木田君がロッカールームから出てくる
最後まで残ってるのは正大のみ
タオルを顔にかけてベンチに横になる正大
気持ちを落ち着かせてるのはわかるけど
焦りがある
チームを勝たせたい
私に神ゲー見せてやるっていう気負い
そんなの良いからさっさとアタファミやってるときのあの強さを出しなさいよ
ロッカールームの入り口で正大を見ながら思っていると
「気負ってるねー」
と友姉が声をかけてくる
「プレッシャーに負けてるって感じですか」
「いんや、あの子はどちらかと言うとプレッシャーを楽しむ方だよ」
プレッシャーを楽しむ?
nanashiとやるときのあの緊迫感みたいなのを楽しんでいるという事かと思う
「少なくとも勝ち負けは後回しでバスケだと相手が強いほどそのプレッシャーに打ち勝つのが楽しいって言ってたからねー」
そんなことはない
誰もが最終的に勝てればなお楽しいと思うはず
この前の正大の言った勝ちてぇって言葉は忘れない
「さすがに時間ね、葵ちゃん、あいつ呼んできて」
「私が?」
「先に戻らないといけないし、それにあいつの後ろ今押せるのは葵ちゃんだけだよ」
といって走りながら会場の方に戻っていく友姉
はぁとため息をつきながらロッカールームに入り正大の横に立つ
「さすがに時間よ」
と言ってタオルを取って私を見る正大
その目は力をなくしている
何?こいつこんなに弱かったの?
この前まで一緒に居てこんな力のない目線初めてだった
今このままコートに戻したらもっとダメになる
私に前に進む勇気をくれたこいつにちゃんと返さないと
と思い立って立ち上がろうとする正大の肩に手をやりベンチに座らせる
「な、なんだよ」
「あんたのその状況じゃ神ゲーどころかクソゲーまっしぐらね」
「そうかもな、しょせんそこまでの・・・」
と言いかけた所に両手を正大の頬にバチンと持っていきおでこが当たるほど顔を近づける
「な、なんだよ」
と目線をそらす正大
「そうやって目線をそらすってことは私の知ってる正大じゃない」
「・・・かもしれないな・・・」
「じゃあ妹さんとの約束も果たせないし私を前に振り向かせたこともパーになるわね」
「な、俺は日本一の」
「だったらやりなさいよ!」
涙目になりながら正大の目を見る
それを直視してると目に力が湧いてるのが見て取れる
「葵にそこまでさせておいて負けるわけにいかないわな」
正大が私の手を取り頬からどかす
そして立ち上がりロッカールームの出入り口に歩き始める
「どうせ相手がレベル上なんだから負ける覚悟で当たって砕けなさい」
と言うと振り向く正大
「そうだな、負けてもコンテニューするだけだしな」
「おにただ!」
「出たよそれ。ありがとうな」
と握り拳を差し出す正大
同じように握り拳を差し出してチョンと合わせる
会場に向かう正大のその後ろ姿は生気にあふれていた