一林高校ってどこだよ   作:むすっとしたハムスター

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ご無沙汰しております。


全治3ヶ月ってなんだよ

 突然の出来事だった。

 

 インターハイ予選の二日目、シード校である俺たちは本日から試合に参加する。二度目の高校人生初のインハイ予選ということで、朝からテンションも高く、胸を高鳴らしながら会場への道のりを歩んでいた。

 

 あともういくつか角を曲がれば会場につくだろうという頃合い、俺は小さな十字路の横断歩道を渡っていた。もちろん、青信号であることを確認してからだ。しかし、それだけでは足りなかったのだろう。しっかりと左右まで確認するべきだったと今では後悔している。

 

 瞬間、身体に今まで感じたこともないくらい強い衝撃が走った。青天の霹靂、という言葉に当てはまるのではないだろうか。それはもう、とんでもなかった。視界が何回転もして、頭がぐわんぐわん揺れた。

 

 その衝撃のあまり、気を失ってしまったようで、次に目が覚めた時、俺は病室のベットの上に居た。

 

 

 

 

「あ、もしもし、部ちょ───『無事か!?』……声デッカ。……だいじょぶっす、結構ピンピンしてますよ」

『そうか……ならよかった。様態はどうだ』

「右腕がイきました。あとすり傷とか切り傷もいくらかありますけど、大きな怪我は腕だけっす」

 

 ベッ卜から身体を起こして、俺は部長の携帯から掛かってきた電話に受け答えていた。携帯を普段とは逆の手に持って通話していて、なんだか違和感がある。

 

『それは……不幸中の幸いといったところか。回復にはどれくらいかかるんだ?』

「お医者さん曰く、全治3ヶ月らしいっす。後遺症も残んなさそうなんで安心してください」

『……俺は、お前が車に撥ねられたと聞いたんだが』

「?……そっすね。結構な勢いでふっとばされたみたいっすよ」

『比川、お前は本当に人間なのか?』

「え?急に悪口すか?」

『いや普通、スピードの出ている車に撥ねられた人間は腕を一箇所骨折するだけでは済まないだろ!?』

「……確かに。え、待ってなんで俺こんなに元気なの?えキモくね!?」

 

 打ち所が良かったとかそういう話のレベルじゃないかもしれない。流石に頑丈すぎないか俺の体。もしやこれも俺がご都合系主人公である恩恵……?そういやお医者さん俺の様態を伝える時ちょっと引き気味だったような……。

 

『……とにかく、命に別状はなさそうで良かったよ』

「っすね」

『もうすぐ試合だから一旦切る。また後で見舞いに行くから、安静にしておけよ』

「うす、あざす。試合頑張ってください。……ふぅ」

 

 通話が切れた。一息ついて、何気なく天井を見上げてみる。白い。そんでいくつか目立つシミがある。

 

 ……俺はこれからしばらく、バレーボールが出来ないのか。

 

 それは、生まれてこの方バレーに人生を捧げてきた俺にとってはとてもじゃないが受け入れ難い事実……というわけでもないな別に。案外すんなり受け入れられてる。

 

 しかし、これから数ヶ月、バレーが出来ない期間をどう過ごしたものか。部活動の時間はマネージャー的役割で参加するとして、普段自主練に使っていた時間をどう活用するかだな。

 

「うーん……まぁ無難に座学かぁ?」

 

 といっても、俺には前世含め20数年間蓄えてきた膨大なバレー及びスポーツの知識がある。となると、もっと専門的な分野に手を出してみるのもありか?例えば、人体の構造と機能について、もっと造詣を深めることが出来れば、俺のバレー技術の向上にもつながるかもしれない。

 

 俺は他の同年代の選手と比べれば、知識という面において圧倒的に伸びしろが少ない。はじめは急激に伸びるが、時間がたつにつれてその伸びは緩やかに落ち着いていく、成長曲線ってやつだ。俺はその終盤に差し掛かっていると言っても過言ではない…と思う。だが、頭打ちになることは決してない。無論、まだまだ伸びしろのある身体面を鍛えて行きたいのが本心ではあるが、今はそれが出来る状況にない。ならば、今の自分にできることをするだけだ。その結果によって得られる成長が、微々たるものであったとしても、やらない選択肢はない。歩みを決して止めたくない。

 

 なぜなら、俺はバレーボールが大好きだからだ。

 

「うっし。気合入ってきた」

 

 やることが決まれば、自然とやる気も出てくる。

 

 さしあたっては、今手元にあるスマートフォンを駆使し、情報を収集するとしよう。まったく便利なアイテムだぜ。

 

 ……ていうか俺、スマホぽっけに入れたまま車にぶっ飛ばされたのによく無事だったな、このスマホ。あれか、子は親に似るってやつか。

 

 違うか。

 

 

 

 

 

 窓の外の景色が全体的にオレンジ色になっている。夕日に照らされているからだ。スマホとのにらめっこ耐久にも少し飽きが来ていたところ、コンコンッと軽く弾むようなノックの後、病室のスライドドアがガラリと開いた。

 

 

「ちっすー、ひかわん生きてるー?」

「んー、死んでる」

「え、やば。とりま一回ぶん殴って生死確認」

「生きてるからやめてください」

 

 気の抜けた声色、着崩した制服、ジャラジャラとした小物及びアクセ類、綺麗に染まった金髪、高めの位置で結んであるサイドテール、その派手な格好が様になるくらいの可愛らしい容姿、この気だるげギャルの名を、阿川と言う。

 

 彼女は我が一林バレー部の1年マネージャー、俺と同じクラスで、イケメンが多いからという不純すぎる動機でバレー部のマネージャーになった女だ。

 

「見舞いに来てやったぞ〜」

 

 コンビニで買ったであろう商品の入ったビニール袋をぶら下げ、腕を組んでこちらを見おろしてくる阿川。ジトッとした視線を送られているが、もとよりこの目つきらしく、ジト目が彼女のデフォルトだ。

 

 阿川はビニール袋を広げ、俺の袋の中身を見せながら言った。

 

「餞別、すきなのいっこどーぞ」

「餞別を選別ってか」

「おもしろくな」

「トーンがガチすぎて涙出そうだわ。つーか餞別て、俺別に引退するわけでもないからな?」

「あ、餞別ってそういう意味なん?なんか、ものあげるときのムズイ言い方的なやつかと思ってた」

「ばかちんじゃねーか」

「学びを得た阿川チャンである」

 

 えっへんと胸を張る阿川、表情筋は動いていない。どういう感情なんだよこいつ。

 

「あ、てかてか〜、試合結果〜」

 

 ふと思い出したかのように、阿川が話の舵を切る。そういえば今日の試合はもうとっくに終わっているはずだ。しかし試合の結果報告の連絡が誰からも来ていない。危うく今日が試合日であったことを忘れるところだった。

 

「あぁそうだ、誰からも何の連絡もなかったから忘れかけてたわ。どうだったんだ、庄西との試合は」

「聞いて驚け……ぶい」

 

 腕を伸ばしてVサインを見せつけてくる阿川、表情筋は動いていない。つまりこれは、勝ったということでいいのだろうか?

 

「勝ったのか」

「もち」

「内容はどうだった?」

「それがねぇ、結構接戦だったんよ〜。で、勝ったはいいものの、部長がこんなんじゃだめだ〜!みたいな感じになって、そっからずーっと話し合いしてた」

「まじか、流石のストイックさだな」

「ね、まじシビィ」

 

 シビィ、という単語に一瞬首を傾げかけたが、多分シビアからもじった、厳しいみたいなニュアンスの言葉なんだろう。ギャル言語の解釈は、あまり深く考えないほうがよい。

 

 しかし、試合直後からミーティングとなると、俺の方に連絡が来ないのもまぁ納得できる。みんな真剣なんだ、バレーボールに。

 

「ん、もしかして阿川が一人で見舞いに来てくれたのって、まだミーティングが終わってないから…とか?」

「ごめーとう。みんなずっと話してるけど、あたしよくわかんなかったから、じゃあお見舞いしてやったほうがよくね?みたいな」

 

 まじかよすげぇな。何時間続いてんだそのミーティング。辛勝だったとはいえ、試合直前でいきなりレギュラー1人欠けての戦いだったわけだから、勝てただけよしとしてしまっても良さそうなところだけどなぁ。まぁ、そうしないから、ウチのバレー部は強いんだろうな。

 

「なるほどね……てか、わざわざ一人で見舞いに来るなんて、おまえ、いいやつだな」

「おまえよびやめろし」

「あぁごめん。阿川、ありがとな。見舞いに来てくれて」

「んふ、どいたま〜」

 

 それから、中身のない会話がいくらか続いた。

 

 

 

 

 夜だ。日もすっかり暮れていて、外を見渡すと真っ暗な街並みの中に蛍光灯、信号、あと住宅の窓から漏れる室内灯の光が点々と、不揃いに並んでいる。

 

 すぐ真横にある、ベッドサイドテーブルの上には俺一人じゃとても食いきれない量の菓子がバスケットに山積みされている。これは、一林高校バレーボール部の面々が俺に寄越してきた見舞いの品の数々である。

 

 日が沈むより前のこと、阿川とだらだら着地点のない話をしていたら、時間がするすると過ぎていって、1時間くらい経った頃だっただろうか、ようやくミーティングを終え会場を離れた部活動のメンバーたちがぞろぞろと、俺のいる病院へとなだれ込んできた。

 

 部長を筆頭になぜか俺の怪我を心配する部員は少なく、砧と平に関しては

 

「頑丈過ぎてキモい」

 

だの

 

「比川くん人じゃなかったんだね」

 

だの、およそ病人かけて言い言葉ではない罵倒をしてきやがった。心配そうにしてくれた先輩方にはしっかりと感謝を伝えつつ、とりあえず砧と平は退院したら背中を蹴り飛ばそうと心に誓った。

 

 最初は、俺の不都合せいでチームに迷惑をかけてしまったことに対し罪悪感を抱いていたというのに、皆が帰る頃にはそんなもの微塵も感じなくなっていた。




オリ主:よく分からん高校での公式大会一発目を目前として、車にはねられ全治3ヶ月。可哀想。軽車に勢いよくぶっ飛ばされるも、命に別状無し。人外ですか?それにしても可哀想。

阿川:性癖詰め込んだオリキャラ出さないと死ぬ持病を持つ作者によって生まれてしまった。一林高校の女子マネージャー。

一林高校排球部の皆様:オリ主の防御力にドン引き。




1年ぶりくらいに小説書いたらもうなんかよくわかんない話になっちゃった。
というわけで、IH編はオリ主マネージャー√です。需要があるかは知らんけど多分こうした方が話書きやすいと思うので更新頻度が上がる可能性があります。が、次回更新は例のごとく未定。
次回以降、原作キャラとの絡みを増やしていきたい所存でございやす。

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