「第1回、緊急メジロ会議を始めますわ」
とある豪邸の一室、品の良い調度品が並ぶその場所にて、メジロマックイーンは厳かに告げた。普段は茶会に利用される部屋だが、今日は異様な緊張感に包まれていた。
そこに居合わせるのはメジロライアン、メジロパーマー、メジロド-ベル、メジロアルダン、メジロブライト。いずれも未来のトゥインクル・シリーズでの活躍を期待される、才気あふれるウマ娘達である。
「ねえ、まだラモーヌさんが来てないけど」
「姉様は『任せるわ』とだけ言って、どこかへ出かけてしまいました……」
ドーベルの疑問に、アルダンが答える。ライアンは流石はラモーヌさん、何事にも動じないなぁと感心していた。
「あの~、実はわたくし、なぜお呼ばれしたのか、理由を聞いておりませんの」
「あ、私も。私とブライトはさっき到着したところでさ。メジロ家に学園から頼みごとがあるとは聞いたんだけど」
のんびりとした空気でブライトが話し、パーマーもそれに同調した。
「それでは情報共有からはじめると致しましょう。まず、皆さんは『ツバサくん』なる男性をご存じですわよね?」
やや緊張した面持ちで話すマックイーンに対し、ブライトは小首を傾げる。
「ツバサ……くん? お会いしたことがあったかしら~?」
「ええっ!? ブライト、知らないの!?」
思わず大きな声を出してしまうライアン。他の面々も驚きつつ、それもブライトらしいかと苦笑する。
ライアンは説明した。
衝撃の男性ウマチューバーの誕生、伝説となったヘソチラ事件、コンスタントにストレッチや筋トレの動画を配信している世にも珍しい男性の話を。
ヘソチラ事件の説明の際には「あ、あたしは見てないんだけどね!」前置きをしていたが、少し紅潮した顔で話していたため、他の面々からは「あ、見てるな」と感づかれていたが。
「まあ~、そのような男性がいらっしゃるのですね~。なんだかライアンお姉さまと気が合いそうな殿方ですわ~」
「えッ、そうかな? ……えへへ」
ブライトの言葉に頬をかきながら、微笑むライアン。コホン、と一つ咳をしてマックイーンが話し始める。
「そのツバサさんから学園に依頼があったそうです。『ウマ娘との筋トレ真剣勝負がしたい』と。秋川理事長からメジロ家に相談があり、おばあ様が承諾したのですわ」
「まあ~」
「えぇっ!」
どこまで驚いているのか分からないブライトに対し、パーマーは驚愕していた。パーマー自身もツバサの動画をチェックしていたこともあり、生ツバサが見られる!?と期待に胸を熱くする。
マックイーンは学園から説明を受けた、企画の内容を伝えた。
「それで、私たちの中で、誰が対決のお相手をするのか、ですが……」
全員が沈黙し、部屋には空調の音だけが静かに聞こえてくる。全員がちらちらと隣を窺いながら、反応を待っていた。そんな中、アルダンが小さく手を上げた。
「私は辞退させていただこうかと……、体調が万全ではありませんし」
「あっ、アタシも! やっぱり男性はちょっと苦手だし……」
そう述べるアルダン、ド-ベルに対して、マックイーンは頷きながら話す。
「もちろん、無理強いをするつもりはありませんから。……私からはライアン、あなたを推薦しますわ」
「えっ!」
「わたくしも、ライアンお姉さまが良いと思いますわ~」
「ええっ!」
「パーマーさんもそう思うな! ほら、ライアンは弟がいるから慣れてるじゃん!」
「弟はまだ赤ちゃんだし、全然ちがうよ~!」
メジロ家のウマ娘は名家ゆえ、社交の場での男性との交流の経験があるが、それでも何度か挨拶をしたことがあるという程度のもの。
この中では弟がいて、最も男に免疫のあるという理由でライアンが選ばれようとしていた。
「メジロの矜持を見せる時ですわよ、ライアン!」
「ふふっ、ライアンならお任せできますね」
「ごめんね、でも筋トレって言ったらライアンでしょ?」
「ライアンお姉さま、ファイトですわ~」
「頑張って、パーマーさんも応援するよ!」
「ひ、他人事だと思って~!」
若干、押し付け合いの様相を呈したものの、ツバサの対戦相手はライアンで決まった。
話はまとまりかけていたが、ふとパーマーが疑問を投げかける。
「でもさ、勝負になるのかな? ツバサくんが鍛えているのは分かるけど、ヒトの男性だし……」
「そちらに関してはウマ娘側がハンデを負うことで、公平になるように調整するらしいですわ。また、先方からの要望で、真剣勝負を希望されているので全力で勝負して問題は無いかと」
マックイーンは続けて話す。
「他にも、企画として学園案内をする予定だそうです。場所ごとに複数のウマ娘が担当して案内したり、あまり間を空けずに第2、第3段の対決動画を出したりするらしく。人気の男性と関わることで生まれる嫉妬や批判が個人に集中しないよう、リスクを分散する狙いがあると聞いていますわ」
「へ~、いろいろ考えているんだね。でも、男性にそんなに負担になることして大丈夫なの?」
「これ……ほとんどツバサさんからの提案らしいですわよ」
「やば、本当に普通の男性と違うんだね」
パーマーは今をときめく男性ウマチューバーの行動力に感嘆しつつ、隣で「……男性と全力勝負、でも怖がられたら……」「おしゃれしないと……いやいや、筋トレするんだからジャージで……勝負服?」などと、目をぐるぐる回しながら混乱しているライアンを見て、当日までサポートしてあげようと心に決めた。