ペルソナとメガテンで思い付いたネタ   作:ニンカタ

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思い付いたネタを肉付けしました。かなり暗めですのでご注意を。


テンシの羽根をあなたに(ペルソナ3)

 

 天塚来人(あまつからいと)。父と母の間に産まれた長男。そんな来人には常に違和感があった。父と話しても、母と触れ合っても何処か違うような気がする。

 自分の家族は彼等ではない。目の前の母から産まれた筈なのにその懸念は常にあった。

 

 父はそんな来人を気味の悪い息子だと思っていた。ニコリとも笑わずに1人でぼーっとしている時間が多い。他の子供達は子供らしく遊んでいるというのに、自分の息子はやけに大人びていて不気味だ。

 母はそれでも来人を愛した。自分と愛する人の間に産まれた子供。母が愛せずして誰が愛するというのか。確かに大人びていて何を考えているかは分からない。だけど母を気遣う想いや家事を手伝おうとする意思はある。充分に優しい子だと母は思っていた。

 

 「だー!」

 「こらこら、辞めなさい瑠海」

 「ふふ」

 

 だから後から産まれた妹瑠海(るみ)は大層可愛がられていた。無邪気で天真爛漫。来人とは違い子供らしい赤ん坊の瑠海は天塚家の天使だった。来人にも少しは申し訳無いという想いはある。子供ながらにそう思うから気味悪がられるのだが。

 瑠海が産まれたからは家族の雰囲気も明るくなった。父も笑顔が増えたし、母もそれは同じ。偶に疎外感を覚える時はあったが、来人にとってはその方が丁度いい距離感だった。

 

 「兄ちゃ、兄ちゃ!えほんよんで!」

 

 面倒は見る。しかし干渉し過ぎないのが気に入られたのか。トコトコと後ろをついては瑠海は話し掛けてくる。此処で邪険にせずに構うから余計に懐かれるのだろう。違和感はあれど嫌いという訳でも無い。程々に来人は瑠海を構った。

 

 そうして来人が小学生になるまで時間は過ぎる。未だに違和感は消えないが、それでも来人は家族と表面上上手く付き合えている。卒なく小学校生活を続けた来人には来年から新たに後輩として瑠海が入学する。

 そんな時期の、出来事だった。

 

 「…兄ちゃん!」

 

 舌っ足らずな言葉も少し成長し、今ではこう呼ばれている。深夜に来人は起こされ、目を擦りながら瑠海を見た。

 涙目で窓の方を指す瑠海。その指に従い窓の外を見ると、其処には黒い塊が這いずる様子が見えた。

 後にシャドウだと分かるそれは、この時には分からず唯の化け物としてしか認識出来なかった。

 

 「な、何だあれは?」

 「電話も繋がらない…!どうしましょう!」

 

 瑠海の声に起きた両親。小学生になる前までは家族4人で寝ている。子供2人が小学生になったら2人の部屋を用意しようと話をしていたか。

 父と母も外の化け物には気付いたのか。今は声を潜めて会話をしている。警察に連絡しようとしたが、何故か電話は使えない。電気も付かないし停電でも起きたのかと父は訝しんでいる。

 

 「…声は出すな。取り敢えずやり過ごすぞ」

 「瑠海、少し口抑えるからごめんね」

 「ん」

 

 電話も使えない。時刻も12時を過ぎた辺り。時計も少し動きが変だが、今は黙って部屋を動かないのが一番。そう判断した父の言葉に従い。家族4人が身を寄せ合う。

 

 「──っ!しまった…!」

 「どうしたの…?」

 「目、目が合った!」

 「!…で、でも戸締まりはしてるし…」

 

 少し時間が経つ。今だけは時間の感覚が長く感じた。不安そうに両親を見つめる瑠海に、頭を撫でてやると少しホッとしたのか目を細めて来人を見る。

 様子を見ようとカーテンの隙間を見た父が、慌てて身を沈めた。冷や汗を流し、外の化け物と目が合ってしまった事を話す。母が慌てつつも家の中にまでは入って来れない筈だと自信に言い聞かせるように話した。

 

 ──ガンッ!ガンッ!

 「大丈夫、大丈夫だ…」

 

 一階から何かを叩く音が聞こえる。先程は聞こえなかったうめき声まで。しかし音は大きくても中々入って来る気配は無い。4人共がそれに気付くと一瞬安堵の息が出掛けたが…

 

 「…開けてた窓って閉めた?」

 「え、お前が閉めたんじゃなかったのか?」

 ──ギシッ

 『──ッ!?』

 

 季節は夏。夕方の涼しい空気を入れる為に窓を開ける事も珍しくはない。しかし偶に閉め忘れが発生する事もある。被害は虫が入って来たという今までの物とは違い、今回は致命的だった。

 一階から階段。何かが這う気配がする。真夜中故に辺りは静まり返っている。物音一つも大きな音として聞き取れた。

 

 「そ、外に出るぞ!」

 「でも外に出たら!」

 「車だ!車で逃げるんだ!」

 「車…確かに…」

 

 この時には知る由もないが車は特別な物を使わなければ動きはしない。機械類全般が駄目なのだ。シャドウが家の中に入った。その段階で詰みに近い状況だった。

 

 部屋の扉から向かう方向とは逆の方向に物を投げる。震えた手だが何とか予定通りの場所へと物は落ちる。扉を閉めると少し経ってからその前を這いずる音が聞こえた。

 家の中にやはり居る。その確信が家族全員を再び凍りつかせた。

 

 「瑠海は私が持つ。お前は来人を頼んだ」

 「…来人、手を握って」

 

 瑠海は何方が抱き抱えた方が早い。そう判断したのか力のある方へと瑠海は引き渡される。不安そうな母に手を握られ、父を先頭に音を立てないようにしながら階段を降りていった。

 

 「クソッ…暗いと見つけ辛いな」

 

 車のキーを探す為途中リビングへ。周りは母と来人が警戒している。しかし明かりの少ない状態では探すのも一苦労。

 懐中電灯は探す余裕は無かった。

 

 ──ガタッ!

 

 その音は真夜中にはよく響いた。足を角にぶつけ、棚にあった物が床へと落ちる。理解した時にはサーッと全員が青褪めた。

 

 「──来人!」

 

 1番目に凶刃に倒れたのは母だった。他にも居たのか直ぐに来た化け物が爪を振るう。その狙いが来人だと分かると咄嗟に庇ってしまう。

 背中をざっくりと引き裂かれ、母が床へと倒れ込んだ。

 

 「お母さん!!」

 

 その一連の出来事に瑠海が声を上げてしまう。瑠海に標的が移ったのは父にも分かった。この時は捜索の為に瑠海を降ろしていた。手を繋いではいたが暗闇により躓いたのか庇うまでに間が空いてしまう。

 

 ──ザシュッ!

 

 2人目は。瑠海だった。倒れる瑠海の体からは大量の血が流れている。続けざまに父にも爪が振るわれる。辛うじて回避は間に合ったが、その肩には大きな怪我が。

 

 死ぬ。()()自分以外の家族が全員死ぬ。

  

 『───?』

 

 自分を庇った母。血を流している妹。今にも危険が迫る父。

 そんな時に、声が聞こえた気がした。

 

 『──我はテンシサマ。貴方にスクイを与えましょう』

 

 巨大な肉塊に3対の黒い天使の羽が生えている。目玉があちこちに着いている様は他者へと恐怖心を湧かせる。

 怯えた目でテンシサマを見ている父が何よりそれを物語っていた。

 

 『アナタにもスクイを…』

 

 無数の目がカッと開くと、化け物の周囲を光が囲む。

 それが消えた時には化け物の姿は何処にも見えなかった。

 2階に居た化け物も遅れて登場したが、今の来人の敵では無かった。

 

 「わ、私はいい…有里(ゆうり)と瑠海を…!」

 『申し訳アリマセン。そのネガイは叶えられません』

 

 テンシサマには回復能力はある。しかしそれは生きていれば効く範囲の魔法だ。父は怪我をしていたがまだ息はあった。しかし2人はもう、息をしていない。

 

 来人の覚醒は遅かったのだ。だから2人は死んだ。

 

 

 

 

 

 夜が明ける。電話が通じると直ぐに救急車と警察を父は呼んだ。信じられはしないだろうが父は経緯を話しはしたらしい。

 しかし警察はこれを殺人犯の仕業だと断定した。これも後で知った事だが、この時に体験した影時間では辻褄合わせが発生する。シャドウではなく、居もしない殺人犯が産まれたのはそれが理由だった。

 

 検査入院として来人は病院のベッドに居る。怪我は殆どない。しかし心の中にある無力感は深刻なものだった。

 あの時、この力に目覚めた衝撃で来人は全てを思い出した。自分の前世の記憶がある事。前世の自分は家族を失った事。最後にはその原因を始末してから自殺した事まで全部だ。

 来人の前世は奇しくも今の家族構成と同じだった。母が居て父が居て、妹が居る。そっくりそのままの家族。

 旅行の帰りだったか。暴走した乗用車に追突されて自分以外の家族は死亡した。その後運転手は裁判にかけられたが少しの賠償金を払って刑は免れた。

 何でも運転手は権力者の子供であったから、裏で根回しをしたのではと友人の警察官は言っていた。納得出来る訳が無いと、それからは加害者を再び訴えるまでの証拠集めに奔走した。が、その証拠は全て握り潰され、自らも危険な目に遭う事もあった。

 結局、最後には私刑に手をかけその人生に終止符を打ったのだ。語ってしまえば陳腐な話である。

 

 違和感があったのは前世の記憶が朧気にあったから。そして家族を救えなかったのも前世の自分だからか。父の命は助けられたが、父と自分の関係は最悪だ。潤滑油だった母と瑠海はもう居ない。

 一度も顔を出そうとしないのだから父の気持ちは察せられる。命は救えても心は救えないようだ。

 

 「………」

 

 父はあれから会社にも行かずに日がな酒を飲んでいる。

 暴言や暴力に訴える事はないが、その目には生気が無いのだ。真実は信じて貰えず、愛した妻も娘も居ない。居るのは気味の悪い化け物を出した息子だけ。葬儀も終われば完全に脱け殻の状態だ。

 

 「………」

 

 あれ以来毎日訪れるのはこの影時間だったか。前世では小さな頃に少しやった記憶はある。醜くはあるが今出ているこれはペルソナというやつだろうか。

 夜に出掛けると周囲には棺桶がある。2度と被害が出ないように毎夜シャドウと呼ばれる化け物は倒しているが、これも逃避行動だろう。

 

 「……何でお前だったんだ…」

 

 自宅に帰るとこの時間が来ても酒を飲んでいたのか父は潰れている。ペルソナを出している時は力が増す。子供の体でも父は持ち上げられた。ベッドまで父を運ぶと、寝言だろう。何故生き残ったのが来人だったのかと父は呟く。

 

 それは来人自身も思っている。母か妹。何方が生きていれば父も立ち直ろうとしただろう。お互い血の繋がった家族であるが、その心の距離は遠い。

 

 

 

 

 来人は贖罪の為に生きるつもりだった。これから父にどんな対応をされても父を憎みはしない。自分の様な異物が生まれたのがそもそも間違いなのだ。来人の半身であるテンシサマを見ればその醜さが良く分かる。

 今日も来人は夜間のパトロールへと出掛け、傍らに居るテンシサマを眺めていた。

 

 それは偶然だった。地面に落ちている光った物体。それが目に付き近くに寄る。光輝くのは羽根の様な代物。確かこんなのが前世の記憶にあったような気もする。しかし後一歩で名前が出て来ない。

 

 ──カパッ!

 

 思い出そうと少し頭を悩ませていると、テンシサマが現れその肉塊の体に線が出る。横に開いたそれには歯のような物が着いているから口か。そのまま口の中に拾った羽根を入れて捕食していく。長く伸びて羽根を取ったのは舌だろうか?

 我が心の写し身は化け物に近いな。

 

 『ケンサクを開始します。必要なエネルギーはあります』

 

 1人でに言葉を放つ。話し掛けても答えはしないが、今夜は喋るようだ。ピカピカと明滅しながら何かを検索しているらしい。落ちていた羽根の名前でも検索しているのか。

 

 『天塚瑠海。ヒットしました。始めますか?』

 

 …忘れもしない妹の名前だ。今世のとは付くが。検索をして名前がヒットした。此処までは分かるが始めるとは何だ?

 何をとつけてくれないと判断のしようが無いのだが。

 

 『リョウカイしました。リョウカイしました。エネルギーとケンサクを元に開始します』

 

 考えはしたが一度好きにさせてみる。結果を見てから判断すれば良い。開始の許可を出すとペルソナの羽根が巨大化していき、何かを包むように来人の横に羽根を密集させた。

 

 

 

 

 「………」

 

 此処に一人の男が居る。息子以外の家族を一夜にして失った男。そんな男は今、何時からか体験しだした空間にいる。息子はこの時間になると外へと出る事が多い。何をやっているのかは知らない。知る気もない。

 今日も酒を呷りながら息子が帰って来る時間が来る。

 

 「ただいまー!」

 「っ!?」

 

 玄関の扉が開くと、今は聞けない筈の声がした気がする。

 飲み過ぎで幻聴が聞こえたのかともう一度耳を澄ませる。

 

 「兄ちゃん、お父さん居ないの?」

 

 「お酒?あんまり飲むとお母さんに叱られるよ?」

 

 …聞こえる。自分が愛した娘の声が聞こえる。幻聴かもしれない。けれど男は立ち上がるとその声と音がする場所へと急いだ。

 

 「あ、お父さんだ!ただいまー!」

 

 其処には確かに、にこやかに笑う娘そのものが居たのだ。

 

 

 

 

 

 「わーい!お父さんありがとー!」

 「前から欲しかっただろう?それ」

 「うん!お父さん大好き!」

 

 あれから父はまた会社に行くようになった。事情が事情なため会社側も直ぐにはクビにはしなかった様子。

 父が買ってきた夕食を食べると。今日も深夜0時まで来人は起床している。父も時計を見ながら少しそわそわしている。

 

 「お父さん、おかえり~」

 「ただいま、瑠海」

 

 0時丁度になるとペルソナが現れる。その傍らには光と共にかつての瑠海の姿が現れ、父を見つけるとその瑠海は駆け寄って来た。

 父はそんな瑠海を抱き抱えると優しく頭を撫でた。降ろした後はプレゼントだろうか。瑠海にそれを渡した。

 あの日。テンシサマが産み出したのは天塚瑠海そのものだった。性格も思い出も、何から何までそっくりな存在。

 既に死んでいる。その認識が無ければ生きた瑠海がそのまま此処に来たのかと思うくらいの完成度だ。

 

 恐らくはテンシサマが作った本物とは違う偽物。しかし今2人がして居る会話は自然だ。偽物にしても此処までの代物を作れるのだろうか。

 あの瑠海はテンシサマが居る空間でしか現れない。となると自然この影時間の中でしか瑠海は現れないのだ。時計が使えないから大体1時間程度だろうか。あの瑠海に会えるのはこの時間だけだ。

 

 しかしあの瑠海が生まれてからは父も少しづつ回復しているように見える。父も分かっては居るはずだ。今話している瑠海が異常な存在だと言うのは。けれど、それでも心の傷を塞いでくれる瑠海の存在は掛け替えのないもの。

 毎日この時間の為に父は生きている節がある。それを思うと来人にはこうするしか出来なかった。

 

 「あ、お父さん寝ちゃった」

 

 疲れが溜まっていたのだろう。娘に晩酌をされたのもあってか父はぐうぐうと寝息を立てている。ポンポンと頭を優しく叩く瑠海は、本当に彼女に似ていた。

 

 「兄ちゃん!遊ぼー!」

 

 来人の前でも瑠海のまま。偽物だ。そうは分かっていても無邪気な瑠海の笑顔を曇らせるような事は出来ない。

 葛藤しつつも瑠海と遊ぶ時間を今日は過ごした。

 

 

 

 

 手に持つのは一つの羽根。あの日拾った羽根に酷似した代物。横からはそれを狙っているのか複数の目が覗いている。

 確か何とかの羽根。そんな名前だった。詳しい設定は忘れたが、今空に浮かぶ月。その存在から落ちた力の欠片みたいなものだ。

 エネルギー。この羽根にあるエネルギーを使ってテンシサマは瑠海を再現した。ならばもう一人。理屈的にはイケる筈だ。

 

 『天塚有里。ヒットしました。開始しますか?』

 

 前の様に羽根を食べ、検索を開始してから少し。予想通りの人物がヒットした。開始すると宣言すると、瑠海が産まれた時のように作業が始まる。

 

 「ゆ、有里…?」

 「ただいま戻りました。ちゃんとご飯は食べてますか?」

 「あ、ああ…それはその…」

 「もう」

 

 家族4人が再び揃う。けれどその中の2人はテンシサマにつくられた存在。父には昔の笑顔が戻る。だがこれで良いのかと思う時もある。自分の力は余計なお世話なのではと。

 

 「来人」

 

 「分かっている。だが私は、これで良いんだ」

 

 ……自分も考えはする。再び家族に会えるならと。

 今世の母を検索する前、前世の家族の名前を聞いてはみた。しかしヒットはしない。安心したような、ガッカリしたような。反対の感情を同時に覚えた。

 

 テンシサマは目覚めたばかり。もしかしたらあの羽根を食わせていけば何時かは自分の家族も再現出来るのだろうか。

 もしそうなのだとしたら。自分は……。

 

 天塚家には今宵も4人の話し声が聞こえる。また明日も。

 




続き書くとしたら隠れて羽根で力集めて、最終的には家族再現する為にボスシャドウ取り込んでいく感じかな。結末は原作メンバーにしばかれるか目的を完遂するかの2択ですね。
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