転生して無能貴族に!? 赤子で捨てられ美少女悪魔に拾われるも超絶過保護だった件〜気づけば悪の道に、そして魔族の王って正気ですか? 俺が望むスローライフはまだ遠いようです〜   作:冬ノゆきね

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16話 努力の結晶

 食堂に入ると、さっきはなかったはずの料理が皿に盛られていた。

 焼いた卵にベーコンのような物。サラダ、デザートとしてフルーツも添えられている。

 

 席に着いて待機してると、見慣れない服を着た姉ちゃんが現れた。その姿はまるでメイドさんだ。

 胸の谷間が露わになり想像以上に破壊力がすごい。

 二つの山は歩くたびに揺れ、見るからにムチムチとした柔肌は白くてきめ細かくとても綺麗だった。

 そんな物見せられたら誰しも反応してしまう。

 俺は慌てて下を抑えた。

 

「あれ? もしかして……」

「何だよ……それよりスープは?」

「あ、そうだった! ネオ君に見せたいがあまり急いできたから。ちょっと取ってくるね」

 

 行ってしまった。

 ていうか、何だよあのメイド服は!?

 めちゃめちゃ似合ってんですけど。

 サラの屋敷に行った時もメイドを見たけど、姉ちゃんのメイド姿はその比じゃない。

 まるで天使が舞い降りたみたいな感じだ。

 とは言っても、姉ちゃんは正反対の存在――悪魔だけど。

 

「お待たせ。お姉ちゃん特製の冷製スープだよ」

 

 そう言って姉ちゃんはスープを皿に注いだ。

 これで朝食の準備は整ったみたいだ。

 姉ちゃんが席に着いたのを確認して、俺は冷製スープを口に含んだ。

 魚介類や肉類で出汁を採ったのかと思ったが、野菜の甘味が伝わってくる一品だった。それにトロ~ンとした何かがスープに入っている。

 無味無臭で食感だけが口の中に残る物だ。

 

「スープには何が?」

「えっと野菜がたくさん、それとお姉ちゃんの愛情。あとは乳――」

「姉ちゃん頼む、それ以上は!」

「ええ~これが一番の隠し味なのに」

「世の中には知らない方がいいこともあるんだ。姉ちゃんわかってくれ」

「せっかくヤギのお乳入れてみたのに。トロッとして美味しくなると思ったのに味しないよ~」

「煮込み過ぎで野菜の風味が強く出たのかもな」

「ネオ君天才~! でも大丈夫? さっきからお腹押さえてるけど」

 

 さっそく筋トレの効果が出てきたみたいだ。

 腹筋が痛い、やはり俺はちょっと特殊な体質なのかもしれない。

 本当ならこんなすぐに筋肉痛を起こすことはありえないはず。早い人でも数時間経ってからだとどっかで聞いたことがある。

 

「それお姉ちゃんが治してあげようか?」

「いやいい、これは努力の痛みだ」

「またまた遠慮しちゃって」

 

 姉ちゃんは自分の席を立ち、俺の側まで駆け寄ってきた。

 そして俺の腹部に手をかざすと、緑色の光が小さな粒となって体内に入っていくのを感じる。徐々に筋肉痛の痛みを和らぎ、腰を捻っても椅子から立ち上がっても痛みを感じなくなった。

 

 しかしここで問題が起きた。

 本当に筋肉痛が収まり喜んでると何やら違和感を感じた。

 服をめくると大喜びしたはずのシックスパックが跡形もなく消えてしまったのだ。

 

「姉ちゃんどうしてくれるんだよ! せっかく……せっかく腹筋が割れたのに」

「ふーん、そうだったの?」

 

 他人事のように話を流す姉ちゃん。

 確かに俺のことで自分のことじゃないから興味が湧かないのも当然だ。

 それに治癒されたってことは、強くなるはずの筋肉がまた元に戻ったのかもしれない。 

 もしそうだとしたらマジで早朝からやった筋トレ時間が無駄な時間だったということだ。

 

「俺はもう学園に行くから」

「ネオ君怒ってる?」

「ああ、その通りだよ」

 

 俺は食堂を出て自室に戻った。

 鏡の前で制服に着替えると、(かばん)を持って屋敷を出た。

 普段は姉ちゃんと一緒に登校している。

 けど今日はもうそんな気分にはなれない。

 

 屋敷から歩いて数分。

 学園に着くと、真っ先にサラがいる教室に向かった。大人しく静かな彼女は今日も一番後ろの席で一人きり。

 挨拶をしようと声を掛けようとした、その時だった。

 

「ねえ君、一人で寂しくないかい?」

「えっと……あなたは?」

「ああ自己紹介がまだだった。オレの名はヤクモ・タケバヤシ。この学園、いや王国中が知ってる勇者様だ」

 

 とサラに名乗る男。

 短髪な黒髪に眼鏡をかけたちょっとインテリ風な男だ。でも話す感じバカそうにだんだん見えてくるのは、なあぜな~ぜ?

 

 それにここは異世界だ。

 俺が転生してこの世界にいるぐらいだ。そりゃ他の転生者がいたとしても驚きはしない。

 でも名前からして転生者ではないのか? 

 俺は赤ん坊の時からこの世界に住んでるが、名前が日本人のままとなると転移者なのかもしれない。

 

 しかし勇者ってやっぱいたのな。

 俺が魔王の器だって話だし、変に目立たない方が得策かもしれない。

 

 そう思った俺はすぐにその場を立ち去った。

 すると誰かが後を付いてくる気配があった。

 さっきの自称勇者かとも思ったが、実際は走って息を荒くしたサラだった。

 

「お、おはようございますネオ」

「おはよう、朝からさんざんだったな」

「見てたんですか? なら声をかけて欲しかったです」

「わるいわるい、けど大丈夫だったか。自称勇者がサラに興味深々だったが」

「自称ではありません。あの方は正真正銘この国の勇者様です。陛下が隣国との争いに決着をつけようと召喚なされたのです」

「そうだったのか……まあいいや、俺関係ないし」

「関係大アリです。勇者様はどうやら武術大会に出場なさるとか」

 

 これは参ったな。勇者となんか対戦相手になってみろ。どんなチートスキルや魔法、肉体を手にしているかわからん。

 そんな何の情報もないチート勇者にどう勝利しろっていうんだ。

 

「ここは学園長に――」

「お姉ちゃんに頼ってくれないの?」

 

 振り返ると、人の姿をした姉ちゃんがそこにいた。目が怖い、朝一人で登校したのを怒っているみたいだ。

 

「お姉ちゃんね悲しかった。本当に一人で学園に行っちゃうんだもん」

 

 ムスッと頬を膨らます姉ちゃんは小動物のようで可愛かった。だがこの表情に騙されてはいけない。絶対、何かよからぬことを考えている。

 虫の知らせと言うのか、人間の危機察知能力は半端じゃない。嫌な予感がしたら間違いなくその予感に従って対策するなり、逃げるなりした方がいい。

 大抵はその予感が当たるからだ。

 だからこそ先に謝って置かないとややこしい事態になりかねないのだ。

 

「姉ちゃん俺が悪かったよ、ごめん」

「いいのよ、お姉ちゃんもちゃんと話を聞いてから治癒魔法かけるべきだったの。ごめんね」

 

 そう、その通り姉ちゃんよくわかってるじゃないか。

 何かするときは、人に話を聞いてからだ。

 

 という、いつもの感じで、俺と姉ちゃんは仲直りしたわけだけど、問題は他にあった。

 

 六日後に控えた例の大会についてだ。

 運が悪ければ、勇者と対峙することになる。

 そうなると学園長からの指示。

 生徒会長――ユリアナに勝利する、といった目的を果たすのも厳しい。

 でも、こればかりは個々の運次第だからどうしようもできない。

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