【完結】ブラック★ロックシューターな魔物の子 作:烏何故なくの
◯月◇日
(追記)
ロックの巨大アームに抱えられながら森を走っていると、崖にテラスや部屋が幾つも生えていて、頂上に城が建っている岩山が見えてきた。
デボロ遺跡だ。
アポロさんに貰った地図を見ながらどこから入ろうかと悩んでいると、突然崖から生えている部屋が吹き飛び、中から凄まじい大きさの光球が飛び出てきた。
戦いが行われていることを察したオレ達は、すぐさまそこに向かうことにした。
ディゴウ・トライクルクの性能は凄まじい。まさか壁を走れるとは思わなかった。どんな所だろうと走っていけるのはディゴウ・トライクルクの力のように見える。
とは言っても、ロックがエンジンフルスロットルにして壁に突っ込んだ時は死ぬかと思ったけど……。
オレ達はバイクで崖を走り、一直線に吹き飛んだ部屋まで向かった。
穴から中を見ると、なんかナゾナゾ博士が術の直撃を受けそうだった。ギガノ級ってかなり強い方の術じゃなかったか?
ロックは素早くバイクから飛び降り、オレが唱えたイクソルドで術を受け止めてくれた。
あとは敵の魔物がロックに注意を向けている間に、キッドとキャンチョメが本を燃やしてくれた。
三人もいるとできる事の幅が広いぜ。
戦いが終わった後。
ナゾナゾ博士を月の石とやらで回復させて、初対面のフォルゴレとキャンチョメに挨拶をした。
フォルゴレとキャンチョメといえば、ガッシュ屈指の名コンビである。
最近はテレビと無縁の生活を行なっていたためスターとしてのフォルゴレのことはよくわからないが、アニメでは何度も彼の勇姿を見ていた。だいぶうろ覚えだが、好きだったことは覚えている。
率直に「アニメのヒーローに会った気分です」と言えば快く握手してくれた。嬉しい。
皆と一緒に道を上っていくと、女の子の怒号が聞こえてきた。
見に行けば、カエルの魔物とドレスを纏った少女の魔物のコンビが暴れていた。
あ、なんかこの二人も見覚えがある。カエルの子は見た目によらずカッコよかったよな? たしかピョン吉みたいな名前だった。
そのコンビと戦っているのは金髪の少年の魔物とウマの魔物。
間違いない、ガッシュとウマゴンだ。
その後ろにいるのは高嶺清麿とカフカ・サンビーム。
改めて、感慨深いものを感じた。
本当にアニメの世界に来たんだな、という実感が湧いたというか。
ちゃんと清麿がいたし、この世界ってやる夫スレの世界じゃないっぽいな、と安心したというか。
ガッシュ、ウマゴン、キャンチョメ、キッド、そしてロック。
五人もの魔物の子に恐れをなしたのか、カエルの子とドレスの子は部屋の奥に撤退していく。
オレ達はその隙に階段を上って先の部屋にいこうとしたが、新しい魔物の子に邪魔されてしまった。
その子はレイラといい、ゾフィスに「月の光の当たる場所から出ると石に戻ってしまう」と脅されていたらしい。
しかし清麿がいうには、「ゾフィスにできることは心を操り幻覚を見せることで、体が石に戻るのはゾフィスの幻覚。月の石はゾフィスの力をサポートする自動制御装置」ということらしかった。
知らなかった……。
月の石ってそういうのなんだ。っていうかオレ達って月の石を壊しに行ってるんだ。
てっきりゾフィスを倒すために頂上の城を目指してるんだと思ってたぜ。
遅刻したせいで大事な情報がぜんぜん共有できてないな。
レイラは清麿の説得や、心を操られている筈のパートナーの助けもあり、なんとか石に戻される恐怖に打ち勝ってくれた。
オレ達は天井から漏れ出る月の光を全身に浴び、体と精神力も回復させている。
この日記も月の光を浴びながら書いている。
たしか次の階層では怪獣みたいなヤツがいたよな?
とりあえず知っているかぎりの情報は共有しておこう。
◾️◾️
「ええと……オレは禄郎。こっちがロックだ。あなた達のことは、なんて呼べばいいかな」
「オレは清麿で、こっちはガッシュだ。呼び捨てでいいよ」
「ウヌ、よろしくだぞ!」
小走りで階段を上りながら、話しかけてきた禄郎さんに自己紹介をしておく。
ナゾナゾ博士がつれてきた最後の魔物の一組。
禄郎さんは二十歳くらいで、ロックはオレと同じくらいの年齢に見える。
「私はカフカ・サンビーム。サンビームと呼んでくれ。こっちはウマゴンだ」
「メルメルメ~~!」
「わかった。清麿、ガッシュ、サンビームさん、ウマゴンだな。少しだけだが上の階にいるだろう魔物について情報があるから伝えておく」
「フム、それは君の読心の力で得た情報かな?」
「だいたいそんな感じだ」
ナゾナゾ博士の言葉にオレは愕然とする。
サンビームさんも相手の目を見て考えたことを読み取ったりできるが、具体的な情報まで読み取れるとなるとその利便さはかなりのものだろう。
「悪魔みたいな容姿をしてて、攻撃力も防御力もかなりのものだ。バオウをあててもビクともしないんじゃないかな。たしか、禁呪とかいうのが使えた筈だ。理性を失うが身体能力が強化されるっていう術だ」
「禁呪……たしかに、デモルトなら使えてもおかしくないわ」
禄郎さんの発言にレイラが同意する。
なるほど、奥の手を持っているわけだ。
……それにしても、バオウのおおよその威力をわかっているんだな。心を読めるってのも嘘じゃなさそうだ。
「オレが知ってるのはこれくらいだ。とりあえず、このくらいヤバいってことだけ覚えていてくれ。絶望しなければ勝ち目はある筈だ」
禄郎さんの言葉に決意を固くしながら、オレ達は足を進めた。
数分が経って、王室が見えてきた。
王室の天井には、蒼い光を放つ宝石のような物体が鎮座していた。
「で、でかい……」
「ああ、だがこれを壊せば……」
フォルゴレの言葉に返事を返した瞬間、轟音が走った。
何か嫌な予感がする。
オレは走って王室へと向かう。
そこでみたのは、ヤギの角を持った悪魔のような魔物の腕の突起に、いまにも胸を貫かれようとしているウォンレイの姿だった。
「カノンセン!!」
禄郎さんのパートナー、ロックが腕の大砲から岩石を素早く射出する。
岩石は腕の突起にぶつかり、わずかに突起をずらした。
ウォンレイは胸を貫かれるのは避けられたが、脇腹を大きく抉られてしまった。
「てぃ、ティオは!? 早く回復呪文を!! ティオ、恵さーん!!!」
オレは大声で遠くの二人に呼びかけるが微動だにしない。
クソ、意識がはっきりしてないのか!!?
「く、ガッシュ!!」
「ヌ、」
「ルオオオオオオオオオオオオオオオォォオォオオォッッッ!!!!」
ガッシュに指示を出そうとしたが、デモルトの叫び声で体が竦んでしまった。
オレ達の決意も、なにもかもを打ち砕いていく悪魔の唸り声。
これがデモルト。呪文でもない鳴き声一つで、足が竦んで動けねぇ……!!
「ガンズ・ゼガル!!」
動けないオレ達を尻目に、ナゾナゾ博士はデモルトの本の持ち主に連射攻撃を放った。
デモルトは本の持ち主を庇うためにティオ達の前から体を退かせる。
「皆、どうしたのかね!? あれだけ忠告されておいてまさか恐れてはおるまいな!! それとも、元気の出る私のナゾナゾが必要かね!!?」
……ちっくしょうが。言ってくれるぜ。
ナゾナゾ博士の言葉はオレ達に熱をくれた。
凍てつく恐怖を溶かすための、煮えたぎる反骨心を。
「クールね、お爺さん」
「フフ、物知りとはクールなものさ」
レイラはナゾナゾ博士と言葉を交わすと、凄まじい速度でティオと恵さんの元に駆け出していった。
そして二人をウォンレイの所まで投げ飛ばした。まもなく、ウォンレイがサイフォジオで治療されるだろう。
「よし、ガッシュ! ラウザルクをかけるからウマゴンと一緒にデモルトをかく乱させてくれ! キャンチョメはティオとウォンレイが攻撃されないように壁を作って二人を守ってくれ。キッドとロックは本の持ち主を狙ってくれ!! 特にキッドのコブルクは巨体のデモルト相手には効く筈だ!!」
キッドのコブルクという技は、自分の口から小さなキッドを出現させて相手に纏わりつかせるというものだ。
小キッドはオレを殴り飛ばせるくらいにはパワーがある。本さえ燃やしてしまえばこちらの勝ちだ……!!
「チッ、弱いやつがウロチョロと……」
デモルトのパートナーであるヴァイルはゾフィスに操られず、月の石の力で犯罪を犯そうとするゲスだった。
ヴァイルはゾフィスに心を操れていないから、冷静で的確な指示をデモルトに出せる。
ロックの狙撃も、キッドのコブルクも当たる寸前でデモルトに妨害される。
「小賢しいんだよ! ラギアント・ジ・ゼモルク!!」
ヴァイルがイラつきながら呪文を唱えると、デモルトの腕の突起が独特な形状に変化した。
「マキシマム!!」
デモルトが吠えると共に、腕の小手から巨大な円柱が射出された。
柱は王室の天井に突き刺さり、天井を崩落させる。
「な、何を……!」
ヴァイルの目的はすぐにわかった。瓦礫の雨が無差別に降り注ぎ、そのうちの一つに当たったキャンチョメが思わず悲鳴を上げてしまったのだ。
「そこかぁ!!」
「マキシマム!!」
「させぬのだ!!」
咄嗟にキャンチョメたちを突き飛ばしたガッシュが、射出された柱の一撃をモロに喰らってしまった。
レイラがミシルドを咄嗟に張ってくれたが、マズい。ガッシュはほぼ瀕死だ!
「ティオ、恵さん! サイフォジオを!!」
「わかってるわ、サイフォジオ!!」
「させると思ってんのかよぉ!! リゴン・ゼモルク!!」
デモルトは小回りのきく呪文で、確実に倒れているウォンレイやガッシュを潰しにきた。
マズい、ティオはサイフォジオを出したばかりで防御が間に合わない!!
デモルトは腕の突起をヌンチャクのように変化させ振り下ろす。ガッシュも瀕死で意識がない今、オレにできる事はなかった。
「スオウ・ギアクル!!」
誰もが止められないと思ったデモルトの一撃を、横から伸びてきた水の龍が横にズラす。
それは今まで敵対していた、パティによる援護の攻撃だった。
「や、ややややや、やってしまったわ………」
「そ、そうケロ、もう……もう後にはひけないゲロよー!!」
パティとビョンコ。
千年前の魔物の司令塔としてゾフィスに使われていたが、石にされる恐怖に震えるレイラを見て罪悪感に駆られていたようでもあった。
根はそう悪い奴らじゃないんだろう。
二人は怯えながら、でも頼もしく戦ってくれる。
「ギガロロ・ニュルルク!!!」
「スオウ・ギアクル!!!」
「うざってぇんだよ!! バウロ・ウルク!!」
どれだけのけぞらせても、デモルトは素早い動きで月の石の前まで戻ってしまう。
だが、いいところまできている!! デモルトはパートナーと月の石を守ることで精一杯で攻撃に集中できてない。
確実に追い詰めてはいるんだ。
「ああああ、クソ!! イライラするぜ……! おいデモルト、一匹一匹集中して潰せ!! まずはそこの黒髪の女からだ!!」
ヴァイルの標的にされたのはロックだった。
今までもヴァイルに正確に攻撃を撃ち込み、デモルトの動きを一番制限していたのはロックだった。
ヴァイルは悪辣だが冷静な男だ。優先順位を間違えない。
「逃げるぞロック! ディゴウ・トライクルク!!」
「逃がさねぇよ、ディオエムル・ゼモルク!!!」
デモルトは拳に灼熱の炎を纏わせ、逃げ回るロックを追い詰める。
「ウマゴン、顔を狙え! ロックから注意を逸らさせるんだ!!」
皆がデモルトの顔を集中して攻撃するが、デモルトは目もくれない。月の石の回復能力で押し切る気だ!
ついにロックは部屋の端に追い詰められてしまった。しかも、ロックの後ろには禄郎さんがいる。
「アルヴィ——ン!!」
「うむ、えらいぞビョンコ! ギガノ・ニュシルド!!!」
「頼むよ博士!!」
「分かった、ラージア・ゼルセン!!」
ビョンコの呪文でデモルトの拳がゴムのような膜に覆われ、キッドの巨大ロケットパンチがデモルトの拳の勢いを少し削る。
しかしデモルトの拳を完全に防ぎ切ることはできなかった。
地面とデモルトの拳がぶつかると炎が弾け、四方八方に飛び散ってしまう。
「危ない!」
弾けた炎に襲われたロックを、キッドが庇った。
キッドの背中が炎に舐められる。キッドが苦しむ声を上げた。
デモルトの一撃による被害は甚大だった。
ビョンコの本は半分以上燃えてしまい、キッドの本も端に火がついてしまった。
「ビョンコ!!!」
「だ、大丈夫ケロ。魔界に帰るだけケロ……。それよりパティ、オイラ、これでガッシュ達の名前になれるゲロか?」
心配そうな声を上げる半透明のビョンコに、うっすらと体が透けだしたキッドが声をかける。
「あたり前さ! 僕ももうすぐ魔界に帰るから、向こうで一緒に遊ぼうよ!」
「へ、へへ……やったゲロ……。ゲロゲーロゲロッパ……」
最後に嬉しそうな声を漏らして、ビョンコは消えてしまった。
「……どう、して………? ナゾナゾ博士を庇っていたら、キッドの本は燃えなかったのに………」
「どうしてって、ロックはさっき博士を助けてくれたじゃないか。これでおあいこだね」
目を見開いて、動揺した顔を見せるロックを落ち着かせるように、キッドはゆっくり言葉を紡いていく。
「ナゾナゾ博士だったら、仲間を助けるのに躊躇いなんてないはずだよ。ナゾナゾ博士、これで良かったんだよね?」
「うむ。仲間を簡単に見捨てるものに王たる資格など無い。……ワシは最後まで、キッドを導くことができたようじゃ」
「へへへ……。僕はきっと、博士みたいな大人になるよ。さようなら、ナゾナゾ博士。僕の王様……」
ナゾナゾ博士は涙を流しながら、最後まで消えていくキッドから目を逸らさなかった。
ロックは最後まで、消えていくキッドの手を握っていた。
「厄介な二匹をようやく消せたぜ。黒髪の女、お前もすぐに……」
「ロック!! 新しい呪文が出た!!」
「使って、早く」
「おうよ!! ……第六の術、バギャム・カノンランズ!!!!」
ロックの掲げた手の先から、巨大で無骨な槍が出現した。
槍の根本には弾丸が装填された機関銃が取り付けてある。
銃口から弾幕を発射しながら、巨大な槍はデモルトに向かっていく。
「ち、捻り潰せデモルト! ディオエムル・ゼモルク!!」
炎を纏った拳と、巨大な槍が押し合いを始めた。
ヴァイルの顔が僅かに歪む。
今までのように横からの攻撃でデモルトの攻撃をいなすのではなく、あのカノンランズという術はデモルトの強力な術と真っ向からぶつかり合っているのだ。
「す、すごいわ! デモルトを押してる! ウルル、心の力を最大まで高めて!!」
「ああ、行くぞ! スオウ・ギアクル!!!」
大きく力を込めた水の龍が、デモルトの空いた腹に強烈な一撃を叩き込んだ。
デモルトはたたらを踏み、大きくのけぞる。
「このまま部屋の外まで押し出してやるわ!」
「バカが、今の弱っちい術でそんなことできるわけねえだろ!」
ヴァイルの言葉は悔しいが事実だ。
デモルトは今にも体制を立て直し、再び腕に力を込めてカノンランズを押し返すだろう。
だから。
今生まれたデモルトの隙を突き、あの怪物を押し出すのはオレ達の仕事だ。
すでに戦闘不能と思われていてヴァイルも注意を払っていないオレ達の仕事だ!!
「いけるな、ガッシュ!!」
「うむ!! 皆が頑張っておる中、私だけ寝ておったのだ。これ以上情けない姿は見せられん!!」
「もう大丈夫あるね、ウォンレイ!」
「ああ、もう動ける!」
キッドとビョンコの本が燃やされてしまったタイミングで、ティオの治療は終わっていた。
ウォンレイもボロボロの体だが、なんとか立てるくらいまで回復している。
もしロックがデモルトの攻撃を逸らしてくれなければ、ウォンレイは回復するまでにもっと時間が掛かっただろう。
オレとガッシュ、リィエンとウォンレイはすでにデモルトの懐に入り込んでいた。
最大呪文をぶち当てて、デモルトを吹っ飛ばすためだ。
オレの心には皆が戦っている中、何もできなかった悔しさが貯まっている。バオウは問題なく撃てる!
「いくあるよ、ウォンレイ!! ラオウ・ディバウレン!!!」
「ここで決めろぉっ、バオウ・ザケルガ————ッッ!!!」
「バォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
雄叫びを上げる雷の龍と、三本の尾をもった巨大な虎がデモルトに襲いかかった。
スオウ・ギアクルで体制が崩れていたところにくらったこの攻撃は、デモルトですら受けきれなかった。
バオウ・ザケルガとラオウ・ディバウレンに押し出され、デモルトは壁を破壊しながら部屋の外まで吹き飛んだ。デモルトの雄叫びはどんどん小さくなっていく。おそらく崖を転がり落ちているのだろう。
「な、バ……!? で、デモルトが……!!」
「ゴウ・バウレン!」
動揺しているヴァイルの隙をつき、呪文で強化されたウォンレイの拳がデモルトの本を燃やす。
それを理解した途端、力が抜けた。
オレ達の、勝利だった。
失ったものも大きいが、オレ達はゾフィスの野望を打ち砕いたのだ。
バギャム・カノンランズはインセインブラック★ロックシューターが持ってる槍、インセインカノンランスをイメージしてます。
原作だとヴァイルはガッシュ達を弱い呪文で仕留められると思っていたから序盤はガッシュ、ウマゴン、レイラだけでどうにか攻撃を凌げていたけど、人数が原作より増えている今作だと最初っから本気で潰しにきてます。