【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

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24スレ目 原罪

「お礼参りに来たぞ、神気取りのコップ。

叩き割ってやる」

 

メメントスの最奥たる退廃の牢獄にて。

眼前に聳える黄金の聖杯に向け、ソルジャーが吐き捨てる。

と。聖杯のものらしい、荘厳な声が嘲笑する。

 

『それはこちらのセリフだ。

今度こそ消してやろうぞ、宇宙、そしてこの星の「トリックスター」』

「今度こそ…?」

「まさか、お前…、10年前に倒した…!?」

『その通り。我はかつて「アルコーン」と名乗った巨像なり』

 

アルコーン。10年ほど前、世界を支配せんと動き出した第三のキルルを触媒にして生まれた理不尽の名。

かつて出た時は近い近いと思っていたが、まさかその物だったとは。

あの時現れ出たのは悪神の種だったのか、と衝撃を受ける当事者3人。

と。やる気に満ちたモナが声を張り上げる。

 

「要は一回負けたから、今度は早いうちから叩き潰そうとしたわけか!情けねー話だぜ!」

「モナの言う通りだぜ!

神が聞いて呆れるな!」

『愚昧な人間どもを統制するにあたって、不備は許されん。

その種となる者たちを排除するのは、神として当然の責務だ』

「負け惜しみにしか聞こえないわよ!」

「勝てなかったことへの言い訳じみた言い分だな」

『事実、お前たちがどんな刺激をもたらしても人は変わらなかった。

こうなってしまえば、改革者はただの異端者。いたずらに人を惑わせる異分子に存在意義はあるまい』

 

怪盗団が聖杯の言葉を跳ね除けていく。

が、しかし。それでも聖杯には届かず、ソレは嘲ることをやめない。

あまりに大きな衆愚。許されざる世界規模の怠惰より生まれた神。

改革を是とせず、変わること、成長することができなくなってしまった人への失望。

ソレらを込めて言葉を並べる聖杯に、ソルジャーは小さく頷く。

 

「確かに、お前の言うこと全てを否定できはせん。

だが、お前が蔑む人間によって、確かに変わった者もいる」

 

これを敵に言うのは初めてか。

どこか懐かしさを覚えながら、ソルジャーは…否。バルルは続ける。

 

「私は今世に生を受けてから暫く、人を人として見たことがなかった。

よく似た、フィクションの世界を知っていたからだ。だからこそ、心の底から人を人と想うことが出来なかった」

 

今だからこそ言える。

蓮と出会うまでは、明確に他者と一線を引いていた。

自分は転生者で、ここはフィクションの世界。心からそう思い込んでいたが故に。

 

「ここに生きる人間は現実だ。この世界は紛れもない、私が生きる残酷な現実だ。

ほんの少し特殊なことはあっても、ソレは変わらなかった。

そんな当たり前のことにすら、一万もの歳を重ねても気づくことが出来なかった。

そんな私を変えてくれたのが、彼だ」

 

ペルソナを覚醒したあの日。

蓮とのコープが満たされたあの日を思い出し、バルルは語りに熱を入れた。

 

「少しずつだが、人は変わっていける。

そうした変化の輪が繋がって、世界は変わっていくんだ。

お前はその少しずつの変化が容認できないんだろ。

なにせ、人の怠惰から生まれた神だ。

結論を早く出したいから。待つのが面倒だから。そんな理由で、小さな変化に見て見ぬフリをしているんだろう?」

『神を語るか…。生意気な…』

 

聖杯が吐き捨てると同時、その装飾がばきりと音を立てて展開されていく。

どうやら前座段階で相手する気はないらしい。

それだけ警戒されているのか、それとも早く終わらせたいと言う大衆の普遍的な怠惰が反映されているのか。

塔が割れ、あらわになるソレを前に、皆が目を見開く。

 

「これが、理不尽…!?」

「聖杯の真の姿ってわけか…!」

「悪趣味な輝きだ…」

「び、ビビんじゃねぇ!

ここで終わらせるんだろうが!!」

「でも、こんなの、勝てるの…?」

「ジョーカーが前に倒した時よりもパワーアップしてる…ん、だよね…?」

「不安に飲まれるな!死ぬぞ!!」

「みんな、構えて!!」

 

そこにいたのは、鏡のような外殻に覆われた巨影。

10年前と重なるような形で佇むソレは、顔の紋様らしき部分を怪盗団へと向ける。

 

『我は人間の無意識より生まれ出し管理者、統制の神ヤルダバオト』

「贅沢な名だな。コップで十分だ」

 

蔑称を用い、煽るジョーカー。

ヤルダバオトはそれに不快そうに唸るも、即座にその力を解放し、光芒を放った。

本来のベルベットルームを取り戻し、十全な力を誇る蓮でもたじろぐほどの一撃。

ソレを前に、ソルジャーがウォリアースタイルへと変貌し、彼らを背中に乗せる。

 

「助かった、ソルジャー」

『ドラゴンの背を足場にして神と戦うか。

いよいよ、ゲームのラスボスじみてきたな』

「ガチのラスボスだしな!

俺は好きだぜ、こういうの!」

「様式美というやつか。悪くない」

「泣いても笑っても、ここで最後だもんね」

「かっこいいシチュエーションじゃん!」

「私たちの信じる道…。その果てがここなら、全身全霊で臨むのみ!」

「お!美少女怪盗、推して参れー!」

「………バカしかいないのか、ここは」

 

ぎゃいぎゃいと怪盗団が騒がしく、いつものように言葉を交わす。

そんな喧騒をよそに、モナがジョーカーを見上げ、軽く笑みを見せた。

 

「行こうぜ、ジョーカー」

「ああ。…その価値無き玉座、貰い受ける」

『反逆者どもめ…!よほど罰せられたいらしいな…!』

 

ヤルダバオトが吠え、光芒が駆け巡る。

避け切れないほどの速度で周囲を包み込んだそれが、怪盗団の体を焦がす。

が。それで挫けるような未熟さはとうに捨てている。

彼らは一斉に仮面を燃やすと、それぞれの役割に入った。

 

「猛れ、アグネス!!」

「意を示せ、ディエゴ!!」

 

ディエゴが回復魔法を使い、傷ついた皆を癒し。

アグネスが駆け、「チェックメイト」による能力低下がヤルダバオト、そしてその腕にある武器群を襲う。

段階を踏んで武器を出していた記憶があるが、本来のものよりも余裕がないか、もしくは力を増しているのだろう。

ヤルダバオトが展開する手には、既に本、鐘、銃、剣の武装が鎮座している。

極め付けは、後頭部より伸びるチューブ。

それにより大衆からエネルギーを吸い上げ、先ほどの光芒を放っているのだろう。

連発されたらまずい。

様々な攻撃が雨霰と降り注ぐ中、ソルジャーがクロウへと目を向ける。

 

『任せたぞ』

「了解。スカル、よろしく」

「おっしゃ!ブッ込め、ウィリアム!!」

 

叫び、スカルのペルソナ…ウィリアムが腕の砲身を天へと向ける。

降り注ぐ光は、皆の力を増幅させるもの。

その光を受けた直後、ソルジャーが翼を折りたたみ、急激に加速する。

目指すはチューブ。ヤルダバオトの図体では反応できない速度の光が駆け、牢獄に繋がるチューブへと迫る。

そんな中、クロウはその仮面を燃やし、筋肉質の黒影を生み出した。

 

「殺せッ、ヘリワード!!」

『ぬゔっ…!?』

 

振り下ろされるは、反逆の刃。

それによってチューブが絶たれ、黒の光芒の勢いが弱まる。

あとは武器含め、地道に削るだけ。

手の空いたメンバーが札を使い、皆を強化する。

少しばかり押されたことに焦りを感じたのか、それとも鬱陶しく思ったのか。

ヤルダバオトは足場になっているソルジャーに向け、攻撃を放つ。

 

「惑わせ、ルーシー!!」

 

ノワールが叫ぶと同時、がきぃん、と音を立て、一部の攻撃が弾かれる。

が、しかし。万能属性のものも混じっていたのだろう。

その一部がソルジャーへと着弾し、怪しげな光が絡みつく。

 

『己が色欲に飲まれるがいい』

『おっさんにそんなもんあるか』

『………!?』

 

人の大罪を引き出す力。

それを精神の成熟で跳ね除けたソルジャーに戦慄くヤルダバオト。

ならば、と次なる大罪を引き出そうとするも。

飛び上がった影がその刀を抜いた。

 

「出でよ、ゴロキチ!!」

 

ブレイブザッパー。波のような斬撃が大罪を司る鐘へと襲い、砕く。

ヤルダバオトが降りてくるフォックス目掛け、その銃を向ける。

瞬間。飛んできた拳により、銃が砕け散った。

 

『なっ…!?』

「はっはー!どーだ、この野郎!!」

『おのれ…』

 

新たな武器を取り出そうと、空いた手を開いたコンテナへと差し込むヤルダバオト。

瞬間。その全身が煮えたぎる炎の海と呪怨の光芒に飲み込まれた。

 

「踊れ、セレスティーヌ!!」

『謳え、ラヴクラフトッ!!』

『ぬぐぉっ!?』

 

手が確実に潰されていく。

ヤルダバオトが危機感に陥る中、彼はある光景を捉えた。

 

『あ、あれは…っ!?』

 

眩く輝く空。触腕を絡め、光をかき集めるアザトホースにヨグ=ソトース。

忘れもしない。10年前、自らを滅ぼしたあの一撃がくる。

そう悟ったヤルダバオトは無理矢理に力をかき集め、黒の光芒を溜めた。

 

「消し飛べ!!」

『破滅を迎えるがいい!!』

 

世界を砕く一撃がぶつかり合う。

片や、神。片や、人。同威力のそれがぶつかり合い、嵐が巻き起こる。

ただの数秒でもミンチになるような衝撃。

ペルソナで体の強度が上がっているとはいえ、物量となって襲いかかる風に耐え切れる程ではなく。

ウォリアースタイルとなっていたソルジャー以外の怪盗団はその衝撃に膝を突いた。

 

「ぐ、ゔぅ…ッ」

「くっ、そ…、あれで無傷かよ…!」

「いや、効いてる!あと一撃…、え、は…!?回復してる…!?」

「はぁ!?」

 

ナビの声に、皆に驚愕が走る。

そんな彼らを嗤い、ヤルダバオトは黒の奔流を放った。

 

『わかるか…?大衆は汝らを嘲笑っておる。

無駄なことだと。なにをやっても、世界など変わらないのだと』

「それが、どうした…ッ!」

「まだ、立てる…!まだ、やれる…ッ!」

『愚かな…。世界より見捨てられし者よ。忘却に飲まれ、消えるがいい』

 

再び世界から消そうとしているのだろう。

大衆の諦めた声が響く。

変わることを面倒だと拒み、怠惰に堕ちた大衆たちによる無意識の拒絶。

それに晒される中、消されてたまるか、と皆が踏ん張る最中。

 

─────がんばれ、大佐!

 

聞き覚えのある声が響いた。

 

「…‥この声…、確か…」

「前に戦った、別世界の…」

 

間違いない。転生者パレスで戦った転生者の1人、九頭ユーマの声だ。

皆がそれに目を見開くと、次々と声が響く。

 

─────俺らだって勝てたんだ!大佐!アンタらが勝てないとかあり得ないだろ!

 

─────私の世界の蓮くんが辿り着けたんです。あなたたちも、きっと…!

 

─────1回倒してんでしょ。よゆーよゆー。

 

─────こっちにまで迷惑かけないでよね。…頑張って。

 

─────わたくしも、微力ながら応援させていただきます。

 

─────やっちまえ、怪盗団!!

 

─────双葉を頼んだって言ったわよね…!負けたら許さないわよ…!

 

─────大佐殿ー!!勝って吾輩にボーナスをー!!

 

─────蓮くん!大佐!いっけー!!

 

戦った転生者だけじゃない。

数多の声が入り混じり、怪盗団の周りに集っていく。

その光景を前に、ヤルダバオトは忌々しげに吐き捨てた。

 

『大衆ども…、それに、輪廻に囚われしものどもか…!これだから人類は…!』

『モルガナ。お前が届けてくれたのか?』

「半分はな。もう半分は…、バルル。オマエの人徳だぜ」

『…………そうか』

 

数々の困難があった。激突があった。

その全てが集約し、今ここに力としてある。

ソルジャー…否。バルルは蓮へと目を向け、笑みを浮かべた。

 

『たどり着いたな』

「ああ。ようやくだ」

 

心の中にある何かが膨れ上がっていく。

その奔流に弾き出されたのだろう。現れたアルセーヌが纏う鎖を握り、思いっきり引きちぎる。

愚者の最奥。悩み、惑い、諦め、それでも立ち上がる者の終着点。

その光が弾け飛ぶ光景を前に、ヤルダバオトがほくそ笑む。

 

『力を扱い損ねたか…』

 

ヤルダバオトが嘲笑うのも束の間。

暗雲が空間を支配し、雷鳴が響く。

舞い散るは、悪魔の羽。その元となるであろう存在が佇む空へと目を向ける。

雄々しく広がる翼。世界を引き裂くツメ。金色の仮面。

世界への反逆が形となったかのようなペルソナが、ヤルダバオトを睨め付ける。

 

「サタナエル・原罪(オリジン)

『……まさか、原初そのものの…!?

バカな…!?人間がその力を十全に扱えるわけがない!!』

 

否。そこに座すのはペルソナであり、ペルソナにあらず。

人が信ずる原初の反逆者そのもの。

当惑するヤルダバオトに、ジョーカーはニヤリとほくそ笑んだ。

 

「さぁな。原初の存在も、お前が気に入らなかったんじゃないか?」

「そーだぜ、エセ神がよ!

救えねーから滅ぼしまーすなんてふざけたことぬかしてっからだ!!」

「神らしく、悪魔に討たれるんだな!!」

 

お調子者2人が叫び、煽る。

それが気に入らなかったのだろう。

ヤルダバオトはその額に黒の光芒を溜め、解き放つ。

が、その光はサタナエル・原罪(オリジン)が軽く手を払うだけで消えてしまった。

 

『バカな…!?』

「怠惰なる人類の支配者よ。その罪の体現者よ。我々が、この世界を頂戴する」

『ほざけッ!!!』

 

ごぉおお、と光芒の雨が降り注ぐ。

それを打ち払うようにサタナエル・原罪が銃を薙ぎ、ヤルダバオトの頭部へと向けた。

 

『人々の願いを奪うのか!?!?』

「失せろ」

 

自由を取り戻すために。

ヤルダバオトの命乞いを跳ね除け、引き金を引く。

放たれたるは、大罪の徹甲弾。

大罪を洗練して鍛えた弾丸が聖杯を穿ち、夜を引き裂く。

仰け反ったヤルダバオトは暫し沈黙し、愕然と声を漏らした。

 

『なんという力…。この我を、すべての大衆の願いより生まれた「神」を、超えるか…』

「独りよがりが過ぎたな。次はもう少し柔軟になるといい。

他の自称神よりはマシになるだろ」

『………ふふっ…。勝てぬ、わけか…』

 

崩れ、消えるヤルダバオト。

残されたのは、聖杯だったものだけ。

激闘を終えた彼らはその場に降り立ち、オタカラを手に取った。

 

「………終幕だな」

 

その日、メメントスと現実は再び分たれた。




ヤルダバオト…実はアルコーンの転生体。ここだけの話、相手の強さをあらかじめ把握してたので、初手でめちゃくちゃメタっていた。

サタナエル・原罪(オリジン)…人が思い描く原初の反逆者そのもの。コープを二度も満たしたことにより、完全に制御できるようになった。




???「まだ終わらないんだよね。いや、これから始まるんだ」
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