転生して無能貴族に!? 赤子で捨てられ美少女悪魔に拾われるも超絶過保護だった件〜気づけば悪の道に、そして魔族の王って正気ですか? 俺が望むスローライフはまだ遠いようです〜 作:冬ノゆきね
屋敷に入ると、相変わらずというか物は綺麗に整頓され、ホコリ一つない明るい感じだった。
そして母さんに案内されたのは、応接の間。
客人をもてなす時に使う特別な部屋らしい。
「ネオちゃん少し待っててくれるかしら。お父さんを呼んでくるから」
「は、はい……」
「そんな畏まらなくていいのよ。ネオちゃんはわたくしの息子なのだから」
母さんは応接の間を出て行った。
俺はソファーに腰かけると、机の上に用意されたどう見ても高級そうな焼菓子に興味本意手を伸ばす。
クッキーと似た形状だが、触れた感触としてはふわふわとしている。それに漂うフルーツの匂い。
パウンドケーキみたいな物だろうか?
そのパウンドケーキなる物を食べようとすると、ユリアナは俺の腕を掴んで止めた。
「手を付けない方がいいわ」
「え? 何でだよ」
「美味しくないからよ」
「そ、そうなのか? でも見た目は――」
「美味しく、ないからよ!」
「ほんと食べてみないとわから――」
「お・い・し・くないからよ!」
普通、そこまで言うか?
ユリアナが美味しくないって言ったって人それぞれ味覚は違う。
それに高級菓子だぞ、美味しくないとはいえ、それなりの味はしているはず。なぜならこの焼菓子一つ買うのにどれだけの金を払うか。
宿一泊分と変わらない。
俺はユリアナの忠告を聞かず食べてみると、
「まっず、何だこの味。高級菓子とは思えないな」
ふわっとした生地は甘い。
しかしだ。中に入ってる赤い果実が何もかもを台無しにしている。まるで薬をそのまま食べている味だ。
苦くて渋くて口の中は何かまとわりついている感じがして最悪だ。
「お父さん連れてきたわよ。あらあらどうしたの? 顔、真っ青になって」
「いや、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
母さんの後ろには、間違いない父さんの姿があった。
姉ちゃんに操られ、俺を無能力だからと捨てた人物だ。容姿もあれからそう変わってはいない。
「で、君が例の悪魔リリスさんか? 妻からある程度話は聞いた」
殺伐とした空気の中、強気な態度で姉ちゃんに質問する父さん。
姉ちゃんはそんな父さんにも動じず当時してしまったことの謝罪として本当の自分の姿――人間の姿を解いて悪魔の姿となって謝罪したのだ。
そんな深々と頭を下げる姉ちゃんだが、見ていて本当に辛そうだった。というのも、悪魔は基本自分より下の者――所謂、劣等種に頭を下げるなど本来はあり得ない話だからだ。
けど、今回頭を下げているのは、俺のため、というより俺の父さんと母さんだからなのだろう。
「頭を上げなさい。確かに君はしてはならないことをした。本来、我らと息子が暮らす時間を――器がどうこうといった理由で取り上げたのだからな」
「はい、その通りです」
「しかし、亡くしたと思っていた息子をここまで成長させてくれた。きちんと相応の例はさせていただく。その意味を理解しているかね」
「はい……」
いつもの姉ちゃんなら話の途中でもふざけるのに今日はほんとしおらしいというか、素直というか、よくわからない状況だ。
父さんが言う一言一言に含みがある感じがして気分が悪くなってくる。
あの時、確かに間違った行為をしたのは姉ちゃんだ。
けど俺をここまで育ててくれたのも姉ちゃんだ。
決して父さんや母さんじゃない。
もしこの二人がひどいことを姉ちゃんに言うようなら……俺は。
「すまない、このような空気にしてしまったことお詫びする。我はアルバレア家当主――ドライグ・アルバレア。で、リリスさん息子の学費はいくらほど?」
「……え、えっと許していただけるのですか?」
「言ったはずだ。相応の礼はさせていただくと。時間は戻ってこない。だが息子は元気な姿で会いにきてくれた。成長した姿も見られた。もう父親としては充分だ」
「許してくださり感謝します。ぜひこれからはお父様、お母様とお呼びしても!?」
「構わないわよ。ねぇあなた?」
「ああ、うちの息子をこれからもよろしく頼む」
よかった、本当によかった。
悪い雰囲気にならなくて。
「ありがとう。父さん、母さん。姉ちゃんを許してくれて」
「よくここまで成長した我が息子よ。これもリリスさんのおかげだろう」
「ああ、姉ちゃんのおかげだ」
「だが言葉遣いがなってないな」
「いいじゃないですか。こうやって成長して帰ってきたのですから」
「それもそうだな。だが――」
帰ってきて祝福モードのはずだった。
しかし父さんのとある一言で空気は一変する。
「少し確認したいのだが、セレシアとは会ったか?」
「いや、俺は会ってないかな。ずっと王国に住んでたから」
「そうか……つい最近だ。お前の夢を見たようで、探しに行くと言ったきり連絡がつかない」
「突然、消息を絶ったということか……」
「その通りだ。一度、隣国に出向きお前の姿がないか探ると我が家の騎士達に告げ出て行ったらしい」
俺が帰ってきたと思ったら、次は実姉の心配か。
苦労が絶えないな、やっぱり親って常に子供の心配をする生き物なのかもしれない。
「我の情報網を駆使してもセレシアの居場所はもちろん安否を掴めない。一体、どういうことなんだ」
「あなた落ち着いてください。せっかく息子が帰ってきてくれたのですよ。せめて今日一日は……」
「そうだな、ネオ、それにリリスさん――まさかユリアナ様で?」
「ええ、私の名はユリアナと申します。ですが、家名はわけあって――」
「いえ結構です。噂ではありますが、耳にしております」
「感謝します」
「ネオとリリスさんは同じ部屋、ユリアナ様には別室を用意しておりますので、そちらをお使いください」
てな感じで、話が終わり屋敷のメイドに各自部屋に案内された。