?あんな武器、1層じゃ見たことねえぞ!!」

 

「・・・そんなの当たり前だ・・・!!あれは・・・『刀』スキルにカテゴライズされるんだ!!『もっと上層のモンスターが使う武器』なんだよ・・・!!」

 

攻略本と違う情報に、攻略組には動揺が走る。

 

そして、それだけではなかった。ボスが一度、雄叫びを上げると、俺達が担当していた取り巻きが更にリポップしたのだ。

 

 

 

しかも、『数は5匹』に増えていた。

 

 

「取り巻きの数上昇・・・!!ヴァルが言ってた事が全部当たってる!!」

 

「・・・っ!?」

 

「第1層から、張り切りすぎじゃねえのか!?クリアさせる気あんのか!?」

 

なぁんでこんな嫌な予感ばっか当たるかね!?たまには、良いことの方が当たってほしいけど!?情報と違う部分が2つ。一つだけでも大慌てになるってのに!!

 

その時、フロアボスも動き出した。取り巻きと共に、俺達に斬り込んでくる。狙いは、さっきまでボス相手にしてた、ナイト様を狙っている。

刀身が赤く光り、標的を狩るように。

 

キリトSide

 

「・・・ッ!ディアベル!!直ぐに後ろに飛べぇ!!!」

 

ボスの攻撃であるソードスキル『旋風』、この攻撃が当たってしまえば、確実にHPがゼロになる!!俺は直ぐに声を上げて、ディアベルに回避を即す。ディアベルもその声に反応したのだが、時既に遅し。赤く輝く死の刃がディアベルの居た場所へ振り下ろされた。振り下ろされた刃が、煙を上げ、その場にいた全員がディアベルの死を想像させた。

 

だが、煙が晴れた時には、彼の姿はなかった。そして、その時、プレイヤが死亡した際の、ポリゴン片も発生しなかった。

 

「・・・っ・・・でぃ、ディアベルはん・・・っ?ディアベルはんはどこにいったんや!?」

 

キバオウが叫び、全プレイヤーがディアベルを探す。だが、俺は気づいたんだ。あの時、俺の視界の隅に・・・『あいつ』が駆け出すのを。そして。

 

「悪りぃな!!キリト!!」

 

『あいつ』の声が上から聞こえたんだ。その場にいたもの・・・フロアボスも含めた全てが視線を上に上げた。

 

そこにいたのは、あの時、俺が見た『フリーダム』と呼ばれていたものとは違う、青色のボディ、紅い翼、手に持つ大剣。そして、輝く光が翼のように広がるロボット。ディアベルを抱えた、あのスキルを発動しているヴァルの姿。

 

「約束破っちまった!!まぁ、リーダー失うよりは全然良いだろ!?」

 

「・・・ッ・・・!あぁ・・・!最善手だよ・・・ッ!!」

 

フロアボス戦に取ってはな・・・ッ!!ヴァルはそのまま地面に降り立ち、ディアベルを下ろした。

 

(ヴァル・・・ディアベルを失わなかったのはデカい・・・けど、この後の自分の事、考えてるのか・・・っ!?)

 

フロアボス攻略の要を失わなかったのはデカい。だが、親友の今後を考えると、俺はあいつにあのスキルを使わせたことを悔やんでいた。

 

ヴァルSide

 

「・・・ヴァ、ヴァルくん・・・そ、その装備は・・・っ?」

 

「それは後回しだろ!!ナイト様ッ!!お前がリーダーだろ!!さっさと、指揮を取りやがれ!!このままだと、全員死ぬぞ!!こっちでタゲは引き取ってやらぁ!!」

 

「っ、あ、ああ!!タンク班、交代しつつ回復を進めてくれ!回復した班からスイッチ!!取り巻きの班も交代しながら回復してくれ!!数が増えた分大変だとは思うが、辛抱してくれ!!」

 

ナイト様の指示の元、体制を立て直しを始まる各班の者達。どうやらなんとかなりそうだな。っと、ボスの野郎が動き出しやがった。こっちの思惑に気づいたみてぇだな。

 

「さぁて、自分から言い出した手前、仕事はしねえといけねえよな。

 

 

 

 

 

少しばかり、俺とやり合おうぜ?まさか、逃げるとは言わねえだろ?」

 

 

 

 

鎧の中で俺はニヤリと笑い、フロアボスへと駆け出す。

 

 

 

さぁ、こっからは、俺のステージだぜ。

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