彼方でもう一度あなたと。   作:Taichi2469

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アリスの想い

「・・・・・・3,2,1,アリス、撃って。」

「───光よ!」

 

 敵の増援が到着する瞬間に合わせて砲撃を行う。これによって大半の敵を蹴散らすことに成功した。

 

 相手が人ならば状況を把握できず、混乱し動けなくなるたろう。だが相手は機械だ。機械は人のように混乱するということがない。そして、認識した現状のデータを分析し、最適解を選ぶ。よって、致命傷には至らなかった、または砲撃を逃れた個体は即座にこちらを敵とみなし、応戦を開始しようとする。

 

 しかし、そのように動くことは計算通りだった。

 

「モモリ、トワ!」

「いっくよ〜!」

「攻撃を開始します。」

 

 合図とともに、隠れていた二人は背後から機械兵へ攻撃を行う。敵がアリスのみであると判断していた機械兵たちは奇襲への対策など一切していないため、容易に倒されるのだった。

 

 機械の判断は与えられた、もしくは得ている情報の中では常に的確であろう。だが、“もしも”という事態に対して備えるということはできない。それは彼らの明確な弱点の一つだ。その性質を利用すれば、今のように一方的に倒すことは難しいことではない。

 

「マオ、周辺の状況はどうなってる?」

「そちらに向かってくる敵性反応がある。情報を送るわ。」

 

 マオが操作するドローンより得た情報がシッテムの箱に送られる。

 

「ふむ・・・・・・。みんな、このまま進行しよう。この敵は避けられそうだ。」

 

 3人とも問題がないことを確認し終えた後、目的地へと歩みを進める。本体と戦う前に消費することは、できる限り避けたかった。

 

 私達は現在、復活したケセドの討伐作戦を展開していた。本来ならばこのような事態はC&Cが適任なのだが、間が悪いことに彼女たちは他校へ遠征中とのことで、すぐに戻ってきてもらうのは難しかった。・・・・・・そして、彼女たちの帰還を悠長に待つわけにはいかなかった。今のケセドは体制を完全に整えることができていない。よって、叩くならば今がチャンスなのだ。今を逃すと、ケセドを倒すことはより困難となるだろう。奴は時間とともに手駒を増やす。そして、その防衛をより堅固なものとしてしまう。そうなってしまえば、たとえ勝てたとしても被る被害は悲惨なものとなるだろう。

 

 私の計算では、この戦力ならば今のケセドに勝つことができる。・・・・・・・・・それに、予期せぬ事態への備えはある。

 

「先生って、凄いね!先生の言う通りにするだけで、こんなに簡単に勝てちゃうなんて!今なら誰にでも勝てちゃいそうだよ!」

「ありがとう、モモリ。でも、あんまり大きな声を出さないほうがいいかな。」

「あっ!ごめん、気をつけるね!」

 

 ここは既に敵の領域だ。周辺に反応はないが、用心するに越した事はないだろう。モモリも私の意図が伝わったようで素直に受け入れてくれた。

 

 ・・・・・・しかし、何度褒められても慣れないな。キヴォトスの生徒たち───特に、初めて私の指揮下で戦った生徒───はよく私の指揮能力を評価してくれる。些か大げさではないかとすら思うほどだ。表面上は慣れている体を装っているが、内心では彼女たちの役に立てたことを大いに喜んでいた。

 

 そして、一周目(あのとき)の記憶を取り戻したあとは、別の思いも湧き上がるようになった。────今度こそ、みんなを守ることができたのだ、と。

 

 

 

 数十分後、標的の付近に到着した。ここからならば、いつでも仕掛けられる。だが、万全を期すべきだろう。確認作業を行うことにした。

 

「それじゃあ、確認をするよ。トワ、君は機械兵の掃討を主に担当してもらう。ケセドの防御を剥がすまでが仕事だ。」

「・・・・・・はい。」

「次に、モモリはトワのサポートだ。撃ち漏らした敵を倒したり、弾幕を張る、といったことをしてほしい。」

「うん!」

「そして───アリス。最後のとどめを任せるよ。それまではなるべく、温存しておいてね。」

「はい!」

「マオ、君は全体のバックアップを頼む。何かあったら報告をおねがい。」

「わかったわ。」

「最後に一番大切なことを言うよ。───何よりも自分の身を大切にして。厳しいと感じたら、迷わずに引いていい。私がなんとかする。────大丈夫。私は大人だからね。責任は私が負う。・・・・・・それじゃあ、行こうか。」

 

 ・・・・・・相手は万全の状態ではなくとも、脅威であることに変わりはない。シッテムの箱に表示されるデータと私の経験から考えても十分な勝率はある。・・・・・・だが、相手は色彩だ。何が起こるかわからない。生徒たちが危機に陥る可能性もある。万が一のときは、私の命を使ってでも─────

 

「先生。」

 

 後ろから私にだけ聞こえるように呼び止める声がする。アリスだ。振り向くと目が合う。その瞳は彼女の心を映すように揺れ動いていた。あどけない子供のようにも、思慮深い大人のようにも感じられるその表情は、彼女の抱える焦燥を示す。

 

 アリスの抱える不安が私にはわからなかった。しかし、それが何であろうと私は向き合う覚悟はできていた。

 

 だが、アリスの口から出た言葉は先生にとってはあまりにも予想外のものだった。

 

 

 

「・・・・・・先生はもっと自分を大切にしてもいいのですよ。」

 

「──────────────アリス。」

 

 自らの浅はかさが嫌になる。私が今、此処にいられるのは・・・・・・・・・、生きていられるのは、アリスが彼女のかけがえのない時間の多くを私のために費やしてくれたからだ───────。

 

 先生という人物は自身に価値を見出していなかった。そして、彼にとって無上の価値を持つものは生徒たちだった。故に、自身の全ては生徒のために尽くす、それが彼の信念であった。それは生徒のためならば、自身の命を賭けることすら惜しく無いと思えるほどだ。それは今とて変わらない。

 

 だが、先生はアリスの言葉を聞き、ある考えに行き着いた。それは自身の命を投げ出すことはアリスのこれまでを無意味なものとしてしまうということだ。そして、彼女の想いを踏みにじる行為だ。生徒を否定することは誰よりも私自身が許せない。アリスは、私が生きることを願ったのだ。ならば、私は─────

 

「ごめん、アリス。そして、ありがとう。君は私のことを大切に思ってくれていたんだね。・・・・・・・・・誓うよ。君を悲しませるようなことはしない。私は私を投げ出さない。君と共に歩んでいくよ。」

 

「先生・・・・・・・・・、ありがとうございます。アリスの想いに応えてくれて・・・・・・・・・。でも、・・・・・・でも、アリスは───」

 

「二人とも早く行こうよ!」

 

 その時、モモリが呼ぶ声がした。すぐに行くと返事をする。

 

 この話の続きはまた今度にしよう。アリスもそう考えていたようで視線でお互いの意向が同じであることを確認する。そして、二人は前のモモリとトワに追いつくように歩き出した。

 

 このとき、先生はアリスが私を大切に思ってくれていることへの喜びを噛み締め、感謝していた。

 

 一方、アリスは先生に対して思いを巡らせていた。

 

 作戦を確認し終えた時、アリスには先生が危うく見えました。何処かにいなくなってしまいそうに感じました。先生は私達のために一生懸命になってくれます。でも、勇者として成長した今のアリスならわかります。先生は自分を愛せていません。だから、先生はアリスたちの為なら、きっと命まで使ってしまいます。アリスは・・・・・・、アリスは先生に自分を大切にしてほしかったのです。その事を伝えたら、先生はアリスの気持ちを汲み取ってくれました。さっき感じた危うさはもうありません。それはとても嬉しいです。でも、本当に伝えたかったことを伝えれられませんでした・・・・・・。

 

 だから、いつか伝えます、先生。先生は先生を愛していいのだと────。きっと、簡単には受け入れられないと思います。だから、何度でも伝えます。先生が、いつか本当に先生を受け入れられるまで─────。

 

 

 

 

 

 そして場面は切り替わる。これから始まるのは、力と力のぶつかり合いだった。眼前には数多の機械兵と、球体の形を取る元凶。思考を回転させ、シッテムの箱による支援を開始する。

 

「戦闘開始────!」

 

 

 

 

 そこからの戦闘は言葉を重ねる必要もなかった。端的に言って、圧勝だった。すべてが作戦通りに進み、ケセドは為す術もなく撃墜された。未来予知のように常に敵の動きを数手先まで読んだ指揮によって解決された今回の事件は、現在のキヴォトスに対する先生の力の証明となったのであった。

 




 更新が大変遅れてしまったこと、申し訳なく思います。次回はここまで遅くならないように頑張りたいと思います。少しでも楽しんでいただければ幸いです。誤字が見つかった場合は、ぜひご報告ください。
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