スレッタ・マーキュリーは、息を入れる暇すら自分に許すことなく、キャリバーンを機動させ続ける。
高レベルのパーメットスコアを保ちながらのそれは、全力疾走でフルマラソンを駆け抜けるがごとき愚挙だ。
心臓が痛い。呼吸はもうずっとまともに出来てない。胃の中には固形物などないのに凄まじい吐き気が襲ってきて、このままだと内蔵をすべて口から出してしまいそうだ。
だが、スレッタは止まらない。
「止める……ここで止める!」
常にエアリアルに食らいつくことでガンドノードの横槍を防ぎつつ、サーベルを振るって相手の四肢を狙う。エアリアルさえ動けなくなれば、クワイエット・ゼロはもはやその機能を十全に発揮できない。母と姉を止める最大のチャンスはここなのだ。
こちらの背後を狙おうとするエスカッシャンは、シュバルゼッテの砲撃が防いでくれている。自分はただひたすらにエアリアルを切り刻むだけ。それだけをすればいい。心臓の痛みも肺の痛みも内蔵の痛みもすべて無視だ。
「止まって……止まって!」
エアリアルを少しずつ壊していく。キャリバーンのサーベルが、左足に続いて右腕を斬り飛ばした。ライフルもすでに切断済みだ。もはや相手は満足に武器を振るうこともできない。
生まれてからずっと連れ添ってきたマシンが、少しずつ壊れていく。ボロボロになっていく。
何度も一緒に救助活動をしてきた、相棒が。
言葉が通じない間も、姉妹のように親しんできた相手が。
やっと最近、直接お話できるようになった人が。
痛々しい姿へと変わっていく。
自分のこの手が、エリクトを殺していく。
「止まってくれたら、もう壊さないから。
止まってくれなくても、あとでちゃんと直すから……っ!」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、だがスレッタは止まらない。
心の激痛を無理やりねじ伏せて、キャリバーンに攻撃を命じ続ける。
エリクト、お願い。
みんなに頼んで、きっとエリクトが自由に出歩けるようにするから。
「だからお願い――止まって、エリクト!」
キャリバーンのサーベルが、エアリアルの右足を捉え、切断した。
あと少し。残る左腕を切り飛ばしてスラスターを壊せば、エアリアルはもう動けない。
あと一息だ。スレッタはさらにキャリバーンへ攻撃を命じようとし、
「下がれ!」
グエルの声が響くや否や、反射的にレバーを引いた。直後、自分の踏み込もうとした空間を何十本ものビームが薙ぎ払う。エアリアルをも巻き込みかねない一斉攻撃だ。
「!?」
あわててキャリバーンを退避させながらモニターを確認すると、周囲を取り囲むように無数のガンドノードが押し寄せてきていた。総数は二百機――ひょっとするとそれ以上か。クワイエット・ゼロに残る予備機すべてを、否、それに加えてデータストームの中継機となっていた機体の過半もこちらに差し向けてきたようだ。
これだけの数からの攻撃となると、降り注ぐビームはもはや滝のようだ。いかにキャリバーンといえどその場に留まっての回避など不可能、全力で後退せざるを得ない。その間にエアリアルは残った7機のエスカッシャンを引き連れ、ガンドノードたちに守られながらこちらから距離をとる。
仕留め損ねた。またしても失敗した。
ガンドノードのビームを躱しながら、スレッタは歯噛みする。
「無理をするな、こっちまで来い!」
グエルからの指示に従い、スレッタはキャリバーンをシュバルゼッテの真横まで一気に跳躍させた。するとシュバルゼッテは大剣を複数のパーツに分離させて自機とキャリバーンを囲うように展開する。パーツは電磁バリアを形成し、ガンドノードの攻撃から両機をガードし始めた。
「ごっ、ごめんなさいグエルさん、わたし、また失敗……」
「お前は息を整えることに集中しろ! 防御は俺たちがやる!」
シュバルゼッテの左腕が、キャリバーンの腰のあたりを保持する。そのまま白い機体は各部スラスターを吹かせた。右腕にバリアブルロッドライフルを、左腕にキャリバーンを抱えたまま、ランダム機動を開始する。
10分近くもエアリアルと交戦し続けたスレッタに少しでも休む時間を与えるため、シュバルゼッテはひたすら逃げに徹する。
ジェタークの最新鋭機の大出力と、背面に増設されたフライトユニットによる力技で、ガンドノードのビームの雨の中を高速で駆け抜ける。
「スレッタ、お前の体調は問題ないか!? 問題あるなら撤退するぞ!」
「だっ、大丈夫、です……っ!」
もちろん、問題は大ありだった。心臓も肺も痛みが続いているし、吐き気も収まらない。自分で見ることはできないが、きっと身体のあちこちに、ソフィの身体に浮かんでいたような赤い傷痕が走っていることだろう。
だが、まだ引くことはできない。まだエアリアルは機能を失っていない。まだエリクトは止まっていない。
だからスレッタは、ぜえぜえと息を荒げながらも、モニターの中のグエルに告げた。
「まだ、やれます……! まだ撤退しないでください、グエルさん……!」
「……わかった! だが、ひとまずは引くぞ!」
今は反撃に出るのは無理と見て、シュバルゼッテはキャリバーンを抱えたままエアリアルから遠ざかる。幸いにもガンドノードは中枢機能であるエアリアルを守ることに集中し、こちらを追っては来ない。データストーム空間境界面まで逃れると、射程距離外ということなのか、敵の攻撃は止まった。
「これで一息はつけそうだ、が……」
そうつぶやくと、グエルはシュバルゼッテを静止させ、キャリバーンから手を離す。さらに、周囲に展開していたガーディアンを再び大剣の形に戻す。
「あと少し、だったのに……」
ようやく呼吸を整えたスレッタは、悔しげに呻き、そして正面を見据えた。
四肢のうちの三肢を奪い、もう一歩まで追い詰めたのに、遠く離れた場所まで逃してしまったモビルスーツ――エアリアルは、モニターの真ん中に鎮座している。失った4機のエスカッシャンの代わりに無数のガンドノードを従えて、こちらを見下ろしている。
「強くなったね、スレッタ。
泣いてばかりで、逃げてばかりで、お母さんに頼りきりだった君が、こんなにも強くなった」
エアリアルが、唯一残った左腕を、スレッタに向けて差し出す。
「もう君は、僕たちに縋ることはない。お母さんを盲信することもない。自分の頭で考え、自分の力だけで歩き出した。君は立派に独り立ちして、僕たちの元を去ったんだ。
僕は嬉しい。これは本音だよ。僕はいま、本当に嬉しいよ」
声は穏やかだった。たった今まで殺し合いをしていたとは思えぬほど、喜びに満ちていた。
静かにスレッタを讃えた直後、エリクトの口調は急変する。
「でもね」
こちらに向かって差し出されたエアリアルの左腕が、今度は背後――クワイエット・ゼロを指し示した。
「君が独り立ちして、お母さんの元を離れても。
僕はお母さんのそばで、お母さんを守り続ける。
たとえ全宇宙が、お母さんの敵になったとしても。
僕は、僕だけは、お母さんの味方だ」
それは、決してこの計画を止めはしないという意志表示だった。
「お母さんは21年前の虐殺のあと、ずうっと魔女と呼ばれ続けた。全世界から疎まれ続けたんだ。
何も悪いことはしていないのに。デリングの被害者なのに。お母さんは世界の敵として扱われたんだ」
「エリクト……っ!」
「だから僕は世界を信じない。お母さんも世界を信じない。
僕らが世界と敵対したんじゃない。世界が僕らを一方的に敵視したんだ。
なら、最後まで、僕らは世界と敵対し続ける」
そしてエアリアルは、左腕を天に掲げる。
魔物の群れを指揮する魔女のごとくに。
「僕も、もうためらわない。お母さんの邪魔をするものを容赦なく排除する。
それがたとえ君だろうとだよ、スレッタ」
エアリアルの左腕の動きに合わせて、数百機のガンドノードが攻撃態勢を整え、キャリバーンとシュバルゼッテに狙いを定める。
「君たちは確かに強いね。でも結局、戦いは数だよ。君たちがどれだけ素早く動こうと、ガンドノードのAIを先読みしようと、これだけの数のビームライフルから狙われたら、もうどうしようもないんだ」
エリクトの指摘は、単なる事実の羅列に過ぎない。
あの数のガンドノードが一斉に飛来し、こちらに向けて攻撃を開始したなら、対応する術はない。キャリバーンとシュバルゼッテは10秒とたたずに宇宙の塵と化す。検討するまでもない、それは確約された未来だ。
だがそれでも、スレッタは引かない。
少女はエアリアルの動向に注意を払いつつ、一瞬だけ、モニターの中の僚機のパイロットに視線を走らせる。
ラウダがうなずき、何事かを告げた。それを受け、スレッタはグエルと目線で意図を通じ合わせる。
シュバルゼッテが、右手のバリアブルロッドライフルをキャリバーンに手渡す。
キャリバーンが、受け取ったライフルを両手で構える。
その動作を、挑戦状と受け取ったのか。
「……行くよ、スレッタ」
エリクトの宣言とともに、エアリアルの左腕が振り下ろされた。
―――――――――――――――――――
プロスペラは、5機の警備用モビルクラフトを従え、悠然と通路を歩く。
前方からは散発的に拳銃の弾が飛んでくる。いずれの弾丸も的を外してはおらず、距離を考えればなかなかの精度だが、この程度の威力であればモビルクラフトが自動的に防弾盾で防いでくれる。前進することに何の問題もない。
「ゴドイ、侵入者は5人、うち武装してるのは3人。所持しているのはフロント管理局の警備員の装備だけ。それで間違いないかしら?」
司令室にむけて通信で問いかけると、各所の監視カメラの映像を見張るゴドイから、ただちに肯定が返ってきた。
あの程度の軽装備で乗り込んでくるとは、よほどこちらの警備体制を舐めているのか。それとも、その程度の装備しか用意できなかったのか。……あるいは、陸戦隊用の武器を扱える人員すら残っていなかったのか。
「最後かしらねぇ。今やベネリットグループは沈みかけた泥舟も同然。会社も人も逃げていくだけ。力だけで人を支配した者の末路ね」
「同感です。しかし、武装した3人については、練度は低くはありません。くれぐれも油断しないでください、レディ」
「わかってるわ。ありがとう、ゴドイ」
部下に感謝を告げる間も、プロスペラは歩を進める。
侵入してきた5名の身元については、監視カメラの映像から解析済みだ。
ベルメリア・ウィンストン。クワイエット・ゼロの完成を手伝わせた後輩こそがこの侵入劇の発案者だろう。コアブロックのサーバーから緊急停止コードを打ち込もうとでも考えたか。
ケナンジ・アベリー。ドミニコス隊の司令……だったはずだが、部下たちがこぞって宇宙議会連合に寝返ったため一兵士の身分にまで降格したようだ。
そしてミオリネ・レンブラン。こちらも部下たちに逃げられ、スレッタを守るために自分自身が出てこざるを得なかった、というところか。
「健気ね……素晴らしい献身ぶりだわ、ミオリネさん」
常に父親やその部下たちに守られ、安全なお城の中で花嫁ごっこを楽しんでいたお嬢様が、その安全を投げ捨て、わずかな部下とともに危険な戦地に赴いてきたのだ。プロスペラはミオリネに心からの賞賛を投げかける。たっぷりと嘲りをまぶしてはいたが。
それはともかく――残る2人については、パーソナルデータがほとんど残っていない。
ベルメリアの元部下にして、エラン・ケレスの影武者である強化人士。
宇宙議会連合の回し者である地球の魔女。
銃を握っているのはこの2人とケナンジだ。甘く見るべきではないだろうが、3人とも本格的な歩兵戦闘の訓練は受けてはいないはず。ならば、警備用モビルクラフトだけで十分に制圧可能だ。
勝利を確信しつつ、プロスペラは侵入者たちを着実に追い詰めていく。すべての退路を防火壁やモビルクラフトで塞ぎ、コアブロックという袋小路へと追い込んでいく。
「サーバールームに行きたいなら行かせてあげるわ。そこに行ったところで、貴方達は何もできない」
停止コードもパスワードもすべて変更した。管理者アカウントも自らのものを残してすべて削除してある。何をどうあがこうと、あの5人にできることはなにもない。
仮面型のGUNDを通じて警備用モビルクラフトに包囲の維持を命じつつ、プロスペラは逃げる5人を追いかける。
やがて5人はこちらの思惑通りにサーバールームに逃げ込む。これで完全に袋の鼠、とプロスペラがほくそ笑んだ直後、室内から強い光が放たれた。
「閃光手榴弾……いえ、ECMグレネード?」
一定範囲内の電子機器を一時的に麻痺させる手榴弾だ。電子的な保護を施していない装置はあの手の兵器に弱いので、ルーム内に設置されているものは今の一発で全滅しただろう。ただし当然ながら、クワイエット・ゼロを制御するサーバーは物理的にも電子的にも強固に防御されているので、個人が携帯できる程度の兵器で破壊されはしない。
あの閃光で麻痺したものがあるとしたら、せいぜいルーム内の監視カメラくらいだ。
「ベルメリアなら、その程度は知っているはずだけれど」
首を傾げながらも、プロスペラは歩く速度を緩めず、ほどなくサーバールームの入り口にたどり着く。
「……このコードもダメ。どうして……」
室内からはミオリネの困惑が聞こえてくる。やはり彼らの目的は、緊急停止コードを打ち込むことだったようだ。
くすりと微笑んでから、プロスペラはルーム内を見渡せる位置に立った。
「コードは変更させてもらったわ。そちらの狙いに気づいていないとでも思った?」
返答は、ビームガンの連射だった。サーバーの保護隔壁を遮蔽物代わりにして身を隠しつつ、一人がこちら目掛けて拳銃を放ってくる。丸く鈍重そうなシルエットにも関わらずその腕は確かで、どの弾も命中弾だった。
だがプロスペラが従える警備用モビルクラフトがすぐさま彼女をかばい、装備した盾ですべてを弾く。さらにモビルクラフトはビームマシンガンの掃射を開始し、たちまち火力で圧倒する。発砲した一人――体格から判断するに、ケナンジに違いない――は、慌てて保護隔壁に頭を引っ込めた。
始まった直後から、この戦いの勝敗は明確だった。歩兵戦において火力の差は絶対だ。あちらに勝ち目はない。
「無駄な抵抗はやめて、さっさと降伏なさい」
そう勧告しつつ、プロスペラはルーム内に足を踏み入れようとし――ふと、気づいた。
相手は全員が保護隔壁の陰に隠れていて、時折誰かが散発的に撃ち返してくる。自分はまだ、5人全員の姿を視認していない。
「…………」
敵全員の所在を掴めていない状況では、室内への突入は危険。かつて受けた訓練を思い出し、プロスペラは足を止めた。
部屋の中に入らぬまま、モビルクラフトの盾に隠れつつ、しばし敵の様子を観察する。
「ベルメリアさん、あなたも訓練は受けたんでしょう!? 銃を持ちなさい、そして撃ち返すんです! そうしなければ生き残れない!」
「だ、ダメですっ……! 私、銃なんか……!」
「ああもう……! ミオリネ代表、そっちはどうです!? まだ正解は見つかりませんか!?」
「ちょっと黙っててっ! 管理者権限を回避できれば……!」
仮面代わりのGUNDの聴覚機能を調整してみれば、そんな会話が聞こえてくる。ベルメリアとミオリネは物陰に隠れて銃撃戦に加わらず、こちらに発砲するのは残りの3人。実に単純な構図だ。一見すれば、だが。
プロスペラは司令室との通信を開いた。
「ゴドイ。監視カメラで敵の様子は確認できる? 誰が銃を持って応戦しているか、わかるかしら?」
「不可能です。ECMグレネードを投げ込まれたため、室内の監視カメラはすべて麻痺しています。申し訳ない」
「いえ、いいのよ。大丈夫」
にい、と笑う。
ルーム奥から撃ち返してきているのは、場所から判断するに3人。そのうち2人は悪くない腕だ。だが残る一人は無駄玉ばかりで、そもそもこちらにビームが届いていない。明らかに、拳銃をほとんど握ったことのない素人だ。
さて、この場違いな一人は誰だろう? 体格から判断しようにも、ノーマルスーツは案外とかさばる上に身体のほとんどが遮蔽物に隠れているため、ケナンジくらいに特徴的でないと遠目からでは見分けがつかない。ヘルメット越しに顔を見たところで、この距離と薄暗さでは、肉眼で識別することは不可能だ。
とはいえ、無駄玉ばかりの素人が、ケナンジでも強化人士でも地球の魔女でもないことは確かだ。となると臆病者のベルメリアか、威勢だけはいいミオリネか。
そしてこれが肝心なのだが――この銃撃戦に参加していないもう一人の手練は、一体どこで何をしているのか。
「なかなか考えるじゃない。引っかかるところだったわ」
プロスペラは警備用モビルクラフトの一機に、室内への前進を命じた。ただし、部屋の奥ではなく左右を警戒するよう優先順位を変更する。
果たしてその一機は、ルーム内に足を踏み入れた直後、ビームマシンガンの砲口を左手側に転じて掃射を始めた。
「うわっ!?」
すぐに悲鳴が上がる。この声は、例の強化人士か。こちらが油断してルーム内に侵入したなら、身を潜めていた彼が横あいから奇襲を仕掛ける。そういう腹積もりだったようだ。
プロスペラが室内に顔だけ出して確認してみると、強化人士の姿はなかった。どうやら素早くサーバーの保護隔壁の陰に隠れ、被弾を免れたようだ。
仕留め損ねたか。だが彼はもう無力化したも同然だ。このままモビルクラフトをひとつ貼り付け、掃射させ続ければ、あの強化人士にできることは何もない。
「隠れ方が少し甘かったようね。このモビルクラフトのAIは賢いのよ。完全に壁の陰に身を隠すくらいしないと、すぐに発見されてしまうわ」
とはいえ、とプロスペラは胸中で付け足す。
向こうの作戦自体は悪くはなかった。ECMグレネードで監視カメラを潰し、声の演技で戦闘員の数を誤認させ、入口付近の死角に伏兵を仕掛けて奇襲する。即席にしては上出来と言わざるを得ない。銃撃戦のさなか、素人が銃を握って撃ち返してきたのも大した度胸だ。普通であれば部屋の隅でガタガタ震えているのが関の山だろうに。
そして、撃ち返してきたのは十中八九ミオリネだろう――あの臆病な後輩に、命の危険を冒す覚悟などできるはずがない。
「本当に素晴らしいわ、ミオリネさん。演技力も勇気もね。スレッタのためにそこまでするなんて花嫁の鑑よ……あらごめんなさい、元嫁、だったわね。
まあそれはともかく、命を捨てるような真似をしては駄目。貴女はまだ若いんだから。早く降伏して、お友達のもとに帰りなさい」
皮肉混じりの称賛とともに、改めて降伏勧告を送る。
返答はまたしてもビームガンの乱射。一発もこちらに届いていないのを見るに、撃っているのはミオリネ本人か。可愛いものね、と嘲笑ってから、プロスペラは今度こそルーム内に足を踏み入れる。
目標はルーム奥のミオリネ・レンブランのみ。彼女を人質にすれば、スレッタもすぐに降伏するだろう。外の戦況は気がかりだが、援軍のガンドノードが上手く時間を稼いでくれるはず。
焦る心をおさえつけ、プロスペラは余裕ぶった声で宣言した。
「策が破れた今、もう貴方たちに勝ち目はないわ。降伏なさい。
降伏しなければ……悪いけれど、一人ずつ死んでもらうわ」