【完結】ブラック★ロックシューターな魔物の子   作:烏何故なくの

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一ページ目 少女との出会い

 

 

 「く、なんなんだ…!!」

 

 鹿を模した被り物をした上裸で色黒の男が、必死に真夜中の森の中を走っていた。

 彼、ガルザは困惑と怒りを込めて隣を走るパートナーに呼びかける。

 

 「バランシャ!! 一体何が起こっている!?」

 「あの魔物、土壇場でパートナーを見つけたのよ!」

 

 ガルザの声に返事を返すのは、額にハートの模様がある豹の容姿をした魔物の子、バランシャだ。

 バランシャも身体中が傷だらけであり、疲労しているのがわかる。

 

 楽な狩りの筈だった。

 それなのにいつの間にか、狩る側と狩られる側が逆転している。

 獲物だった筈の魔物は正確にこちらの場所を見つけ出し、的確に攻撃を命中させてくる。

 その事実が狩人たる自負を持つガルザには許せなかった。

 怒気に呼応するように、ガルザの持つメキシカンイエローの本が放つ光が大きくなっていく。

 

 「バランシャ、透明化の術を使うぞ! 相手が隙を晒した瞬間に最大威力の術をぶつけてやる!!」

 「! 分かったわ!」

 

 敵の術の射程は広く、逃げ切れるとは思えない。

 ならばリスクがあるとしても勝ちの目に賭ける。そういう作戦だった。

 

 「グ・リアルク!

 

 呪文を唱えるのと同時にバランシャの体が透明になる。

 ガルザは足を止め、最大威力の術をぶつけるために心の力を貯めることに専念した。

 ガルザの耳が、敵の足音を正確に捉える。

 

 (15m。10m。5m……)

 

 「……あれ? 逃げるのはやめたのか?」

 

 相手のパートナーである青年の間抜けな声を聞いた瞬間、ガルザは全力で吠えた。

 

 「今だ!! ギガノ・ガドルク!!!!

 

 「危ない」

 

 無数のトゲがついた無骨な鎧を身に纏ったバランシャが、透明化を解除しながら敵に突っ込んでいく。

 それにいち早く気づいた魔物の少女はパートナーの青年を突き飛ばした。

 それにより青年や少女の本が攻撃されることは避けられたが、少女の細い体にバランシャのタックルが直撃する。

 少女も踏ん張って抵抗はしているが、明らかにパワー負けしていた。

 

 「いいぞバランシャ、そのまま……!」

 

 本を燃やせ! と、声を発しようとしたガルザの口が止まる。

 バランシャの攻撃を受けている、左右不対照なツインテールをした魔物の少女と目が合ったからだ。

 

 (なんだあの目は! 術の効果なのか?!)

 

 少女の左目には青い炎が纏わりつき、怪しい光を放っていた。

 バランシャの攻撃で体を吹き飛ばされている最中なのに、青い炎を纏った瞳は正確にガルザを射抜く。

 

 「やって、禄郎」

 「おうよ、カノンセン!

 

 呪文と共に少女の腕に青い炎が渦巻く。

 瞬きの間に、無骨な大砲が少女の腕から生えるようにして現れた。

 ドォンッッという轟音と共に、ガルザの腕に衝撃が走る。

 

 「……え?」

 

 気づけば、大砲が岩石を連続で射出し、ガルザが持っていたメキシカンイエローの本を吹き飛ばしていた。

 

 バランシャの攻撃を受け吹き飛ばされた少女は、バランシャの追撃がくる僅かな一瞬の間に地面に着地し砲撃を放ったのだ。

 狙いを定めるには僅かな猶予しかなかった筈なのに、少女の放った岩石は正確に本だけを撃ち抜いていた。

 

 「あ、あああ……」

 

 ガルザは絶望の声を上げる。

 本の抉れた箇所から炎が噴き出していた。いずれ、本全体に炎が回るだろう。

 

 相手に自分の本を燃やされた魔物は魔界に帰る。

 これが人間界で行われる、今代の魔王を決めるための絶対のルールだ。

 バランシャの体はすでに透け始めていた。魔界に帰る力が働いているのだ。

 

 「バランシャ、バランシャーッ!! すまない、王にしてやれなくて、すまない……」

 「謝らないでガルザ……。あなたのこと、忘れないわ」

 

 バランシャの姿が消えてなくなってしまうまで、ガルザはバランシャの名前を呼び続けた。

 やがて完全にバランシャが消えてしまうと、ガルザは自分達を打ち破った二組に目を向けた。

 

 「先程パートナーになったばかりなのにオレ達を倒すとは……、お前達、何者だ……?!」

 

 戦いに巻き込まれたばかりなのに一切怯まずに戦い抜く人間の青年も、呪文を使えるようになるやいなや、遠距離にいるガルザを正確に見つけだし撃破する少女の魔物も、明らかに並の存在ではなかった。

 

 ガルザの言葉を受け、少女はしばらく動きを止める。

 そしてたっぷり考えた後、少女は首を傾げながら口を開いた。

 

 「……私は、誰?」

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 ◯月✖️日

 

 遠くの公園で花火大会があるらしいので、どうにか高い所に行ったら雑踏の中に身を投じずに花火を鑑賞できないかなと思い、夜に山の上の神社に行った後の帰り道のことである。

 

 結局花火は見れなかったし、無駄足だったかと思いながら神社の急な階段を降りていると、階段の横の森の少女の悲鳴らしきものが聞こえた。

 気になって森の中に入ってみると、独特な本を抱えた少女が傷だらけで倒れていた。

 

 肩を揺すって起こしてみると、少女に一言、「読める?」と青色の本を差し出された。

 その本の文字はさっぱり分からなかったが、三ページだけ読める箇所があった。

 「シルク」「カノンセン」「イクソルド」。

 ここでオレは気づいた。これ、金色のガッシュベルの魔本だ。

 

 この真辺(まなべ)禄郎(ろくろう)は、十九年生きてて初めて非日常への入り口を手に入れたのだ。オレは大喜びで戦いに参加することにした。

 魔本はオレのテンションを反映して凄まじい光を放っていた。

 

 少女はすでにパートナーを見つけた魔物に襲われていたらしい。

 襲ってきたのは豹みたいなやつと半裸の大男だった。……なんか見覚えがあったんだよなアイツら。もしかして原作にいたのかもしれねぇ。

 

 遠距離からチクチク攻撃をされて初めての戦いにしてはかなり危なかったのだが、少女の呪文が優秀だった。

 

 第一の呪文、シルク。

 これを唱えると少女の左目に青い炎が纏わりつく。どうやら視力や集中力を高め、射撃をサポートする呪文らしい。

 これが遠距離から攻撃してくる敵と相性が良かった。夜の森なのに、少女は敵の位置をすぐに見つけ出した。

 

 ……なんか、シルクを発動した時の少女の顔にも見覚えがあるんだよな……。

 ガッシュには少なくともこんな子いなかったと思うんだけど。

 

 第二の呪文、カノンセン。

 これを唱えると少女の腕に大砲が出現する。大砲からは岩石っぽいのが飛ばせる。三発くらい撃つと大砲は消えるようだ。

 

 この術を使い、オレ達は相手の本を燃やすことができた。

 特筆することとして、シルクの呪文はオレが思っている以上に強力かもしれない。

 少女は魔物の攻撃を受け吹き飛ばされながらも正確にカノンセンで相手の本を撃ち抜いた。凄まじい射撃の腕だ。どれだけ強くても相手の本さえ燃やされば勝てるのだから、狙撃能力を強化する呪文はかなり優秀なんじゃないか?

 

 第三の呪文、イクソルド。

 少女の手の中に刀を出現させる呪文だ。刀はかなりの強度を誇っているらしく、今回の戦いでは遠距離攻撃を防ぐ盾として使った。

 

 あと書いておかなければいけないのは、戦いが終わった後の少女の言葉である。

 撃破した相手から「何者だ」と問われた少女は、「……私は、誰?」と発言した。詳しく聞いてみれば、少女には記憶が無いらしい。

 

 自分の名前も分からないが、魔物の王を決める戦いのことはうっすら記憶があるらしい。

 ガッシュは確か魔物の王を決める戦いのことも忘れていたよな。戦いだけ覚えてるって、どういう風に記憶を失ったらそうなるんだろうか。

 とりあえず今日は眠いのでこのくらいにしておく。できれば勝ち抜きたいな〜。

 

 

 

 ◯月△日

 

 オレの金色のガッシュベルについての情報を整理しよう。

 ・五年ほど前に、読心能力を暴走させて並行世界の男の精神に入ったことがある。金色のガッシュベルは並行世界に存在した、この世界にない作品である。

 ・男はアニメを見終わった後、アニメでは描かれなかったクリア戦をコミックで見た。アニメの知識はゾフィスがカスとかファウードが泳げるとかしか覚えてない。

 ・男が金色のガッシュベルを見たのは十年ほど前。男の精神に入ったのが五年前だから、体感十五年前の知識だ。細かい部分は覚えていない。

 

 戦いの中で自分にできそうなこともメモしておこう。

 ・オレの能力は読心。他人の記憶、もしくは感情を読み取れる力。ミスると精神が他人の中に入り込んでしまう。イメージとしては他人の心と同化する能力とでも言おうか。

 ・術の発動には心の力が必要だった気がする。他人の感情を読み取ることで心の力を回復させられるかも。

 ・戦闘と並行して読心は難しい。というか体を動かしながらの読心が難しい。感情を読み取るだけならできる。

 ・並行世界の人間の精神を読み取るには数ヶ月寝たきりになる必要があるので、金色のガッシュベルの詳しい内容を見に行くのはリスクが大きすぎる。眠っている間に少女の本が燃やされては堪らない。

 

 

 

 ◯月□日 

 

 少女が来てから三日になる。

 記憶喪失で何にも社会と繋がりを持っていない子を、一人暮らしの大学生の男が世話をする大変さをナメていた。

 風呂のやり方を教えるのが一番大変だったかな。雑な髪の洗い方しか教えられなかった。オレが丁寧な髪の洗い方を知らなかったっていうのもある。

 

 服もセンス無いのしか買ってやれない。

 食欲もしっかりあるから食費も二倍だ。

 とりあえずご近所さんと会った時は親戚の子だと紹介するようにしている。

 

 あと、少女に抱いていた既視感の正体が分かった。

 ブラック★ロックシューターだ。

 左目に青い炎を纏っていて、黒髪ツインテールで、デッカい銃をぶん回してる少女。

 ガッシュの記憶を思い出そうと、並行世界の男のアニメに関しての記憶を思い出せるだけ文字起こししているうちにブラック★ロックシューターについて思い出した。

 

 男の記憶は並行世界の2023年まであった。2021年にアニメをやっていたのに中々思い出せなかった。少女の服装がおへそ丸出しホットパンツな感じじゃなくてセーターみたいな普通の服とスカートを着ていたからかもしれない。

 

 ガッシュの世界にブラック★ロックシューターがいる理由はさっぱり分からない。

 もしかして、この世界はやる夫スレの世界なのかも。ガッシュの知識なんて全然通用しなくて、色んな作品のキャラが魔物の子として出てくるのかもしれない。

 

 そうなった場合、もしかして少女はガッシュ枠だったりするのだろうか? ガッシュも記憶喪失のキャラだ。

 うーん、不安になってきた。オレに天才主人公である清麿の代わりは務まらないだろうし。

 新聞とかで清麿の存在を探してみようかな。清麿の存在が確認できれば安心できる。

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 「敵が来たぞ、少女」

 

 私の本のパートナーである禄郎が、私に声をかける。

 禄郎は私に名前をつけない。禄郎は私に戦い以外のことを求めない。

 それは私も同じ。

 敵は倒す。それだけの為に、私は禄郎と行動している。

 

 千年に一度の、魔界の王を決める戦い。

 これだけが私に残された記憶。私のよすが。

 そんな私を後押しするように、私の中からはずっと大きな声が響いていた。

 

 絶対に、生き残れ。

 敵は倒せ。

 

 きっと他の魔物もそうである筈だ。

 ただ戦い、勝ち残ることだけが目的。

 そのためにはどんな手段を使っても勝ち残る。

 それだけを指針に行動していると思っていた。

 

 「君たちの相手は我がしもべが務めよう! 来たまえ、我がしもべ、マジョスティック12(トゥエルブ)!!」

 

 「……腕の力は恐竜並み、「ダイナソー・アーム」! 予知能力を持つ男、「ワンダフル・トゥ・ザ・フューチャー」! 「ビッグ・ボイン」! 炎を自在に操る「ファイヤー・エルボー」! ……」

 

 「……さぁ、この中で仲間外れはどれ!?」

 

 ……だから、私は目の前で急にクイズを始める老人に、困惑しっぱなしだった。

 この戦いは、ただ相手を倒すだけじゃ、ないの?

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 ◯月%日

 

 少女と過ごすようになって一週間が経った。

 そろそろ魔物と出会うかな、と思っていたら、大学からの帰り道に「ナゾナゾ博士」を名乗る老人に出会った。

 

 ナゾナゾ博士の事はちょっと覚えている。「ウ・ソ」と言って相棒の魔物を愕然とさせるのが趣味のお爺さんだ。

 

 ナゾナゾ博士のパートナー、キッドに急かされ、少女と本を持ってナゾナゾ博士の前に立つと、突然博士が連れている謎の超能力集団についてのクイズが始まった。

 こんなシーンあったなぁ……。思わず懐かしくなった。

 

 というか、本当にみんな超人揃いでびっくりした。

 この世界の人間って凄い。読心能力持ってる自分ってそんなに特別でもないのかもしれない。

 

 あと、ビック・ボインは普通にエッチだった。

 ハイレグ巨乳金髪美女は普通にエッチだった。

 なんとも言えない、感情の読み取れない目をしていたけど、それでもエッチだった。

 少女もジッとビック・ボインの胸を見つめていた。同じ女性でも目で追っちゃうんだなぁ。

 

 超人クイズが終わった後、ナゾナゾ博士は満足して帰ろうとしていたが、なんとか引き留めた。

 ビック・ボインに大人の女性として少女に人間界での過ごし方を教えてもらうためだ。

 魔物の王を決める戦いの事を知っている女性なんてそう何度も会えない。男じゃ分からない所も多いのだ。

 

 訳を話すとビック・ボインは快く頷いてくれた。器がデカい。

 ビック・ボインは親身に少女に服のこととかお風呂のこととかスキンケアのこととか教えてくれた。

 そればかりか、いつのまにか夕飯までビック・ボインに作ってもらってしまった。

 彼女のチャーハンは大変美味しかったです。なんでもできるなこの人。

 

 少女もビック・ボインにだいぶ懐いたらしく、いつの間にかオレの布団で二人で眠っていた。

 ……帰らないくていいんだ……?

 頼んだのはオレだけど流石に帰って欲しかったかな。色々目に毒だし……。

 明日はナゾナゾ博士との戦いだ。頑張ろう。

 

 

 




 
 シルクは視力の視と強化系呪文、〜ルクを合体させた呪文です。
 カノンセンはブラック★ロックシューターの使う大砲、「★Rock Cannon」とガッシュの発射呪文、〜センを合体させました。
 イクソルドはThe Gameのスキル、イクサ・ブレードとガッシュの剣系の呪文につくソルドを合体させたやつ。
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