彼女たちのコズミック・イラ   作:Scorcher

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ヒルダ隊長代理がラクスの妊娠をシン、ルナマリア、アグネスに報告するだけの話です。そんなおめでたムードで本作は終了……とはいきません。

本作では修羅場と化した以降の話を書いておりません。どうせ18禁展開でしょうし、3Pとか書くの面倒だし。

次回はあとがき……ではなくおまけパートです。もう少しだけ話が続きます。


Phase43:覚醒ルナマリア・ホーク

C.E.76:ミレニアム艦内

 

「というわけだから、ラクス様はもうしばらくすると産休に入る。その間は総裁不在のままコンパスの活動を継続することになる。いいね。」

 

再び不在となったキラの代わりとしてヤマト隊の隊長代理となったヒルダが、シンとルナマリア、そしてアグネスの前で今後の説明をしていた。

 

茫然とするシン、口をぽっかりと開けているルナマリア、些か不機嫌ながらも驚いてはいないアグネス。三者三様な反応を見せる3人に対して、ヒルダは再び声を上げる。

 

「どうしたんだい?何ボーっとしてんのさ。」

「いや、そんなことを作戦の説明並みに軽く言われたら……」

「ヒルダ隊長こそ、どうしてそんな冷静に受け容れているんですか……!?」

 

ヒルダの問いかけにシンが唖然としたまま声を上げ、ルナマリアが問い返してくる。2人はあまりにも突然の話に、驚き以上に困惑で言葉を失おうとしていた。

 

「私だってラクス様から聞かされた時は驚いたよ。それもキラに知らせる前だったからなおさらね。でもまぁ……別に悪い話じゃなくて、嬉しい話だったから、そんなに驚くもなかったんだと思うよ。」

 

ヒルダはラクスから真っ先に妊娠の話を切り出されたことを、後々から考えて喜ばしいことだと感じていた。彼女たちの間には強い信頼関係があり、ヒルダは同性としてラクスの公私における支えを担うようになっていた。

 

「ま、男と女がずっと一緒にいて、そういうことにならないほうがおかしいでしょ。どこぞのお子ちゃまカップルみたいに、なーんにも出来てないほうが不自然だってものよ。」

「なぁっ……!」

「くぅぅ……アグネス!」

 

アグネスがシンとルナマリアを引き合いに出し、2人を煽り立てるように声を上げる。その言葉に戸惑い表情を浮かべるシンと、苦々しい表情を浮かべるルナマリア。他者の性事情へ踏み込もうするアグネスに、2人は不快感を露わにしていた。

 

「どうしてこうあんたたちはいっつも……まぁとにかく、あの2人は時機を見て生活の拠点をプラントからオーブに移す予定だ。アプリリウスに住居を構えていても、たぶん休まることはないだろうからね。」

 

アコード事変のような強大な戦力を必要とする紛争解決は少なくなっており、コンパスに求められるのは小規模な戦力を複数同時に運用する能力となりつつあった。

 

さらにはアコード事変に先んじて発生したフリーダム強奪事件の経緯を踏まえて、あまりに強力な個の力を恒常的に運用することもまた、コンパス参加国から懸念が示されていた。そして、その力の中にはキラだけではなく、総裁であるラクス・クラインも含まれているのであった。

 

「ま、普通の任務だったらキラ隊長がいなくたって、俺たちでどうにでもなるからな。」

「そんなこと言って……ホントはあの人がいなくて寂しいんじゃないの?いっつも金魚のフンみたいにくっ付いて回ろうとしてるんだから。」

「なんだとこのぉっ!」

「あーはいはい、喧嘩はほどほどにしておきなさい。」

 

シンとアグネスがいがみ合ってもいても、既にルナマリアは積極的に止めようとはしなかった。そんな彼女がヒルダのほうへ向き直ると、些か真剣な口調で話を切り出す。

 

「ヒルダ隊長。一つお伺いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」

「ん?ああ、なんだい?」

「隊長は確か、シンのことをどう呼んでいましたっけ?」

「えっ……?」

 

ルナマリアの問いに対してヒルダは顔を僅かに強張らせ、戸惑う様子を見せる。さらにその近くで取っ組み合っていたシンとアグネスもまた、そうした2人のやり取りに掴み合ったまま顔を向ける。

 

「前は確か……ボウズって呼んでいたはずなんですけど、最近なんだか、隊長がこのバカのことを名前で呼んでいたような気がして……」

「あー……ええっと……それは……」

 

同性からの鋭い勘を突き付けられ、ヒルダは目を泳がせて口籠る。そんなヒルダを見兼ねたアグネスが、冗談半分といった様子でルナマリアに向かって声を上げる。

 

「そんなの簡単な話じゃない。ヒルダ隊長とこいつがデキてるからに決まってるでしょ?ま、あんたの気のせいだろうし、そんなことあり得ないと思うけど。」

「………」

 

そうしたアグネスの発言に対し、ルナマリアは目が据わったまま彼女に視線を向けていた。さすがに冗談が過ぎたのだと感じたアグネスは、すぐにルナマリアに対して言葉を続ける。

 

「い、いや……本当にあり得ないとこだと思うわよ。うん、ホントに。そんなことどう考えたってあり得な……」

「……シン。」

 

目が据わったルナマリアはそのまま恋人である男に視線を移す。そして、彼の名前をだけを呼ぶと弁解を要求する。

 

「ご、誤解だってルナ!俺とヒルダ隊長がそんな関係なんて!ただ一晩だけ隊長の部屋で……」

 

次の瞬間、ルナマリアの中で“何か”が弾けたことを、その場にいた全員が感じ取る。

 

「え゛え゛っ゛……!?えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!?????」

 

だが、そうしておおよそ人とも思えぬ驚嘆の声を上げたのは、アグネスただ一人であった。それ以外の3人はその場で凍り付いたかのように制止しており、驚きの声を上げたアグネスはシンの身体を離してその場にへたり込み、得体の知れない恐怖に身体を震わせていた。

 

「あ、あのぉっ……わわわわたし……機体の整備とかモビルスーツの整備とかジャスティスの整備とかで忙しかったから……それじゃあ!」

 

脱兎の如く、その場を離脱する月光のワルキューレ。そしてルナマリアの視線は、逃走したアグネスとじゃれ合っていた恋人だけに注がれる。

 

「シン、少し大事な話があるの。いいかしら。」

「は、はい……」

 

かつては狂犬、キラのもとでは忠犬と称されていたシン・アスカ。しかし、恋人であるルナマリアの前で、彼はいま小型犬のような雰囲気を醸し出しているのであった。

 

「それからヒルダ隊長。」

「ぎぐぅぅぅっ!?」

「出来れば隊長もご一緒してもらえると助かるのですが、よろしいでしょうか。」

 

シンを犠牲にしてその場を脱しようとしていたヒルダ。しかし、ルナマリアの眼光は正確にヒルダを射抜いており、彼女が片目に着けていた眼帯の紐が千切れてしまうのであった。

 

「あ、ああ……そそそそうだね。やっぱり、私も付き合わないとダメ……だよね。」

 

戦場では決して恐れることを知らないヒルダが、全身を恐怖で支配されていた。しかし、後悔はしていなかった。その両目で彼女は自身が気に入っていた少女と、子犬のように怯える少年の2人を見つめ、新たな戦いの場へ向かおうとしていた。

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