【完結】ブラック★ロックシューターな魔物の子 作:烏何故なくの
◯月£日
ナゾナゾ博士は強敵だった。
いや、すぐに降参してくれたし、どっちかっていうとオレ達が連携取れてなさすぎるのが悪いんだと思うけど。
オレは突っ走ってばかりで、戦いを有利にするどころか少女に心配ばかりかけていた。
前の豹の魔物との戦いでも、オレを庇って少女が攻撃を受けてたっけか。
反省だ。
博士には「自分の怪我を他人事のように感じている」とか「パートナーに向き合っていない」とか色々言われてしまった。
博士の発言は正しい。
オレは幼い頃、よく読心能力を暴走させて他人の精神に入り込んでしまっていた。
入り込んだ後は他人と自分の自我の境界が曖昧になり、どっちが本当の自分なのかわからなくなってしまう。
入り込んでしまった他人を自分自身だと思い込み、数日ほど経ってからふと自分が真辺禄郎だと思い出す。そんなことが何回もあった。
そういう経験があるからか、オレは心のどこかで自分が本当に真辺禄郎だと思えない。
いつかオレは自分が真辺禄郎じゃないことを思い出してしまうんじゃないか。数秒後には今まで積み上げてきたことを全部捨て去って違う存在として生きていくんじゃないか。
考えたって仕方ないが、考えずにはいられない。
だからオレは経験が欲しい。どんな自分になろうとも、「コレを乗り越えたんだから自分は何があっても大丈夫だ」と思える立派な経験が欲しいのだ。
オレは博士に言われた通り、戦いを勝ち抜くために短い間だけの付き合いと思っていた少女に向き合うことに決めた。
その第一歩として、オレは少女に名前をつけることにした。
ロック。ブラック★ロックシューターのロック。
シンプルだが覚えやすくていいと思う。
これからは少女の事をロックと表記する。
戦いの途中で発現した第四の術、ディゴウ・トライクルク。
これはゴツいバイクを出現させる術だ。
バイクのスピードはかなりのものだ。ロックは片手でもこれを運転できるらしく、高速移動をしながらの射撃が可能になった。
オレ自身も背中に乗って高速移動ができるようになり、戦術の幅が広がったように思える。
ディゴウ・トライクルクを発動しながら攻撃すると、ナゾナゾ博士は降参した。
どうやら千年前の魔物との戦いが近いらしく、あまり怪我を負いたくないようだった。
ナゾナゾ博士が帰った後、本を見ると新しい術が増えていた。
少女に「何か強く思ったことはないか?」と聞いたら、「……トライクに乗っている時に、後ろから抱きつかれたのがイヤだった」と言われた。
だいぶショック。
今日はもう疲れたし、術の検証は明日にしよう。
◯月¿日
発現した第五の術、アム・ストレングスを試してみた。
これはロックの両肩からゴツいアームが生える呪文だった。
アームはオレの胴体を鷲掴みにできる程に巨大でパワフルだ。
……ロックがアム・ストレングスでオレを鷲掴みにして、ディゴウ・トライクルクを発動させれば、ロックに抱き付かなくても二人一緒に高速移動できるな。
ロックの「抱きつかれるのがイヤ」という発言からして、この使い方の為に生まれた術な気がしてきた。
検証が終わった後、仲を深める為に商店街に連れていってみた。
普段より楽しそうにしていた……気がする。
感情をあまり面に出さない子なのでわかりにくいな……。
ロックのことに関してもメモを残しておくべきか。
◯月√日
ロックに関してのメモ。
・にんじんは嫌いらしい。
・笑顔はぎこちないがイヤなことにはちゃんとイヤな顔をする。
・メロンパンは好きらしい。
・本人はオシャレにそこまでこだわってないけど、ロックの前でダサい格好してると咎められる。
・鳥の絵本には興味を示した。動物園に行ってみるのもいいかもしれない。
◯月◇日
動物園から帰った後に家に帰ると、ナゾナゾ博士からの手紙が来ていた。
中には千年前の魔物の本拠地である南アメリカのデボロ遺跡に行くための切符と、そこに仲間が集結しているという旨の手紙が入っていた。
ついに戦いの時がきたのだ。
飛行機の中で日記を書いていて、一つ不安なことに思い至った。
ナゾナゾ博士との手紙はいろんなチラシの下敷きになっていた。
つまり、ナゾナゾ博士の手紙が届いてからそれなりに時間が経っているらしいのだ。
オレは新聞を購入していないから、アパートの郵便受けなんか大して見ない。
だから博士の手紙を受け取るのも遅くなってしまった。
……オレ達がデボロ遺跡につく前に、千年前の魔物との戦いが終わってたりしないよな?
(追記)
やっぱり遅れてた!! アポロっていう人にデボロ遺跡でナゾナゾ博士が戦っていることを教えられた。
今はロックがアム・ストレングスでオレを鷲掴みにした後、ディゴウ・トライクルクを発動する形で移動をしている。
ロックの腰に抱きつかないでいいので、日記を書きながら移動できるのはこの移動方の利点だ。
◾️◾️
「ラージア・ゼルセン!!」
キッドの腕から放たれた巨大な腕は、目の前の椅子に座った強大な魔物、ベルギム・E・Oに直撃し吹き飛ばした。
ベルギム・E・Oは吹き飛ばされて呻いておるが、大したダメージにはなってないじゃろう。
「歌でもなんでもいい、楽しませてくれたらなんでもいい」。ベルギム・E・Oはそう言い、フォルゴレくんの歌と踊りをじっと聴いておった。
歌と踊り自体は好評じゃったが、問題は奴が「自分も歌いたいな」と言い出してからじゃった。
「チッチブッ!」
なんと奴は歌っている時に舌を噛んでしまい、私達に怒りをぶつけてきた。
こうなってはもはや和解は不可能じゃ。
「ナゾナゾ博士!! キッド!!! ダメじゃないか!? ベルギム様になんてことを!!」
「そうだよ! 火に油を注いでどうするのさ!?」
「何を言っとるか!? 今はわずかなスキルも生かさねは、奴には勝てぬ!!」
フォルゴレくんとキャンチョメくんに、私は言葉を返す。
ベルギム・E・Oの強さは本物じゃ。
奴の術を防ぐすべが今の私達には無い。攻め続けなければ負けてしまう。
私はキャンチョメくんに指示を出した。
キッドが奴の注意を惹きつけ、その隙にキャンチョメくんが本の持ち主まで近づいて、本を取り上げてもらう作戦じゃ。
「うぉおおお!! よくも私に嘘をついたなー!!!」
奴は騙された怒りから何度も私に攻撃を続けておるが、これは作戦通り。
キッドには攻撃をし続けてもらわねば。
本さえ守り抜けば、正気はある。
だから、動いてくれワシの体……!!
キッドの国の未来のために……!!!
「ギガノ・リュウス!!!」
ベルギム・E・Oの口から、おどろおどろしい亡者の顔のようなものが浮かんだ光球が出現する。
く……マズい。これは避けきれん……!!
せめて、本だけでも遠くへ……!!
「頼むぞロック!! 全力全開のォ、イクソルド!!」
突如、ワシの前に黒い壁が現れた。
いや、これは刃じゃ。巨大な刀が、ギガノ・リュウスからワシの体を守るように地面に突き刺さっとるんじゃ。
爆音と共にギガノ・リュウスが刀に着弾する。
爆風が体を叩くが、ワシの体は無事じゃ。
「立てるか、ナゾナゾ博士」
そう言ってワシに手を差し出すのは、真辺禄郎くん。
地面に突き刺さった巨大な刀を肩についた巨大なアームで操るのは、彼のパートナーであるロックくん。
「来て、くれたのか……」
「遅れてすまなかった。あんまり郵便受けを覗く習慣がなくて」
禄郎くんはそう言って私に肩を貸してくれる。
「く、何なんだ貴様ァ———ッッ!!」
「エルム・リュウガ! リュウズレード・キロロ!!」
ベルギム・E・Oは突如現れたロックくんに気を取られ、ロックくんに攻撃を集中させている。
「シルク!」
ロックくんの瞳に青い炎が宿る。
するとロックくんは、放たれた炎を体を半歩ズラすだけで避けてしまった。
ベルギム・E・Oの体を中心に展開された回転する刃も、タイミングよく身を屈めて交わし、ベルギム・E・Oの懐に潜り込む。
シルクの呪文で身体能力が向上しているわけではなさそうだが……。集中力や動体視力を向上させる術なのか?
「イクソルド!」
「ぎゃあああぁあ!!」
ベルギム・E・Oの懐に潜り込んだロックくんは、呪文で出た刀を一閃した。
ベルギム・E・Oが苦悶の声をあげる。
「博士!! 呪文を!!」
キッドの声が私に指示を出す。
気がつけばキッドとキャンチョメくんが、ベルギム・E・Oの本の持ち主から本を奪いとっておる。
これはチャンスじゃ、ゼガル一発でも撃てば勝てる……!
「私の本に触れるな————!!」
「ポルク!」
フォルゴレくんがキャンチョメくんの姿を変える呪文を唱える。
気づけばキッドは、二つのベルギム・E・Oの本を持っておった。
ベルギム・E・Oはどちらの本を取り返せばいいのか一瞬迷い、動きを止めた。
その一瞬で十分じゃった。
「ゼガル!!」
キッドの口から放たれた光の奔流が、ベルギム・E・Oの本を燃やし尽くした。
ベルギム・E・Oの姿が瞬く間に透けていく。
その事実を認識した瞬間、体から力が抜けていく。
全員の力を合わせ、なんとかもぎ取った勝利だった。
アム・ストレングスで出てくるアームはDAWN FALLのストレングスがつけてるギガンティックアームをイメージしてます。
ナゾナゾ博士の一人称は普段私だけど感情が昂ってるとワシ、みたいなイメージ。