「何で止めなかったの?」
「んーそれはなー」
墓石が並ぶ夜の墓地。手入れはされていなくて、至る所に雑草が生えまくっている。そんな墓地の中。1つポツンと小さく置かれた墓石の前に2人の影。1つは大きい。1つは小さい。大きな影は小さな影へと問いかける。何で自分が人を殺すのを止めなかったのかと。
小さな影は暫く悩んだ後で、話し始めた。
「よく分かんねーけどさ、恨んでたんだろ?アイツの事」
「うん。憎くて憎くて仕方なかったわ」
復讐。仇討ち。逆恨み。大きな影は内に抱えたどす黒い感情を精算するために誰かを殺したかったみたい。そんな影の主張を聞くと、小さな影はだよなーと気の抜けた声を返した。
「単純にさ、知らない事に首突っ込む気がしなかったんだよ」
小さな影は傍観者だった。恨んでる方も、恨まれている方も、何方も詳しくは知らない。だから面倒臭かったのだ。首を突っ込んでまでどうこうするという行為そのものが。
「でも、人殺しは良くないって云うでしょ?」
「…それ、あんたが言うの?」
「…違いないわね」
どの口で言っているのか。流石に会話の流れとは言え、口が滑った。なので今の言葉は反省しなければ、そう大きな影は自身を戒めた。だが論としては分かる。人を殺すのはいけないことだ。だからやってはいけない。極々当たり前の価値観。
「それも含めて面倒だった…ていうか…」
「貴方大分可怪しいわね」
例え目の前で人が死のうとも、自分の心は揺らがないだろう。どうでもいいから。深い深い、諦めに似た境地。自分の中ではそんな気持ちが渦巻いている。
「それは貴方が一度死んだから?」
「そう、だから面倒臭いのよ、何もかもがさ」
「ふーん、そういうものなのね」
「みたいだなぁ」
別に悲観する程に悪かった訳ではなく、かと言って手放しで楽しかったも言いづらいけれど。それでも色んなものを引っ括めて自分は最後に納得したのだ。まあ、悪くはなかったかな。
そんな気持ちを抱えながら消えた。消える直前は泣き叫んだり、苦しんだ気もしたけど、それでも最後には納得は出来た。自分の終わりについて。
目を開く。そんな事出来ない筈なのに。天国か地獄にでも落ちたか?と折角何かカッコつけたのになぁ…とぼんやりと意識を覚醒させると。
「元気な男の子ですよ!」
そんな言葉が聞こえた。その言葉を理解した時、自分の心の中には深く、重い、諦めが生まれた。
「後悔とかはあったけどさー、それは前世の話だぜ?こんな知らねー世界でそんなの晴らせねぇって」
「貴方も中々、面白い人生ね」
「傍から見たらそうなるだろうけどさ、俺からしたらキツイのよねー」
「だって面白いですし」
「ひでぇ…」
さっきまでの重い話から一転、軽口を叩きあう2人。そんなこんなで談笑して、話し終えると軌道を修正する。
「で、えーと、人の死とかそんな話しだったよな?」
「ええ、そんな感じね」
「死、ねぇ…経験した身と、この色々と見える目だと、あんまし特別感ねぇなー」
誰も居ない墓場。しかしそれは通常の人が見ればの話。彼の瞳に映る墓場の景色には墓石と、雑草と、沢山の人々の姿が映っていた。
「あ、喧嘩してるな、ミヤさん」
「仲悪いからねぇ…あの人達」
筋肉質な幽霊2人が殴り合う。死んでいるから血は出ないけど、痛みは感じるのか偶に呻く声が聞こえる。死んだ後でさえ喧嘩するなんて元気だなと彼は思う。自分にそんな元気はないから。
「死とか生とか曖昧なんだよなー、だから偶にさ、どっちでも良くね?って思うわけ」
「だから止めなかったの?」
「うん、多分そう。死んでもさ、それだけじゃん?」
「自覚は……あるみたいね」
「こんなんだから友達居ねーんだろうなぁ…」
自覚はしてる。だけど本当にそう思うのだから仕方ない。何処何処の誰さんが死んでもどうでもいいし。自分と近い関係の人が死んでもどうでもいいし。人として大事なものを失くしてしまったのかもしれない。
「生きてても死んでても会えるしなぁ…」
「その変な力のお陰で、私とも話せるわけですしね」
「最初見た時はすげぇ形相だったからビビったわ」
「あら、それはごめんなさいね」
白装束に黒く長い髪。それに頭には白い三角頭巾と来た。此処までコテコテの幽霊も今時珍しいだろう。なのでもしかしてかなり昔の人?とか聞いたけど、
「女性にそれは、まなー違反よ」
と返された。まあ逆算すれば年分かるしな。聞かれたくないのも理解は出来る。
「だからさ」
「うん」
「別に言いふらすつもりはねーぜ?」
「本当かしらね」
首元に当たる白銀の刃がとても冷たい。今更死にたくないとは思わないが、雑に殺させるもの何だかなーとは思う。なのでさっきから向けている冷たい視線も辞めて欲しいな。
「私って、何時も裏切られてきたから、男の人の言葉を信じられないのよね〜」
「今時それは男性蔑視に当たるぜ?」
「女性蔑視の時に生きてたから分かんな〜い!」
「可愛い声で刃物を近づけないで下さい」
こいつ…、恨み抱いているだけあってマジでヤバイな…。そう思いつつも口には出さない。だって殺させるしね。死ぬにしてもこの人の手で死にたくねぇな…何か死んだ後も殺させそう。自分でも何言ってんのか分からんけども。
「うーん…信じられないから取り憑くわね」
「気軽に言うなぁ」
「犯行現場を見られたら、監視を付けるのが普通でしょ?」
「犯人の心理は分かんないなー」
面倒ではあるが、暇を潰せそうなのも確か。選択肢は無いが、自分はこうして彼女を受け入れたのだ。
「──んがっ!?」
目を覚ます。時刻は夕暮れ時、教室に居る同級生達の姿は疎ら。この状況から顧みるに…
「おっはー!
「霊子さん…もしかして放課後?」
「うん。ぐっすり寝てたわねー」
「そっかー」
昨日の疲れから、ぐっすりスヤスヤ夢の中。そんな状態を教室に晒していたらしい。悲しい事に気を遣って起こしてくれるような友達は居ない。なので自分の不真面目な態度は、同級生達だけではなく、先生方にも見られたのだろう。内申点に響きそうだ。
「帰るか」
「はいはい〜」
やってしまったものは致しかたない。切り替えが人生には必要なのだ。故に自分はこの事を忘れ、直ぐ様家に帰る事にした。決して先生に会ったら面倒な事を言われるから逃げる訳ではないのだ。そうなのだ。
「霊子さんさぁ…いい加減見逃してくんない?」
「えーやだぁー」
「今日も駄目か…」
あれ以来霊子さんは自分に取り憑き続けている。10年くらいは居るので最早家族に近いのかもだ。時折もう許してくれない?とは言うのだが、霊子さんは何処吹く風。まるで言う事を聞かない。ちなみに霊子さんという名前は自分が付けた。だって教えてくれないんだもん。霊子さんも結構その名前が気に入ったのか、特に咎めはしなかった。
「あ」
「あら?」
そうしてぼんやりとテクテクと帰路についていると、周りの雰囲気が変わっていく。何度か経験はしたので、何が起きたのかは分かった。
異界化。悪魔が現れる異界が顕現する現象。悪魔なんてファンタジーだなとは思うが、本当に居るのだから仕方がない。この異界にはある程度選ばれた者しか入れないのか、辺りには人っ子1人居ない。霊子さんと自分だけだ。こういう現象ってホラーとかで話されてたよなぁ…とか思いつつも自分は鞄の中に手を突っ込む。出て来たのは玩具の銃と五寸釘が何本か。まあこれだけあれば足りるだろう。
「霊子さん、力貸してー」
「はいな〜♪」
気の緩んだ声で霊子さんへと助力を頼む。戦うのは面倒だが、ただでやられるのも何か癪だ。自分の声に返答するとクルリと宙を回り、形を変えていく霊子さん。
「霊子さん。ヒトダマモード、憑依合体・霊子さんイン、ハンドガン」
玩具の銃ではあるが一応は銃。その中に丸くなった塊の霊子さんをぶち込んだ。すると玩具の銃からドロドロとした負のオーラが溢れていく。
「
玉は五寸釘。恨みがましい霊子さんにはピッタリの代物だ。
「……ちなみに4000って何でなの?」
「語呂が良いから」
「そう、良かったわ。年の事なら殺そうかと思ったもの!」
「洒落にならんね…」
悪魔より先に霊子さんに殺されるかもしれない。そんな事を思いつつも自分は悪魔に向けてREICO-4000を向けた。
REICO-4000。これを思い付いたから書いたやつ。フラワーズ見てたら何か書きたくなった。銃の名前は詳しくないから変でも許してね。