【完結】ブラック★ロックシューターな魔物の子   作:烏何故なくの

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十一ページ目 ブラック・ロック・シューター

 

 『お……のれ……。ガッシュが他の魔物の最強呪文を使えるだと?』

 

 オレの手元で輝く黄金の本。

 そこには「術を持っていた者の力」が溢れていた。

 オレの心の力を使わずに、他の魔物の最大呪文を使わせてくれる。

 魔界にいるガッシュの友達が全員力を貸しててくれたからこそ手にできた、奇跡の力。

 

 『勝ったと……思うな……。シン・グ・ラブが月面にいられるように、我も宇宙空間で活動ができる………!!』

 

 「たのむぞコルル、ウマゴン!! シン・ライフォジオ!! シン・シュドルク!!」

 

 宇宙へと逃げるクリアを追う為に、宇宙空間でも命を守ってくれるコルルの力と、高速で移動できるウマゴンの力を貸してもらう。

 

 オレはガッシュの背中に乗り、宇宙空間へと突き進んでいく。

 その途中、ガッシュがオレに話しかけてきた。

 

 「ウヌウ、清麿……! クリアはもとより、シン・グ・ラブはどうするのだ? このままでは月が落ちてくるのであろう?」

 「ああ、それならきっと大丈夫だ」

 

 力を貸してくれた魔物には、クリアに吸収されたアースやモモン、チェリッシュ、ゼオンもいた。

 シン・グ・ラブの中にいても魔本の力で繋がれるなら、きっと彼女にも届く筈だ。

 

 「頼むぞロック……! シン・ブラック・ロック・シューター!!」

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 「シン・ブラック・ロック・シューター!!」

 

 清麿の声が、眠っていた私の頭を覚ましてくれる。

 シン・グ・ラブの中にいても、私は私であり続けた。

 

 禄郎が教えてくれた。

 私は真っ白なことりとりなんかじゃない。

 私の中にはガッシュの赤(気高さ)も、ティオの朱色(優しさ)も、キャンチョメの黄色(面白さ)も、ウマゴンの薄いオレンジ(勇気)も、ウォンレイの薄い青紫(決意)も、キッドを守れなかったグレー(失意)も、全部ある。

 

 「私はロック。ブラックロックシューターの、ロック」

 

 私は腕を伸ばした。

 清麿が唱えてくれた私の呪文は、なりたい自分になる力。

 

 シン・グ・ラブの別人格なんかで終わりたくない。

 私は生きたい。

 

 「力を貸して、禄郎」

 

 叫んで拳を目の前の空間に叩きつけたら、ガラスが割れるみたいに空間が砕けていく。

 

 気づけば私は、月面に転がっていた。

 服も変わっている。ビキニのブラにホットパンツ、フード付きの黒いコート。

 禄郎の思ってる、「ブラック★ロックシューター」らしい衣装だ。これもなりたい自分になる力の効果なのかな?

 

 隣には禄郎。斜め後ろには、お腹を押さえて立っているシン・グ・ラブ。

 どうやらシン・グ・ラブのお腹の中からは出られたらしい。

 

 「う、グ…………。まさか、君の意識が残ってるなんてね」

 「みんなを返して、シン・グ・ラブ」

 「そういうわけにはいかない。何もない、真っ白な世界を作るんだ」

 

 シン・グ・ラブはそう言って鎌を構える。

 

 「おい、どうすんだよ……こっちには呪文がないから、対抗しようがないんじゃないか?」

 「禄郎、手を握って」

 「え?」

 「私を、信じて」

 「……わかったよ、相棒」

 

 禄郎はそう言って、私の手を握ってくれる。

 私は意識を集中させる。

 禄郎の存在そのものに、集中する。

 

 「ネブレイド」

 

 数秒とたたずに禄郎の体は崩れて、解けて、再び絡み合っていく。

 私の手には、巨大な大砲がくっついていた。

 私は大砲をシン・グ・ラブに向け、全力でエネルギーを解放した。

 エネルギーの奔流は月の表面に荒々しい痕跡を残しながらシン・グ・ラブに迫る。

 

 「な、ネブレイドをした後、体の組織を組み直して武器に錬成した……!? ……なるほど、術の効果でネブレイドの能力も上がっているわけか」

 

 『え、な、オレどうなってんの?』

 「指示を出したら形を変えてね」

 『え、ちょっと!?』

 

 私は砲撃をシン・グ・ラブに見舞いながら走り出す。

 シン・グ・ラブが体勢を整える前に、一気に決める。

 

 「刀!」

 

 普段とは真逆。

 私が禄郎に指示を出し、攻撃をしてもらう。

 私は刀に変わった禄郎で、シン・グ・ラブの胸元を切り付けた。

 

 「舐めるなよ……! 錬成できるストックがあるのはお前だけじゃない!」

 

 刀になった禄郎が、甲高い音を立てて弾かれた。

 シン・グ・ラブの胸元に硬い鱗が生えている。アシュロンの鱗だ。

 

 「はぁっ!」

 

 シン・グ・ラブの手の中に現れた刀が、禄郎を斬りつけた。 

 力が抜けていく……! これは、アースの……!

 

 「世界で私以外、一辺の意思すら許さない。魔物も術も人間も、白紙のノートに戻してやる」

 

 シン・グ・ラブの背中から生えた機械的な翼が、空中で何本もの触手に分かれ四方から私を襲う。

 おそらく、ロデュウの力だ。

 

 「禄郎、鎖!」

 『わかった!』

 

 無数の鎖に分かれた禄郎が、触手を撃ち落として行く。

 

 私は禄郎を大砲に変え、遠距離から弾幕を張った。

 パピプリオやモモンの術を喰らえば一気に勝敗が決まってしまう。

 

 「まだ足掻くか。ミニマム・メテオ」

 

 シン・グ・ラブも小さな隕石のようなエネルギー弾を背後に展開し、撃ち合いが始まった。

 威力では私が劣っている。

 劣勢なのは私だが、シン・グ・ラブは私を殺しきれないことに酷く苛立っているようだ。

 

 「ここまで喰らい付いてくるとは……ホワイト、あなたに敬意を表して謳おうか。シン・グ・ラブ・セウノウス」

 

 背筋がが粟立った。

 シン・グ・ラブが自分の体を純粋なエネルギーに変換している。紅い光が目から全身に回っていく。

 私どころか、月が消し飛ぶ威力だと察した。

 

 「させない!」

 「もうすぐなんだ……! 時間を終わりに閉じ込める!」

 

 私は禄郎を刀に変え、斬りかかる。 

 しかし、届かない。

 千を越える斬撃を放っても、その全てを迎撃される。

 

 このままじゃ……負ける!

 

 『させるか——!!』

 

 紅く光るシン・グ・ラブの顔に動揺が走る。

 視界に映る私の姿が二人に増えたからだ。

 

 禄郎は姿を私そっくりに変え、シン・グ・ラブに飛びかかった。

 動揺したシン・グ・ラブは、手刀で禄郎を吹き飛ばす。

 

 その隙に、私はシン・グ・ラブへと組みついた。

 

 「残念だったね、もはや呪文は発動している。私というエネルギーの爆発を止めることなど……」

 「うるさい」

 

 まだシン・グ・ラブのお腹には、みんながいる。

 返してもらわなければいけない。

 

 私は口を開け、シン・グ・ラブの喉元にかぶりついた。

 

 「ネブレイド」

 

 膨れ上がったシン・グ・ラブという存在を、丁寧に丁寧に分解して飲み込んでいく。

 紅い光は私の口に吸い込まれ、私という一つの存在に変わっていく。

 

 「……どちらが残っても問題はない。どっちも、私だ………」

 

 バギ、ぐしゃばりボキぐちゃ。

 私は口を開き、シン・グ・ラブを飲み込んだ。

 

 「私は、あなたとは違う」

 

 最後に一言だけ言い残して、私の戦いは終わった。

 

 

 

 「お〜い!! 無事か!?」

 

 聞き慣れた声が聞こえて、私は振り返る。

 ガッシュの背に乗った清麿が、私に手を振っていた。

 クリアの存在が感じられない。二人は見事に、クリアを倒してくれたのだろう。

 

 気づけば、私の手はうっすら透けていた。

 クリアの本は、私の本でもあった。

 クリアの本が消えたことで、私も魔界に帰ることになったのだろう。

 

 『………ロック』

 「お別れ、だね」

 

 私は清麿に、禄郎を元の姿に戻して投げ渡した。

 ロックはふよふよ浮かんで、清麿にキャッチされる。

 

 「寂しいけど、お別れ」

 

 声に出すと、どんどん悲しみが迫り上がってくる。

 私の正体は意思を持った呪文。家族もいない。帰る場所もない。

 私は、魔界に居場所があるのだろうか?

 

 「…………ロック!! オレの日記は、お前が来てからどんどん楽しくなった。きっとオレという物語はこれからもっと楽しくなる!!!」

 

 禄郎はそう言って、ニカッと笑った。

 

 「お前の物語も、まだまだこっからだろ?」

 「……そうだね。私も、きっとこれから」

 

 私も、頑張って口角を上げる。

 私の物語も、きっとこれからだ。

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 ¿月〓日

 

 (追記)

 ガッシュ達は見事にクリア、そしてシン・グ・ラブに打ち勝ってくれた。

 クリアの本が燃えたことでロックも魔界に帰ってしまったが、シン・グ・ラブの精神に上書きされたと思ってたからな。

 ちゃんと面と向かってお別れを言えただけ上々だろう。

 

 ズレてしまった月の位置は、アンサートーカーの力をフルに使った清麿と、魔物みんなの力を借りて黄金の輝きを宿したブラゴがどうにか直してくれたらしい。

 星の力を借りられるブラゴの力が無ければ、月の位置を元通りに治すなんてことは不可能だったそうだ。

 金色のブラゴか。……なんか違和感があるな。

 

 ロックがオレに付与した自分の体を武器に変えられる力は、ロックが帰ってもまだ残っていた。

 どうにかこれを活かせる職業に就きたいな。探偵とかどうだろう。

 

 

 

 ★月]日

 

 ロックのいない部屋は、やっぱり寂しい。

 

 

 

 『月◉日

 

 勝ち残った魔物の子である、ガッシュ、バリー、ブラゴ、キャンチョメ。

 彼らが戦う日時が決まったらしい。

 

 まずはガッシュvsバリー、ブラゴvsキャンチョメで試合を行い、勝ち残った方が最後に戦うんだそうだ。

 誰が勝っても悔いのない形式で決着をつけるんだな。

 ……オレがここに混ざれないことは、ちょっと歯痒い。

 

 (追記)

 ガッシュvsバリーではガッシュが、ブラゴvsキャンチョメではブラゴが勝ち残ったらしい。

 

 ガッシュとバリーはお互いの心の力が切れるまで戦い、後半ではゼロ距離の肉弾戦主体で戦っていたそうだ。

 バリーは王を殴れるほど強い意思を、ガッシュは何者にも屈さない王としての強さを得たことが証明できた戦いだったらしい。

 

 ブラゴとキャンチョメの戦いは、いかにキャンチョメのシン・ポルクをやり過ごせるかといった戦いだった。

 幻と現実を見抜き、最後まで思考を止めなかったシェリーの存在が勝敗に影響したそうだ。

 キャンチョメはブラゴと互角以上の戦いができたことに満足しながら魔界に帰っていったのだと。

 

 

 

 『月、日

 

 魔物の王を決める戦いが終わった。

 ガッシュが最後に勝ち残り、王になったらしい。

 清麿はガッシュとの思い出か、大量の財産かを魔本に選ばされ、ガッシュとの思い出を取ったそうだ。

 ケチくさい。どっちもくれればいいのに。

 

 

 

 ⇔月≫日

 

 ロックからの手紙が来た。

 日記に貼っておこう。この日記は捨てないようにしなければ。

 オレもロックに胸を張れるように生きていきたい。

 

 『禄郎、元気ですか。ロックです。

 手紙というものは初めて書くので、少し文章がおかしいかもしれません。

 

 シン・グ・ラブがネブレイドした魔物は、魔界で私が全員吐き出しました。みんな無事です。

 ガッシュが治めている魔界は平和です。でも、いい人ばかりじゃありません。

 だから私は王様直属の部隊、ブラックスターのメンバーとして働いています。

 私にもちゃんとと居場所ができました。

 

 居場所といえば、シン・グ・ラブの呪文であるシン・グ・グラード・デッド・マステラとシン・グ・アムナグル・ドユ・ストレングスに最近人格が出来ました。

 シン・グ・グラード・デッド・マステラは、長いのでデッドマスター。シン・グ・アムナグル・ドユ・ストレングスも、長いのでストレングスと名付けて暮らしています。

 二人は私の事を好いてくれているようで、私のことを女王(エンプレス)という愛称で呼びます。シン・グ・ラブをネブレイドしたから、私が二人の主ということらしいです。

 デッドマスターは良い子だけど、少し私が大好きすぎる気がします。私のことを女王(エンプレス)以外にもエンジェルと呼んだりします。

 ストレングスはやんちゃで、お酒が大好きです。よくお酒を飲み過ぎて吐いてしまいます。肉体を持たない呪文なのに。

 

 二人といると大変な事も多いけど、二人とも家族みたいに大切だと思っています。

 禄郎の言ったとおりでした。私の人生は、きっとこれからなんだと思います。

 でも、禄郎ともまた会いたいです。

 いつかまた、大きくなって出会いましょう』

 

 (ロックと二人の女の子の写真が貼られている)

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 魔物の王を決める戦いから十三年後。

 とある森の奥底で、二人の男女が相対していた。

 黒髪の少女が、男に問いかける。

 

 「私は、誰……?」

 「おいおい、ガッシュ2があるのは知ってたけど……こんな形で再会するとはな」

 

 男は困ったように笑い、座り込んだ少女に話しかける。

 

 「お前はロック。ブラック★ロックシューターの、ロックだよ」

 

 男は少女の手を取り、目の前のカードと呼ばれる怪物達に向き合う。

 二人の運命は、再び廻り始めた。

 

 

 

 

 

 





 本編はこれにて完結になります。

 最後の方にちょこっと、DAWN FALLからデッドマスターとストレングスを登場させました。
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