クワイエット・ゼロ戦記   作:カラテマ

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10 もう一つの剣_シュバルゼッテ

ジェターク兄弟とカミルが薄暗い作戦会議室に足を踏み入れると、部屋の一角からわっと歓声が上がった。

「グエル先輩! ラウダ先輩! 仲直りできたんスね!?」

「良かった! みんな待ってましたよ!」

フェルシーやペトラらが口々に喜びの声を上げる。それを手で制してから、グエルは部屋の中を見回した。

ジェターク寮生たちは、モニターに映るクワイエット・ゼロを見ながらベルメリアやグストンと検討を続けている。

それらの面々に混じって地球寮やブリオン寮の生徒たちが、個人端末を覗き込んだり周囲と相談を交わしている。

さらには集団から少し離れたところでは、エラン・ケレスの影武者と地球から派遣されてきたガンダム乗りの少女が、ケナンジ司令と何やら言い合いをしている。

 

ミオリネとスレッタはまだ姿を現していない。

だが先程、港の受付から、スレッタがミオリネのもとに向かったという報告を受け取った。

時間がかかろうとも、二人は必ずここへやってくるだろう。

 

ならばそれまでの間に、クワイエット・ゼロ攻略の突破口を見出す。

グエルはそう決意し、ペトラを促した。

「ここまでの進捗を教えてくれ」

「承知しました」

うなずいたペトラが、モニターに映る目標を指し示しながら説明を始める。

「まず、あのクワイエット・ゼロですが。

 宇宙要塞というよりは、超巨大な実験施設と呼ぶ方が正しいみたいです」

「……実験施設、というと?」

「対空砲や対空ミサイルといった迎撃兵器や、対空レーダーのような監視システムが存在しないんです。

 内部侵入に備えた警戒装置とかも最低限しか備えてないようで……

 あと、外部に剥き出しになっているシェルユニットも、その強度には特筆すべきものはないようです。通常の兵器でも問題なく破壊できますね」

ペトラのあとを引き取って、タブレットを抱えたニカが結論づける。

「どうも、データストームを人類圏全域に広げるための設備が巨大化しすぎてあのサイズになっただけで、要塞としての機能は最初から想定していなかったみたいです」

 

あの巨体は、見た目と違って、要塞のように武装化されたモノではない。

ということはつまり、

 

「クワイエット・ゼロに攻撃さえ届けば、あるいは本体に取り付くことさえできれば、陥落させるのはそう難しくないってことか……?」

ラウダが声を上げる。

だが、グエルはその推測を否定する。

「攻撃を届かせるのが困難なんだ。データストームによって戦艦のビームは弾かれ、ミサイルもモビルスーツも制御を奪われて逆用される。通用する兵器がない」

「その通りです」

ベルメリアがグエルにうなずいた。

彼女が端末を操作すると、クワイエット・ゼロの周囲を取り囲むように、結界のように青い球体が出現する。

「データストーム領域の中でオーバーライドされずに動けるのは、パーメットリンクを一切使わない兵器か、オーバーライドを拒否するスコアに到達可能なガンダム――キャリバーンのみです」

「だがそんなスコアのデータなんて浴びたら即死しちまう。僕らみたいに神経中枢を強化した人間でもね」

補足したのは、エラン・ケレスの影武者だった。

皮肉気な表情を浮かべる彼のほうをちらりと見やって、ベルメリアは申し訳なさそうにうつむく。

だがうつむいたまま、彼女はためらうことなく結論を述べた。

「そのスコアに耐えられる可能性がある人間は、エリクト・サマヤと同じ遺伝子を持つスレッタさんだけです」

「…………」

告げられた事実に、グエルは沈痛な表情で目を閉じる。

 

パーメットリンクなしのモビルスーツは、外部情報の把握・処理にも機体動作の制御にも困難が生じる。人間で例えるなら、目隠しをした上で数十kgの重りを背負ってボクシングに臨むようなものだ。エアリアルどころか型落ちのモビルスーツにも対抗できはしない。

クワイエット・ゼロを覆う青い球体の中でエアリアルに対抗できるのは、スレッタの乗ったキャリバーンだけ。だがそれは、あの少女が命を削って戦う以外に方法がないということでもある。

「それしかないのか……!?」

無念とともにグエルは虚空に問いかけた。

答えは、すぐ真横から返ってきた。

「可能性はもう一つある。そうだろう? ペトラ」

「はい! その通りです、カミル先輩」

ペトラが力強く頷き、そしてモニターを操作した。映像が切り替わり、白いモビルスーツが表示される。

それはグエルもかつて見たことのある新型だ。だが、胸部の形が記憶と少し違う。

「これは……シュバルゼッテ!?」

先代CEOであるヴィム・ジェタークの命令のもと、極秘に開発が進められていた次世代コンセプトモデル。シン・セー開発公社からの技術提供により完成にこぎつけ、本社フロントのジェターク社ハンガーにて組み立てを完了し、最終調整と運用テストのために学園フロントのジェターク寮の格納庫へ運び込まれていたはずだが――

「こっちで物騒なことが始まりそうだと聞いて、俺が独断でジェターク寮艦に積んでおいたんだ」

にやりと笑うカミルに、グエルは戸惑いの表情を向ける。

 

シュバルゼッテは確かに最新鋭機であり、そしてGUND-ARMでもある。だが、オーバーライドを防ぐスコアまで到達できるのだろうか? たとえそれが可能だとしても、その負荷によってパイロットが即死することは避けられないのでは……?

 

しかしカミルは、自信ありげな態度を崩さないまま、モニターを右手で指し示す。

「こいつはダリルバルデでの様々な実証試験を反映したモビルスーツだ。そして先代CEOの、エアリアルを倒すモビルスーツを完成させるという執念の結晶でもある」

「父さんの……執念……?」

唖然とするグエルに、カミルは片目をつぶってみせる。

彼はジェターク兄弟の腹心であり、そして、先代CEOからジェタークの次代の技術班のエースとして期待された存在でもあった。ゆえに極秘の新型モビルスーツの情報にも、ごく一部ではあるがアクセスできる立場にあった。

「先代は、エアリアルの決闘の映像を社内の技術班に分析させていたんだ。そしてペイルやグラスレーとの決闘時に見せた能力――オーバーライドこそがエアリアルの切り札だと見抜いた。

 以後、ウチの社の技術班は、オーバーライドに対抗できる方法をずっと模索していたらしい。ダリルバルデの予備機も使って、ありとあらゆるプランを試していたんだ」

カミルの言葉を受けてペトラがモニターを操作すると、シュバルゼッテの隣にダリルバルデが映った。そしてその下を、無数のプランが流れていく。

操縦系統の独立化、パーメットリンクの多重化、意思拡張AIの強化……

やがて画面の動きが止まり、プランの一つが拡大表示される。

「この状況で有効と思われるプランがこれだ。パーメットリンクを一切使わない方法。

 情報把握と処理のタイムロスはパイロットの増員で、機体動作のタイムロスは意思拡張AIで補う……複座式コックピット案だ」

「複座式……!?」

ああ、とカミルはうなずき、そして兄弟に向き直る。

「ただし、こいつは先代CEOに正式採用されなかったプランだ。パーメットリンク無しというハンデが大きすぎてな。

 ウチの社のテストパイロット二人が複座式ダリルバルデに乗り込んでディランザと何度か模擬戦をしたが、あまりにも操縦が困難で、結果は散々だったらしい」

カミルはまずグエルを見やり、そしてラウダに視線を向ける。

挑むような笑顔を浮かべ、彼は二人に告げた。

 

「だが、お前らの腕ならどうだ?」

 

そしてカミルは、2時間あればシュバルゼッテを複座式コックピットへ換装できる、と付け加えた。こうなることを見越して、彼は本社フロントに来るまでの道すがら、ペトラらとともに機体の仕様確認を済ませてきたのだ。

「いつもながら手回しがいいな、カミル」

「何かあると弾丸みたいに飛び出していくお前と付き合っていると、自然とこうもなるさ」

「ほっとけ」

「で、どうなんだ。乗りこなす自信はあるか?」

改めて問いかけられたグエルは、弟へ振り向いた。

弟も兄を見返し、そして、うなずく。

 

――僕は大丈夫だ。やろう、兄さん。

 

無言の応援に力を得て、グエルはカミルに視線を戻した。唇の端を、ほんの少しだけ不敵な形に釣り上げ、宣言する。

 

「もちろん、やってやるさ」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

本社フロント宙域に光が走る。

無数のドローンが漂い動き回る中を、白い機体が駆け抜ける。

ドローンから放たれるレーザー光線を巻くようにかわしつつ、手に持った巨大な剣状の武器からビームを放ち、ドローンを次々と撃破していく。

ドローンの群れから抜け出たその機体は、巨大な剣を一振りした。と、剣が7つのパーツに分離し、そのうち6つがバラバラに浮遊、機体の各所ハードポイントに接続される。

 

「ガーディアン・マリオネット形態に移行……ビットへの電力補充を開始」

複座式コックピットの後部に収まったラウダが、機体全体の様子をモニターしながら告げる。

前部座席に座るグエルは、荒い息をつきながら弟に尋ねた。

「被弾と撃墜はどれくらいだ? ラウダ」

「被弾8、うち致命打判定3。命中16、うち撃墜12。

 ……正直、これだとエアリアルどころか、ガンドノード相手も厳しいよ」

「そうか……」

グエルはため息をつく。

ガンドノードを模したドローン相手のテストの結果は、芳しいとは言えなかった。これが実戦であれば、とっくに自分たちは撃墜されていただろう。

 

パーメットリンクなしでのモビルスーツの操縦は、想像をはるかに上回る難事だった。

パーメットで「繋がる」ことで全周を直感的に認識できていたのに、繋がりを絶たれた今は、ドローンとの相対位置を把握することすら一苦労だ。裸眼で確認できる前方はともかく、側面や後方は各種計器で間接的に視るしかない。これではどうしても状況変化への反応が遅れる。

操縦においても、軌道を変えるたびに生じる慣性にいちいち振り回される。せっかくシュバルゼッテに与えられた高い機動性も、これではろくに活かせない。

ダリルバルデで培われた意思拡張AIは、パイロットの癖や未来予測をもとに、様々な補正をかけて操縦の補助をしてくれている。そのうえで尚これなのだ。父がこのプランを対エアリアルのオプションとして正式採用しなかった理由を、グエルはその身を以て理解していた。

息を整えながら、グエルは後部座席のラウダに水を向ける。

「そっちはどうだ? 有効な武器は見つかったか?」

「まあね。こっちは大丈夫だよ」

機体そのものの操縦を担当する兄に対し、弟は兵装と各種モニタリングを担当する。

今の操縦テストの中で、ラウダはシュバルゼッテの武器をひととおり試し終えていた。

「ビットを分離しての遠隔操作攻撃は、やっぱりパーメットリンクなしじゃ無理だね。でもそれ以外のモードは問題なく使える。

 全ビットを一つにまとめての砲撃形態、ガーディアン・シース。

 電磁バリアを展開しつつビットへ電力・推進力を補給するガーディアン・マリオネット。

 手元の操作から実際に動き出すまで少々タイムラグはあるけど、この程度なら十分に修正可能さ」

「ふっ。頼もしいな、ラウダ」

弟の方は、早くもシュバルゼッテの持つ大剣――ガーディアンと名付けられた多目的攻防プラットフォームの操作のコツを掴んだようだ。

この弟の攻撃センスは、時に兄を凌駕することさえある。後部座席で武器の操作に専念できるこの操縦方法は、あるいはラウダにもっとも適したやり方なのかもしれない。

「ならば――あとは俺が、パーメットリンクなしでの操縦に習熟するだけだ」

グエルは再び前方を見据えた。

たとえエアリアルに抗することができなくとも、この機体でガンドノードを駆逐することができるなら、クワイエット・ゼロ攻略の足掛かりになる。

何より、スレッタ・マーキュリーの負担を減らすことができる。

彼女はこれから、乗り続けるだけで命を削る機体を操縦しなければならないのだから。

「…………」

グエルの視界に本社フロントが入り、彼はふと、物思いにかられた。

今スレッタはフロント内の試験場でキャリバーンの起動テストに入っている。オーバーライドを防ぐため、パーメットスコアを上げようと必死になっているはずだ。

エラン・ケレスの影武者が「普通の人間なら即死」と断言したデータ流入量が、今スレッタにどれほどの苦しみを与えているのか。グエルには想像することしかできない。それが何より、もどかしい。

 

悶々としていると、グエルの背後から再び声がかかった。

「どうする、兄さん? 休憩がてら、スレッタ・マーキュリーの様子を見に行くかい?」

思わぬ提案に、兄は驚く。

より正確に形容すれば、仰天する。

 

弟がスレッタに対して隔意を抱いていることを――はっきり言えば毛嫌いしていることを、兄はとっくに察していた。ラウダ自身は自らの感情を押し殺しているつもりらしかったが、言動の節々からあからさまに敵意が覗いていて、兄にはまるわかりだった。だからグエルは、弟の前ではスレッタの話題は避けていたのだが――

 

「どうしたんだラウダ、急にそんなことを言い出して。まさか、戦闘機動中に頭でも打ったのか?」

「さすがにその言い草は僕でもムッとするよ、兄さん」

弟は後部座席で口を尖らせたようだ。気配が剣呑になったのが、前を向いていても判りやすく伝わってくる。

だがラウダはすぐにふうと息を吐くと、事情を説明してきた。

 

「実は、シュバルゼッテに乗り込む直前に、ペトラに釘を差されたんだ。

 ……いや、そうじゃない。激怒された。兄さんにスタンガンをつきつけたことも含めて、諸々、たっぷりと絞られた」

 

なるほど、付き合い始めた後輩から説教されたことで、弟も色々と反省をしたということらしい。スレッタへの態度を改めたのも、その一環ということか。

「推しに対して迷惑をかけてはならない。ましてや危害を加えようとするだなんて、どんな理由があっても絶対に許されない。……ペトラに胸ぐら掴まれて、そう怒鳴られたよ」

「……胸ぐらを? ペトラが?」

「ああ。ちょっとびっくりした。彼女にそこまでさせてしまったことに反省もしたけど」

本当に、ラウダは厳しく叱られたらしい。胸ぐらを掴みながら怒鳴るなんて、グエルたちの父であるヴィムですら滅多にやらなかったことだ。ペトラがそんな怒り方をするとは思ってもみなかった。

 

……いや待て。その前に、推しって何だ?

 

グエルが疑問符を浮かべている間も、ラウダは淡々と反省の弁を述べ続ける。

「今後は兄さんに対して私情を挟んだり、妙な迷惑をかけないよう、ペトラから念入りに注意されたんだ。

 だから兄さんがスレッタに会いに行きたがったとしても、僕はもう兄さんの邪魔はしないよ。兄さんのしたいように任せる」

そう前置いてから、弟は改めて尋ねてきた。

ここで休憩を入れ、そしてスレッタの様子を見てくるか、と。

「…………」

グエルはほんの少しだけ考えたが、すぐに首を横に振った。否、と。

 

今あの本社フロントでは、スレッタだけでなく、大勢の人間が準備を進めている。

カミルやペトラらのメカニック班。

フェルシーやチュチュらのパイロット班。

ケナンジらの突入班。

そして、無数の裏方たちも。

 

「俺だけが役目を放棄するわけにはいかないさ。俺もここで、やるべきことを果たす」

「……わかったよ、兄さん。さあ、もういちど模擬戦だ」

 

すでに30分前、クワイエット・ゼロが再始動したという報告が届いていた。

こちらの目論見通りにプラント・クエタに寄り道する軌道を選んでいるようだが、おそらく12時間後にはプロスペラらは本社フロントに狙いを定め、この宙域に現れるだろう。

 

決戦の時は間近だ。グエルは再び操縦桿を握ったのだった。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

暗い操縦席の中で、スレッタ・マーキュリーは耳を澄ます。

聞こえてくるのは、モニタールームにいるベルメリアの声だけだ。

「聞いて、スレッタ。オーバーライドを回避するには、スコア5のクリアが必要よ。キャリバーンにはデータストームのフィードバックを軽減するフィルターが搭載されていない。その代わり、同量のパーメットで高いスコアを発揮・維持できるの」

ベルメリア以外にはモニタールームに知り合いはいない。

ジェタークの人々は、本社フロントのあちこちで戦いの準備を進めている。

地球寮の人々も、それに混ざって忙しく働いているはずだ。

そしてミオリネも――少しでも状況を有利にするため、複数の人間と交渉を重ねている最中だ。

 

親しい人々がそばにいないことに、心細さを感じないわけではない。

けれどそれ以上に、自分を助けるために大勢の人が動いてくれていることが、嬉しい。

 

だからスレッタに焦りや気負いはない。

少しでも良い方法を見つけるために、暗い操縦席でひとり思慮を重ねる。

 

そこへ、再びベルメリアの声が届く。

「エリクトとほぼ同じ身体のあなたには、強い耐性がある。けれど、あの子のようにデータストームと共存はできない。絶対に無理はしないで」

 

……そうだ。エラン・ケレスの影武者も言っていたとおり、普通の人間はデータストームと共存はできない。それができたのはエリクトだけだ。スコアを上げ続ければ、いずれ自分も、データストームに身体を焼かれるだろう。

たとえば、一度たりとも会うことができなかった父であるナディムのように。

……たとえば、友を救うためにドミニコス隊と戦い、無理なスコアアップの果てに重症を負ったソフィのように。

 

「データストームと同調できるのは、先天的な才能……」

 

本当に、それだけなのだろうか?

スレッタは静かに思慮を巡らせる。

何度も辿ってきた記憶を――エリクトに焼きつけられた、21年前の記録をたどる。

それは、わずか4歳だった姉が、エアリアルの原型機であるルブリスと初めて接触したときの光景だった。

「エリクトはただ、ルブリスのAIに話しかけていただけだった。ルブリスとリンクするつもりなんて無かった……」

カルド・ナボ。GUNDフォーマット理論の提唱者である彼女は、幼いエリクトに対し、一向に起動しようとしないルブリスのAIに語りかけるよう促した。

この世界は怖くない。そう教えてあげてくれ、と。

博士の言葉を真に受けたエリクトは、ルブリスのAIに語りかけ、自己紹介し、そして……

「対話……した。ルブリスと」

独りごちたのち、スレッタは、自分とパーメットリンクで繋がるモビルスーツのモニターを見つめた。

怪物と呼ばれて恐れられ、21年間封印されたままだったガンダムを。

 

こんなことに意味はないかも知れない。けれど今は、思いつく手を全て試してみなければ。

決意した少女は口を開く。

 

「こんにちは、キャリバーン。わたしは、スレッタと言います」




機体解説
MDX-0003T シュバルゼッテ複座型

打倒エアリアルの執念に燃えるヴィム・ジェタークの要請に対し、ジェターク社技術班が提案したプランは、操縦系統からパーメットを排除することでオーバーライドの危険性を0にする、というものだった。
しかしアド・ステラのモビルスーツの操縦性と索敵能力は、パーメットによる操縦者との接続に大きく依存しており、それを失うことは性能の大幅な低下を意味する。これを補うべく、技術班はダリルバルデの予備機で試行錯誤を重ね、複数のパイロットによる役割分担に意思拡張AIの補助を組み合わせる方法を見出した。だがそれでもパーメットリンク有りの機体に対するハンデを覆すことはできず、次世代の高性能機であるダリルバルデですら、現行量産機であるディランザに劣る評価しか得られなかったのである。

シュバルゼッテ複座型は、オーバーライドに対抗すべく、コックピットをダリルバルデでテストを繰り返した複座型へ換装した機体である。ダリルバルデよりも更に高い基本性能を誇るシュバルゼッテではあったが、やはりパーメットリンク無しのハンデを覆すには至らなかったようだ。大剣型の多目的攻防プラットフォームであるガーディアンは、剣、銃、電磁バリア展開が使用できるものの、GUND-ARM機特有の群体遠隔操作攻撃は不可能であり、その攻撃能力は大きく損なわれている。操縦性・索敵能力も低下したままであり、敵の攻撃の予兆を見てから回避動作に入る、というモビルスーツ操縦の基本もできず、防御は電磁バリアと本体の装甲に頼るしかない。格闘戦など論外である。
非常に高い機体出力、見た目に反した堅牢な装甲、そしてガーディアンの多彩な能力を加味しても、ディランザと同程度という評価が下されるべきモビルスーツであろう。
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