転生して無能貴族に!? 赤子で捨てられ美少女悪魔に拾われるも超絶過保護だった件〜気づけば悪の道に、そして魔族の王って正気ですか? 俺が望むスローライフはまだ遠いようです〜   作:冬ノゆきね

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19話 武術大会(前編)

 話に聞くと、この武術大会は国を挙げての大きなイベント行事のようだ。

 予算もそれ相応賭けられているようだし、他国からの参加もそこそこっぽい。

 とんでもない経済効果だ。

 試合は一日ですべて消化するみたいだが、この闘技場だけでこと足りるのか?

 

「さて一回戦、おっとこれは……最近、学園に編入し、さらには主催者であるブロッサム魔法魔術学園の学園長シュゲルツ・カーマインのお墨付き――残虐な奴隷使いネオ!」

 

 俺の紹介が終わったところで控室を出た。

 でもあれは酷すぎる。

 お墨付きまではまだよしとしよう。

 残虐な奴隷使い、だと?

 あいつふざけるのにも限度があるだろ。

 それに姉ちゃんは奴隷じゃない家族だ。

 

「姉ちゃん何かごめん」

「お姉ちゃんネオ君の奴隷になっちゃった! すごく心臓がドキドキして高ぶってきちゃう!」

「まさかと思うけど今のひどい紹介で喜んでる?」

「だってネオ君の初めての表舞台だもん」

「は、はは……」

 

 そうだ、姉ちゃんはそういう人だった。

 っと、それより対戦相手は……。

 

「そんな奴隷使いと対峙するのは――平民でありながら生徒会に所属。その強さから貴族の反逆児と恐れられた男――レノ・ライル!」

 

 二人の紹介が終わったところで赤騎士は俺にゴーサインを出した。

 初めての表舞台。楽しみなワクワクと無事勝利できるのかという不安が心の中でごちゃまぜ状態だ。

 だって初戦からまさかのレノ先輩と対峙するとは思わなかったからだ。

 そして舞台の上に立つと、みんな歓迎ムードが起こるのかと期待もしたが……。

 

「消えろ!」

「人を何だと思ってる!」

「平民の分際で!」

 

 てな感じで、まさかの罵詈雑言の嵐だった。

 絶対、あの司会者の紹介が悪かったせいだ。

 あいつ覚えてろよ。

 

「おっとまさかお前と当たるとはな。よろしく頼むぜ、ネオ」

「正々堂々決着をつけましょう。レノ先輩」

 

 やっぱレノ先輩はいい人だ。

 それにしても契約獣が色々とすごい。一見ライオンのような見た目をしてるが、尻尾が蛇になっている。

 キマイラとか言う名前の契約獣だったか?

 

「姉ちゃんあの契約獣……」

 

 話しかけても反応がない。

 さっきまで隣にいたはずなのに……って姉ちゃんはどこに行った。

 まさか俺を置いて逃げたのか!?

 嘘だろ?

 俺、どうしろっていうんだよ!!

 

「では試合開始の合図が今、鳴らされます」

 

 するとシンバルを叩くような音が闘技場全体に響いた。

 

「手加減はなしだ。行くぞ! キマイラ!」

「がぅぅ……」

「おい、どうしたキマイラ。お前は怯えるやつじゃなかったろ」

 

 一体、何が起こっている。

 俺を攻める気まんまんだったレノ先輩が一向に攻めてこない。

 それにキマイラも何かに怯えている様子でその場から一歩も動こうとしないのだ。

 

「ネオ、お前何か細工をしたな?」

「俺は何もして――」

 

 レノ先輩は地面を強く蹴り、ものすごい速度で俺の懐に入った。

 マズイこのままじゃ間違いなくやられる。

 それに反応すらできなかった。

 もう避ける術もないため、大人しく目を瞑る。

 

「おっとレノ・ライル戦闘不能。よって勝者はネオ。その噂される残虐性はやはり(まこと)だった!」

 

 そんな勝利のコールに俺はゆっくりと目を開ける。

 地面を見ると、口から白い泡を吹いたレノ先輩に身体をバラバラにされたキマイラの死骸。

 俺にはわからなかった。

 一瞬で起きたできごとが何だったのかを。

 

 試合を思い返しながら控室に戻ると、俺は今起こったばかりの出来事の記憶を辿る。

 あの時、俺に特別な力が発動したわけでもなければ、よくあるピンチの時に覚醒する、みたいな感じもなかった。

 ということは、答えはたった一つしかない。

 

「やっぱり姉ちゃんが……?」

「ネ~オ君、勝ったね!」

 

 さっきまでどこにもいなかったはずの姉ちゃんが戻ってきた。

 俺の背中に胸を押し付け、にこっとして勝利を祝ってくれている。

 けれど、レノ先輩とキマイラを倒したのは姉ちゃんで、俺はいつも偉そうに言う割に自分の逃げ続ける役割すら達成できなかった。

 正直に言えば姉ちゃんが側にいないってわかった瞬間、足が竦んでその場から動けなかったんだ。

 ほんと情けない。

 言われたこと一つできないなんて。

 

「どうしたの? そんな暗い顔して……お姉ちゃんに見せてくれる?」

「…………」

「ケガはしてない。あ、もしかしてお姉ちゃんが突然いなくなったからビックリしたの?」

「ううん、次頑張ろう」

 

 ぐちぐち言っててもしょうがない。

 だから次こそは作戦通り、俺は逃げる、それに専念する。

 

 

 そしてお昼過ぎ。

 とうとうその時はやってきた、と思ったが驚きの試合結果に会場が騒然としていた。

 

 二回戦、勇者ヤクモ・タケバヤシと生徒会長ユリアナ・オブリージュの試合だ。

 試合が始まり最初はお互い引けも取らずいい勝負をしていた。

 素人の目線で見ても興奮する熱い試合だった。

 しかしあることがきっかけとなり戦況は一気に勇者のペースとなった。

 勇者は【異能】と呼ばれる魔法でも魔術でもない術を使い、巨大な大蛇を召喚したのだ。その大蛇を目の前にしてもユリアナとその契約獣妖精(ピクシー)は恐れはしなかった。だがその大蛇と勇者の強大な力の前では叶わず、ユリアナと妖精(ピクシー)は敗北した。

 

 騒然としているのも理解ができる。

 おそらく皆は、相手が勇者と呼ばれる今までは噂でしかなかった人物にユリアナが敗北するとは思っていなかったはずだ。

 

 でも俺が心配しているのは、この敗北がきっかけとなり立場が危うくならないかだ。

 まあ、両親が悪いやつじゃなかったらな~んの問題にもならないだろうけど。

 

「姉ちゃん、ある意味これって学園長に言われてたこと達成したんじゃ?」

「うん、でもねお姉ちゃんネオ君と二人で優勝とかしちゃいたいな~」

 

 姉ちゃんは戦う気まんまんのようだ。

 もうそろそろ二回戦が始まってもおかしくない。

 その時、控室に赤騎士が連絡事項を伝えにきた。

 

「二回戦の相手が体調不良で棄権になったらしい。それに準決勝の相手も外でドンパチやったせいで退場となった。お前は運がいいな、このまま決勝戦進出だ!」

「はあ? えっとそれ事実ですか?」

「当たり前だ。さっき連絡がきたばかりだからな」

 

 運がいいのか悪いのか。

 相手はユリアナを圧倒したあの勇者。

 けど、やることは変わらない、逃げるが勝ちだ。

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