転生して無能貴族に!? 赤子で捨てられ美少女悪魔に拾われるも超絶過保護だった件〜気づけば悪の道に、そして魔族の王って正気ですか? 俺が望むスローライフはまだ遠いようです〜   作:冬ノゆきね

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38話 対立

 姉貴を見つけたということで、俺と姉ちゃん、そしてユリアナ。もちろん姉貴もだけど。

 海洋都市アトランティアを出ようとしていた。

 

 というより、あの地下教会での騒ぎが大きくなり過ぎたのもあって、地盤が崩れ今や大変な事態となっている。

 都市の至るところに謎のテロ集団が国に破壊工作を行ったとして、大々的に報じられることとなったのだ。

 都市の取りまとめ役――マックバード知事が声明を発表したのだが、それは少しばかり、いや盛りに盛られまくった話だった。

 

 俺達がこの国の守護者である勇者ケントを暗殺し、大きな損害与え、さらには陰の権力者であるイザベル教団に歯向かったとしての罪みたいだ。

 

 確かに勇者ケントを殺した。

 で、地盤が崩れて大きな損害を与えたのも俺の――違う違う、姉ちゃんの仕業。

 イザベル教団に歯向かったことに関しては、これもまた姉ちゃんとそのエリスとやら女神のギスギスした関係によるものだ。

 

 いかにもテロリストみたいな感じで報じられてるが、俺は単に姉貴を探しにきて、巻き込まれてちょっとばかり派手にその問題を片付けただけだ。

 俺に否はない。

 

 ていうより、この国、あんな怪しげな教団と女神の言うことを信じるのな。

 まあ、それは俺にも言えることだけど。

 姉ちゃんも色々隠し事がちらほら見え隠れして怪しいからだ。

 

 そんなこともあって、早々にこの国を出た方がいいと判断した結果がこれだ。

 

「まさかネオがスパイだったとはね」

「えっと……何の話だ? サラ」

 

 ゴツゴツとした巨大な岩で形作られたその峡谷はリサベラ峡谷。

 ここでは不思議と魔物が姿を見せず、アズルレーン王国と海洋都市アトランティアの両国の貿易路として主に活用されている。

 

 もちろん道は他にもデンゼル平原と呼ばれる広々とした平原を通るルートもあるらしいが、あそこはもはや戦場と化している。

 長年に渡り、小規模な争いが続いているものの、いつどんな大きな戦に発展してもおかしくない。

 そんな場所を貿易ルートとして通る――それには商人達にとってリスクが高すぎるのだ。

 

 よって俺達も海洋都市アトランティアを出て、安心安全が保証されたリザベラ峡谷を抜けるつもりでいたのだが、そこで立ち塞がっていたのは、正真正銘ボッチ同名にして唯一の友人であり理解者――サラ本人だったというわけだ。

 

 軽装ながらも鎧を身に着け、腰には剣を提げている。白馬に乗ったその姿は、凛々しくまさに貴族令嬢そのものの姿。

 

 そんなサラが率いてる部隊の中には、見に覚えのある顔があった。名前までは知らないが、アルデンティ家の屋敷の前で俺を不審者扱いして捕らえてきた男達だ。

 いまや今かと、槍を構えては矛先を天に向け俺を睨んでいる。そんな悪いことした覚えはないけど、そもそも絡んできたのはあいつらだし、姉ちゃんが返り討ちにした程度で逆恨みされてもな。

 まったくこの世界にきてからほんと短気な連中が多い。

 

「ふざけないで! ネオを信じてたのに。まさか裏切るなんて」

「本当に何の話か……これ、何かのドッキリみたいな?」

「アズルレーン王国と海洋都市アトランティアとの戦が激化したの。それもこれもすべてネオが仕組んだんでしょ」

「はあ? マジで俺は――」

「あの者達を捕らえて! 生死は問いません。死んだら死んだでその首を王に献上するだけのこと」

 

 一斉に武器を構えたサラの兵達。

 いつの間にか後ろにも回り込まれている。

 ここで確かにサラと殺り合うのは正直言ってあまりいい風には思わない。俺がこの世界にきて初めてできた友達たからだ。それに優しいことも知ってる。

 だから本当は彼女も俺と争いたくないと思ってくれているはず。

 

「サラその剣を下げてくれないか。俺はお前と争いたくない」

「言いたいのはそれだけ? だったら――」

「仕方ないよね、この際お姉ちゃんが全員まとめて殺戮してあげようか?」

「姉ちゃん怖いから。それに話に入ってくるな」

「ひっど~、お姉ちゃんネオ君のために言ったのに」

 

 その時、サラの従軍した兵の一人が動き出した。

 

「伝令! ルイハム様から退却するようにと」

「そうですか……でしたらネオまた相まみえましょう」

「はぁ……疲れた」

 

 色々と精神にくる出来事が続くな。

 このため息の正体も、そんな疲れと呆れからなのかもしれない。

 しかしさらに面倒なことになった。

 

 それにサラが俺にスパイと言ったってことは、おそらくアズルレーン王国ではもう虚偽な情報であっても、国全体に行き渡っているに違いない。

 それに両国の戦を煽ったのも俺ってか。そんな裏から暗躍する陰の権力者みたいな力は残念なことに俺には備わっていませんよ~だ。

 

「どうするのネオ君。このまま王国に向かうと即ギロチンだね」

「ああ、そうだな……じゃねぇって! 今、マジでヤバい状況だから。だって両国の戦争を煽った謎多き人物みたいな感じになってるし!」

「あまり大きな声出さない方がいいわよ。それじゃまるでそこらにいる貴族(お猿さん)と一緒よ」

 

 なんてユリアナは言ってるが、誰がこの状況で声を抑えろっていうんだ。

 ぐぬぬっ、こんなことになったのも姉ちゃんのせいだ。

 姉ちゃんが赤ん坊の時俺を拉致しなかったら?

 教会をめちゃくちゃにしなかったら?

 起きてしまったことを否定しても何も変わらない。

 けど、もしって考えると、姉ちゃんがどれだけめちゃくちゃな人間、いや悪魔がよくよく理解できるってもんだ。

 

 それに厄介事にたびたび巻き込まれる辺り、俺はそういう星の下に生まれてきてしまったのかもしれない。

 

 自分自身と姉ちゃんに嫌気が差しながらも、俺は皆に言った。

 

「一度、大樹の下に帰ろう」と。

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