彼女たちのコズミック・イラ   作:Scorcher

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第二部の序章です。キラとラクスがロマンティクス(意味深)しているだけです。

実はしっかりと“最中”を書いてから、それをカットした上で投稿をしています。本編終了後なので中々に自由にセンシティブなシーンを書き殴っているというもの。

次回はコノエ艦長とハインライン大尉というアラフォーとアラサーのおじさん2人が頑張る回です。全力でタイトルに反している気がする。


Phase20:2人きりの夜明け

C.E.75:オーブ連合首長国海岸

 

漆黒の宇宙から青き星へと落ちてきた、自由を冠した剣と翼。キラとラクスを乗せたその機体は、2人が慣れ親しんだ地へと降り立っていた。

 

「お疲れさまでした、キラ。」

「ラクス……」

 

機体の翼を休ませ、ようやく安息を手に入れたキラに対して、その傍らにいたラクスはそう労いの言葉を掛ける。そして彼女は、彼の身体を強く抱きしめるのであった。

 

「キラ……本当に、ごめんなさい。そして、ありがとう。」

 

すれ違い続けていたこと、急ぎすぎていたことへの罪悪感。ラクスはキラを強く思えば思うほど、彼のことを遠い存在だと感じていた。

 

「もういいんだ。全て終わったことなんだし。僕はこうして、いま君がここにいることだけが嬉しいから。」

 

以前と変わらず、彼らしい言葉を口にしながら、キラはラクスの身体を強く抱き返す。いつの頃からか止まっていた彼の時間は、ついに動こうとしていた。

 

 

地上へと着陸した機体から降り、月明かりが眩しく、数多の星が煌めく夜の海岸を並んで歩くキラとラクス。ファウンデーションによる武装蜂起は女王アウラ・マハ・ハイバルと宰相オルフェ・ラム・タオの死亡によって鎮圧されたといっていい状況であった。

 

しかしそれが、コンパス総裁であるラクス・クラインの地球上を闊歩していい理由とはなっていなかった。

 

「本当にいいのかな?僕はともかく、ラクスが行方不明になっているのは、さすがに不味い気がするんだけど……」

「そうですね……きっと今頃、コンパスのみなさんだけではなく、世界中の人々がわたくしを探しているのでしょう。」

 

不安げな様子のキラに対して、ラクスは彼の顔を見ながら悪戯っぽさに溢れた笑みを浮かべる。それは全ての責務から解き放たれた、ラクス・クラインという女性がキラに見せる笑顔であった。

 

「キラほどではないにしても、わたくしも少し疲れました。キラと一緒に、少しばかりの休暇を希望します。」

「えっ……!?僕も一緒に?」

「もちろんです。わたくしが休む時は、キラも一緒に休まないとダメですから。それくらいでないと、あなたはろくに休もうとしませんから。」

「うぅぅ……ごめん。」

 

たとえすれ違い、心が離れていた時でも、ラクスはキラのことを見続けていた。彼が男として彼女を避けようとも、兵士として戦いに明け暮れていようとも。彼女のキラを想う心は決して変わっていなかった。

 

「ですが、休暇を取るにしてもこの格好では全く休まりませんね。」

「うん……パイロットスーツって、割と身体にくっ付く感じだから。」

 

とりわけラクスの着用していたスーツは、コンパス製としては身体の凹凸が際立つ作りとなっており、傍にいたキラは目のやり場に困るような状態であった。

 

「ねぇラクス。そのパイロットスーツって、今回出撃をするために新調したものかな?」

「ええ。急を要した際、わたくしがキラに直接プラウドディフェンダーを送れるようにと、ハインライン大尉に頼んで作ったものですわ。」

「ハインライン大尉の……!?一体どんな趣味をして……いや、それよりも……じゃあ採寸とかもあの人に……!」

「ち、違いますわ!そちらは女性クルーの方にお願いしました!その……男性の方に測られるのは、さすがに恥ずかしいですから。」

 

ラクスはモビルスーツの複雑な操縦経験こそなかったものの、輸送という名目で機体操作は体験していた。それは他ならぬキラの頼みであったため、彼も多くの事情は把握してもいた。

 

「いや、だったら前にジャスティスに乗って、エターナルからオーブへ降りた時に来たスーツがあったんじゃ……」

「あれは……!確かに、まだ残っていましたけど……」

 

キラが口にした疑問に対して、ラクスは頬を赤くして口籠る。基本的に彼女は羞恥心が少なく、肌を多く見られて程度では動じないラクスが動揺する姿に、キラは訝しい目を向ける。

 

「ラクス?どうかしたの?」

「キラにだったら……言わなくても分かると思うんですけど。あれからもう、2年も経っているのですから、わたくしの身体もその……よ、より女性らしさを持ってしまって……」

「あぐぅっ……!?ほ、ホントにごめん!そういうつもりで聞いたわけじゃないんだ!」

 

パイロットスーツを新調する必要がある程度に、ラクスの身体は女性らしさを増していた。しかし、そのことにキラが気付いたのは、久方ぶりであるどころか、初めてといってもいいほどなのであった。

 

「とにかく、ハインライン大尉には申し訳ありませんが、わたくしはもうこのスーツを脱がせていただきます。」

「ぬ、脱ぐといったって……代わりに着るものはフリーダムの中にだってないから……うぅっ!?うわあぁぁぁっ!ら、ラクスっ!?」

 

そう言いながらラクスがスーツを脱ぐと、瞬く間に上半身は何も着けていない姿となり、彼女自身が口にした、女らしさの増した豊満といって差し支えない乳房が露わとなってしまう。そうした彼女の姿と行動に、キラは思わず叫び声をあげる。

 

「どうしてそんな格好になるんだ!?」

「別に誰かに見られているわけではありませんから。気にする必要もないですわ。」

「いや、その……僕が目の前に……」

 

キラの視線を一切気にすることなく、ラクスは下半身も窮屈さから解放されるため、何食わぬ様子でスーツから足を抜き去り、彼の前で一糸纏わぬ姿を曝け出すのであった。

 

「あ、あの……ラクス、その……」

「キラも早く脱いでください。あなたもわたくしも、このようなものを着ている以上、未だ責務から解放された身とは言えません。さぁ、わたくしもお手伝い致しますわ。」

「いや、自分で脱げるから……じゃなくて、どうして裸になる必要があるんだよ!?」

 

そう言葉を口にするラクスによって、半ば強引に身に纏っていたパイロットスーツを脱がされていくキラ。そして、彼もまたラクスと同様に、月明かりが差し込む海岸で一糸纏わぬ姿となってしまう。

 

「あうぅっ……ら、ラクス……!」

「これでやっと、キラとわたくしは対等になれた気がしますわ。さぁ、キラ……もっと互いの温もりを、前よりももっと感じ合いましょう。」

 

そう言いながらラクスは、邪さを一切感じさせない柔らかな笑みを浮かべて、キラの身体を包み込んで触れ合う。そうした彼女を前に彼もその抱擁を受け容れて、互いの肌を重ね合わせるのであった。

 

 

 

 

ひとしきり思いをぶつけ合った後、キラとラクスは生まれた姿のまま日が昇る海岸線を並んで見つめていた。

 

「あら……もう朝になってしまいましたわ。」

「うん、夜通しずっと……ラクスと一緒だったら。」

 

互いに出すものを出し尽くし、既に2人は冷静さを取り戻していた。あまりにも激しい一夜を共に過ごしたため、彼も彼女もその姿に相応しく、まるで生まれ変わったような気分で夜明けを迎えていた。

 

「キラ、何か気になっていることがありますか?」

「どうして、そう思うの?」

「わたくしもきっと、キラと同じことを考えているはずですから。」

 

キラとラクスは互いの心を覗き合うことは出来ず、言葉を交わし身体を重ね合わせなければ思いを分かち合うことは出来なかった。そして彼女は銀の指輪を着けていた右手薬指を握り、彼に対して話しを切り出す。

 

「なぜ彼らが……オルフェとアウラ陛下、ファウンデーション王国があのような行動へと至ったのか。デュランダル議長が世界に示したデスティニープランとも異なる、世界の支配を目指す道を選んでしまったのか。そんなことをキラも考えているのでは?」

 

ラクスの問いに対して、キラは彼女の手を強く握り締めて、その言葉に肯定の意を示す。そして、キラはラクスに言葉を返す。

 

「本当に、どうしてだったんだろう。あんなことをしても、きっと誰も救われないはずなのに。こんなにたくさんの人を傷つけて、多くの血を流しても……」

 

ラクスの手を握り締めたキラの手は震えていた。未だに彼の心には、ラクスと運命で結ばれていたオルフェの言葉が残っていた。ラクスとの最中であっても、彼の名前が出てしまえばキラの心は穏やかなものではなくなり、決して健全ではない昂りを見せるほどであった。

 

「キラ……怒らないで聞いていただけますか?」

「そんなの……言われてみなきゃ分からないよ。」

 

言葉での保証をしないことが、キラのラクスに対する信頼の証でもあった。そうしたキラの答えを聞いた彼女は、彼に対して言葉を続ける。

 

「彼と……オルフェと精神を同調させた時、わたくしの中に彼ではない人の思いも流れ込んできていました。」

「オルフェ……以外の?」

 

キラは呆気に取られつつも、申し訳なさそうに言葉を紡いだラクスの横顔を見つめる。彼女は小さく頷きながら、さらに言葉を口にしていく。

 

「とても大きな……わたくしに対する大きすぎる感情。決して彼一人のものではないと、わたくしはすぐに理解しました。」

「ラクスに対する……それってつまり、彼以外の誰かがラクスに対して強い思いを抱いていた……ということ?」

「それでも……おかしいんです。イングリットさんがオルフェに抱いていた思いとも、似ているのに何かが違う。でも、決して嫌な気持ちにもなれないのです。」

 

キラと繋いでいた手を離し、自らの身体を抱くようにして震えるラクス。その思いを強さも、それが誰のものかも察しながら、彼女は理解に苦しみ恐れを抱いていた。

 

「オルフェの抱いていた思いは、彼のものだけじゃない。わたくしに注がれていたあの思いの強さは、きっと彼女の……アウラ陛下のものだったんです。」

「あの人の……!?どうして彼女が、ラクスのことを……!」

 

首を横に振ったラクスの身体を咄嗟に抱き締め、不安に駆られる彼女を落ち着かせようとするキラ。そんな彼の腕に手を添えながら、ラクスは強い覚悟を秘めた瞳で昇る太陽を見つめる。

 

「わたくしにはまだ、知らなければいけないことがあるようです。この世界で生きるために、キラと共に前へと進むために、わたしがわたしであるために……彼女たちの真実を。」

 

キラに抱き締められ、ラクスの身体は震えが止まる。恐れを抱くことなく前へと進む強さ。そして彼女は彼の温もりに甘えるように、女らしさを纏って声を上げる。

 

「それではキラ、今度はわたくしを慰めていただけますか。」

「うん……え?えぇっ!?ちょっ……なんでそうなるの!?いやっ……ダメなわけじゃないけど、もう朝だからそういうことはもう……」

「こうして本当の意味で2人きりになれる機会なんて、次はいつになるか分からないのですよ?そういうことを、あなたはしっかり理解していますか?」

「いや……もしそうだとしても、もう色々と僕も限界が……あうっっ!?」

 

そうしたキラの言葉を遮るかのように、ラクスは彼自身を握り締めて求めようする。既に2人を照らしているのは数多の星々と月光ではなく、オーブに夜明けを告げる太陽の光でもあった。

 

「ラクス!女の子がこんなはしたないことを平気でしたらやっぱりダメだ!」

「わたくしはもう女の子ではなく女です。いつまでも子ども扱いしないでください。」

「そんなつもりじゃ……あっ、ちょっ……本当に今は……んっ?」

 

そうした押し問答を繰り広げていると、キラもラクスも上空から飛来する何かに目を向ける。2人とも警戒をしてはいなかったものの、格好が格好なだけに危機意識だけは芽生えているのであった。

 

「あれは……デスティニー!?シンが僕たちを宇宙から探しに……!」

「あらあら、こんなところを見られたら大変ですわ。速やかに済ます必要が出てきてしまいました。」

「いやいや……済ます済まさないじゃなくて、早くパイロットスーツを来てフリーダムに戻らないと……あれ?」

 

一晩消息を絶っていたキラとラクスを探索するため、戦闘を終えたシンが搭乗しているであろうデスティニーがオーブの上空へと飛来していた。しかし、機体はある程度接近したところで、2人のいた海岸から離れていくのであった。

 

「飛んで行ってしまいましたわ。一体どうしたのでしょうか。」

「いや、これは多分……僕とラクスが何をしていたのか分かったからじゃ……」

 

見る見るうちに顔が青ざめていくキラ。一方のラクスは邪魔者がいなくなったという感覚で、今度は自らキラの身体へと抱き着く。

 

「ちょっ……ラクスそんな……!本当に僕はもう……」

「もうわたくし、今日はキラから離れませんから。日が暮れるまで、ずーっとあなたを抱き締めて過ごすことにしましたので。」

「そんな無茶苦茶な……!せめて何かを着てからじゃないと……あぁっ!ラクスまたそんな……あっ、あぁぁぁぁぁぁ……!!!!!」

 

戦いを終えて一時でも重責から解放されたキラとラクス。しかし、ラクスはともかく、キラが本当の意味で自由を得られる時は、もうしばらくは来そうにないのであった。

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