【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

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平和な回だと思うだろ?


?スレ目 コロマルといっしょ! 前編

「………どうしたものか」

 

ある世界の森林にて。

はっ、はっ、と息を漏らす者を前に、バルルが小さく漏らす。

そこに鎮座するのは、白い毛の芝犬。

見覚えがある赤い双眸を前に、バルルは記憶を弄った。

 

「えーと…、確か、乾と会って…、そこからこの世界に移動して…。

コロマル、お前…、まさか私の後ろに張り付いてたのか?」

「ワフっ」

「…やっぱり竜の姿で移動すべきだったか」

 

この世界は、バルルが生きる「本来の世界」ではない。

同志たる転生者がいる別の世界。

「少し厄介なことになるかも」と応援を要請され、訪れたまでは良かったのだ。

問題は、いつの間にか後ろにいた芝犬…コロマル。

犬としてはもう老犬の部類に入るものの、未だに凛々しさを携えた瞳がバルルに向けられる。

おおかた、「手伝うぞ」とでも言っているのだろう。

今から帰そうにも、またこっそりついてこられては困る。

あとで美鶴に謝罪しておこうか、とため息を吐き、バルルはその頭を撫でた。

 

「仕方ない。衰えてないだろうな?」

「ワンッ」

「ならいい」

 

言って、アホトロンシステムを起動し、人の姿となるバルル。

この世界に宇宙人はいない。

いや、厳密にはいるのかもしれないが、バルルの世界のように人間社会に溶け込んでるなんてことはない。

バルルが森を出ようと歩き始めると、コロマルが何かに気づいたように顔を上げる。

 

「む、どうした?」

「ワンッ」

「血の匂い…とか言ってないだろうな?」

「ワフ?」

「この世界ならあり得そうで怖いんだよ…」

 

散々な経験から死体には抵抗がないものの、それでも起きた事実に精神は疲弊する。

どうせ面倒もそれ絡みだろうな、と思いつつ、コロマルに続く。

しばらく歩いていくと、大自然の中に一つの店を見つける。

 

「『山茶屋だど』…?変わった名前だな…」

「ワンッ」

「動物OK…。お前まさか、腹減ったから奢れとか言うんじゃないだろうな?」

「ワン!」

「元気よく吠えるな。…仕方ない、待ち合わせ場所を変えてもらうか」

 

そんなに離れていないから大丈夫だろう。

スレッドに書き込みを投下し、赤い布で覆われた椅子が並ぶ店に近づく。

 

「いらっしゃいませだどー!」

 

気持ちの良い挨拶と共に、作業していたであろう少女が姿を見せる。

艶やかな緑の髪に、花に蝶を模した髪飾り。

屈託のない笑顔が眩しい少女。特筆すべきはその体格だろうか。

2メートルはある長身に、多くの男が理想とするであろうスタイルの良さ。

しかし、威圧感は全くない。

挨拶と立ち振る舞いだけでここまで人当たりの良さが出せるか、と感心しながら、バルルは店員であろう少女に問いかける。

 

「失礼。見ての通り、犬連れで。

犬が食べられるメニューはあるだろうか」

「あるどー!これがワンちゃん用のメニューだど!」

「早っ。…よかったな、コロマル」

「ワンッ」

「しかし、結構メニューが幅広いな…。

動物OKを謳うだけはある…」

「ここはリスからタスマニアデビルまでなんでもOKだど」

「た、タスマニアデビル?」

 

連れてくるやつがいたらビビり散らすわ。

ツッコミを飲み込み、コロマルと渡されたメニュー帳を開く。

犬用のメニューにもこだわりがあるのだろう。

写真のどれもが魅力的に見えるらしく、コロマルはうるうると瞳を煌めかせ、バルルの良心を攻撃した。

 

「…デザート込みで一つまでだからな」

「ワンッ」

 

厳格な美鶴すらも落としたおねだり攻撃だ。抗えるはずがなかった。

たしっ、とデザートがセットになったランチメニューに足を置くコロマル。

なかなかにいい値段だ。

贅沢を覚えたか、と思いつつ、バルルは人間用と書かれたメニューを開こうとし、やめる。

その視線の先にいるのは、燕尾服に身を包んだ男。

相変わらず前世から容姿が変わらないな、と思いつつ、バルルは彼に声をかける。

 

「来たか、志都児」

「春夏さん、お待たせしました。

…おや。お連れ様がいるようで」

「ワンッ」

「ああ。コロマルがついてきてしまってな」

「それはそれは…。どうも、はじめまして。

彼の部下だった、花園 志都児と申します。お見知り置きを、コロマル様」

「ワンッ!」

 

「貴様、犬好きだな?撫でろおら」と言わんばかりに志都児の足元に寄るコロマル。

志都児はそれにしゃがみ込み、コロマルの喉元を優しく撫でた。

 

「お待たせしました、ワンちゃんランチセットだど…って、あれ?志都児サン?」

 

既知の仲だったのだろう。

盆に乗った料理を手に、少女がぱちくりと目を丸くする。

それを前に、志都児はコロマルを撫でたまま笑みを向けた。

 

「おや、山女様。奇遇で」

「志都児サンのお知り合いだったど?」

「ええ。前世の上司でございます」

 

前世云々まで話してる仲なのか。

巡り合わせに驚きつつ、バルルはおずおずと頭を下げる。

 

「どうも、明智 春夏という。えーっと…」

「優敷 山女だどー。志都児サンにはいつもお世話になってるど。

よろしくだど、明智サン」

「春夏でいい。よろしく、優敷さん」

「山女でいいどー。ここ、家族経営だから、みーんな優敷サンになっちゃうど」

 

山女は言うと、視線を店へと向ける。

確かに、面影がある夫婦がテキパキと動いてる姿が見える。

バルルは怪訝そうに首を傾げ、山女に問いかけた。

 

「ご両親が?」

「おじさん夫婦だどー。ここの野菜はおでの家が卸してるんだど」

「ふむ…。コロマル、残すなよ」

「クゥーン…」

 

野菜嫌いは相変わらずらしい。

「えぇ…?」と言いたげに鳴き、盛られた野菜を一口齧る。

瞬間。コロマルは目の色を変え、モリモリと料理を食べ始めた。

 

「おお…。筋金入りの野菜嫌いが…」

「美味しいみたいでよかったどー。

あ、いらっしゃいませだどー!」

 

コロマルをひと撫でし、新たに訪れた3人組の客へと歩み寄る山女。

よく働くなぁ、とそちらを見るバルル。

瞬間。彼の思考は停止した。

 

「綺麗なところだね、園子」

「でしょ?雑誌の特集で見てさ、来たいと思ってたのよー」

「…………………あれか、今回の困りごと」

 

女子高生2人に小学生1人。

すごく知ってる3人組だ。いい意味でも、悪い意味でも。

理不尽絡みじゃないんかい、とツッコミの意を込めて志都児を見ると、彼もバツが悪そうに顔を顰めた。

 

「ええ…。山女様の店に行くと聞いたので、将補なら事前に防げるかと…」

「…吾郎を連れてくればよかったか?」

「変に有能ムーブしたらコナンくんが黙ってませんよ」

「それ私ならOKってことか、なあ?」

「将補が余計なしがらみを持つなんていつものことでしょ」

「……………」

 

返す言葉もない。

バルルが押し黙っていると、こちらに目をつけたのだろう。

女子高生2人と小学生がこちらへと歩み寄る。

 

「志都児さんじゃない。珍しいわね、あの多数カップルとセットじゃないの」

「ええ。恩師と食事でも、と思いまして」

「恩師って…」

「どうも、明智 春夏という。春夏でいい」

「オーラがある美人ね…。志都児さんにも春が来たって感じ?」

「……男性です」

「えっ?」

「大学生の子どもがいる男だ。

見た目については、幼い頃の栄養失調でな。発育不全なんだ」

「そ、そうなの…。ごめんなさい…」

「ワンッ」

 

辟易の表情を作り、人間用のメニューに目を通す。

前世でもよく言われたな、と遠い昔を思い返していると。

メニュー表を彼女らに渡した山女が、不思議そうにコロマルを見やった。

 

「この子、普通のワンちゃんとちょっと違う感じがするど」

「ワンッ」

「ペルソナ…が使える…とか言ってるど。

よくわかんないけど…、すごく賢いワンちゃんだど!」

「ユング心理学の用語だけど…、本当に犬がそんなこと言ってるの?」

「ワンちゃんだって生きてるんだど!

人に伝えたいことは山ほどあるど!」

「ご、ごめん」

 

ぷんすか、と擬音がつきそうな怒り方だ。

小学生の物言いを咎める横で、バルルが冷や汗を垂らす。

 

「おい…!あの子、動物の言葉が理解できる能力持ちか…!?」

「能力というか、技術のようなものですね。

雑草にも倫理観を持ち出すレベルの博愛精神が行き過ぎた結果です。

ほら、あの頭にあるの、本物の花と蝶なんですよ」

「生命を飼ってるのか?髪に?」

「しかもリスも住んでます」

「なんの仏だ?」

 

そこまでいくと、ペルソナのモチーフになった神話たちとそう変わらない気がする。

しかし困った。言葉がわかるのであれば、下手なことは言わせられない。

言葉が通じたことにテンションの上がったコロマルがどうボロを出すか。

だが、尻尾を振って山女とのコミュニケーションを楽しむコロマルを咎めるのも気が引ける。

どうしたものか、と頭を悩ませていると。

コロマルがふと、何かに気づいたように耳を立てた。

 

「ヴゥゥ…!」

「どうした、コロマル?」

「ワン!」

「ん…?どうしたんだ?」

 

ある一角を見つめ、ぐるぐると唸り声を上げるコロマル。

シャドウを前にした時と同じような反応だ。

コロマルの緊張感が伝わったのだろう、志都児もまた目を細め、きゅっ、と手袋を締め直している。

一方、コロマルが唸る理由がわからない女子高生…鈴木園子が怪訝そうに言った。

 

「緊張してるだけなんじゃない?

ほら、私らみたいに慣れない人もいるし」

「ワンッ、ワンッ!グルルル…」

「変な匂いがする…?んー…?ワンちゃんが嫌うものなんてなんにもないどー?」

「どんな匂いって言ってた?」

「ごめんなさい、おでじゃ言ってることがよくわかんないどー」

「そ、そっか…、うん…」

 

山女の困ったような顔に、大人しく引き下がる小学生…コナン。

その脳裏にはなにが浮かんでいるのだろう。

犬の声を事細かに聞き取れるわけがないとでも思ってるのか、それとも事件の予感に威圧を放つ志都児に対する怖気だろうか。

子供を萎縮させてどうする、とその脇腹を小突くと、志都児は威圧を霧散させた。

 

「山女様。わたくしたちにならわかるかと」

「え?でも、本当に何にもわかんない言葉ばっかりだど…?」

「……あまり彼らには聞かれたくないのです。

『アレ』に巻き込むわけにもいかないので…」

「………!わ、わかったど…!」

 

コナンに聞こえないように言葉を交わし、バルルにも視線を向ける。

バルルが近場に寄ると、山女はわからないなりに伝えようと辿々しく口を開いた。

 

「その…、鉄っぽい匂いと…あと、満月の…、しゃどー…?だとかの匂いって言ってるど…」

「………かしこまりました。早急に対応させていただきます」

 

死の匂いが濃いからだろうか。

そんなことを思いつつ、バルル、志都児、コロマルとその一角へと向かう。

何かを訝しんだのだろう。コナンが「ボクも行く!」と駆け寄った、その時。

コロマルが唐突に駆け出した。

 

「バウッ!!」

「あ、おい、コロマル!」

 

皆を振り切るようにコロマルが急加速する。

その速度は並々ならぬもので、ペルソナを鍛え上げた2人でも追いつくことができない。

確か、湊が可愛がるついでに各地で拾い集めたインセンスカードを多量に摂取させていたと話していたっけか。

恋人にでもあげとけ、と文句を浮かべ、小さくなっていく尻尾を見送る。

 

「あの犬、速すぎるだろ…!」

「仕方ない…。私が追う。

志都児、そっちは任せた」

「了解です、しょ…、春夏さん」

 

軽く言葉を交わし、森の中へと消えていくバルル。

コナンはそれを慌てて追いかけた。

 

「ボク、春夏さんについてく!」

「あ、ちょっと!コナンくん!?」

 

蘭の制止を聞かず、森へと踏み込んでいくコナン。

志都児はそれを横目に、軽くため息をついた。

 

「………予想通りの展開になりましたか…」

「た、た、大変だど…!早くおじさんたちに知らせて…」

「まずは自分の心配をした方がよろしいかと」

「だど…?」

 

怪訝そうに首を傾げる少女たち。

志都児はそんな彼女らに見せつけるように、近場にあった席の赤布をめくった。

 

「こういうことです」

 

そこには、まごうことなき爆弾があった。




コロマル…バルルの苦労を知ってるため、「手伝ってやろう」とついてった犬。その嗅覚で爆弾を見つけたが、満月シャドウに近い匂いがしたので山女に伝えてそちらの方に行ってしまった。

優敷 山女…2メートル越えのカントリー娘。博愛精神の塊。口癖は「〜だって生きてるんだど」。コナン世界との相性があまりにも悪すぎるため、彼女の前では「殺してでも殺人を止めろ」と覚悟を決めている人間がいるほど。25人(まだ増える)もの恋人を持つ彼氏がいる、世界一幸せな女の子。

花園 志都児…このあと、秒で爆弾解体した人。この世界で生きるためだけに習得したスキルや資格が星の数ほどある。座右の銘は「誰を殺してでも守る」。

バルル大佐/明智 春夏…デキるオーラのせいで怪しまれてる。最初は黒い服で行こうとしたが、この世界だと余計な地雷踏むかと思ってやめた。

江戸川コナン…「あの志都児さんの恩師?何か重要な情報を握ってるかもしれない!」となんとか近づこうとしてる。このあと、普通に撒かれた。
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