地雷系女子は勇者王が好き【完結】   作:マイク徳田

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FINAL:同好の士と、『いつか星の海で』

「やるぞ、ガオガイガー!」

「あぁ!俺たちの勇気と友情を、一つに束ねれば!」

 

 胸に白い獅子を携えた勇者――グレートエクスカイザーと、胸に黄金色のライオンが輝く勇者――ガオガイガーのツインアイが激しく光り輝き、対峙する戦闘機を模した次元超越ガイスターロボを睨み据えた。

 

「カイザーソォォォド!」

 

 グレートエクスカイザーは天より授かりし勇者の剣と、大地より与えられし弓を一つに重ねた。すると如何なる魔技か、それら二つが合わさって身の丈を越す長さをした一振りの長剣となり、その柄を握りしめて真正面に構えた。

 

「ハンマーコネクトッ!」

 

 ガオガイガーが途切れた右腕を突き出すと、四角い形をした、特大の拳が備えられた鉄塊が荒々しくドッギングされ、こちらも身の丈を越す巨大な長さをしたハンマーの柄を握りしめた。

 

「ゴルディオン!ハンマーッ!」

 

 白の獅子が剣の刀身を焼き、ガオガイガーに内蔵されたGSライドが金色の輝きを放つと、機体そのものを金に染めてゆく。グレートエクスカイザーはその長剣を真正面に構えると、こちらの機体も全身を眩い金色に染めてゆく。

 2人の金色の輝きを放つ勇者は跳躍し、目にも止まらぬ速さでガイスターロボに肉薄した。

 

「サンダー!フラァァァッシュ!」

「光になれぇぇぇっ!」

 

 長剣の横薙ぎの一閃と、鉄槌による縦の一撃が、同時に撃ち込まれた!

 2体の勇者が放つ最強の必殺技を2発叩き込まれたガイスターロボは、瞬時に全身を巨大な光の柱に変換され、無へと帰して行った。

 

 

 

「うぅー、人に二次創作の漫画見てもらうのって初めてだから、緊張するなぁ……」

「私も会誌にイラスト載せてもらったのこれが初めてだよ。他の人に見られるのって恥ずかしいよね……」

 

 緊張で全身を縮こまらせた状態で椅子に座る麗奈と友里が、やや震え声で会話を交わす。

 期末試験も終わり、夏休みに突入したすぐ矢先。じりじりと焦がすような太陽の日差しが肌を容赦なく炙る時間帯。

 エアコンの程よく効いた地元の公民館の一室にて、私服の生徒達が大凡10人ほど集まり、半々ほどに分かれて長テーブルに座っていた。

 真ん中には、各々の学校の漫研部で刷った、モノクロカラーの表紙をした冊子が数冊ずつ。陽昇高校と鳥田高校の漫研部の会誌だ。

 麗奈は落ち着かない動きで、対面に座る鳥田高校の生徒に視線をやっていた。穏やかそうな生徒が多く、先日オフ会で同席した生徒も居た。麗奈は先程以前のオフ会について謝罪の言葉をいただいていたのもあり、笑顔を見せた。

 

 (大丈夫かなぁ……服もメイクも、崩れてないよね……)

 

 今日の麗奈のコーデはセーラー服のような意匠のオフショルダーフリルリボンブラウスに、3連ベルトを巻いたプリーツスカート。靴はリボンをあしらったパンプス。部長と友里に見せたら即座に「地雷系だな」「地雷系だね」と返ってきたが……もう少し抑えめの方が良かっただろうか?麗奈は今更ながら焦りを覚えた。

 

「はいそれでは、今日は暑い中お越しいただきありがとうございました。これより会誌の交換会を始めま〜す」

 

 温厚そうな細目の鳥田高校漫研部部長が声を上げると、鳥田高校の会誌が麗奈の方にも回ってきた。

 早速鳥田高校の会誌を開いて1ページ目を見やると、麗奈にも見覚えがあるキャラクターの、綺麗な絵が飛び込んで来た。確か、ウマ娘のダイワスカーレットと言ったか?

 

 (すごーい、皆んな絵めっちゃ上手い……!)

 

 流行りのアニメやゲームのキャラだけで無く、オリジナルデザインの作品も見受けられた。どのページに描かれている絵や漫画も、モノクロカラーながら総じてSNSでバズっている絵に勝るとも劣らぬ出来栄えだ。

 

 (こんなに上手い人たちだから、そのうちプロデビューする人も居るのかな……)

 

 そのような事を考えながら、麗奈は鳥田高校の会誌越しに対面に座る面々をちらりと観察する。

 

「あ、この蛍ちゃんの絵上手いね」

「ホントだ。ペンネーム……『リサさんの帽子になりたい人』って」

(友里ちゃんの絵だ。上手いって言ってもらえて良かったあ……)

 

 笑いまじりの反応に対して我が事のように喜ぶ麗奈だが、一つ重要な事に思い至った。

 

 (その次のページ、私の漫画じゃん!)

 

 麗奈はその生徒がページを捲る様をじっと見つめる。眼前の生徒はページを捲って行くと、隣に居る生徒と話し始めた。

 自分でも趣味が悪いと思いながら、麗奈はその反応に聞き耳を立てずにはいられなかった。

 

「令和にガオガイガーの漫画があるなんてね……俺スパロボでしか知らないんだよね」

「俺も。『エクスカイザー』、初めて聞いたアニメかも知れん」

(そりゃそうか……私たち生まれる前のアニメだもんね)

 

 麗奈は気づかれぬようひっそりと肩を落とす。そもそも『ガオガイガー』は放送開始から25年、『エクスカイザー』に至っては30年以上前の、むしろ親世代の方が知ってるアニメであろう。今の高校生達に反応を求める方が酷というものだ。

 しおしおの状態になった麗奈の耳に、対面の生徒からの言葉が飛び込んで来た。

 

「でも、絵はこの中で1番上手いよな」

(……え?)

 

 全く想定していなかった一言に、麗奈は思わず顔を上げた。

 

「そうそう。話はよく分かんなかったけど、ロボとか上手くて見入っちゃったもん」

「コマ割りも読みやすく配置されてたしね。練習すれば賞取れるんじゃない?」

「そうだよな。『ガオガイガー』と『エクスカイザー』、見てみようかな」

 

 鳥田高校の会誌裏に隠した麗奈の顔がどんどん赤くなってゆくが、同時に込み上げる嬉しさを何とか堪えていた。

 

 (届いたんだ……私の作品が!)

 

 原作を知らない人に、自分の作品が届いた。原作への橋渡しができた。これがこんなにも嬉しい事だなんて。

 麗奈は机の下で誰にも分からぬよう、ぎゅっと拳を握りしめた。

 

 

 

「それでは陽昇高校及び鳥田高校の会誌交換会をこれにて終了いたしたいと思います。一同礼っ」

『ありがとうございました!』

 

 康太の号令により、その場にいた全員が対面の生徒に向かって深々と頭を下げた。

 まだ陽が高い所にある午後。会誌の交換会は終わりを告げ、各々の帰途に着く時であった。

 

「お疲れ様、あすみん!皆んな凄く上手かったね!」

「お疲れ、鷺沢さん!あっちの高校の人、プロレベルの人居たね!例えば、このページなんか……」

 

 友里が会誌を開いて見せ、麗奈が覗き込んだその矢先に。

 

「あ、あのっ、少しよろしいでしょうか……?」

 

 おずおずと麗奈と友里に話しかける声があった。

 

「はい?」

 

 麗奈と友里が振り返ると、そこにはやや背が低めの、両目が前髪で隠された黒髪の少女の姿があった。先程まで会誌の交換会にいた子だ、と麗奈も友里も一眼で分かった。

 その少女は先程配布された陽昇高校の会誌を開くと、あるページを麗奈と友里に見せた。麗奈は驚きに目を見開く。

 

「私、大崎 舞(おおさき まい)っていう者なんですけど……あ、あの……この『勇気と友情〜ガオガイガー&エクスカイザー』を描いた……『ピギー』ってペンネームの人、誰かご存知ないでしょうか……」

「えぇっ!?はい、私ですけど……」

 

 麗奈は驚愕に目をまん丸にしたままだ。まさか自分の漫画を指名してくれる人が他にも居るとは。

 

「これ、すっごく面白かったです!どのキャラも違和感なくて、解像度凄く高くて……私も『ガオガイガー』凄く好きで、描いてくれる人がいて、嬉しくなっちゃって!」

「本当ですか!?何処まで行かれました!?『ベターマン』!?『FINAL』!?『覇界王』!?」

 

 立ち所にいつもの早口モードが起動する麗奈。つられて舞もテンションが爆上がりする。

 

「全部見ました!この間のガオガイガー展も見に行きました!」

「本当ですか!?私も見ましたよ!撮影禁止コーナー、本当に凄かったですよね!」

「そうそ!最終回の絵コンテとか、見ました!?コンテ1ページに一文字ずつ書かれてて――」

 

 早口オタク2人は、時間の経過も忘れて『ガオガイガー』談義に花を咲かせる。この時間が永遠に続けばいいのにな、と麗奈は心の底から思った。

 

「『勇者シリーズ』では異端児と呼ばれますけど、私は『ガオガイガー』が1番好きですっ!」

 

 麗奈は心の底からの笑顔で、そう断言した。

 

 

 

「んで、その子と意気投合して、連絡先まで交換したと」

「そうなんだよ〜、今度紹介するね。すっごく良い人なんだから!」

 

 麗奈はそういうと、手元のパフェからスプーンで一口掬って口の中に持って行き、その美味さに頬を緩ませた。

 日付は進んで8月の頭。夏休み真っ盛りの遊び盛りシーズンだ。麗奈と美琴は、都内にある洒落たカフェでジャンボ苺ソフトパフェを突きながら、先日の会誌交換会について話していた。

 

「その様子だと、『ガオガイガー』の漫画描いて良かったみたいだな」

「うん、ちょっと行き詰まった時もあったけど……」

 

 麗奈はその葛藤や苦労すら慈しむような瞳で、言葉を紡ぐ。美琴はそれを優しい表情で聞いていた。

 

「私なりに準備して、100%の力で挑んで、勇気を出して参加して……本当に良かった」

 

 その道の人が描く絵や漫画には遥かに見劣りする代物であっても、伝わらない部員の方が多かったとしても、自分の全力を出して描いたのだ。その経験はいずれ、本人にとっても肥やしになる。

 

「ま、お前が楽しかったみたいで何よりだよ」

 

 美琴はにかっといつもの笑顔を浮かべ、その後ぼそっとこう付け足した。

 

「あたしもお前が楽しそうに『ガオガイガー』の話してる所見るの、嫌いじゃないしな」

「? どうしたの美琴ちゃん」

「何でもねーよ」

 

 美琴はひらひらと手を振って、麗奈の追求を躱した。

 

「さあて、これ食い終わったらもう一軒行くぞ!期間限定メニューなんだからな!」

「よ、よく食べるね美琴ちゃん……」

「普段バレーで動くから、こういう時食っておかないとな!今日はあたしに付き合ってもらう番だからな?」

「勿論分かってるよ!それで、次行く所ってどんなお店なの――」

 

 

 

 

 私は、『ガオガイガー』が好きだ。地雷系の服装が好きだ。

 いつかその気持ちが変わったり、着れなくなったりする時が来るかも知れないけど、それでも『好きだ』と言い切れる今の時間を大事にしたいと願う。

 だから、私は胸を張ってこう言うんだ。

 

 

 

 ――『地雷系女子(わたし)勇者王(ガオガイガー)が好き』!

 

 完

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