【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「不甲斐ない現実を叩き潰そう…!
導け、アダムカドモン・
丸喜が叫び、光が降り注ぐ。
アザトースの時とは比べ物にならない熱をペルソナで受け止め、ソルジャーは忌々しげに聳える巨人を睨む。
『くっそ、あのカスども…!
自分から制御下に入ってやがる…!』
「フィレモン様たちはこの世界の人類をここで見極めるつもりだ!
気を引き締めろ、お前ら!!」
「言われるまでもねぇ!!」
モナの叫びに返し、仮面を燃やすスカル。
ウィリアムが放つゴッドハンドが駆け、丸喜へと向かう。
が。巻き起こった光の嵐がその拳を砕き、怪盗団を襲った。
「ぐぅうううっ!?!?」
「ぎ、ぎぃいっ…!!」
統制の神以上の攻撃だ。しかも、これだけの力を使って、冷や汗一つかいてない。
丸喜は普遍的無意識を完全に掌握しかけていると見ていいだろう。
神の如き力を振りかざす丸喜を前に、ナビがわなわなと声を漏らす。
「嘘だろ…!?あいつ、自分のパレスだけじゃなくて、メメントスも吸収してる…!?」
「なにそれ…?どう言うこと!?」
「わかんない…!けど、あれは…、統制の神だとか、丸喜センセーのペルソナだとか、そう言う次元じゃなくなってる…!
今わたしらが戦ってるのは、メメントスそのもの…!普遍的無意識そのものだ!!」
あまりの事実に絶望が走る。
フィレモンとニャルラトホテプはその制御に一役買っているのだろう。
片や、人の行き着く先を見届けるため。
片や、これ以上の人の可能性を潰すため。
しかし、ここで折れるわけにはいかない。止めなくては、奴らは丸喜の善性を利用し、他の世界に魔の手を伸ばすだろう。
猛攻という表現すら生ぬるい破壊の雨が降り注ぐ中、怪盗団は揃って渾身の一撃をアダムカドモン・
「……ごめんね。でも、僕は…!!」
『そうだ、丸喜拓人!お前が否定するのだ!彼らの吹けば飛ぶような可能性を!』
『君なら叶えられる。もう少しだ。もう少しで、人が普遍的無意識を掌握する…!』
フィレモンとニャルラトホテプが歓喜に打ち震え、彼に力を注ぎ込む。
その悲嘆が膨れ上がると共に、アダムカドモン・
『乗れ!!』
折りたたんだ翼に光を灯したソルジャーが叫び、怪盗団が揃ってその背に飛び乗る。
皆がその鱗に掴まるのを確認するや否や、ソルジャーは彗星となって迫る光芒から逃れた。
『ヤルダバオトの時と同じようなことになったな…』
「丸喜氏の覚悟にペルソナが応えたのか…」
「どうすりゃいいんだ、あんなの…!?」
「ナビ、何か弱点は?」
皆が愕然とする中、クイーンが悲鳴を抑えるようにナビに問う。
人が操る以上は何か弱点があるはず。
クイーンがそう考えるも、ナビは絶望に満ちた顔で告げる。
「…………ない。あいつ、倒せない…っ!
どれだけ倒しても、丸喜センセーが諦めない限り復活する…!!」
自分たちがそうだったからわかる。
丸喜は決して諦めることはない。
わなわなと溢すナビに、皆の顔から血の気が失せる。
敵は、絶対に倒せない
人間の身で神になろうとする丸喜にフィレモンが笑い、理不尽に膝を折りかけた怪盗団にニャルラトホテプが嗤う。
皆が呆然とする中、ソルジャーが重々しく口を開いた。
『……一つだけ、倒せる可能性がある』
「なにっ…!?」
「ソルジャー、教えて!!」
『私が奴らから受け取った二つのペルソナがあるだろう?それを使うんだ』
クトゥグアとニャルラトホテプ。
かつてアクアクと対峙した時に渡された、それぞれの化身。
ソルジャーは二つの仮面を取り出すと、その形を弾丸へと変え、クトゥグアが宿るものをジョーカーに、ニャルラトホテプが宿るものをクロウに渡す。
「そんなことができたのか…?」
『ホシに願っただけだ』
ソルジャーの言葉に、ジョーカーはポケットに入れていたホシを取り出す。
輝きが消えている。
ペルソナを弾に変えると言う奇跡を叶えて、役目を終えたのだろう。
ジョーカーがホシをしまい直すと、ソルジャーは淡々と説明を続けた。
『ジョーカーはニャルラトホテプを、クロウはフィレモンを狙って欲しい。やれるな?』
「当たるとどうなる?」
『私の推理が正しければ、着弾すればやつらと対消滅を起こすはずだ。
それは紛れもなく奴らと同じもの。
私が制御下に置きながらも育て上げた、「普遍的無意識」だ』
道理は通っている。
これであの2人との、そして丸喜との決着がつく。
ジョーカー、クロウがそれぞれの銃に弾丸を装填するや否や、ナビが声を荒げた。
「それ、自分が廃人になるってわかってて言ってるのか…!?」
「なっ……!?」
アダムカドモン・
その瞳には、並々ならぬ覚悟の光が宿っている。
あまりの事実に揺らいだ怪盗団が、攻撃を避け、防ぐソルジャーに声を張り上げた。
「おい、ソルジャー!!!」
『これが終わっても、奴らはきっと人間をおもちゃとして弄ぶだろう。
奴らの論争に巻き込まれる人間は、私で終わりにしたい』
「お前…ッ、またカッコつけて死ぬ気なのかよ…!!」
「そんなの、絶対許さないんだから!!」
フィレモンたちに楔として授けられたペルソナだ。消滅させた時の負担は半端なものではないだろう。
それに加え、フィレモンたちにそれをぶつけて対消滅させれば、何が起きるかわからない。
最悪の場合、過去に獅童が葬ってきた人間と同じ末路を辿るだろう。
『これは私の人生を取り戻す戦いでもある。
相手は全てをぶつけてくるんだ。私も同じようにぶつけなくてどうする』
「ふざけたこと言わないで!!」
「みんなで帰るって言ったでしょう!?」
「先生…!そんなの、絶対に嫌です!」
「丸喜先生の力がなくても、理想を叶えていけるって示すんでしょう!?」
怪盗団に不安が伝播し、怒りに任せてソルジャーを引き止める。
そんな中、弾を装填し終えたクロウが皆を諌めた。
「見苦しいよ」
「クロウ、お前…ッ!なんとか言えよ!
親父が相打ちになるって言ってんだぞ!!」
「相変わらずおめでたい頭だね。
それはそのまま撃てば、の話だろう?」
クロウの言葉に、皆が唖然と口を開く。
そんな中、いち早く立ち直ったモナがソルジャーに問いかけた。
「……なにか、算段があるんだな?」
『ああ。信じてくれ』
「わかった。…じゃあ、ワガハイたちのことも信じてくれ」
『何を言う。いまさらだろ』
「……そうだったな」
言うと、彼らは背から降りて仮面を燃やし、アダムカドモン・
その一方、丸喜は渾身の力を溜めたペルソナに指示を飛ばし、破壊を放った。
「もう、終わってくれ…ッ!!」
悲嘆を叫び、破壊の波が降り立った怪盗団へと迫る。
「いいか、お前ら!道を切り開くぞ!!合わせろ、パンサー!!」
「OK!!やっちゃおう、モナ!!」
パンサーが放つ火炎とモナが放つ疾風。
その二つが混ざり合い、波を引き裂く。
が。それでも止まらず、隙を晒した彼女らを飲み込もうと猛威を振るう。
「クイーン、やろう!!」
「ええ。フルスロットルでいくわよ、ノワール!!」
そこに放たれたのは、ノワールの銃撃とクイーンの核熱。
衝撃がうねる波を打ち砕くも、すぐさま光が彼らへと襲い掛かった。
「スカル、やれるな!?」
「てめぇもな、フォックス!!」
次に前に出たのは、スカルとフォックス。
彼らは力を溜めた物理攻撃を放ち、迫る光を打ち払う。
と。今度は凄まじい数の光が天より降り注いだ。
「ヴァイオレット、一緒に!!」
「踊りましょう、ミスト!!」
ヴァイオレットとミスト。双子が手を取り、祝福属性を纏う剣の雨が、数多の光を打ち消していく。
瞬間。作業を終えたナビがソルジャーたちに向けて叫んだ。
「あいつらの場所、特定した!!
眼球だ!!左にニャルラトホテプが、右にフィレモンが埋め込まれてる!!」
『わかった』
ソルジャーはラヴクラフトによるブーストをかけ、再び彗星となる。
速く、速く。アダムカドモン・
そんな願いを反映してか、輝きを失ったホシが砕け散ると共に、ソルジャーの速度が更に増した。
『ホシ、様々だな…!
決めてこい、バカ息子ども!!』
ソルジャーにとって、最高のエール。
その応援を受けて、2人が飛び降りた。
「ま、まさか…ッ!?」
『貴様ら、何をしようとしてる!?』
『ふはは…、素晴らしい!それが答えか!』
三者が反応するも、もう遅い。
顔に立った2人がそれぞれ銃を構え、告げる。
「チェックメイトだ。信じる者、フィレモン。
傍観席に戻るんだな。永遠に」
「チェックメイトだ。蔑む者、ニャルラトホテプ。
蚊帳の外を這いずってろ。永遠に」
たんっ、と乾いた音が響く。
暫しの沈黙。時が止まったかのような、永遠にも思える時間が流れる。
上手くいったのか、それともダメだったのか。
皆が疑問に思っていると、アダムカドモンの様子が激変した。
「あ、アダムカドモン…!?」
一部がドロドロに崩れていくのだ。
丸喜がそれに戦慄く中、2人の声が響く。
『ふざけるな、ふざけるな!!こんなことで消えるものか!!
貴様らが望む通りに生を与えてやったというのにこの仕打ちか、転生者!!
自ら永遠を投げ捨てるなどと、愚の骨頂だな、人間!!』
『なるほど…。これが君が導き出した答えか。
私が居ずとも乗り越えていける、そう言いたいんだな。
ならば、認めようか。この可能性に溢れた世界を生き抜け。転生者たちよ』
断末魔だったのか、遺言だったのか。
罵声、賛美を口にしながら、この世界から消えゆくフィレモンとニャルラトホテプ。
彼らの言う通り、これで転生者たちも解放されたことだろう。
ジョーカーがそんなことを思っていると、ソルジャーにも変化が訪れた。
『おわっ、たか………」
「っ、親父!!!」
ウォリアー化どころか、怪盗服すらも解け、落ちていくソルジャー…否、バルル。
崩れたアダムカドモンから飛び降り、墜落したバルルへとクロウが駆け寄る。
そこに倒れたバルルの目には、生気がない。
それを前にして、改めて決意を固めたのだろう。
丸喜が杖をついて迫り、彼らへと歩み寄る。
「まだだ、まだ…!
彼を救うためにも、僕の作る現実を…」
「黙って見てろ」
と。彼の前に立ち、ジョーカーが告げる。
丸喜がそれに何か言おうとするも、聞こえる慟哭に口を塞いだ。
「戦いのたびにヒヤヒヤさせんな…!
いい加減殴るぞ、クソ親父!!」
「バルル…!ワガハイ、まだまだ蓮の相棒として力不足だ…!
だから、もっといろいろ教えてくれよ!!」
「俺…、まだアンタに恩返せてねぇよ…!
ラーメンくらい奢らせろよ、先公!!」
「志帆を助けてくれたお礼、まだ済んでないし!ここで死んだら許さないんだから!!」
「俺はまだ、美の答えを出していない…!いつか聞き届ける約束、忘れたとは言わさんぞ!!」
─────起きてください、大佐!また会うんでしょう!?
─────カァイイほっぺた、またもちもちさせてください!
数多の光が灯る。
「官僚になる姿、見届けてくれるんでしょ…!
約束、守ってもらうから!!」
「お父様の贖罪、まだ終わってません…!
途中で放り出さないで!!」
「かすみがもう一度舞台に立つ姿を見てくれるって、約束したじゃないですか…!お願いです、起きてください!!」
「一番最初の演技は、先生に見てもらなきゃ意味がないんです!お願い、戻ってきて!!」
─────死ぬのは怖い。散々そう言ってたアンタが死んでどうすんだよ。
─────あなたを犠牲にして与えられた自由に、意味なんてないから。とっとと起きてくれる?
心が脈打つ。
─────もしダメでも大丈夫っすよ。アタシ様が駆けつけて、無理矢理にでも生き返しますんで。
─────そういう結末が嫌だから抗ったんでしょうが。起きやがりなさい。
─────空将補。あなたが死ぬと私も死にそうで怖いので、起きていただけると幸いです。
想いが世界を超える。
「また泣かす気か。二番煎じは流行らんぞー」
「そろそろ起きろ、バルル」
心の穴が、想いで満たされる。
その光景の、なんと美しいことか。
ゆっくりと頭を持ち上げ、周囲に目を向けるバルル。
わっ、と皆が沸き立つのを前に、丸喜は手に持ったトーチへと目を向けた。
「………そうか。君たちには、僕の現実は要らなかったんだね」
「ああ。あんな現実、絶対に嫌だ」
「………は、はは。絶対に嫌、か。…完敗だよ」
丸喜がトーチを蓮へと渡す。
蓮はそれを受け取ると、尻餅をついたバルルの手を握った。
「………随分と、大きくなったな」
「今年で18だからな」
何故だろうか。バルルの目に、かつての小学生が見えた気がした。
明日、彼の旅路が終わる。もう少しだけ、お付き合い願おう