元一級呪詛師 スカー・レッド 作:傷んだ赤色
虎杖悠仁。
「トーコさん?うーん、俺あんまりあの人のこと知らないんだよなぁ」
──そうなんですか?
「そう。一回廊下で話したくらい」
──その時はどんなお話を?
「確かパラドックスとかスワンとか…でもなーんかあの時のこと詳しく思い出せない気がする」
──あまり印象に残らなかったのでしょうね。最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「色んな人達との接し方でなんとなく凄い人なんだろうなって。あ、でも時々俺とかに向ける目がすげぇ怖い時がある。観察してる感じ?」
──ありがとうございました。
釘崎野薔薇。
「橙子さん、ね。端的に言うなら命の恩人なんだけど…」
──橙子さんが苦手ですか?
「そうね、苦手意識が強いって表現が一番しっくりくるわ。もちろん感謝はしてるわよ?あの人のおかげで今ここに立ててる訳だし。でもねぇ…」
──でも?
「そんなに話した事ないのと、時々、人として見られてないって感じる時があるのよね。リハビリ中だったり模擬戦の時だったり。でも一回ちゃんと話してみたいとは思うわ」
──なるほど。では最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「けっこー偏見入っちゃうから言いたくないんだけど…あれは典型的な研究者タイプだと思うわ。自分の興味以外は全く眼中にない感じ」
──ありがとうございました。
伏黒恵。
「蒼崎さんですか?時々話しますけど親しくは無いですね」
──どんなことをお話しされるんですか?
「任務に必要な呪具を借りるとか廊下ですれ違った時に挨拶するとか。ほとんど業務上の付き合いです。一度、酷くやつれてるのに上機嫌な時に会ってコーヒーを奢られて延々と呪具の解説に付き合わされた事はあります」
──それは災難でしたね。ちなみになんの呪具についてでしたか?
「天逆鉾とか黒縄について語ってましたね。どっちも五条先生のせいで無くなったと嘆いてました。他の話は専門的すぎて着いて行けなかったので聞き流してましたけど」
──ハイになってたんですね…。それでは最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「そうですね、根本は呪術師よりも呪具制作なんかの方が合っている気がします。でもあの人も一級、特級レベルを簡単に祓うし、時折いなくなってはとんでも無いことをして帰ってくるのでぶっちゃけヤバい人だと思ってます」
──ありがとうございました。
禪院真希。
「あの人について?」
──はい。どんなエピソードでも大丈夫です。
「一回殺されるような思いさせられて、私か妹の死体求められたくらいだな」
──それは……なんというかかなり濃いエピソードですね…。
「あくまでそう感じたってだけで本当に殺されかけたわけじゃない。死体の件についてはぶっちゃけあの人に渡す気はない。多分、てか確実に何かの実験に使われるだろ」
──彼女の人物評などを鑑みて、十分有り得ますね。それでは最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「上層部の嫌がらせで呪詛師になってたって話だったけど、あの人ならそれ無しでも十分呪詛師認定されると思う」
──ありがとうございました。
狗巻棘。
「しゃけ」
──……………しゃけ…?
パンダ。
「橙子かぁ。一回解剖されそうになった事があったわ」
──彼女らしい話ですね。
「俺もそー思う。でも正道が見つけて阻止してくれたけどな」
──危機一髪でしたね…。というか呪骸を解剖する意味はあるのでしょうか…?
「さぁ?アイツには何か分かる事があるんじゃ無いか?俺には全く分からんが」
──すみません、話が逸れましたね。最後に彼女はどんな人物だと思いますか?
「正直生粋のマッドサイエンティストってイメージ。だがなぁ、正道から聞いた話だとある時から今の性格になったらしいんだよなぁ。案外、それほどマッドじゃないのかもしれん」
──ありがとうございました。
究極メカ丸。
「蒼崎橙子カ。人となりについては詳しくないガ、術式についてならば多少は分かル」
──術式ですか。言われてみればみなさん術式に関することは答えていませんでした。
「あの人の術式は構築術式だがかなり幅があル。真依には悪いが比べ物にならないほどにナ。その中には人形を構築シ、操る事も入っているがそれすらオレより高レベルダ」
──とても高い技量を持っている、ということですか。
「高い術式や呪力の制御能力に加えテ、無尽蔵と思えるほどの呪力総量、極め付けに殺しても死ななイ。能力だけで言えば間違いなく特級ダ」
──ありがとうございます。新たな視点でした。最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「そうだナ、研究者でもあり芸術家でもあると言ったところカ。呪具や記録されている拡張術式を幾つか見ればわかるガ、全て効率的に作られているというわけでもなイ。それどころか非効率な部分さえあル。だから研究者というだけで無く芸術家的な頑固さも持ち合わせていると考えタ」
──ありがとうございました。
「…ところデ、オマエは誰なんダ?」
七海建人。
「蒼崎先輩ですか。」
──はい。色々な方にインタビューしているんです。
「なるほど。ですが私は彼女についてほとんど知りませんね」
──確か一つ上の先輩でしたよね?
「えぇ、在学期間が被ってはいましたが任務以外のほとんどの期間自室にこもっていたようでしたし、私は彼女の興味の対象ではありませんでしたから」
──今まで伺った話と合わせて考えると、極端な研究者気質なのでしょうね。最後にですが、彼女はどんな人物だと思いますか?
「研究者としてはもちろん、呪術師としても超一流と言って差し支えありませんね。興味のないものなどへの徹底的な無関心は欠点と言えると思います。総じての評価なら、極めて優秀ではありますが性格その他に多大な問題あり、と言ったところでしょうか」
──ありがとうございました。
家入硝子。
「橙子について?物好きな奴もいたもんだね」
──呪詛師認定された後、数多の追手を撃退し続け、その後更に異例の呪詛師認定解除。かなり注目されていても可笑しくないと思いますが?
「まぁ実際、一時期は随分と注目されていたが…あの性格にあの行動。何人か半殺しにされた後はすぐに落ち着いたよ」
──それでも何人かは半殺しにされてるんですね…気を取り直して、貴方は彼女の同期と聞いていますが、学生時代の彼女はどんな感じでしたか?
「初めは今と違って真面目な奴だったよ。私や五条なんかより夏油に近かったかな。
──今とは真逆な人物に聞こえますね。最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「そうだな、学生時代の橙子を知ってる人はかなり変わったって言うけど本質的な部分はそんなに変わってないと思う。ま、変わっていても変わってなくても、たった3人しかいない同期だ。できれば生きていて欲しいとは思うよ」
──ありがとうございました。
「…なんであいつの事、話す気になったんだ…?」
庵歌姫。
「蒼崎?嫌なこと思い出させるわね…」
──嫌なこと、ですか?
「もう聞いたか分かんないけど、アイツ3年の冬ごろまでは硝子と同じでカワイイ後輩だったのよ。研究に熱中するのは変わんないけどね」
──家入さんからも彼女がかなり変わった、という話は聞きました。しかし2年の冬というのは初耳ですね。その頃に何かあったのですか?
「やばっ、口滑らしちゃった…。ま、まぁ大丈夫よね、私も詳しく知ってるわけじゃないし。コホン…で、何があったのか、よね。私も詳しく知ってるわけじゃないけど、2年の春頃からあいつらの様子がおかしくなってたのよね。まぁ多分嫌な任務に当たったとかだったんでしょ。それからしばらく経って後輩が1人亡くなって、特に夏油の様子がおかしくなってた。その後の夏油の離反のちょっと前かな。私を治療した後すぐにアイツから電話かかってきてたの。でもその時の蒼崎の様子がかなりおかしかったのよ。かなりハイテンションな感じで何か捲し立てて一方的に通話切ってたわ」
──彼女がハイテンションになるとは、余程の事があったのでしょうね。最後に、彼女はどんな人物だと思いますか?
「そうね、呪術師の皮を被った呪詛師って所じゃない?あくまで例えで、マジな呪詛師って訳でもないわ。あの人意外と俗っぽいところもあるの。合体ロボとか好きだったり、なんだかんだ文句言いつつ支払いとかはしっかりしてたり」
──ありがとうございました。
夏油傑。
「橙子のことが聞きたいなんて随分と珍しい人もいるんですね」
──個人的に気になったというのもありますが、ある程度需要はあるんですよ。初対面では、どんな印象でしたか?
「初めは悟も私もかなり舐めてかかってましたよ。特級術師とハズレもいいところの術式の四級術師。正直守られる側だと思ってました。でも、そんな人物が同じクラスにいてあの5歳児が大人しくしてるはずがない。かなり煽ってましたね。彼女は後から後から全部キッチリやり返してました。私にもしっかりとね」
──やり返した、といっても正攻法では無理ですよね?
「私はともかく、悟相手は無理ですね。橙子はあれでかなり悪辣な事を思いつくんです。食べ物にたっぷりわさびを混ぜたり、呪力を使わない人形で不定期に膝カックンを仕掛けたり。そんなこんなで争ってるうちにいつの間にか橙子も特級レベルで、認めざるをえなかったです」
──五条さんと蒼崎さんの性格からして、かなり熾烈な争いだったでしょうね…。では、最後に彼女はどんな人物だと思いますか?
「橙子はどちらかと言えば優しいと思いますが…。まぁいいです。彼女がどんな人物か、でしたね。彼女も私と同じ理想を持っていて、術式運用などの面ではかなりの発想力がある。総じて尊敬、信頼できる仲間といったところですかね」
──ありがとうございました。
五条悟。
「橙子のことを聞きたいぃ?」
──はい、今色々な方にインタビューしてまして…
「そういうのめんどいからパスで」
──あっ、ちょっ…!
天元。
「珍しく客人が来たと思ったら更に珍しいことを聞くね」
──貴方なら、彼女の事も詳しく把握しているのでは無いかと思いまして、参った次第です。
「彼女が国内にいた時の事なら分かる。だけど海外での事は分からない。私の力は及ばないからね」
──それだけ分かれば十分です。お聞かせ願えますか?
「今までのインタビューで大体彼女の人柄などについてはおおよそ想像できると思う。だから私だけが言えることにしよう。これは本人すら知らないことだけど、彼女の魂はこの世界では無い別の世界から流れ着いたようなんだ」
──つまり、彼女は異世界の存在だと?
「そうだと私は思っている。彼女以外の人間とはそもそも規格が違っているけど、どうにかして魂の規格をこの世界に合わせた。海外のコンセントに変換プラグを使って日本でも使えるようにした、という感じかな?」
──なるほど。ありがとうございました。
──次の方は…
「お前か」
すぅーっと、血の気が引いた事をハッキリと感じる。ふと、自分の命の紐を誰かが握っていることを知ったような、驚愕と、困惑と、恐怖と、納得が入り混じった感情。
「……中々面白い存在だな。並行世界…異世界…どれも違うな」
真っ直ぐ、瞳を覗き込んでくる彼女から目が離せない。全身が脳からの命令を拒否しているかのように硬直してしまう。
「本来より強度が低い世界なら多少は干渉できるのか?」
瞬きすらできず耳に入ってくる音を言語として認識できない。
「…ふむ、知りたい、か。意思がいくつも混ざってるな。言うなれば集合無意識のアバターと言ったところか」
ばたっ、と仰向けに倒れてしまったようだがそれでも体は動かず、聞こえてくる音も分からない。
「まぁいい。ほら、さっさと帰れ。観測してるだけならどうでも良いが介入されると排除するしかなくなるからな」
あれ、わたし、きえ…
「アバターは消しておく。もう一度観測するのか、他の世界を観測するのかは知った事じゃないし止めることもできないが介入はもうするな」
「いつか手痛いしっぺ返しをくらうことになってもおかしくない」
「このまま見てる限りは繋がりが残るからな。早く、次の画面に行けよ」