【完結】ブラック★ロックシューターな魔物の子 作:烏何故なくの
「ビッグ・ボインは君達の役に立ったかな?」
「いやもう、本当にお世話になりまして……」
私はキッドと共に、河川敷で禄郎くんとそのパートナー、魔物の少女と対峙する。
禄郎君の反応からして、ビッグ・ボインは彼らの役に立ったようじゃな。
ほう、隣にいるのが記憶喪失の少女か。
年齢は十四〜十五、黒い髪を不揃いなツインテールで結んでいる。
白いブラウスの上に黒いマントを羽織っており、感情を読み取れない無機質な瞳をしておる。
さて、彼らが悪しき者に対抗しうる光となるかじっくりと見極めなければ。
「行くぞ少女。本じゃなくて相手の魔物を攻撃するんだ」
「……ホゥ? ビッグ・ボインのことで恩を感じているのか知らないが、私が勝ったら君の本は燃やさせてもらうぞ」
私は仲間を集めるために旅をしているが、本気で戦わなければ相手の成長は促せない。
私の言葉を聞いた禄郎くんは、私の目をじっと覗き込んでくる。
……なにか、超能力か? 彼の雰囲気には、我がしもべであるマジョスティック
「本気で戦わなければ相手の成長は促せない……、か。それもそうだな」
「!!」
「よし、本気で行くぞ少女。本気でナゾナゾ博士の本が燃えそうになったらオレが頑張って呪文を中断させる」
……これは驚いた。
彼はいわゆるテレパシーのような能力を備えているのか?
油断ならんな。相手の思考が読めるなら、それはこの戦いにおいて大きなアドバンテージになる。
「その油断が命取りにならなければいいがね。では行くぞ! ゼガル!」
「構えろ少女! シルク、そしてカノンセン!」
ほう、彼女は色んな呪文を同時に使えるタイプの魔物か。
キッドの口から放たれた光の波を避けながら、ツインテールの少女は正確に大砲でキッドを狙ってくる。
「アムゼガル!」
私はキッドの腕を巨大化させて、大砲から放たれた岩石を防ぐ。
ふむ、少女の狙いは精密だ。ゼルセンなどの腕を切り離す呪文を使うと、腕を巨大化させるアムゼガルがすぐに発動できなくなってしまうな。口から光線を放つタイプの呪文、ゼガルやゼガルガを主体に攻撃しよう。
「セガルガ!」
「イクソルド!」
キッドから放たれた貫通力のある光線を、少女は手に出現させた刀で防ぐ。
なるほど、禄郎くんの指示は的確だ。
そしてその禄郎くんは……なるほど、自ら突っ込んでくるか。あまりに近距離だと私も大技も使いにくいからな。
禄郎くんは判断力は足りているようじゃな?
しかしパートナーとの信頼関係はあまり気づけていないようだ。
少女の方は禄郎くんに気を取られ、キッドに集中できていない。
「キッド、連射力のある術で攻撃するぞ! ガンズ・ゼガル!!」
キッドの腕がガトリングガンのように変形し、何発もの光弾を持続的に発射する。
禄郎くんを狙ってやれば、少女は禄郎くんを庇おうとモロにガンズ・ゼガルの攻撃を喰らってしまった。
「………ッッ!!」
「ちょっ、おい少女!! 今のはオレ避けれたって!!」
「避けられなかったら、危ない」
「大丈夫大丈夫! オレって運動はできる方だし」
……ふーむ。
どうにも禄郎くんは無鉄砲というか……。
「他人事、というべきかな?」
「博士、それってどういう意味?」
「禄郎くんからは焦りのような物が感じられないんだ。自分は怪我をしないと……いや、怪我をしてもそれを大したことじゃないと思っている」
キッドの問いに答えながら、私は考察したことを話す。
禄郎くんの無鉄砲さは、魔物との戦いを恐れないという意味では利点になるだろうが……。
「禄郎くんにナゾナゾを出してあげよう。楽しいナゾナゾ第一問! 魔物の術はどこから生まれると思う?」
「どこって、そりゃ魔物の心からじゃないのか?」
「うむ、正解だ。では第二問。魔物の術を引き出してあげるには、パートナーは何をするべきかな? ガンズ・ゼガル!」
「何を……って」
少女は禄郎くんを庇い、術で出した刀でガンズ・ゼガルを受け止め続ける。
「マズい、このまんまじゃ勝てねぇ……! 少女! 同時に反対の方向に走るぞ! 狙いを分散させるんだ」
「ダメ。禄郎が狙われたら危ない」
「だ、ダメって……!! 守ってばかりじゃ勝てないだろ!」
「ハハハ、君には難しかったかな? ヒントを上げようか。君は彼女に向き合っていない。この戦いはコンビで戦い抜かなければいけないんだから、パートナーと向き合わないことには何も始まらないさ」
そういうと、禄郎くんはハッとしたような顔をする。
……ふむ。何かに気付けたかな?
それにしても、私の心を読んで答えをカンニングしたりはしないのだね。彼の読心能力はそこまで精度が高くないのかもしれない。
「まだヒントが必要かな? ラージア・ゼルセン!!」
今の噛み合っていない二人なら、大きな攻撃で一層できる。
私はキッドの腕を巨大化させロケットのように発射させる術を唱えた。
「くそっ、オレを抱えて逃げてくれ!!」
「分かった」
禄郎くんは少女に担がれ、すんでの所でラージア・ゼルセンから逃れることができたようだ。
魔物のパワーは凄まじいのは良く知っているが、十九の青年が十五歳くらいの少女に担がれている絵図はなんともチグハグだな。
「私とキッドは強い絆で繋がっている。パートナーに仮の名前もつけてやらない君に、負ける気はしないな」
私の言葉に禄郎くんはハッとしたような表情になる。
ふむ。禄郎くんと少女はパートナーになって日が浅いようだし、語り合う時間が必要だろう。
ここは一旦攻撃をやめて、彼を見守るとしよう。
「……なぁ、今のはオレが悪かった。この戦いは二人一緒に戦うんだから、お前の気持ちも汲んでやらなきゃいけなかったんだ」
そう言って、禄郎くんは少女に語り出す。
少女も真剣な顔で話を聞いている。
「オレは適当に生きて、自分の人生だって他人事な男だ。……でも、この戦いは真面目に勝ち抜きたいって思ってる。初めて何かデカいことを成し遂げられそうな気がするんだ」
禄郎くんの様子はどこか懺悔をしているようにも思えた。
自分の怪我には無頓着だが、彼はこの戦いに何か譲れないものを持っているらしい。
「お前のことも少女少女って、ちゃんと名前もつけてやらなかった。……悪かった」
「じゃあ、ここで名前をつけて」
「!」
少女の言葉に禄郎くんは少し考え込んだが、すぐに口を開く。
「……ロック。ブラックロックシューターの、ロックでどうだ」
ふむ、ブラックロックシューターか……。
なかなか不思議な名前だが、不思議と彼女に合っておるな。
禄郎くんの持つカディス・ブルーの色の本も凄まじい光を放っている。
「第二問の答えを見つけられたようだね、禄郎くんにロックくん」
「おうよ。色々助けてもらっちゃったな、ナゾナゾ博士」
「では行くぞ! 果たして君が得た力は、この戦いを生き残る活路になるかな?!」
「なるさ! いくぞロック! 第四の術、ディゴウ・トライクルク!!」
禄郎くんが叫ぶと同時に、ロックくんの足元に光の塊が現れた。
それは瞬く間にロックくんを背に乗せ、巨大になっていく。
「博士、バイクだ! カッコいいバイクが出てきたよ!」
「ふむ、あれは
「本当?! カッコいいーっっ!!!」
「ウ・ソ」
顎が外れるほど驚いた顔をしているキッドに満足しながら、私はロックくんの動きを追う。
ロックくんは禄郎くんを背中に乗せ、凄まじい速度で私達の周りを移動しておるな。
凄まじい速度だ。ロックくんにも後ろに座っている禄郎くんにも、中々攻撃を当てられない。
なるほど、禄郎くんを守りながら戦う為の術というわけか。
「カノンセン!!」
「うわぁっ!!」
「ク……!! ハハハ、凄まじい射撃能力だ! これは厄介な力を与えさせてしまったな……」
青い炎を宿したロックくんは、高速移動をしながらも正確にこちらに攻撃を当ててくる。
今のキッドの術ではあのスピードに対応できんな。
もしあの術に対抗するなら、ロックくんが攻撃してくる瞬間にスピードに優れたセガルガをカウンターで当てるくらいしかあるまい。
「スマンなキッド、降参じゃ………」
私は白旗を振り降参を示す。
千年前の魔物も動き出しておる今、無闇に怪我を負うような戦い方はできん。
白旗を振った瞬間、二人は術を解除してくれた。
ロックくんはまた闘志を放っているが、禄郎くんが抑えてくれているな。
「なんで倒さないの?」
「博士がオレ達と戦ったのは、オレ達を成長させるためなんだ。悪い奴と戦う仲間を集めるために。……だよな、ナゾナゾ博士」
「うむ、そうだ。お主達には千年前の魔物の存在について教えておこう」
私は二人に千年前の魔物のことについて語った。
石板にされ、千年間人間界に残っていた魔物の子達がいること。
その子達を復活させ、王になることを企てている「ロード」と呼ばれる人物がいること。
そのロードは千年前の魔物の子にパートナーをつけるために様々な人間を洗脳していること。
「ロック、オレはナゾナゾ博士と共に戦おうと思っている。戦いの機会が増えれば強くなれる機会も増えるんだ。ほら、今日も新しい術が出ただろ? 強い奴と序盤から戦えるのはむしろ得なんだ」
「……分かった」
ロックくんは強くなれるという言葉を聞いて、ようやく戦意を抑えてくれた。
記憶喪失と聞いていたが、この子は中々戦いに貪欲らしいな。いや、戦いのことしか記憶が残っていないからこそ貪欲なのか?
「……あ、そうだ。ナゾナゾ博士、できたらでいいんだけど、クリア・ノートって奴のことも調べていてくれないかな」
「ほう?」
「危険な思想の魔物なんだ。放っておくと大変なことになる」
ふむ、クリア・ノート……。
仲間の頼みだ、よく覚えておかねばな。
ディゴウ・トライクルクの名前はコーラルQがディゴウ・ロボルクという下半身をバイクにする呪文を使っていたのでそこから取りました。
ブラック★ロックシューターはゲームやDAWN FALLとかでトライクに乗ってます。割とブラック★ロックシューターと縁が深い乗り物です。