遂にすべてを果たした。
だが、どうやら私はこの先をあの子たちと迎えることはできないらしい。
酷使し続けた体は、とうに限界を超えていて、度重なる大人のカードの使用は確実に自身を削っていることはわかっていた。加えて、色彩を打ち払うために、それらと触れすぎたのだ。私に反転する神秘などありはしないが、色彩による汚染は、考えていた以上に深刻だったらしい。
私は、自らの灯火が消える刹那、愛しき生徒たちに思いを馳せた。
彼女たちの行く先を見届ける・・・・・・、そして、彼女たちとともにこの先を進む事ができないことを悔しく思う。しかし、それでも生徒たちの未来を守れた喜びや、大人の責任を果すことができた誇りには、一片の曇りもありはしない。
きっとこれからも、多くの困難や障害が彼女たちの前に立ちはだかるだろう・・・・・・。もしかしたら、それはこれまで以上に大きなものかもしれない。
───だが、あの子たちならば超えられる。
そこには、決して揺るがぬ、絶対の信頼があった。
───さようなら、みんな。どうか、君たちの行く先に多くの幸せがあらんことを。
そうして、先生は生徒たちのこれからを祝福しながら、その生を終えた__________
_________はずだった。
───い。─────か、───せい。
誰かが私を呼んでいる。
うまく声を聞きとれなかったがそんな気がして、ゆっくりと瞼を開けた。
「!!!!!!、先生っ!、アリスはっ・・・、アリスはやっと先生の蘇生に成功したのですねっ!・・・・・・」
そこにいたのは、アリスだった。表情と声音は、アリスの感情をこれでもかといわんばかりに示そうとし、それでも足りないのか、涙は溢れだし、とどまることを知らなかった。
そんなアリスを見て先生は、
───そっと優しくなでてあげるのだった。
それからしばらくして、
「先生、おかえりなさい!アリスは、ずっと・・・・・・、ずっと、こうしてもう一度先生と会えるときをまっていました!」
「ああ、ありがとう、アリス。私もこうしてアリスと話せるとは思ってなかったよ。」
先生は、アリスと会話する傍ら、自らの置かれた状況を推測していた。なぜ自分は生きているのか・・・・・・、あの状態から、どうやって?、それにここは、何処だ?最新の設備らしきものがあるから、ミレニアムのようだが・・・・・・、私の記憶に該当する施設はない。ならば、ここは秘密裏に存在した施設なのか?それとも、私の治療のために新たにつくられたのか?
思考を巡らせながら、辺りを見渡したとき、あるものが目についた。その瞬間、先生のある程度の事情を把握したが、正直なところ信じたくはなかった。それが本当なら、もうみんなとは・・・・・・。だが、真実から目を背けても仕方ない。思い切ってアリスに聞くことにした。
「アリス。」
「はい、なんですか先生。」
「あれからどれだけ時間が経ったのかな。」
「!!!」
言い方には気をつけたが、やはり衝撃をあたえてしまったらしい。
「そうでした、先生はいつもよく物事を見ていました。一緒にボスの倒し方を考えてもらったりもしましたね・・・。はい、あれから・・・
私は先ほど、壁にかけられたカレンダーを見つけた。そこに書かれた年が事実であるとするなら・・・、
・・・100年が経ちました。」
「───そっか・・・・・・。じゃあ、ここはもう私の知るキヴォトスではないんだね・・・・・・。」
「っ・・・。ごめんなさい、先生。アリスがもっと早く治療法を見つけていれば・・・・・・。」
目を伏せるアリスを見て、苛立ちを憶えた。不甲斐ない自分にだ。確かに、目の前で告げられた事実は一瞬何も考えられなくなるほどに心にくるものだった。だが、それで目の前のかけがえのない生徒が私の発言をどう感じてしまうかを考えなくていい理由にはならない。大人として、先生としてなすべきことをなせ。自分を叱責しながら、苛立ちや寂しさを心の奥に沈ませ、柔らかな笑みを作り、
「気にしなくていいんだ、アリス。そんなことよりも、私の身体を治してくれてありがとう。」
「・・・・・・先生、アリスは先生に無理をしてほしくありません。つらいなら、つらいといっていいのですよ。」
・・・・・・・・・驚いた。私は常に自分を演出している。自分の言動が相手に与える影響はどのようなものかをつねに考えるように生きてきたし、本心を隠すことは得意だった。そのため、キヴォトスに来てから、見破られたことはほとんどない。それは大人が相手であったときですらそうだった。にも関わらず目の前の生徒はそれをやってのけたのだった。
───どう返答しようか。逡巡していたところ、足音を騒がしく立てながらこの部屋に向かってくる者がいた。
「お邪魔しま〜す!あ!、あなたがアリスちゃんの言ってた先生だね!」
「モモイ!?」
「先生、この子は才羽モモリ。モモイの血を引く者です!」
「うん!、私、モモリ!これからよろしくね、先生!」
どうやら、ここしばらくは退屈することはできそうにもない。そう思った矢先、新たな爆弾は投下された。
「ところで、先生はなんで裸なの?」
・・・・・・・・・、どうやら、自分が思っている以上に身体の感覚と頭は働いていなかったらしい。よく見てみると、自分はコールドスリープで眠らされていたようだ。
そんなことを考え、先生が現実から目を背けようとする傍ら、アリスは慌てて服をとりにいくのであった・・・。
私の拙い作品を読んでくださり、ありがとうございます。少しでも、楽しんでいただけたら幸いです。誤字が見つかった場合は、ぜひご報告ください。