【完結】ブラック★ロックシューターな魔物の子   作:烏何故なくの

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八ページ目 パティの奮闘

 

 △月‥日

 

 (追記)

 ファウードの脳へと向かう道の入り口では、キャンチョメとリーヤが、ザルチムとファンゴという二組の魔物と戦うことになった。

 リーヤは魔界に帰ってしまったが、襲ってきた二組は返り討ちにすることができた。

 

 キャンチョメがすでに動けない魔物に攻撃しようとしたことが気になる。

 わかりやすい火力を手にして少し心のバランスを崩しているのか?

 フォルゴレは何度もキャンチョメに話しかけている。フォルゴレセラピーが効いてればいいんだけど。

 

 ファウードの脳へと続く部屋の二階では、ギャロンとチェリッシュという魔物がオレ達を待ち構えていた。

 二階の部屋では鉄の扉が沢山ある部屋で、敵の放つ呪文を避けながら正解の部屋を探さなければいけなかった。

 

 ギャロンとチェリッシュを相手してくれたのは、テッドというガッシュの友達の魔物だった。

 テッドはチェリッシュと魔界でも面識があり、ゼオンの雷で痛めつけられ、脅されて無理矢理戦わされていたチェリッシュの心を奮い立たせてくれた。

 奮い立ったチェリッシュのお陰で正解の部屋がわかり、オレ達は先に進むことができた、

 

 デッドはギャロンとの戦いで本を燃やされてしまったが、ギャロンを吹き飛ばしてくれた。

 敵の最大呪文をモロに受けながらも立ち上がるテッドの姿は死ぬほどカッコよかった。

 

 ファウードの脳へと続く部屋の三階では、ガッシュとパティが戦ったキースという魔物がいた。

 ここさえ抜ければ、次はゼオンのいるコントロールルームだ。

 もうオレのアニメ知識は通用しないことがわかりきっている。

 気を引き締めていこう。

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 「いけるか、バリー?」

 「おおよ、グスタフ!」

 

 オレはグスタフに返事を返しながら、ヘリコプターの上から目の前を走るファウードを見下ろす。

 ナゾナゾ博士とかいう老人に呼ばれ、今この場にはオレを含め三体もの魔物が集まっていた。

 

 「バベルガ・グラビドン!!

 

 集まった魔物の一人、ブラゴの呪文が水面に穴を開ける。

 ファウードはその穴に引っかかり、盛大に転がった。

 

 動きが止まり、ヨロヨロと立ち上がるファウードに向かって、もう一人の魔物が飛びかかっていった。

 

 「ディオガ・アムギルク!!!

 

 その魔物の一撃が、ファウードの頭を再び海面に叩きつける。

 

 ……竜族の神童、アシュロン。

 オレが戦ったエルザドルより一回りは実力が上だ。

 あのアシュロンを呼ぶとは、あのナゾナゾ博士とかいうのも只者じゃねぇな。

 

 この場において最も強いのはアシュロンだ。 

 ファウードのことにケリがついたら、いずれ奴にも挑んでやる。

 

 ツノを後ろ向きにして、ヘリコプターから飛び降りる。

 

 「ギガノ・ゾニス!

 

 オレの体にベルトで括り付けられているグスタフが呪文を唱えれば、オレの体はツノから発射された呪文の反動で空中に跳ね上がる。

 

 「バリーよ、首から上で奴の体内に入れそうな場所はあるか?」

 「ああ、見える。首の上あたりに肉の薄い「弱所」が見える。行くぞグスタフ、あそこからファウードの体内に入る!!!」

 「ウム、バリーよ、一気に突っ切るぞ!! ディガル・ドルゾニス!!!

 

 呪文の力で体を回転させ、ファウードの肉を掘削する。

 

 力の限り掘り進めると部屋らしき所に出た。

 中にいるのは……ガッシュか。それに瀕死のようだが清麿も。

 オレの前にいるのは、キースか? 随分胴体が伸びたようだが。

 

 「バ、バリー!! お主はやはり、私を倒しに来たのか!?」

 

 フッ……。

 確かにお前を倒そうと、お前を殴れる「強き王」を目指して戦いを繰り返していたが……。

 

 「そうやって強くなればなるほど、お前にこだわっていた自分が、小せえことに気づいたのよ……」

 

 それだけ言って、オレはキースに向かいあった。

  

 キースとの戦いは、終始オレの有利に進んだ。

 それにしてもイラつくぜ。キースは昔のオレにそっくりだ。チンピラ同然だったオレと。

 

 追い詰められたキースは、ファウードからさらに力を借りたが……。

 ダメだな。曇った目で闇雲に攻撃を撃ったところでスキだらけだ。

 

 「ディオガ・ゾニスドン!!!

 

 オレの一撃で、キースは倒れたが……。何か様子がおかしい。

 オレはキースに掴み掛かるが、キースは手を伸ばし部屋のスイッチに触れてしまった。

 

 キースが言うには、これは破壊光線のバリアーらしい。

 高密度のエネルギーが滝のように流れるバリアーで、一度捕えられると二度と離れられないらしい。

 

 クソ、厄介なものを。

 そう思っていると、左目に青い炎を纏わせた黒い髪の女の魔物が口を開いた。

 

 「禄郎」

 「おうよ。ディゴウ・トライクルク! アム・ストレングス!

 

 女の足元にバイクが現れ、それを少女の肩から生えたアームが持ち上げる。

 女はバイクを傘のように持ち上げて、バリアーの滝に突っ込んでいった。

 

 「な!?」

 「おい、大丈夫なのか!」

 

 ガッシュの仲間達が心配そうな声をかけるが、女の魔物は答えねぇ。

 ただ一言、「行って」とだけ呟いて黙っちまった。

 

 「みんな、先に進むんだ。いろんな装備を呪文で出現させられるロックがバリアーを受け止めるのが最善手だ」

 「ウヌウ、禄郎、しかし……!」

 「このバリアーを解除できるとしたらファウードを操っているゼオンしかいないだろ。ロックのためにも、早く行ってゼオンを倒してやってくれ」

 

 禄郎と呼ばれた男はそう言って、女の魔物の前に座り込む。

 へ、いい根性してるぜ。

 

 「……ゼオンの元に急ぐのだ! 時間をかけてはロックが危ない!」

 

 ガッシュはそう言い、次の部屋に急ぐ。

 オレ達も後に続き、ファウードの脳を目指す。

 

 ……まさかガッシュと同じ陣営で戦うことになるとはな。

 ガッシュの中にはなにか「でかい力」も見える。コイツも成長を続けているらしい。

 もうガッシュにこだわっているわけじゃねぇが、ゼオンを倒したら改めてコイツとも戦いたいぜ。

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 「大丈夫か、パティ?」

 

 ウルルにそう言われて、私はようやく自分がウルルの服の裾を掴んでいたことを理解したわ。

 

 ファウードのコントロールルームで相対した、ガッシュちゃんとおんなじ顔をした魔物であるゼオン。

 だけどその目はガッシュちゃんとは似ても似つかないわ。

 悪意と冷徹な心で凝り固まった、恐ろしい目。

 そのゼオンの目が、私の隣にいるバリーを見た。

 

 「……なかなか楽しめそうなのも混じっているじゃないか。お前とはオレが遊んでやる。ロデュウ、ジェデュン。お前達は他のゴミを始末しろ」

 

 その言葉を区切りに、コントロールルームにいた二人の魔物が私達に襲いかかってくる。

 二人とも、ファウードの力で恐ろしいほどに強くなっていた。ギガノ級の攻撃を正面から受けてもビクともしない。

 だけど、こっちには相手の攻撃をコピーできるキャンチョメに、防御の術を多く使えるティオがいるのよ。

 キャンチョメがいるから大きな呪文は使えない。かと言って生半可な呪文じゃティオに防がれる。

 二人は大きな呪文を使えずに攻めあぐねているようだったわ。

 

 バリーは一人でゼオンの元まで飛んで、コントロールルームの奥の方でゼオンと戦い出したわ。

 恐ろしいスピードで術を打ち込むゼオンだったけど、バリーも負けていなかった。

 

 「ザケルガ

 「ギガノ・ゾニス!

 

 ゼオンの手から放たれた貫通力のある電撃と、バリーのツノから放たれた嵐のドリルがぶつかりあう。

 電撃は嵐の表面を滑り、明後日の方向に飛んでいったわ。

 ゼオンの中級呪文に、バリーはギガノ級呪文を使わなきゃいけないのね……。

 

 バリーは自分の呪文を隠れ蓑にして、ゼオンに直接殴りかかるわ。

 呪文の撃ち合いだと勝てないからこそ、肉弾戦を選んだのかしら。

 

 バリーは拳を素早く振るうけど、ゼオンの手は全てそれを受け止める。

 数秒の殴り合いの後、ゼオンはマントでバリーの体を弾き飛ばした。

 

 ゼオンの掌はバリーを捉えたまま。

 マズい、強い呪文がくるわ!

 

 「テオザケル

 「ギガノ・アシルド!!!

 

 私が出現させた水の盾が、ゼオンの雷を受け止める。

 瞬く間に盾は壊れたけど、雷はいくらか弱まっていた。

 

 私の呪文は水の呪文。電気を吸い取る特製はどの呪文にも備わっているわ。

 ゼオンの術とは出力差がありすぎるけど、相性はいいはずよ。

 

 「スマン、魔物の少女! 助かった!」

 

 バリーのパートナー、グスタフが私に声をかける。

 私の力も、あの二人の戦いに貢献できているのね。

 

 よし、余裕はないけどゼオンの攻撃はなんとか凌げているわ……!

 このままいけば、勝機が回ってくるかも……。

 

 

 

 「……なぁ、そろそろ遊びの時間は終わりにしないか?」

 

 私の心に灯った希望も、ゼオンのパートナー、デュフォーが出てくるまでだったわ。

 彼の指示は常に正確。

 最低限の力で、最大限の結果を出すの。 

 常に術の「弱所」をついてゼオンに喰らい付いていたバリーが、お返しとばかりに術の「弱所」を突かれていたわ。

 

 「ジャイロ・ザケルガ!

 

 ゼオンの手の先に出現した雷のリングから、無数の電撃が放たれる。

 それは殆どがバリーに、そして二、三本が私に向かって放たれていたわ。

 

 突然の攻撃に足が動かなかった。

 私の術じゃ、雷を完璧には防げない。

 防御呪文のあるティオもスピードのあるウマゴンも、ロデュウとジェデュンの相手をしている。

 

 せめて本だけは守らなくちゃ……!

 

 そう思ってウルルの前で両手を広げた瞬間だった。

 私と電撃の間に、バリーが体を滑りこませたのは。

 

 「え……?」

 「グ、おおおおおおおおおぉおおおおッッッ!!」

 

 電撃が直撃して、傷だらけのバリーの体が更に傷ついていく。

 バリーは白目を剥きながらも、それでも私の前で立ち続けていた。

 

 「な、どうして……?!」

 

 会ったばかりの私を、戦術的にも役に立たないのに、どうして助けるのか。

 そういうと、バリーは少し黙った後に口を開いた。

 

 「……この道以外に、オレの王はねぇんだよ」

 

 それだけを言うと、バリーはゼオンに叫びながら突っ込んでいく。

 バリーの動きは明らかに悪くなっていた。でもバリーはどれだけ攻撃を受けても、半分意識が飛んでも戦い続けていた。

 そんなバリーに、ゼオンは躊躇なく電撃を撃ちこんだ。

 

 「ザケルガ!

 「グ、おォオオッッ……………」

 

 呪文の直撃を受けて、バリーの大きな体が崩れ落ちる。

 

 「ふむ、この程度か……。仲間なんぞ庇わなければもっと長く持っただろうに」

 

 ゼオンは崩れ落ちたバリーを見て満足気に笑う。

 

 ダメよ、バリーはゼオンに立ち向かえる唯一の魔物。

 どうにかして、ゼオンをバリーから遠ざけないと……!!

 

 「ウルルッッ!」

 「スオウ・ギアクル!!!

 

 私の全身全霊の力を込めた水の竜は、呪文すら使わずにゼオンに避けられた。

 でもこれでいい。

 強い呪文を連発して、バリーが回復するまでの時間を無理矢理稼がなきゃ!

 

 「アクル・キロロ!!

 「ふむ、お前……。確かガッシュへ付き纏っていた魔物だな? ファウードの体内でもガッシュガッシュと喧しかった……」

 

 ゼオンは私の攻撃をマントで弾きながら、私に向かってくる。

 そして私の首を掴み、地面に押し付けてきた。

 

 「この、離しなさい……!」

 「いいぞ? ただし、二度とガッシュに会わないと誓え。ガッシュにも聞こえるように、だ」

 

 な、何を言っているの……?

 

 「誰が、そんな……」

 「バルギルド・ザケルガ!!

 

 「イ、ヤァアアアアアアアアアアァァァァアァァッッッッッ!!!?」

 

 一拍置いて、これが私の悲鳴だと気づく。

 痛い。

 筋肉の内側から棘が湧き出るような、神経という神経をズタボロにされるような。

 他の何物にも喩えられない、圧倒的な痛み。

 ゼオンの電撃が私の体に纏わり付いた瞬間、私の喉は悲鳴をあげていた。

 

 「どうだ、オレの雷は。お前が二度とガッシュに会わないと誓うだけでこの苦しみから解放されるんだぞ。悪くないとは思わないか?」

 「ふ、ふぅ———っ、ふぅ—————っっっ…………」

 「聞こえてないらしいな? もう一度だ!!」

 

 「アァアアアアアアアアアァアァアアァアァア!!!」

 

 再び私の全身が痛みに侵される。

 無意識に喉から悲鳴が絞り出される、そんな痛みが。

 

 でも、私はもうゼオンのことが怖くなかった。

 

 「……!? なんだ、何がおかしい!! 何を笑っている!!?」

 

 ああ、思わず口に笑みが出ちゃってたか。

 

 「わ、わざわざ、こんな……コトをするなんて、ね…………。あ、哀れね。本当に、あ、いの、パワーを、知らないのね」

 

 顔の作りはガッシュちゃんとそっくりだけど、その目は悪意と冷徹さで凝り固まっている。

 きっとそれは、愛を受け取れなかったからだ。

 私にとってのガッシュちゃんみたいな、光を見つけられなかったからだ。

 

 「か、かわいそうよ、ゼオン……」

 

 ゼオンは恐ろしい形相でこっちを見ている。

 電撃を強める気かしら。

 でも、そんなことしたって無駄よ。

 私には、ガッシュちゃんがいるんだから。

 

 「パティ————ッッッ!!」

 

 ほら。

 

 モモンに投げられて勢いついたガッシュちゃんが、雷の中を突っ込んで私を助けに来てくれたわ。

 私はガッシュちゃんに抱きしめられたまま、雷の中から解放される。

 

 ……えへへ。

 ガッシュちゃんに、抱きしめられちゃった。

 

 「あり、がとう、ガッシュ、ちゃん……」

 

 ガッシュちゃんの頭に手を伸ばす。

 ……あれ。私の手が、透けちゃってるわ。

 

 そっか、ウルルが誰かに本を燃やしてもらったのね。

 私がゼオンの電撃で死ななくていいように。

 まったく、心配性なんだから。

 

 ガッシュちゃんに抱きしめられていると、ふと私の顔に影がさす。

 誰かに顔を覗き込まれているのだ。

 

 「………よく頑張ったな、パティ」

 「遅い、わよ………き、清麿」

 

 私の顔を覗き込んでいたのは、コントロールルーム近くの部屋で眠っていたはずの清麿だった。

 まったく、くるのが遅いんだから。

 

 清麿が隣にいる今のガッシュちゃんの腕の中は、世界で一番安全な場所ね。

 私はガッシュちゃんの腕の中で、温もりに包まれながら魔界に帰ったわ。

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 

 「ロック、大丈夫あるか?」

 

 私はリィエンの声に反応できないほどに衰弱していた。

 トライクを支える手は震えて、額からは大きな汗が滴っている。

 余裕なんかまったく無い。今にもリィエンに本を燃やして欲しい。

 

 ファウードの脳へと向かう道の、三階目に備え付けてあったバリアーの滝のトラップ。

 そこを潜り抜けるために、私は自分の身体を使ってバリアーを受け止めた。

 

 バリアーの雨を受け止めて、もう十分は経っただろうか。

 体力はどんどん削られ、もう意識も朦朧としてきた。

 

 でも、魔界に帰るのは許されない。

 私が失った禄郎と出会うまでの記憶。

 もう何も思い出せない筈のそれが、私に「生き残れ」と語りかけてくる。

 

 絶対に、生き残れ。

 

 その命令がある限り、私は戦い続けなきゃいけない。

 

 『……そろそろ潮時かな』

 

 ……?

 今の声は、誰の………?

 

 「……ロック、新しい呪文だ! 新しい呪文が出たぞ!!」

 

 禄郎の声を聞いてハッとする。

 新しい、呪文?

 今の私から、何か新しい力が出た?

 

 嫌な予感がする。

 今の私から、どんな力が出るというのだろう。

 

 でも私が止める前に、禄郎は呪文を唱えていて。

 

 「頼むぞ、新しい呪文……! インセイム・バルセルク!!

 

 

 

 その呪文を聞いた瞬間

私の意識は透明(クリア)に塗りつぶされて———

 

 

 

 

 

 

 気づけば私は、バリアーの滝を吹き飛ばしていた。

 

 「す、すごいパワーある!!」

 「身体強化の呪文か!? 服も所々変わってるし、瞳の炎も紫色になってる……」

 

 本の持ち主が何か言っているけど、何も頭に入ってこない。

 私は本の持ち主の首を掴んで、走り出した。

 

 行くべきは、強い力が集まっている場所。

 そこが、餌場だ。

 

 

 

 

 

 

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