転生して無能貴族に!? 赤子で捨てられ美少女悪魔に拾われるも超絶過保護だった件〜気づけば悪の道に、そして魔族の王って正気ですか? 俺が望むスローライフはまだ遠いようです〜 作:冬ノゆきね
そして武術大会当日。
この六日間色々と対策をしてきた、と言いたいところだが何もしていない。
結局、筋トレも続かず、英気を養うだけでどんどん時間が過ぎていった。
それに緊張からか昨晩あまり眠れなかった……。
気づいたら朝になっていて姉ちゃんが起こしにきてくれた。
「ご飯よ!」
俺を呼ぶ声。
朝から姉ちゃんは元気だ。朝飯を作り、学園に行く支度までしてくれる、それに屋敷の外はもちろん部屋の掃除までやってくれるのだ。
こんなできた姉ちゃんは世の中どこを探してもいない。
寝間着から制服に着替え、
そのままの足で食堂に向かうと、豪勢な食事が並べられていた。いつものように卵やサラダはもちろん、鶏を丸々一匹焼いた物が机の中央に置かれていたのだ。
香ばしくていい匂い。こんなの絶対美味いに決まってる。
「あ、ネオ君おはよう! とうとう今日だね。しっかり食べて精力つけなきゃね」
「いや、精力じゃなくて体力な。夜の試合でも始める気?」
「お姉ちゃんは朝から晩までいつでも……」
「そこ、顔を赤くするなあああ!!」
朝から下ネタはきつい。
皿に取り分けられた料理を急いで食べると、俺は
もちろん姉ちゃんも一緒だ。
今日は偉く気合の入った格好をしている。いつもより露出が多く、胸元を強調しているようにも見えるし、スリット入りスカートからは姉ちゃんの生足がチラチラと姿を見せている。
それが余計にエロい。
学園に着いてそうそう校内放送が流れた。
「ネオとその契約獣リリス。すぐに学園長室まで」
そんな呼び出しがかかった。
何の用件か、というより今日の試合についての説明かなんかだろう。詳しい話は学園長に会ってからにはなるが、どんな内容かは正直気になって仕方がない。
緊急参戦したという噂の自称勇者に関してか?
はたまた別の用件かはわからない。
俺は学園長室の扉をノックした。
「入りたまえ」
そこには……黒の魔法帽を被り、
その隣には生徒会長のユリアナの姿もあり、二人は何やら揉めている様子だ。
「学園長どういうことですか!? わたくしが勇者と試合などバカげています」
あの座っているご老人が学園長だと?
いや、この状況についていけないんだが……学園長は白銀の髪でスタイル抜群、鋭い目つきに長いまつ毛、クールな女性だったはずだ。
けど、ユリアナ言う学園長はシワシワのでヨボヨボなご老人じゃないか。
一体、どうなってるんだ?
「おお、ネオようきてくれた。少し待っておれ」
「は、はい……」
ご老人はそう言ってユリアナとの話を再開した。
「バカげていると言ったかの? 果たしてそうかの? 魔法魔術の天才児と呼ばれたお主なら勇者を負かせることも可能ではないかね?」
「相手は勇者ですよ! それも
「ほほう、いつも平民に貴族の立場を利用し、バカにし罵っているお主が弱音を吐くとはの。そんなに今の立場が大事かの?」
「いえ、わたくしが心配しているのは……もしも敗北してしまったら由緒正しきオブリージュ家に汚名を着せることになります。それだけはどうしても避けたいのです」
「なら、勝利せざる負えないの。ここで棄権するのも選択肢の一つ。しかしそれを知った周りの反応はどうなるかの?」
「それは……脅しですか?」
「さあ、どうかの」
「ふぅ、承知しました。わたくしが勇者様のお相手となりましょう。では諸々支度がありますので失礼」
曇った顔をしたユリアナは静かに学園長室を出て行った。
で、もう一度ご老人を見ると、俺の知ってる学園長の姿に戻っていた。
あのスタイル抜群の学園長に。
だけどあまり元気がないようで、ため息を吐きながら俺に優しく語りかけた。
「嫌な姿を見せたわね。あの姿、美しくないのよねぇ」
「確かにそうですけど……今の学園長はとても綺麗ですよ」
「あら、ありがとう。ネオは女誑しってよく言われるでしょ?」
「今、初めて言われましたよ」
そんな他愛もない話から始まり、本題に入るのだった。
「先程から聞いてたと思うけど、ユリアナと勇者と呼ばれる転移者をぶつけることにしたから」
「じゃあ俺は参加しなくても……」
「いえ、あなたには予定通り参加してもらうわ。念のため、ね。もしもユリアナが勇者に勝利することがあれば、予定通りあなたと対決することになるわ」
「何で突然勇者が参加を?」
「あまり話したくはないのだけど」
「はぁ……でも学園長って魔国の王代理ですよね?」
「言いたいことはわかるけど、皆に見せている姿はあの老体の姿よ。誰も悪魔とは思わないし、尚のことさら魔国の王代理とは思わないでしょう。一人の人間、あの老人の姿で、わたくしはこの国で名が通っているの。シュゲルツ・カーマインという名でね」
まあ話はだいたいわかった。
誰かがユリアナと勇者を戦わせようとしていること。
きっと何か裏がある。
しかし単なる勇者――転移者の力を見たい、そんな単純な理由という可能性もある。
「そう難しく考える必要はないわ。あなたはユリアナに勝利する、それだけを考えてくれれば結構よ」
「は、はい……」
「そろそろ時間ようね。ほら行きなさい。存分にリリスを使って魔王の器としての真価を発揮するのよ」
話は終わり、俺は学園長室を出た。